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タイトル:地下構造調査

濃尾平野地下構造調査委員会委員(平成12年度)

井関弘太郎 名古屋大学名誉教授 入倉孝次郎   京都大学防災研究所教授(委員長)
岡田篤正  京都大学大学院理学研究科教授 工藤一嘉 東京大学地震研究所助教授
澤田義博 名古屋大学工学部教授 平原和朗 名古屋大学大学院理学研究科教授
福和伸夫 名古屋大学先端技術共同研究センター教授 牧野内猛 名城大学理工学部教授
正木和明 愛知工業大学教授 横倉隆伸 地質調査所地殻物理部主任研究官

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平成12年度調査結果

 平成12年度には、P波反射法地震探査、P波屈折法地震探査、S波反射法地震探査、微動アレー調査を濃尾平野下で実施しました。また、清洲町に観測井を掘削し、坑井地質調査、物理検層、VSP法などを行いました。

(1) P波反射法地震探査

 平成11年度測線に直交し、濃尾平野を南北に横断する約21kmの測線上(西尾張中央道沿いに稲沢市から海部郡弥富町に至る区間)で、大型バイブレータを用いて、P波反射法地震探査を実施しました。図−2(a),(b)に示す深度記録断面図から、以下のことが判りました。

1) 基盤岩上面は比較的凹凸に富み南方に傾斜しており、その深度は、測線北端で約1000m、津島市莪原町付近(I)および十四山村筏川付近(II)でその傾斜を大きくし、弥富町操出付近(III)で約1700mに達します。基盤上面はその後南に向かって緩やかに上昇しています。

2) 基盤岩上の堆積層はほぼ水平に堆積しており、基盤の直上に堆積している古い地層(東海層群下部〜中新統相当層)を除いて、その層厚はほぼ一定です。また、活断層の存在を示唆するような大きな構造変化(累積性を持つ大きな上下変位)は認められません。

3) 堆積層の速度は深度とともに約1.5km/sから3.0km/sまで漸増しています。






(2) P波屈折法地震探査

 反射法地震探査の受振器展開を利用して大型バイブレータを用いたP波屈折法地震探査を、稲沢市から海部郡弥富町に至る区間で実施しました。基盤からの屈折波は一部地域で不明瞭な箇所もありますが、発震点からの距離約3km〜21kmの間で確認されています。この屈折波の到達時間(走時)から、反射法地震探査から得られた速度構造モデルを基に、反射法では求めるのが難しい基盤の速度を約5.5km/sと推定しました。

(3) S波反射法地震探査

 海部郡弥富町富浜において、測線長約1000mの区間で、ミニバイブレータを震源とするS波反射法地震探査を実施しました。この測線は、P波反射法地震探査測線の約2kmほど南に位置します。この測線において比較のためP波反射法地震探査も実施しました。これら三つの反射法の深度記録を図−3(a)に示します。発振作業を夜間に行ったためノイズの少ない良好な記録が取得でき、深度約1500mの基盤岩近傍までのS波及びP波の速度構造が得られました。S波速度は約0.3km/s〜1.2km/s、P波速度は1.4km/s〜2.7km/sを示しています。尚、参考の為に、平成11年度の結果を図−3(b)に示しました。





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(4)微動アレ−探査

 濃尾平野下の12箇所の観測点において、微動アレー探査を実施し、基盤までのS波速度構造を推定しました。これらの内、反射法測線上の結果を反射記録断面とともに図−4(a),(b)に示します。この結果は概ね4層構造を示しており、地表から、第1層:約0.5km/s以下、第2層:約0.7km/s、第3層:約1.1km/s、最下層:約3km/sを示します。




最下層は基盤に対応していると考えられ、基盤の上面深度は、反射法による結果と比較的良く一致しています。ただし、この手法は観測点毎に独立に速度構造を決定するため、観測点間にばらつきがあり、三次元的速度構造のモデル化には今後更なる検討が必要と考えられます。




(5)観測井掘削、坑井地質調査、物理検層、VSP法

 西春日井郡清洲町に、掘削深度740mの垂直観測井を掘削しました。図−5に総合柱状図を示します。また、ボーリング孔を利用して、地表から孔底までの速度、密度、比抵抗、ガンマ線強度、孔径、温度などを測定する物理検層を実施しました。この内の速度検層および密度検層の結果を図−5に示しました。

 この観測井を用いて、バイブレータを用いたVSP調査を実施し、孔底までのP波及びS波速度構造を得ました。図−5に、これらの結果を示します。これらの孔井で得られるデータは、地表での観測により地下を類推するような反射法や微動アレー調査結果を評価する際の基準になる極めて重要なデータと考えられます。




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(6)総合解析

 各調査法で得られた結果を総合的に解析し、濃尾平野の三次元的な速度構造モデルの構築に向けて以下の検討を行いました。

・ 基盤到達井、反射法、微動アレーの結果から基盤上面の三次元的形状を推定しました。この結果を図−6に示します。さらに、参考的に、堆積層中の主要な境界面の三次元的な深度構造についても推定しました。

・ 比較的データ取得が容易であり、信頼性の高いP波速度からS波速度を推定する手法について検討を行いました。P波速度とS波速度には一定の関係があることが確認されました(図−7中の青線)。

・ 濃尾平野を十字に切る断面(反射法測線)における詳細なP波およびS波速度構造を推定しました(図―8(a),(b))。

・ 各種調査手法の比較検討を行い、今後の地下構造調査を実施する際の調査指針についての検討も行いました(表−1)。











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