<ムギ類>
ムギさび病
1 病原菌
オオムギ、コムギの黒さび病 学名 Puccinia graminis Persoon:Persoon subsp. Graminis(糸状菌 担子菌類)
オオムギ、コムギの黄さび病 学名 Puccinia striiformis Westendorp var. striiformis
オオムギの小さび病 学名 Puccinia hordei Otth
コムギの赤さび病 学名 Puccinia recondita Roberge ex Desmaziéres
2 被害の様子
オオムギ、コムギのさび病には上記の4種類があり、さび病はその総称である。さび病に共通した特徴は、葉や茎に鉄のさびの色をした、盛り上がった粉質の斑点ができ、
後にそれが黒褐色に変化する。盛り上がったさび色の粉は夏胞子で、それが集まってできた斑点は夏胞子堆と呼ばれる。夏胞子堆は、葉にできるのが普通であるが、茎や穂にまでできることもある。ムギが成熟するにつれて、夏胞子堆のあとやその近くに黒褐色の斑点ができる。これは冬胞子堆と呼ばれ、冬胞子の集まったものである。
さび病菌の発育適温は、種類によって異なるので、発生する時期もそれぞれ異なっている。春になって最も早く発生するのが黄さび病であり、ついで小さび病、赤さび病で、黒さび病は遅い。オオムギでは小さび、コムギでは赤さび病が全国的に広く発生する。黄さび病、黒さび病は年による発生差が大きい。黄さび病は、早くから西日本に発生し、年によっては東北地方や北海道にも発生する。黒さび病は、南九州では発生が早く、しだいに北に拡がるが、本州ではムギの成熟期に近く発生するのがふつうである。さび病の発生による被害は、穂数と一穂粒数の減少、粒重の低下をきたし、20〜30%の減収をもたらす。さらにムギの全般的な生育や粒質その他にもいちじるしい影響を及ぼす。さび病は、蔓延が早く、畑全体に多発したときは枯死して収穫皆無になることもある。
3 病原菌の生態
ムギの上では夏胞子と冬胞子を形成する。夏胞子は水滴に触れて発芽し、発芽管が気孔の上に到達するとその上に付着器をつくり、この直下から侵入菌糸を出して気孔から体内に侵入する。侵入した菌糸は、さらに寄主の細胞間隙をすすみ、細胞内に吸器を差し入れて栄養分を吸収し、生育を続ける。侵入してから8〜10日後に夏胞子堆が形成され、そこから飛散した夏胞子は、さらに健全なムギを侵す。このように、ムギが成熟するまで、夏胞子による増殖が何度も繰り返され、蔓延する。
黒さび、小さび、赤さび病では一つの夏胞子が発芽、侵入して一つの夏胞子堆をつくるが、黄さび病では、一つの夏胞子から生じた菌糸が葉の中を縦に走り、すじ状に次々と夏胞子堆をつくるので、蔓延が非常に速い。夏胞子が発芽して侵入する適温は、赤さび病菌で18゜〜25゜Cであり、黒さび病菌ではこれよりやや高く、小さび病菌ではやや低い。また、黄さび病菌では、適温が10゜〜15℃とかなり低く、25゜C以上になると発育しない。このような適温の差が、各種のさび病の発生時期の差となってあらわれる。
黒さび病菌、黄さび病菌は、オオムギ菌とコムギ菌で生態種が異なり、オオムギ菌はコムギを侵さず、コムギ菌はオオムギを侵さない。コムギの赤さび病菌はムギの収穫後にこぼれムギに感染して夏を越し、秋に播種されたムギに感染する。そして夏胞子または体内で菌糸の形で越冬し、翌春の第一次伝染源となる。
4 発生しやすい条件
・多窒素のときに発生が多くなる。
・冬暖かく雨が多くて春分の日のムギの草丈が平年より高い年は、ムギが軟弱でさび病にかかりやすい状態にあり、また冬を越す菌の量も多いため多発の危険性が高くなる。
5 防除対策
(1)耕種的防除法
・適期に播種し合理的な施肥を行う。
・品種による発病差が大きいので抵抗性品種の利用が有効である。ただしレースの分布が地域によって異なるので、各地域の奨励品種の中から強い品種を選ぶ。
・被害茎葉をほ場の周辺に残さず、コボレムギもできるだけ抜き取るようにする。
(2)薬剤防除
・薬剤防除は、初期発生を早く見つけて早期に行う。特に黄さび病は蔓延が速いので早期防除が重要である。