一問一答この項「がんを予防する」の目次へもどります。

一問一答の目次
1. がんは予防できる病気でしょうか?
2. がんを防ぐための方法はありますか?
3. がんは遺伝しますか?
4.1 がん予防の工夫 禁煙するためにはどうすればいいですか?
4.2 がん予防の工夫 適度な飲酒量はどれくらいですか?
4.3 がん予防の工夫 野菜や魚がいいそうですが、どのように食べればよいですか?
4.4 がん予防の工夫 運動はどのようにすればいいですか?
4.5 がん予防の工夫 体重を減らすにはどのようにすればいいですか?
5. 何故同じ生活をしてもがんになる人とならない人があるの?
6. がん検診は効果がありますか?
7. がん罹患・死亡の動向と将来予測は?


がんは予防できる病気でしょうか?このページのトップへ移ります

 人間が生まれつき持っているいろいろな遺伝子、それらに何らかの原因で傷がつき、その傷が修復されずに蓄積されて起こる遺伝子の病気、がんをそのように理解することができます。つまり、遺伝子の障害は何段階にもわたって起こりますので、私たちの体の中にがん細胞ができるまでにはかなりの時間がかかります。

がんは「遺伝子の病気」と理解することができます

遺伝子(DNA)のらせん構造をあらわした図です


 それでは遺伝子にをつける原因は何かということになります。放射線や紫外線のように高エネルギー線が細胞の遺伝子に直接作用する場合、タバコの煙などに含まれる化学発がん物質が体の中で活性化されて遺伝子を傷害する場合、細胞に感染したウイルスが遺伝子を攻撃する場合、などいろいろな原因が考えられます。

 一方では、年を取るにつれて遺伝子の障害を受ける機会も増し、遺伝子障害を防ぐ機構も弱くなってきますから、長生きをするとがんになる危険度はますます高くなります。子供や若い人のがんは希で すが、社会に大きく貢献している中高年層からがんに罹る人たちが急増し、彼らをがんで失うことは社会にとっても大きな損失です。

 そのような遺伝子に障害を与える環境から逃れることにより、がんになる年齢を遅らせることこそ、がんを予防していく基本的な考え方です。



がんを防ぐための方法はありますか?このページのトップへ移ります

 がん予防には二つの考え方があります。できるだけがんにならないようにする、あるいはがんになる年齢を遅らせる一次予防、がんになっても早く見つけて早く治療し、がんでは死なないようにする二次予防です。

 一次予防の方法としては、私たちの体の細胞の核内遺伝子に傷をつける発がん物質にさらされにくいような生活習慣をとることです。一方では、発がん物質の働きを抑制するようなものを補強していくことも重要な一次予防の方法です。

がんを防ぐための方法(一次予防)


 二次予防の方法としては、がんになる危険度が高まる中高年になったら進んで検診を受けて早期にがんを見つけて治療することです。早期のがんは簡単に切除できるし、最近ではレーザー光線などでも消却できますから、体にも負担が軽くて完全に治ります。しかし、がん細胞はどんどん悪性化していきますから放置しておくと体中に広がり、治療も難しく効果も弱くなり、がん死を免れることができなくなります。

がんを防ぐための方法(二次予防)


がんは遺伝しますか?このページのトップへ移ります

 がんは遺伝病ではありません。わたくしたちの体の正常な細胞の核内の遺伝子に傷がつき、それが何回か蓄積されるとがん細胞が誕生します。がん細胞はさらに増殖してがんの塊を作りますから、条件さえそろえば誰でもがんになる可能性があります。


 また、年齢をとるにつれて遺伝子に傷がつきやすくなり、傷ついた遺伝子の修復能力も低下しますから、年をとればとるほど宿命的にがんに罹りやすくなります。

 ただし、タバコを長年吸いつづけても肺がんに成りやすい人と成りにくい人があることも確かです。現時点では、タバコのタール成分に含まれる強力な発がん物質に暴露された場合、体内で発がん物質を活性化したり、逆に発がん物質を無毒化する機能に個人差があり、その結果としてがんになる危険度に個体差を生じるのではないかと説明しております。いずれにしてもタバコを吸わなければ誰でも肺がんの危険度は低くなります。

禁煙は誰にとっても肺がんの危険度を低下させます


がん予防のための工夫とは何ですか?このページのトップへ移ります
禁煙するためにはどうすればいいですか?

 喫煙習慣は他の習慣(例えば酒、コーヒーなど刺激物の嗜好など)と結びついているので、喫煙者は自分の生活行動全体を見つめ直して、禁煙していく必要があります。

 一般に喫煙者は刺激物を求めたがりますから、禁煙すると口元が寂しくなり、何かタバコにかわるものを必要とします。つまり、喫煙者の多くは食事の時に刺激物を好み、食事の間にコーヒーをすすり、夜はアルコールを求めます。また、タバコ中のニコチンは依存性があるので、いったん習慣性になった場合、一時間以内に起こるニコチンの禁断症状を克服することも容易ではありません。

 一人で禁煙しようとすると廻りからの誘惑も多く、失敗することも多いので、仲間を作ってお互いに励まし合いながらやめるのが効果的です。もし、禁煙の意志がある場合には禁煙クリニックが援助してくれます。また、ニコチン依存性の強い人にはニコチンパッチも利用可能です。がん予防のためには食習慣全体を変えていくと禁煙行動が楽しくなり、さらに、禁煙が達成しやすくなります。

禁煙のためには仲間を作ってお互いに励まし合うのが効果的です



 喫煙者が禁煙に成功する時には、通常、無関心期から、関心期、準備期を経て禁煙に挑戦する(実行期)という経過をとります。禁煙行動を後押しするには、それぞれの時期にあった支援が必要で、種々の支援技術が開発されています。
 禁煙ポスターは無関心期から関心期への移行に役立ちますし、ニコチンガムやニコチンパッチの処方は準備期および実行期を支援するのに有用です。これまでに、当疫学・予防部はポスターの作成および配布、ニコチン補助療法を提供する県内の医療施設の登録と県民への情報提供システムの確立を行ってきました。

禁煙ポスター(喫煙者の肺の写真)です

  このパンフレットは厚生科学研究費補助金(健康科学総合研究事業)「医療施設受診喫煙者の多施設大規模追跡調査」の研究助成により印刷されました


適度な飲酒量はどれくらいですか?このページのトップへ移ります

 コップ一杯のビールで頭痛がしてくる下戸と、一升酒を平気で平らげる上戸では、適切な飲酒量が異なりますので、単純には提示できません。アルコールを代謝する一連の酵素の機能には個人差があります。

 わたくしたちの疫学研究の結果によると、飲酒量として男では2合以上、女では1合以上でがん全体の危険度が高くなってきます。しかし、男でも1合以下の飲酒量ならがんの危険度はむしろ下がる傾向があります。タバコの煙と異なりアルコールには発がん作用はありませんので、飲酒習慣は喫煙習慣ほどがんへの強い影響はありません。しかし、口腔がんや食道がんは飲酒習慣、特に濃度の高い焼酎やウイスキーを飲む人たちで明らかな危険度の上昇が認められます。また、アルコール依存者や中毒患者では消化器がんの危険度が一般の人より数倍も高くなっております。

喫煙飲酒習慣の組み合わせと食道がんの危険度をあらわしたグラフです


 一方、飲酒によるストレス緩和はがんや循環器疾患の危険度を下げる可能性もありますから、飲める人は適量飲酒(男で一合半まで、女で半合まで)を楽しむ知恵を獲得することが重要です。


野菜や魚がいいそうでうが、どのように食べれば良いですか?このページのトップへ移ります

 野菜にはビタミン類やミネラル類など発がん抑制物質が多く含まれており、毎日できるだけ多くの量(350 グラム以上)をとる必要があります。原則的にどんな調理方法でもがん抑制作用は失われませんが、水に溶けやすいもの(ビタミンB類)、油脂に溶けやすいもの(ビタミンA、E類)や熱に弱いもの(ビタミンC)などは調理方法に少し工夫が必要です。実際には、生で食べたり、油で炒めたり、煮付けたり、いろいろな調理方法をおりまぜて楽しく美味しく食べるのが肝要かと思います。

野菜を毎日楽しく、美味しく、また、できるだけ新鮮な魚をとりましょう

 次に、日本人が好んで食べる魚の油にはがん抑制作用のあることが世界で注目されてきました。つまり、魚油に多く含まれる不飽和脂肪酸(例えばDHA やEPA など)は体の中で発がん予防効果を発揮します。しかし、魚の油脂は不安定で古くなると酸化が進みその効力はなくなります。だから、がん予防のためには出来るだけ新鮮な魚を食べることをお進めします。また、魚を保存する場合も油脂が酸化しないように冷凍し、早めに食前に出すことが重要です。


運動はどのようにすればいいですか?このページのトップへ移ります

 アメリカでは10年以上も前から、習慣性の運動大腸がんの危険度を低下させる可能性があるという研究結果を報告してきました。わたくしたちのがんセンターにおける病院疫学研究の結果においても、健康のための運動習慣(週2回以上)を持つ人たちはほとんど運動しない人たちに比べて、がんの危険度が半減しておりました。

 具体的にお進めできる運動方法として、ニコニコ運動があります。頻度は週2〜3回くらい、時間は30分以上、強度は体全体に汗がにじむ程度で1分間の脈拍は120 回以下、運動の種類は何でもいいのですが、歩行、水泳、ジョギングなどは無理がなくていいと思います。このような運動でも負荷をかけすぎると、関節障害や心臓疾患の原因にもなりますから、苦しくない程度のほどほどの運動を心懸けましょう。中高年に激しい運動を負荷すると体の免疫力に影響するキラー細胞数が減少しますが、ニコニコ運動ではむしろ高まりますので、がんを予防できる可能性は大いにあります。

健康運動習慣による全がん危険度の低下を示した図です


体重を減らすにはどのようにすればいいですか?このページのトップへ移ります

 体重を減らすためには、毎日の食生活の見直し、特にカロリー摂取の過剰、野菜類などの摂取不足、などを改善する必要があります。また、十分な咀嚼運動は満腹感を高めるので食べる量を減らして結果的に体重減少を促します。理想的には食事日記をつけながら毎日食べる量と質を点検し、バランスよく食事の量を減らしていく必要があります。
 特に、中年期を過ぎますと男女とも体重増加がはじまり、摂取カロリーを押さえることが肝要です。急激に体重を減らすと、健康障害を来す場合が有りますから、月に1キログラム程度の体重減少を目指し、理想的な体重、BMI で21〜23(10ページ参照)に近づくよう、ゆっくり挑戦しましょう。また、食事制限だけで体重を減らすことが困難な場合でも、健康運動を併用すれば楽にやせることが出来ますから、先に述べたニコニコ運動を同時に心懸けましょう。

下図は等センター病院で食事と健康運動の指導により、3か月の間に理想体重まで下げることの出来た実例です
食事・運動指導による体重変動記録



何故?同じ生活をしてもがんになる人とならない人があるの?このページのトップへ移ります

 人の顔が違うように、発がん物質に対する影響の強さも個人差があります。例えば、たばこの煙中の発がん物質を速く処理する力のある人とない人では、喫煙しても肺がんのなりやすさが違います。これまでの研究からチトクロームp4501A1 (CYP1A1 )という酵素はたばこ煙中の発がん物質を活性化し、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST )という酵素は活性化した発がん物質を解毒する作用があります。これらの酵素活性は遺伝子の多型性(遺伝子型が複数あるという意味)により決められています。CYP1A1 を多く作るのにGST は作れない人がたばこを吸うと、肺がんになる可能性は大幅に増加します〔下図〕。
 さて、人の体にはこのような遺伝子が多数ありますが、すべての遺伝子多型を調べることはできません。世の中に完璧な遺伝子を持っている人はいませんから、やはりがんになりやすい生活(例えば喫煙習慣)を止めることが、がん予防のためには最も重要なのです。

たばこの煙中の発がん物質を速く処理する力のある人とない人での喫煙による肺がんのなりやすさの違いを図解しています



がん検診は効果がありますか?このページのトップへ移ります

 がんの定期検診の効用は三つあります。第一に早期がんを発見できること、第二に日頃から忘れがちな健康チェックをできること、第三にがん予防の知識を増やす機会を得ることなどです。

 元気な人は病気のことなど考えませんが、がんは突如として襲ってきます。しかし、がんは不治の病ではなく、早期に見つけることができれば完治しますから、定期検診が重要なのです。特に、日頃の生活習慣を振り返って、がんになりやすい生活をしている50歳以上の人は進んで定期検診を受けて下さい。がんの早期発見は、治療による肉体的苦痛を激減するのみならず、国の医療費の削減にも繋がります。

 わが国では、がん対策として「がん検診」に力がいれられ、老人保健法の下で、胃がん、子宮がん、肺がん、乳がん、大腸がんの集団検診が行われてきました。これらのがん検診が国民にとって有意義かどうかを評価することは、わが国のがん対策のためにたいへん重要です。

日頃の生活習慣を振り返って、がんになりやすい生活をしている50歳以上の人は進んで定期検診を受けて下さい


乳がん検診の効率実施地区と対照地区の乳がん年齢調整死亡率の変化率

老人保健法の下で実施されてきた乳がん検診の効果を評価した図を上に紹介します



がん罹患・死亡の動向と将来予測は?このページのトップへ移ります

 わが国では、男性の3人に1人、女性の4人に1人はがんで死亡しております。最近では、毎年30万人のがん死亡者と60万人のがん罹患者がおり、高齢化が進むに連れてますます増加していきます。その現象は愛知県においても同じ事です。

 1981 年からがんが死亡原因の第1位となり、その後も増加しております。部位別にみると死亡率が低下傾向を示すものもあります。当疫学・予防部でも愛知県のがん対策に役立てるため、がんの罹患・死亡に関する基礎資料を作成しております。図にわが国のがん死亡率の経年変化を示しました。

わが国の主要部位の年齢調整死亡率の動向(男/女)
愛知県のがん統計に関する情報は、愛知県のホームページの「がん情報」に掲載されています
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