愛知県がんセンターがんの知識公開講座・学会発表過去の発表の目次


愛知県がんセンター公開講座 2004年/第5回の3
がん予防最前線
疫学・予防部

部長:田島和雄
 日本人のがん死亡数は平成15年度で31万人となり、全体の3割はがんで死亡している。統計学的な推定によると15年後にはがん死亡数は年間47万人となり、その2倍(90万人以上)の国民があらたにがんに罹患する。厚生労働省は平成8年度からがんを生活習慣病と定め、食・嗜好習慣などの変化に伴ってがんの罹患率や死亡率も大きく変動するという考え方を広く国民に訴えてきた。また、今世紀に始まった「健康日本21」においては具体的な目標を定め、将来的に地域主導型のがん撲滅を目指した施策を進めており、愛知県も県民のみなさまと共に県独自のがん対策の推進を目指している。
 がんが「生活習慣病」であることは、日本人の食生活が欧米化していくことにより日本人のがんも欧米型に傾くこと、アメリカやブラジルの日系人が移住先の国民のがんに罹りやすくなること、などから明らかである。一方、最近は分子生物学的研究手法によりヒトゲノム(遺伝子)研究も急進展しており、がんの個性や個々人のがん発病への感受性の違いも理解されつつある。これからは人々が属する文化環境の違いによるがん罹患の多様性、および個体の遺伝的特性によるがん罹患の感受性の差など、生活習慣の特異性と遺伝的多様性の両者に目を向けた研究パラダイム「民族疫学」に基づいたがん予防への取り組みが重要になってきた。
 私たちは愛知県がんセンター病院において県民のがん予防に役立つ情報を構築するため、世界に例のない大規模な病院疫学研究を昭和62年から展開してきた。また、平成12年からは半定量的食物摂取頻度調査や遺伝子の検索も取り入れた第二次病院疫学研究を開始している。一方では、文部科学省の科学研究費や厚生労働省のがん研究助成金を受けながら、国内・外において学際的な民族疫学的研究を展開している。それらの研究から得られる情報を用いたがん予防のためのリーフレットの作成、新聞紙上やホームページなどを介した県民、および国民向けのがん予防に必要な情報公開などを目指している。
 私たちは最も重要ながんの要因として「加齢現象」について冷静に受け止めなければならない。つまり、私たちは長寿動物としてがん罹患から避けられない宿命を背負いながら生きている。高齢化社会は国の文化的発展の成熟度の指標と言われているが、一方では負の産物としてがん増加というジレンマをかかえ込んだ。他のアジア諸国では感染症対策が進むにつれてがんの健康問題が深刻化している。本シンポジウムでは健康増進とがん予防のための五つの提言、1)節塩メニューは健康日本21、2)緑黄赤の野菜果物は健康信号、3)多種少量のバランス感覚、4)禁煙節酒は鬼に健康金棒、5)ニコニコ運動一日30分間週2回、などについて解説しながら、最前線のがん予防戦略についてみなさまとともに考えてみたい思います。

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