愛知県がんセンターがんの知識公開講座・学会発表過去の発表の目次


平成16年度公開講座:主な質問と回答
Q1:大腸の検査の結果、大腸にポリープがあることが分かりました。どのくらいの大きさのものは取った方がいいのでしょうか。
A1:大腸にポリープがあった場合、そのポリープを取った方がよいかどうかの判断は、(1)大きさ・(2)かたち・(3)組織検査の結果によって総合的に判断します。大きさの点から言えば、5mm以下のポリープは癌がポリープに含まれている可能性や近い将来に癌化する可能性は非常に低いので経過観察でよいかと思います。逆に1cmを超えるポリープになると1割以上(大きくなればその割合は高くなる)に癌が含まれる可能性がありますので早めに取った方がよいと思います。ただし、内視鏡で治療できるものかどうかしっかり検査する必要があります。では5mmから1cmまでのポリープはどうかと言いますと意見が分かれるところですが、急いで取る必要はありません。最初に述べた(1)・(2)・(3)を考慮して判断すればよいと思います。
Q2:胃がんの腹膜転移を早期に発見する方法として、腹膜洗浄液を採取して調べる方法があると聞きました。がんセンターで胃がんの手術をした人は、調べてもらって、結果を教えてもらうことができるのですか。
A2:がんセンターで胃がんの手術をした人は検査を受けることができ、その結果(腹膜再発のリスクの有無)をお知らせしますが、手術時一回のみで手術後には検査はできません。また現在は保険適応がありませんので実費(3万5千円)をはらって頂く必要がありますのでその点をご了承ください。詳しくは医師に相談してください。
Q3:たばこが肺がんの原因といわれますが、何十年もヘビースモーカーであっても、肺がんにならないない人もいます。肺がんになる人とそうでない人はどういう違いがあるのでしょうか。
A3:詳しいことは、まだわかっていません。しかし、たばこには発癌物質が40種類以上含まれていることや、一部の発癌物質による遺伝子(DNA)の傷害メカニズムもわかってきています。あくまで推測ですが、がん細胞になるためには6−10程度のDNAの傷が必要とされているので複数個のDNAの傷がたまたま蓄積しなかった可能性や、肺がんにならなかったヘビースモーカーの人では生体内の発癌物質の代謝酵素や細胞内でのDNAの修復酵素などの機能がよくてDNAの傷が蓄積しにくい可能性などが考えられます。但し、一般的には喫煙者は非喫煙者に比べて3−10倍ほど肺癌にかかるリスクが高いとされているので、禁煙は大事です。
Q4;アスベストを吸い込んだ人が肺がんにかかったとニュースで聞きました。これはどのような肺がんなのですか。
A4:アスベストは発癌物質として有名で、大量に吸い込んだ人では数倍胸膜の腫瘍である悪性胸膜中皮腫や肺癌にかかりやすいとされています。特に喫煙者ではさらにリスクは高まり、10倍以上とも言われています。文献をみるかぎり、腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌の肺癌の4大組織型の中の特定の組織型と因果関係はないようです。
Q5:通常の骨髄移植と違って、リンパ球の数を増やして体にもどすミニ移植があるそうですが、高齢の患者でも受けられますか。
A5:ミニ移植は移植前に行う前処置が軽いため、現在75歳程度までが対象となりますが、もちろん年齢以外に体力等も考慮されますので多少の前後はあります。確かに前処置は軽いですが、GVHDと呼ばれる拒絶反応は普通の骨髄移植と同じ程度出ることが分かっているので、注意が必要です。なお、体に戻すのは顆粒球増多因子という医薬品を注射して血液中に流れ出てきた造血幹細胞とリンパ球です。
Q6:がんに遺伝性がありますか。
A6:がんの中にはたしかに遺伝性のあるものがありますが、がん全体の中ではごく一部で、大部分は生活習慣など遺伝以外に原因があると考えられます。日本では一生の間に、がんにおよそ2人に1人がかかるのが現状ですので、たまたま親族でがんにかかられた方が多いということも起こります。また家族同士では生活習慣その他の環境が似ることも多いですので、家族で同じがんにかかられた本当の原因は遺伝ではなく、生活習慣その他の環境にあることも多いです。
Q7:欧米では卵巣がんを予防するため、がんになる前に事前に卵巣を摘出することがあると聞きました。日本でも、予防のための摘出はやっていますか。
A7:欧米、特に米国においては遺伝性卵巣癌といわれる家系の検索が進んでいます。この集団に含まれる女性のうち、生殖細胞レベルで特定の遺伝子に変異がある場合、卵巣癌の発症率が16-65%(通常は1.4-1.8%)と上昇するため妊娠を終えた女性を中心として、40才までに付属器(卵巣及び卵管)を摘出する場合があります。予防的付属器摘除術と呼ばれていますが、これにより卵巣癌罹患率を約10%下げることが期待されています。日本においては、遺伝性卵巣癌といわれる家系の検索があまり進んでいないこと、倫理的な議論が十分になされていないという理由もあり、一般的には現在のところ施行されておりません。
名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学/医学推計・判断学教室
 教授:浜島信之  電話:052-744-2132
Q8:胃がんの術後数年経ちますが、ガスがたまって苦しくなり腸閉塞になってしまいました。何か良い治療法はないでしょうか。
A8:お腹の手術を受けると例外なく癒着が生じます。これが原因で腸の流れが悪くなり術後何年も経ってから腸閉塞になることがあります。これを治すことは困難ですので、定期的な排便があるよう食生活に注意し、改善が乏しければ排便を促す薬を内服するなどして対応しています。
Q9:細胞分裂の際に染色体の分配が正常に行われなかった場合、癌化するケースがあると聞きました。それはどのような理由によるのでしょうか?
A9:染色体の分配を誤ると、異常な染色体数の細胞ができます。それは、遺伝子情報の量の異常を意味します。そのような細胞では、遺伝子情報をもとに作られる種々の蛋白質の量がそれぞれ過剰、もしくは欠失することになります。ここで一つ例をあげますが、過剰になったのが増殖を促すための蛋白質であれば、それは過剰な増殖を起こし得ます。また、増殖を抑制するための蛋白質が欠失してもやはり過剰な増殖を起こし得ます。そして、このような過剰な増殖が癌化の原因になり得ます。
Q10:また、上記のような異常な分裂をした場合、ほとんどの細胞は癌化せず死んでいくと聞きましたがそれはどのような仕組みによるものでしょうか?
Q10:正常細胞には「自分自身の状態を監視する機構」があります。その働きはp53という蛋白質が担っています。p53は細胞の異変、特に染色体の異変が起こるとこれに反応して細胞を自殺させます。これをアポトーシスと言います。多細胞生物が異常な細胞を排除する手段です。
Q11:舌がんの再建後の味覚の感覚はどうなるのですか?
A11:舌半切の場合は残った舌で味覚を感じることができ、術前と変わりません。舌全摘(舌を全部切除)した場合でも上顎(上あご)や咽頭(のど)に味蕾が存在し味を感じることができます。

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