中央病院の各部門を紹介します ACCトップへ
1消化器内科 2内視鏡部 3呼吸器内科 4血液・細胞療法部 5薬物療法部 6臨床検査部
7遺伝子病理診断部 8輸血部 9頭頸部外科 10胸部外科 11乳腺科 12消化器外科
13整形外科 14泌尿器科 15婦人科 16麻酔科 17放射線診断・IVR部 18放射線治療部
19外来部 20緩和ケア部 21看護部 22薬剤部 23形成外科

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 部長ごあいさつ
放射線治療部長 古平 毅  愛知がんセンター中央病院の6代目の放射線治療部長を担当いたします古平 毅です。
 当院は昭和39年開院以来放射線科として診断業務と治療部門を独立して業務を行ってまいりました。高橋信二先生が開発された当時としては画期的な「高精度放射線治療」である原体照射法を当初より臨床に応用し以来頭頸部がん、婦人科がん、前立腺がん、肺がん、食道がんなどに優れた治療効果と安全性を報告してまいりました。
 最近では治療技術や計画コンピュータの革新的な進歩により三次元放射線治療や定位放射線治療、強度変調放射線治療などの高精度放射線治療は臨床に浸透していますがこれらの最先端の放射線治療の基礎は当院で長い実績をもつ原体照射法に端を発しているといっても過言ではありません。
放射線治療部長
古平 毅
 当院は4名のスタッフ(放射線腫瘍学会認定医4名、日本医学放射線学会専門医4名)とレジデント4名が放射線治療専任で診療を行っており外部照射(リニアック 2台、トモセラピー 1台)、小線源治療(RALS マイクロセレクトロン1台 )、密封小線源治療 (イリジウム、ゴールドグレーン、セシウム、ヨード)を主たる治療装置として年間1000名程度の新規患者治療を行っております。頭頸部癌、子宮癌の患者は主に当科入院にて化学療法を含む包括的ながんの治癒をめざした放射線治療を目的とした診療を行っています。これは本邦では数少ない診療形態ですが放射線治療を主体として質の高い診療を行うには欠かせない条件であると考えておりこの診療スタイルを固持しています。
 この紹介ページでは当院の特徴であるユニークな治療を中心に紹介させていただきより「質の高い治療」を希望されている患者さんやご家族の参考になりましたら大変うれしく思います。
 スタッフ紹介
 当科の診療の紹介
1.強度変調放射線治療(トモセラピー)
A 頭頸部がん
B 前立腺がん
C 転移性脳腫瘍に対する定位照射
D 転移性脊椎腫瘍
2.治療各論
A 頭頸部がん
1)動注化学療法
2)舌癌小線源治療
B 子宮頸がん
C 前立腺がん
D その他
  スタッフ紹介
・部長 古平 毅(こだいら たけし) 日本医学放射線学会専門医 同代議員
日本放射線腫瘍学会認定医、同代議員
日本がん治療認定医機構 暫定教育医
・医長 古谷 和久(ふるたに かずひさ) 日本医学放射線学会専門医
日本放射線腫瘍学会認定医
日本癌治療認定医機構 認定医
・医長 立花 弘之(たちばな ひろゆき) 日本医学放射線学会専門医
日本放射線腫瘍学会認定医
・医長 富田 夏夫(とみた なつお) 日本医学放射線学会専門医
日本放射線腫瘍学会認定医
・レジデント 中原 理絵(なかはら りえ)
溝口 信貴(みぞぐち のぶたか)
野村 基雄(のむら もとお)
後藤 容子(ごとう ようこ)
・治療専属診療放射線技師 9名
・放射線治療品質管理士 2名
・医学物理士 2名
放射線治療部 スタッフ紹介写真
後列 左より 溝口信貴、野村基雄、後藤容子、中原理絵
前列 左より 富田夏夫、立花弘之、古平毅、古谷和久
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  当科の診療の紹介

1.強度変調放射線治療(トモセラピー)


 当院では原体照射法という方法でがんの部分にあわせて放射線をあてる治療方法を採用して優れた治療成績を以前より報告してまいりました。昨今では治療装置の進歩や計画用コンピュータの革新的な進歩により強度変調放射線治療と呼ばれる革新的な治療技術が治療に用いられるようになっています。強度変調放射線治療は「究極の放射線治療」と呼ばれ複雑な形状の病変にたいしてより正確な放射線投与が可能になると同時に周辺の正常組織の放射線をきわめて少なくすることが可能になります。(右図)

 トモセラピーは強度変調放射線治療の専用機で2008/11現在本邦に14台設置されていますが都道府県がん診療連携拠点病院では唯一の治療機であります。この装置の特徴としてライナックで強度変調放射線治療を行う場合に比較して治療計画、計画の検証、位置確認の精度、治療手順などが大幅に省力化されるため15-20人程度の強度変調放射線治療を毎日行うことが可能です。当院では計画のCT検査撮影後の1週前後で治療を開始しています。


(上図)リニアックによる前立腺がんの強度変調放射線治療のプラン。5方向から濃淡をつけたビームの組み合わせで高精度な治療を行う。


 トモセラピーはCT撮影装置を想起させるユニークな外観ですが、実際治療用の超高圧X線によるCT画像の撮影も行い治療時の正確な位置確認を行います。またこのCT画像は治療経過中の病変の縮小の確認やこの画像を基にした線量分布の確認修正を行うことができるという優れた特徴を持っています。Image guided radiotherapyと呼ばれる画像情報を利用した高精度の放射線治療はトモセラピーの大きな特徴であり強度変調放射線治療の専用機たるゆえんのひとつといってもよいでしょう。小型のX線発生装置が円周上を回転して一次コリメーターでスライス状に調整したビームを基準にして、マルチリーフコリメーターというピアノの鍵盤を思わせる金属ブロックの複雑な動きにより強度変調された緻密な放射線治療ビームを51方向から投射して複雑な高精度治療を行っていきます。

 トモセラピーの対象は頭頸部がん、前立腺がんの強度変調放射線治療を中心に行っています。また頭蓋内や頭頸部領域の転移に対して定位放射線治療(ピンポイント照射)も行っています。2008/4より頭頸部癌、前立腺癌の強度変調放射線治療については保険での治療が可能になりました。その他の疾患については現行では先進医療の申請が必要になり現在申請手続き中です。治療が可能であるかは担当医の診察によりご確認下さい。

(右図) 治療計画用のCT画像(白黒)と治療開始前に撮影したCT画像(黄色)を重ね合わせて輪郭や骨を目安に正確な位置あわせを治療毎行います
 
A 頭頸部がん

 上咽頭がん、中咽頭がん、鼻腔・副鼻腔がんを主な対象としています。これらの疾患は通常の放射線治療では視神経・視交叉、脳幹、脊髄、唾液腺(耳下腺)、下顎骨といった正常組織の放射線量の制限により治療が病変に十分に当てられない(治療効果が劣る)あるいは重度のダメージが残る(副作用が強い)という限界がありました。強度変調放射線治療を用いることで病気の部分に正確に十分量の放射線投与ができると同時に、正常組織の放射線を極めて低く抑えることで非常に安全性の高い治療が可能になります。特に治療後の唾液分泌機能のダメージを大幅に減少させることは強度変調放射線治療の最大の利点です。これまでがんが治癒した後に患者さんを苦悩させていた重度の口の渇きを大幅に改善させることが可能になりました。
 頭頸部がんの強度変調放射線治療は治療計画がもっとも難易であり、治療方法も複雑であるため多数の治療はスタッフの大きな負担になると考えられています。当院では2006/6より治療を開始して2009/3時点で約160例の治療を行っています。これは当院が頭頸部がん治療の臨床実績が豊富であるという特徴も理由のひとつでありますがトモセラピーの治療装置の性能の高さを裏付けるデータであると考えられます。
 またトモセラピーで治療毎に撮影されるCT画像を用いて経過中のがんの縮小や体重減少による線量分布の変化の確認修正を適切に行っていくことができるのはトモセラピーの大きな利点です。このように治療経過に適合して放射線治療を修正していく治療をadaptive radiotherapyと呼んでいますが強度変調放射線治療でこのadaptive radiotherapyをもっとも実用的に行えるのはトモセラピーであると確信しています。
 当院の50名程度の経過観察中の患者さんでは唾液腺への放射線を減少させたことにより半年から1年経過した時点で唾液腺機能が明らかに改善されていることが確認されています。

(右図) 治療前に計画した時の体輪郭(実線)と経過中の患者さんの状態(内部の黄色の画像)に大きなずれが生じている。これは治療中の体重減少のためしばしば経験される。トモセラピーの治療ではこのような治療中の変化にあわせ放射線の分布を確認して適切な治療精度管理を行っている。

 上咽頭がんは放射線治療が第一選択の病気であり進行癌も多いのですが比較的頻度が少ないため治療経験の豊富な施設で精度の高い治療を行うのが望ましい病気であると考えています。当院ではこれまで化学療法との併用により極めて高い治療成績を報告してまいりましたがトモセラピーの併用により治療成績の改善と副作用の軽減に大きく貢献できることが期待されます。 

(左図) 上咽頭癌の治療例
脊髄神経を取り巻くようにがんが拡がっていましたが(下左図 赤矢印)病気の形に合わせた正確な放射線治療を行いました。赤い部分ががんをなおすための放射線が十分当たる部分で青い部分は放射線が30%程度あたる部分(上図)。脊髄(白矢印)、耳下腺(ピンク矢印)は青い表示より更に少ない放射線量に抑えられ、放射線のダメージが回避できています。治療後MRIでがんの部分は完全に消失していました(下右図 黄矢印)。

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B 前立腺がん

 高齢化やPSA検診の浸透により前立腺癌の罹患率が上昇しており放射線治療を受ける患者さんが急増しています。強度変調放射線治療は前立腺の周囲の膀胱や直腸のダメージを最小化するため副作用を増やすことなく十分な放射線を前立腺がんの病変に投与することが可能になります。当院では限局型の前立腺癌のstage Cの患者さん、Gleason scoreの高値のstage Bの患者さんを主に対象としています。治療前にホルモン療法でPSAの数値をコントロールしてから強度変調放射線治療を行っており泌尿器科との共同診療で行っています。当院での治療を希望される場合にはまず当院泌尿器科に受診され適切な時期にトモセラピーでの放射線治療の予約をしていただくことになります。
 膀胱や直腸の形状により前立腺は体内で移動しますので同じ患者さんでも日々その位置が変わります。強度変調放射線治療は緻密な放射線の分布を作成して投与するため緻密な位置照合を行って初めて「正しく治療が行えた」といえます。位置照合の方法には前立腺に刺入した体内マーカーのX線装置での確認、治療装置での確認画像を用いた画像からの骨輪郭での照合、超音波による前立腺の位置確認などの方法がありますが、この方法では腸内のガスや尿の量による前立腺の体内での移動を正しく評価することは難しいといえます。



(左図) 直腸内のガス(矢印)により放射線をあてる標的の位置(青点線)がずれてしまっているため、処置をおこないガスを排出後に適切な位置関係を確認して治療を行った(右図)

 トモセラピーは治療装置で三次元CT画像を撮影して前立腺の位置だけでなく、膀胱・直腸との位置関係を毎回確認しますので極めて高いレベルでの「正確な位置合わせ」を行っています。このような「治療毎の正確な位置合わせ」はトモセラピーによる治療の最大の利点であると考えています。2008/7に調査した時点81名程度の患者さんの経過では内科的な治療を必要とする中等度以上の直腸出血を起こしている患者さんは一人も観察されておらず、従来の治療より安全性が高いという印象を持っています。
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C 転移性脳腫瘍に対する定位照射

 定位照射とは一回に多くの放射線を集中してかける方法です。短期間で治療が終わり病気の部分に放射線が集中するためより有効で副作用の少ない治療が可能になります。当院ではトモセラピーを用いて転移性脳腫瘍の定位照射を行っています。トモセラピーによる脳の定位照射はガンマナイフで必要な局所麻酔薬を使った頭蓋骨へのピン固定は不要で、合成樹脂でできたマスクを作成して固定します。治療毎に撮影する装置に内蔵されている確認CTで1mm以下の誤差で正確に位置を合わせて治療を行います。当院では5-10回に分割した方法で治療を行っていますのでガンマナイフなどの治療の対象を外れたサイズの大きな腫瘍や、病気のできた位置により危険性が高いため定位照射が行いにくい患者さんでも治療が可能です。条件によっては定位照射に平行して同時に脳全体への照射を組み合わせて治療を行っています。治療効果はガンマナイフによる治療と同等と考えられます。定位照射はライナックの定位照射と同じ保険負担での治療が可能です。



(左図) 定位照射としての病変部だけの治療 黄色の中が強く放射線があたる
(右図) 定位照射と同時に全脳照射も治療 黄色の中に50Gyの放射線があたり緑の範囲は全体に30Gyの放射線があたる
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D 転移性脊椎腫瘍

 がんの進行にともない全身の骨の転移が患者さんの治療の大きな問題になってきます。がんの骨転移は強い痛みを伴いますので放射線治療が有効で80-90%には痛みを緩和する効果が期待できます。しかしながら骨に転移したがんは時に骨折による変形や腫瘍による圧迫から機能障害を起こすことがあります。とくに脊椎というからだの中心の部分は脊髄の近くにあるのでこれらの変化により麻痺や痺れなどの神経症状を起こしますが、通常の放射線治療では周囲の組織(脊髄神経)の放射線の限度量が制限になって骨に転移したがんを小さくするだけの十分な放射線をかける事は困難でした。
 当院ではこのような麻痺や神経の圧迫のリスクが高いと考えられる脊椎の骨転移に対して「打ち抜き原体照射法」という治療法を応用してより多くの線量を加える試みを行い実績を上げてきましたが、治療期間が長いこと(約4週間)や体の表面のマークを規準に位置合わせをするため正確に放射線を当てる精度を十分に保てないという欠点がありました。
 トモセラピーによる強度変調放射線治療は治療時のCT画像による正確な位置合わせが可能で、より放射線の集中度の高い治療がおこなえます。したがってトモセラピーを用いることで周囲臓器の線量を十分減らし、病変に短期間(1-2週程度)に大線量を投与することができるため(ピンポイント治療)治療効果が期待できます。
 現在トモセラピーでの治療対象は頸椎(首の背骨)に限られますが(定位照射による保険診療)、胸椎や腰椎に適用を拡大する予定です(先進医療加算が必要になります)。



トモセラピーの線量分布図。左は横断像、右は矢状断像(縦わり)
元々白く映る骨が灰色に変化しているがんの部分を(画像中央)強い放射線が照射される範囲で(赤い部分)きれいに包み込んでいる。病変周囲の気管、食道、脊髄は安全と思われる少量の放射線(青い部分)しか照射されない。
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2.治療各論

 当院では多くの疾患にたいしての放射線治療を行っていますが当院で行われているユニークな治療を中心にいくつかを紹介します。

A 頭頸部がん

 頭頸部がんとはのど(咽頭・喉頭)、舌、口腔、鼻腔、副鼻腔などにできるがんの総称です。このうち放射線治療の対象になるのは扁平上皮癌というタイプの組織の病気が中心になります。頭頸部がんは病気のできる部位が発声、嚥下(水や食べ物を飲み込むこと)、呼吸機能などの重要な機能を担当する臓器であることに加え、顔やその近くにできる病気ですので病気や治療により美容的な問題が生じます。放射線治療は臓器機能を温存し、形態を維持して治療ができますので患者さんへの肉体的・精神的な負担が少ない治療を行うことができるという大きな特徴があります。
 病気のできる部位により放射線の効き目に違いがあることや、進行したがんで見つかることも多く化学療法を加えた治療で有効性を高くしたり、手術との併用療法でより確実性をましたりすることも時に必要です。当院では頭頸部外科との緊密な連携を行い病気の状態に合わせて適切な治療を行うようにチーム医療を積極的に行っています。
 また当科では通常の放射線治療では十分効果が期待しにくい口腔癌に小線源治療という治療法を併用したり、動注療法により薬剤を病気の部分に集中的に投与する方法をとることで高い治療効果を得ることができ多くの研究報告をしています。更に近年トモセラピーによる強度変調放射線治療も可能になり頭頸部癌に関しては非常に多彩な治療選択が可能であり頭頸部癌の治療に関しては本邦でもトップレベルにあると自負しています。

1)動注化学療法
 動注化学療法とは局所麻酔の小手術によって耳の前の血管からカテーテルという細い管を病巣部近くに挿入し,抗がん剤を投与する治療のことです。抗がん剤は病巣部に選択的に投与されるため全身投与に比べてより高い効果が得られます。また中和剤を使うため抗がん剤の全身の副作用が少なくすむ利点があります。そのため通常の化学療法の適応にならない患者さんで治療が行える場合もあります。進行した舌がんや上顎洞がんが主な対象となります。放射線治療期間の6-7週の間に週1回の動注化学療法を併用して治療を行います。治療には2ヶ月ほどの入院管理が必要になります。
 



77歳進行舌癌 治療前(左) 治療後(右) 舌の腫瘍が消失している。

2)舌癌小線源治療
 小線源治療はアイソトープ(放射線が出る金属)を舌に直接刺し込むことによって放射線を舌の病変部分に集中させて治療する方法で、当院では永久刺入タイプのゴールドグレインと一次留置型のセシウム針という2種類の線源を病状により使い分けています。治療後も舌の形はそのまま残り発音や食事など機能障害は手術に比べて少ないと考えられます。3-4cm程度までの大きさの病気が対象で抗がん剤や外部照射を組み合わせて行うこともあります。一定の治療期間の間は一人で管理区域の個室病室にて過ごしていただきますので、治療の適応には一定の制限が必要になります。



ゴールドグレインによる治療 (左) セシウム針による治療(右)
ゴールドグレインは永久留置、セシウム針は一週間ほどで抜去される。
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B 子宮頸がん

 子宮がんには大きく分けて子宮頸がんと子宮体がんがあります。子宮頚がんの多くは扁平上皮癌というタイプの癌細胞からなるものが大半で、これは放射線治療に良く反応するので放射線治療のよい対象となります。子宮頚がん(扁平上皮癌)は古くから外部照射と腔内照射(子宮内部から小線源という放射線物質を用い放射線をあてる治療法)の組み合わせから治療され放射線で病気をなおすことが得意な病気の代表的なものです。
 早期がんでは手術と治療成績に差が無いと考えられています。放射線治療による閉経や10-20年後に予想される治療後の副作用のバランスを考え(副作用は数%程度と考えられていますが予後のよい病気の治療法ではより安全性の高い治療方法を選ぶ必要があるという理由からです。)、若年の患者さんは手術、比較的高齢の患者さんは放射線治療が選択されるのが一般的です。
 一方手術では治すことの困難な進行癌は他に転移がなければおよそ半数程度は放射線で治癒することができると考えられていますが、最近では化学療法の併用により予後不良の進行癌の治療成績もかなり改善してきています。
 外部照射については、当院では二軸原体照射法というユニークな治療法を数十年以上行っています。半周回転で病気の部分をねらって形を変えながら治療するビームを2つ組み合わせ、これらを適切に調節することで放射線量を減らしたい膀胱、直腸、小腸を避けながらがんやリンパ節に十分な線量を照射する手法で、副作用の低減に寄与しています。とくに化学療法を併用した場合の治療のダメージ増加を可能な限り少なくしたり、手術後の放射線治療を加える場合の副作用を減らしたりという点で有望であると考えています。
 現在進行した子宮頚癌には化学放射線療法が有効であるという認識は一般的ですが、当院では10年以上前から治療が難しい進行がんに対して当科入院で化学放射線療法を行い優れた治療効果を経験し、国内外での報告を数多く行っています。最近の当科の化学放射線療法による治療成績ではIII期中心の進行癌中心に5年生存率約8割の治療成績を報告しています。
 このように当院ではいろいろな治療の選択肢が可能なので患者さんの体力、年齢、希望や病気の状況を総合的に判断して放射線治療医、婦人科医と話し合った上で治療方針を決定するようにしています。



二軸原体照射の線量分布図。緑色の線の内部には放射線が90%以上投与できている。小腸、膀胱、直腸などの組織への放射線線量を落として治療を行っている。子宮のがんとリンパ節の部分に放射線をしっかりとあてながら正常組織には放射線を当てないような放射線の分布が作られている。




腔内照射の模式図。子宮の中まで線源挿入用のごく細い筒(アプリケータ)を挿入し、その中に小線源を挿入し、がんの内部から集中的に病気を狙って放射線をかけることができる。




実際の症例のMRIの画像。左図が治療前、赤丸内の灰色の部位が癌であるが、治療後である右図では消失していることがわかる。
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C 前立腺がん

 近年前立腺がんと診断される方が増えています。採血でPSA(前立腺特異性抗原)を測定することにより発見率が上がったこと大きく影響していると考えられています。
 前立腺がんは放射線感受性が低いので多くの放射線をあてないとがんを抑えることが困難ですが膀胱、直腸には安全に放射線をかけられる限度があるため従来の方法では必要量の放射線を十分に投与することは困難でした。放射線治療装置の進歩や治療技術の向上により、放射線治療は近年有用な治療法として脚光を浴びています。
 放射線治療にも色々な種類があり、一般的には手術も適用可能な比較的早期の病変に対しては小線源治療が、比較的進行している場合は体外から放射線を病巣めがけて照射する外部照射が適用されます。
 小線源治療には低線量率と高線量率の二種類がありますが、当院では2006年8月から低線量率組織内照射装置を導入し治療を行っています。低線量率組織内照射法は、I-125(放射性ヨウ素)を密封した太さ約1mm、長さ約5mmほどの小線源を数十本前立腺内に針を使用して埋め込み、前立腺の内部から放射線を照射する治療法です。当院では、まず一泊入院で前立腺の大きさや形態などを検査し、必要な線源の量や適切な線源配置を割り出します。この結果に従って線源を用意し、実際の治療の時は3泊4日の入院で線源留置を行います。線源留置後は1年間はある程度の制約がありますが、ほとんど普通の生活が可能です。この方法は治療期間が短く、他の治療法に比べて副作用が少ないという利点があります。副作用としては排尿困難や残尿感、頻尿などがあります。
 外部照射は多くはもう少し進んだがんが対象になります。当院では2006年6月より大部分の前立腺癌の放射線治療を専用装置トモセラピーを用いた強度変調放射線治療(IMRT)で治療しています。毎回同じ装置で寝台から移動することなくCTの撮影をし、前立腺や周囲臓器の位置や様子を確認してから治療を行えることが特徴で、この高精度治療専用機により治療成績と安全性の向上が期待されています。
前立腺癌には手術や内分泌療法を含め多くの治療法がありますが、病気の状況や体の状態により最適な治療法は異なります。当院では前立腺癌の患者さんはまず泌尿器科を受診して頂き、必要な検査を行った上で最適な治療法を検討するシステムを取っています。



低線量率組織内照射の実例。前立腺の辺縁部に小線源を留置して内部から照射する。画像中央付近の白く写っているたくさんの粒状のものが小線源。
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D その他

 食道癌、肺癌、乳癌、悪性リンパ腫の多数の症例で放射線治療を行っており、これらの治療件数も全国有数の実績を示しています。各科とのカンファレンスで治療方針を決定していきながら「標準的ながん治療」の理念の上に質の高い臨床を患者さんに提供することを常に心がけております。
 また集学的治療において放射線治療は非常に重要な役割を担っているのでJCOG,WJOG,JGOG,JROSGなどの臨床試験グループをはじめ厚生労働省、文部科学省の班研究などによる臨床研究にも積極的に参加協力しており、本邦でのエビデンス創出に可能な限り貢献しています。
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平成21年4月改訂