子宮頚がん

I. 子宮頚がんについて

はじめに

 子宮頚がんは子宮頚部に発生するがんで、女性性器悪性腫瘍の中で最も頻度が高いがんです。標準治療が「手術か放射線治療またはこれらの併用」と確立されおり、また近年は子宮がん検診により早期診断が可能であるため、比較的治療しやすく予後のよいがんと言えます。
 後に子宮頚がんの主な問題点として、
 1)子宮頚部異型上皮の経過観察や治療の方針の確立、
 2)子宮頚部腺がんの増加、の2点を取り上げ、
  「II. 子宮頚がん治療の問題点」で詳説します。
 子宮がん検診異常と言われた方は、まず「II. 子宮頚がんの問題点 1. 子宮頚部異型上皮について」をご覧下さい。

初期症状

1)子宮がん検診異常  子宮がんの検診でがん検診の「精密検査が必要」と言われた場合
2)不正性器出血   性交後や生理でもないのにおりものに血液が混じる場合  

診断の為の検査

1)子宮頚部細胞診検査
 子宮がん検診で行われている検査です。子宮頚部表面全体を擦りその部分の細胞を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を検査します。結果がでるまで1週間位かかります。
2)子宮頚部組織検査
 子宮頚部の一部を採取し顕微鏡で検査します。組織検査では子宮頚部異型上皮の悪性度(軽度・中等度・高度)や、がんの進行度(上皮内がんや微小浸潤がん・浸潤がん)を評価します。しかし細胞診とは異なり子宮頚部の一部しか採取できませんので、細胞診の結果と組織検査と異なる場合もあり、最終的には細胞診と組織検査の結果から総合的に診断します。結果がでるまで1週間位はかかります。
3)子宮頚部円錐切除
 子宮頚部全体を切除して検査します。組織検査のみでは診断が不十分な場合、がんの場合でも上皮内がん・微小浸潤がん・浸潤がんの判別がつかない場合、に検査目的で行います。また子宮頚部異型上皮や早期がんの場合には診断と治療を兼ねて行います。結果がでるまで2週間位はかかります。
4)画像診断
 肉眼的に明らかながんがある場合や診察・検査でがんがある可能性が高い場合に、CT・MRI等の画像診断でがんがどのくらい進行しているか調べます。1cm以下の小さな病変はわからない場合があります。検査をしてから1週間以内には結果がわかります。

治療

 子宮頚がんの治療では、手術か放射線治療が選択または併用され、これが世界的な標準治療となっています。化学療法は、がんが進行していて手術や放射線でのみでは十分な効果が期待できない場合に放射線治療と併用されたり、放射線治療があまり効果のない種類の子宮頚がん(腺がん)に対して単独で使用されたりします。
1) 手術
 手術によりがんを摘出します。がんの進行期によって子宮頚部円錐切除か、子宮全摘か、リンパ節も切除するか違います。II期以降の進行がんや高齢である場合、持病等がある場合には手術より放射線治療を勧められる場合もあります。
2) 放射線治療
 放射線をがんに照射して治療します。子宮頚がんの中でも扁平上皮がんは放射線に対して感受性が高く、治療成績は手術と同等です。しかしがんだけでなく腸や膀胱等にも放射線があたってしまうため、後遺症が残ることがあります。
3) 化学療法
 遠隔転移を伴う等がんが進行していて手術や放射線治療だけでは対応しきれない場合や、腫瘍が大きく放射線治療だけでは十分な効果が期待できない場合に使用します。点滴や内服、動脈から直接がんに注射するなどの投与方法が用いられます。また使用する抗がん剤もその状況に応じて選択されます。

治療成績

当院での1996-2005年の間の子宮頚がんの治療成績を示します。

1996-2005年の間の子宮頚がんの治療成績

II. 子宮頚がんの問題点

子宮頚部異型上皮について

1)子宮がん検診について
 がんの早期診断の目的で近年様々ながん検診が行われています。子宮がん検診は子宮頚がんの早期診断の目的で広く行われており、最も予後の改善に寄与したがん検診の一つです。子宮頚がんの検診には、子宮頚がんの診断にも行われる子宮頚部細胞診が一般的ですが、その検診としての有用性は明らかです。
 当院治療症例でも上皮内がん(0期)は1970-1980年代には20%前後でしたが、1990年代には約40%で微小浸潤がんを含めると約50%は早期診断できたことになります。当院は比較的浸潤がん進行がんや浸潤がんが多い施設であることを考えれば考えると、現在は子宮頚がん患者さんの半数以上が上皮内がんで診断されていると考えられます。
2)診断
 子宮頚部細胞診の結果は以下の図のように判定され、クラスIIIaの疑陽性以上の方が子宮がん検診の精密検査の対象になります。細胞診結果がクラスIV-Vで子宮頚がんの可能性が高いと言われた方は「I. 子宮頚がんについて」をご覧下さい。
 子宮頚部異型上皮はがんではないけれども正常でもない状態です。がんの前段階・前がん病変とされていますが、言い換えれば正常の人よりは子宮頚がんになる可能性が高い状況です。がんでないので浸潤・転移する性質はなく、生命を脅かすことはありません。下に当院の統計を示しますが、子宮頚部異型上皮は確実にがんになる訳ではなく、自然に消失する可能性が軽度異型上皮では約80%、一番がんに近い高度異型上皮でも約10%あります。

クラスIIIa クラスIIIb クラスIIIb
子宮頚部異型上皮の予後
(愛知県がんセンター統計)
軽度異型上皮 中等度異型上皮 高度異型上皮
5年 10年 5年 10年 5年 10年
自然に消失する可能性 67.80% 79.40% 41.30% 49.30% 12.30% 19.10%
子宮頚がんに移行する可能性 7.70% 9.80% 33.80% 39.90% 63.20% 73.10%

3)方針
 以上の様に、子宮頚部異型上皮は必ずしも子宮頚がんになる訳ではありません。当院では原則として経過観察をお勧めしておりますが、治療を希望される患者さんや、将来妊娠・出産を希望される患者さん等には、治療をお勧めする場合があります。最適な治療は手術(子宮頚部円錐切除・子宮全摘)ですが、患者さんの御希望を含めて相談して決めています。
 妊娠中に異型上皮が見つかった、また腺異型上皮等特殊な異型上皮がみつかったなどの場合には、受診して相談いただけましたら幸いです。

子宮頚部腺がんについて

 最近子宮頚がんの子宮頚がんの傾向として、患者さんの年齢の若年化と子宮頚部腺がんの増加が挙げられます。当院治療症例でも子宮頚部腺がんは増加してきており、1996-2000年の間で子宮頚がん全体の約15%、浸潤がんの約20%を占め、最近はさらに増加傾向にあります。一般的な子宮頚がん(扁平上皮がん)との主な違いは、1)子宮がん検診で早期発見につながりにくい、2)卵巣転移の頻度が高いなど蔓延形式が異なる、3)放射線治療の効果が小さい、の3点です。子宮頚部腺がんは扁平上皮がんに比べ治療しにくいがんですが、進行期I期までに治療すれば同等の予後が期待できます。

1) 子宮頚部腺がんは子宮がん検診で早期発見しにくい子宮がん検診の普及により、最近では子宮頚がんの約50%が早期診断されているます。しかし、子宮頚部腺がんは早期診断されることが少なく、最近でも上皮内腺がんで診断されるのは約3%、微小浸潤がんを含めても約15%で、大半は浸潤がんに進行してから診断されています。またII期以降の進行がんの比率は扁平上皮がんと同等であることから、子宮頚部細胞診による子宮がん検診は、子宮頚部腺がんの早期診断につながりにくいと考えられています。

2) 子宮頚部腺がんは蔓延形式が異なる子宮頚部扁平上皮がんは一般にリンパ行性や血行性に蔓延しますが、子宮頚部腺がんはこれらに加え播種性に腹腔内に蔓延します。特に卵巣転移は扁平上皮がんに比べて高頻度で、子宮頚部腺がん全体で約6%、直径3cm以上の腫瘍で約10%、直径5cm以上で約30%に転移を認めます。

3) 子宮頚部腺がんは放射線治療の効果が小さい子宮頚部扁平上皮がんの標準治療は手術か放射線治療またはこれらの併用で、手術せずに放射線治療だけでも手術と同等の治療効果を期待できます。しかし子宮頚部腺がんでは扁平上皮がんほど放射線治療が奏効しないため、進行期に関わらず手術をできるだけ選択しています。このため子宮頚部腺がんは扁平上皮がんに比べて予後が悪いと考えられていますが、リンパ節転移等の子宮外への進展がなければ、治療成績は扁平上皮がんと同等で、十分な予後が期待できます。

 以上子宮頚部腺がんの主な特徴を述べましたが、詳細につきましては来院の折婦人医にお尋ね頂けましたら幸いです。

III. 子宮頚がんと言われた患者さんへ

はじめに

 当院には他の病院で「子宮頚がんと言われた」とか「子宮がん検診で異常と言われた」という患者さんがよく相談にみえます。最近は目で見えないごく初期のがんの患者さんが多く、「子宮頚がんと言われた」とか「子宮がん検診で異常と言われた」だけでは十分な情報がなく、やむをえず前の病院でやった検査を繰り返し、結果が出るまでの期間お待ちいただくしかない場合もあります。がんの告知は治療上必要とはいえ、告知された患者さんの気持ちを考えれば大変不安になりますし、告知の内容も十分理解できないことも多いかと思います。ここでは子宮頚がんと告知された時、知り合いの医師や他の病院で相談するにあたり、最低限知っておいてほしい内容について述べます。

医師の話を聞く要点

1) 子宮頚がんの進行期
 どんながんでもそうですが、がんがどれだけ進行しているかは、その後の治療方針等に大きく影響します。またがんなのか、まだがんになっていない子宮頚部異型上皮の状態なのか、子宮頚部異型上皮の中でも正常に近いものなのか、がんに近いものなのかは、その後の方針等に影響します。最低限診断された病名と、がんであるのなら進行期を確認して頂くのがよいと思います。
2) がんのタイプ(扁平上皮がんか腺がんか)
 先に述べましたとおり、子宮頚がんは扁平上皮がんと腺がんの2種類があり、扁平上皮がんは子宮頚がんの約80%で放射線治療がよく効きますが、腺がんは約20%で放射線治療はあまり効果が期待できません。どちらのタイプかはその後の治療方針等に影響しますので、できれば確認して頂くのがよいと思います。
3) 治療方針
 子宮頚がんの標準治療は手術か放射線治療、またはこれらの併用で、進行期によって手術か放射線かに分かれるため、治療方針によって病状や進行期が推定できる場合があります。病状や進行期とともに治療方針も確認して頂くのがよいと思います。

当院に受診される場合

 当院で治療を希望される場合には前の医師の紹介状をもらってきて頂きますと大変助かります。また治療の希望はないけど相談だけしたい場合にも、以上の事柄について十分説明をうけた上で来院して頂きますと、私達もより適確なお話しができると思います。

平成21年12月改訂

このページのトップへ