子宮頸がん

I. 子宮頸がんについて

II. 子宮頸がんの問題点

III. 「子宮頸がん」、「がん検診で要精密検査」と言われた患者さんへ

I. 子宮頸がんについて

はじめに

 子宮頸がんは子宮頸部に発生するがんで、女性性器悪性腫瘍の中で最も頻度が高いがんです。子宮の癌には子宮頸がんと子宮体がんがありますが、2011年の部位別がん罹患数は、子宮頸がん1万1378人、子宮体がん1万4763人に達しています。一方、死亡数(2013年)では、子宮頸がんが2656人、子宮体がんが2107人と、逆転し増加傾向にあります。子宮頸がんの多くの原因がヒトパピローマウイルス(HPV)という性交渉で感染するウイルスが原因と言われております。性行為の経験のある方は、どなたでも頸がんのリスクはあります。また、HPVとは関係のないがんもあります。
 標準治療が「手術か放射線治療またはこれらの併用」と確立されおり、また近年は子宮頸がん検診により早期診断が可能であるため、比較的治療しやすく予後のよいがんと言えます。
 後に子宮頸がんの主な問題点として、
 1)子宮頸部異型上皮の経過観察や治療の方針の確立、
 2)子宮頸部腺がんの増加、の2点を取り上げ、
  「II. 子宮頸がん治療の問題点」で詳説します。
 子宮頸がん検診異常と言われた方は、まず「II. 子宮頸がんの問題点 1. 子宮頸部異型上皮について」をご覧下さい。

初期症状

1)子宮頸がん検診異常
 子宮頸がんの検診でがん検診の「精密検査が必要」と言われた場合
2)不正性器出血   
 性交後や生理でもないのにおりものに血液が混じる場合
 異常な帯下(おりもの)が続く場合、尿漏れと思われるようなおりもの  

診断の為の検査

1)子宮頸部細胞診検査

 子宮頸がん検診で行われている検査です。子宮頸部表面全体を擦りその部分の細胞を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を検査します。結果がでるまで1週間位かかります。

2)コルポスコピー

 「細胞診」で陽性と判定された人が次に受ける検査は、コルポスコピー(膣拡大鏡診)という検査です。これは、コルポスコープと呼ばれる膣拡大鏡を挿入して、子宮頸部を拡大して観察する検査です。肉眼では分からない病変部をしっかり見ることができます。コルポスコピーは実施できる施設が限られていますが、当科では、受診当日にすぐ施行できますので受診時には担当医に詳細についてお伺いください。

3)子宮頸部組織検査

 子宮頸部の一部を採取し顕微鏡で検査します。この際にコルポスコピー検査を用いて病巣を確認した上で生検を行います。組織検査では子宮頸部異型上皮の悪性度(軽度・中等度・高度)や、がんの進行度(上皮内がんや微小浸潤がん・浸潤がん)を評価します。しかし細胞診とは異なり子宮頸部の一部しか採取できませんので、細胞診の結果と組織検査と異なる場合もあり、最終的には細胞診と組織検査の結果から総合的に診断します。結果がでるまで1週間位はかかります。

4)子宮頸部円錐切除

 子宮頸部全体を切除して検査します。組織検査のみでは診断が不十分な場合、がんの場合でも上皮内がん・微小浸潤がん・浸潤がんの判別がつかない場合、に検査目的で行います。また子宮頸部異型上皮や早期がんの場合には診断と治療を兼ねて行います。結果がでるまで2週間位はかかります。当院では、一泊で静脈麻酔下で行っています。

5)画像診断

 肉眼的に明らかながんがある場合や診察・検査でがんがある可能性が高い場合に、CT・MRI等の画像診断でがんがどのくらい進行しているか調べます。1cm以下の小さな病変はわからない場合があります。検査をしてから1週間以内には結果がわかります。

6)ヒトパピローマウイルス(HPV)の検査

 現在、当院でも、保険適応で、@検診の結果でASC-USの場合のハイリスクHPV検査と、A組織検査で軽度異型上皮(CIN1),中等度異型上皮(CIN2)と診断された場合のHPV型判定が行えます。それ以外の希望者は、自費での検査となりますが、当院では行っておりません。その理由としては、HPV感染は、8〜9割が自然消失すること、および高度異型上皮以外は治療の必要があり、HPVの検査結果は治療方針に影響を与えないからです。

治療

 子宮頸がんの治療では、手術か放射線治療が選択または併用され、これが世界的な標準治療となっています。化学療法は、がんが進行していて手術や放射線でのみでは十分な効果が期待できない場合に放射線治療と併用されたり、放射線治療があまり効果のない種類の子宮頸がん(腺がん)に対して単独で使用されたりします。

1) 手術

 手術によりがんを摘出します。がんの進行期によって子宮頸部円錐切除か、子宮全摘か、リンパ節も切除するか違います。II期以降の進行がんや高齢である場合、持病等がある場合には手術より放射線治療を勧められる場合もあります。

特殊な手術治療
〜将来的に妊娠をご希望される方へ〜

 子宮頸がんの手術治療が必要である場合においても、治療後に妊娠を望まれる方について、がんの種類、進行の程度などの条件が整う場合、妊孕性を温存した治療を受けられる可能性があります。がんの進行期によっては子宮頸部円錐切除術のみの治療があります。もう少し進行した場合の手術療法も注目されます。子宮頸がんに対する代表的な手術療法は広汎子宮全摘術ですが、子宮頸部と腟を広汎子宮全摘出術と同様に十分に切除し、子宮体部を残しておくもので、広汎性子宮頸部摘出術(トラケレクトミー)と呼ばれる手術の方法があります。わが国ではいまだ限られた施設のみで行われており、がんの広がり方によっては希望がかなわないこともありますが、将来的に子供が欲しいと思われる方は当科受診時に一度医師にご相談ください。

〜ロボット手術をご希望される方へ〜

 日本で行われている子宮頸がんに対する代表的な手術療法は広汎子宮全摘術です。これら開腹手術は比較的安全に施行できる方法として国内外を問わず広く行われていますが、傷の大きさが約15cm以上と大きいため術後の痛みが強いこと、手術中の出血量が比較的多いこと、入院期間や社会復帰までの期間が長いこと等の問題点があげられます。これに対して腹部に径 1cm ほどの穴を 3-4 箇所開けて、この穴から長い棒状の手術機器を入れて操作をする手術で、傷が小さく術後の痛みも少ないという利点がある、手術用ロボットを使用した「ロボット手術」が急速に普及しています。泌尿器科をはじめ、一般外科、心臓外科、形成外科などの領域で積極的にロボット手術が行われており、婦人科領域においても、子宮頸がんに対して先進医療が適応されました。手術成績では、これまでの報告では手術用ロボットを使用することで、出血量が減少し手術操作の確実性が明らかに改善したとされています。また、小さな傷からロボットの手を体の中に入れて手術を行うので、術後の痛みが軽く、全身状態の回復が早いことが報告されています。特に骨盤の深い部分では視野や細かい操作性が腹腔鏡に比べて向上したロボット手術の優位性が発揮され、根治性や侵襲性にメリットがあると考えます。当科では、このような利点のあるロボット手術を子宮頸がんの患者さんに提供していきたいと考えております。ロボット手術をご希望される方は当科受診時に医師にその適応などについて遠慮なくお尋ねください。

2) 放射線治療

 放射線をがんに照射して治療します。子宮頸がんの中でも扁平上皮がんは放射線に対して感受性が高く、治療成績は手術とほぼ同等です。しかしがんだけでなく腸や膀胱等にも放射線があたってしまうため、後遺症が残ることがあります。  

3) 化学療法

 遠隔転移を伴う等がんが進行していて手術や放射線治療だけでは対応しきれない場合や、腫瘍が大きく放射線治療だけでは十分な効果が期待できない場合に使用します。点滴や内服、動脈から直接がんに注射するなどの投与方法が用いられます。また使用する抗がん剤もその状況に応じて選択されます。
【分子標的薬の使用】
 抗がん剤治療が中心となる。進行・再発子宮頸がんに対して、従来の毒性をもってがん細胞を殺す「抗がん剤」ではなく、「分子標的薬」に分類されるベバシズマブが新たに保険適用になり、治療成績の向上が期待されています。ベバシズマブはがん細胞への栄養補給を遮断する作用によりがんを抑制します。子宮頸がんの抗がん剤治療では、複数の抗がん剤を併用して使うのが標準的ですが、今後は、条件によりベバシズマブを併用できる選択肢が増えました。ベバシズマブの使用、適応については当科受診時に医師に確認をお願いします。

治療成績

当院での1996-2005年の間の子宮頸がんの治療成績を示します。

1996-2005年の間の子宮頸がんの治療成績

II. 子宮頸がんの問題点

子宮頸部異型上皮について

1)子宮頸がん検診について

 がんの早期診断の目的で近年様々ながん検診が行われています。子宮頸がん検診は子宮頸がんの早期診断の目的で広く行われており、最も予後の改善に寄与したがん検診の一つです。子宮頸がんの検診には、子宮頸がんの診断にも行われる子宮頸部細胞診が一般的ですが、その検診としての有用性は明らかです。
 当院治療症例でも上皮内がんは1970-1980年代には20%前後でしたが、1990年代には約40%で微小浸潤がんを含めると約50%は早期診断できたことになります。当院は比較的浸潤がん進行がんや浸潤がんが多い施設であることを考えれば考えると、現在は子宮頸がん患者さんの半数以上が上皮内がんで診断されていると考えられます。

2)診断

 2009年以降国内でも、細胞診の判定が世界標準に統一されベセスダシステムが採用されています。以前は、日母分類といわれ5段階で(I〜II,IIIA,IIIB,IV,V)判定されていましたが、現在は、簡単にいうと、NILM(陰性)、LSIL(軽度異型上皮を推定)、HSIL(中等度、高度異型上皮、上皮内がんを推定)、SCC(扁平上皮癌)と変更になっています。NILM(陰性)以外は、すべて子宮頸がん検診の精密検査の対象になります。子宮頸部細胞診の結果は、以前のデータですが、以下の図を参照ください。細胞診結果がで子宮頸がんの可能性が高いと言われた方は「I.子宮頸がんについて」をご覧下さい。
 子宮頸部異型上皮はがんではないけれども正常でもない状態です。がんの前段階・前がん病変とされていますが、言い換えれば正常の人よりは子宮頸がんになる可能性が高い状況です。がんでないので浸潤・転移する性質はなく、生命を脅かすことはありません。下に当院の統計を示しますが、子宮頸部異型上皮は確実にがんになる訳ではなく、自然に消失する可能性が軽度異型上皮では約80%、一番がんに近い高度異型上皮でも約10%あります。

旧:クラスIIIa
LSIL
旧:クラスIII
HSIL
旧:クラスIIIb
HSIL
子宮頸部異型上皮の予後
(愛知県がんセンター統計)
軽度異型上皮 中等度異型上皮 高度異型上皮
5年 10年 5年 10年 5年 10年
自然に消失する可能性 67.80% 79.40% 41.30% 49.30% 12.30% 19.10%
子宮頸がんに移行する可能性 7.70% 9.80% 33.80% 39.90% 63.20% 73.10%

3)方針

 以上の様に、子宮頸部異型上皮は必ずしも子宮頸がんになる訳ではありません。当院では原則として経過観察をお勧めしておりますが、治療を希望される患者さんや、将来妊娠・出産を希望される患者さん等には、治療をお勧めする場合があります。最適な治療は手術(子宮頸部円錐切除・子宮全摘)ですが、患者さんの御希望を含めて相談して決めています。
 妊娠中に異型上皮が見つかった、また腺異型上皮等特殊な異型上皮がみつかったなどの場合には、受診して相談いただけましたら幸いです。

子宮頸部腺がんについて

 最近子宮頸がんの子宮頸がんの傾向として、患者さんの年齢の若年化と子宮頸部腺がんの増加が挙げられます。当院治療症例でも子宮頸部腺がんは増加してきており、1996-2000年の間で子宮頸がん全体の約15%、浸潤がんの約20%を占め、最近はさらに増加傾向にあります。一般的な子宮頸がん(扁平上皮がん)との主な違いは、1)子宮頸がん検診で早期発見につながりにくい、2)卵巣転移の頻度が高いなど蔓延形式が異なる、3)放射線治療の効果が小さい、の3点です。子宮頸部腺がんは扁平上皮がんに比べ治療しにくいがんですが、進行期I期までに治療すれば同等の予後が期待できます。

1)子宮頸部腺がんは子宮頸がん検診で早期発見しにくい子宮頸がん検診の普及により、最近では子宮頸がんの約50%が早期診断されているます。しかし、子宮頸部腺がんは早期診断されることが少なく、最近でも上皮内腺がんで診断されるのは約3%、微小浸潤がんを含めても約15%で、大半は浸潤がんに進行してから診断されています。またII期以降の進行がんの比率は扁平上皮がんと同等であることから、子宮頸部細胞診による子宮頸がん検診は、子宮頸部腺がんの早期診断につながりにくいと考えられています。

2)子宮頸部腺がんは蔓延形式が異なる子宮頸部扁平上皮がんは一般にリンパ行性や血行性に蔓延しますが、子宮頸部腺がんはこれらに加え播種性に腹腔内に蔓延します。特に卵巣転移は扁平上皮がんに比べて高頻度で、子宮頸部腺がん全体で約6%、直径3cm以上の腫瘍で約10%、直径5cm以上で約30%に転移を認めます。

3)子宮頸部腺がんは放射線治療の効果が小さい子宮頸部扁平上皮がんの標準治療は手術か放射線治療またはこれらの併用で、手術せずに放射線治療だけでも手術と同等の治療効果を期待できます。しかし子宮頸部腺がんでは扁平上皮がんほど放射線治療が奏効しないため、進行期に関わらず手術をできるだけ選択しています。このため子宮頸部腺がんは扁平上皮がんに比べて予後が悪いと考えられていますが、リンパ節転移等の子宮外への進展がなければ、治療成績は扁平上皮がんと同等で、十分な予後が期待できます。  

 以上子宮頸部腺がんの主な特徴を述べましたが、詳細につきましては来院の折婦人科医にお尋ね頂けましたら幸いです。

III. 「子宮頸がん」、「がん検診で要精密検査」と言われた患者さんへ

当院に受診される場合

 当院には他の病院で「子宮頸がんと言われた」とか「子宮頸がん検診で異常と言われた」という患者さんが、紹介状を持参されず、受診される場合もありますが、十分な情報がなく、やむをえず前の病院でやった検査を繰り返し、結果が出るまでの期間お待ちいただいた上でしか、診断・お話ができません。前医療機関からの、紹介状や結果、できる限り病理標本や細胞診標本をご持参ください。
 当院では、火曜、水曜の午後に、子宮頸がん検診の精密検査、二次検診を含めたコルポスコピー外来を行っております。かかりつけ医や検診の医療機関より予約がとることが可能ですので、検査を行った施設にご相談ください。検診結果や、紹介状をご持参されれば、当日お待ちいただければ診察を行いますが、予約の方が優先となりますので、4〜5時間お待ちいただくこともございます。ご了承ください。また、子宮頸がん検診で異常の(ASC-US,LSIL,HSIL,ASC-H)など、あきらかな癌以外の結果の方に二次検査を行う場合、検査をして、すぐ1〜2週間以内で受診されるより、すこし間隔を開けた3〜4週後で月経中を避けての受診をお勧めしております。

平成29年2月改訂

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