子宮体がん

I. 子宮体がんについて

はじめに

 子宮体がんは子宮体部に発生するがんで、子宮内膜に発生する子宮内膜癌と子宮筋に発生する子宮肉腫の大きく2つに分類されます。実際には95%以上は子宮内膜癌であるため、一般的に子宮体がんと言えば子宮内膜癌のことで、子宮肉腫である場合は別に説明されています。ここでは子宮内膜癌を子宮体癌とし、子宮肉腫については「II. 子宮体がん治療の問題点」で別に説明します。また、子宮頸がん検診とは異なる子宮体癌の検診の実際についても取り上げましたので御覧下さい。

初期症状

1)不正性器出血
閉経後や生理(月経)以外でおりものに血液が混じる場合
出血では無く、異常帯下(おりもの)が続く場合があります。
2)子宮癌検診異常
子宮頸がんの検診時で、再検査と言われた場合

診断に必要な検査

1)子宮内膜細胞診検査
 子宮内に器具(ブラシ)を挿入してその部の細胞を採取し、顕微鏡で検査して癌細胞の有無を調べます。結果がでるまで1週間位かかります。検査には痛みが伴います。
2)子宮内膜組織検査
 子宮内膜から組織を一部採取し顕微鏡で検査します。がんの診断は、細胞診だけでは確定診断できないので、正常な子宮内膜か、良性腫瘍(子宮内膜増殖症)か、子宮体癌か、鑑別するために最も重要な検査です。結果がでるまで1週間〜10日程かかります。
3)子宮内膜全面掻爬術
 子宮内膜を一部検査する子宮内膜組織検査では、確定ができない場合(癌か内膜増殖症など)に、この検査は子宮内膜の全面を掻爬し、組織を採取し顕微鏡で検査します。また、癌と鑑別を要するポリープなどは、子宮鏡は内視鏡で子宮内をみて病巣を確認するために用いることもあります。共に患者さんにかかる負担が大きい検査で、検査に要する時間も長くなるため、当院では一泊入院で麻酔下に行っております。結果がでるまで1週間〜10日程かかります。
4)画像診断
 診察・検査で癌がある可能性が高い場合に、超音波・CT・MRI等の画像診断で癌のサイズや広がり(リンパ節転移や肺転移の有無など)あるか調べます。MRI検査では、子宮筋層にどのくらい広がっているか(浸潤の深さ)ある程度わかります。1cm以下の小さな癌はわからない場合があります。検査をしてから1週間以内には結果が解ります。

治療

1)手術
 子宮体癌の手術は病変の治療的摘出と同時に腫瘍の広がり(進行期:ステージ)を診断する目的で行います。子宮全摘+附属器(卵巣・卵管)切除+骨盤(〜傍大動脈)リンパ節郭清+腹腔洗浄細胞診が標準的な手術です。骨盤内のリンパ節は子宮周辺のリンパ節で、癌の広がりを確認するために摘出します。腹腔内の癌細胞の有無を検査する細胞診も癌の広がりを確認するために行います。また肉眼的に見て癌の転移と思われる部分も出来る限り摘出します。これらの摘出したものを十分に検査し、最終的な腫瘍の広がりを診断し、手術後の追加治療を検討します。癌が明らかに広がっていて全部摘出できない場合や、子宮筋層に広がっていない初期の癌の場合には、手術を縮小して子宮と卵巣・卵管のみ摘出する場合もあります。遠隔転移を認める等、明らかに進行していると手術できない場合もあります。
 また手術のアプローチとして、当院においては、子宮体癌の術前Stage IA推定の類内膜癌分化度(グレード)1-2に対して、腹腔鏡下手術を行っています(2015年4月より保険適応となっています)。大きな子宮筋腫を伴う子宮体癌や、類内膜癌グレード3や類内膜癌以外の組織型、術前Stage IB以上の方には従来の開腹手術を行っています。
2)放射線治療
 手術の際に癌が子宮の外へ広がっていることが確認された場合や、癌がかなり進行しており手術では対応しきれない場合に、放射線で治療する場合もあります。癌だけでなく腸や膀胱等にも放射線があたってしまうため、後遺症が残ることがあります。
3)化学療法(抗がん剤)
 手術の際に癌が子宮の外へ広がっていることが確認された場合や、癌がかなり進行しており手術や放射線治療では対応しきれない場合に使用します。点滴したり、口から内服したり、動脈から直接癌に注射するなどの投与方法が用いられます。また使用する抗癌剤もその状況に応じて選択されます。
 具体的には標準治療としてAP療法(ドキソルビシン[アドリアマイシンとも呼ばれます]+シスプラチン)が選択肢として挙げられ、一般的にTC療法(パクリタキセル+カルボプラチン)も行われています。上記のように、副作用などを考慮して、患者さんに合わせて治療を選択していきます。
4)ホルモン療法
 子宮体癌は女性ホルモン(エストロゲン)に依存して大きくなる腫瘍なので、もう1つの女性ホルモン(プロゲステロン)を大量投与することで癌の成長をおさえます。残念ながら半分以上の患者さんには効果がないとされています。効果あるかないかについては、癌の分化度(癌がどれだけ悪い顔つきをしているか)やエストロゲン受容体の有無が指標となります。

治療成績

 当院での1996〜2005年の間の子宮体がんの治療成績を示します。

1996〜2005年の間の子宮体がんの治療成績

II. 子宮体がん治療の問題点

子宮体がん検診について

 以前から行われている子宮がん検診と言えば子宮頸がんに対する検診で、子宮頸部から細胞を採取して顕微鏡で検査する、子宮頸部細胞診のことです。(頸がんのページを参照)。この検診では、子宮体がんは容易には見つかりません。この混乱を回避するため、現在は「子宮頸がん検診」に統一されています。
 では子宮体癌に対する検診はないのでしょうか? 
 子宮内膜細胞診の欠点は、検査としての精度と患者さんにかける負担です。子宮内膜は子宮頸部に比べ広範囲であり、しかも採取方法が盲目的操作であるため、子宮内膜細胞診の精度は悪く、子宮体癌があっても見落とす場合があります。超音波検査等を併用することで、精度を改善しようという試みもありますが、なかなか期待通りにはいかないようです。また子宮内に器具を挿入するため、患者さん御本人には検査中〜後に痛みがあり、また、稀に腟から子宮内への細菌感染をおこし腹痛の原因になる危険性もあります。
 「I. 子宮体癌について、治療成績 」に当院での治療成績を示しました。他の悪性腫瘍と比較して頂けばよく解りますが、子宮体癌は全体の5年生存率が84.8%で比較的予後が良好な悪性腫瘍です。その最も大きな理由は、子宮体癌の約70%の患者さんが進行期I期で、約60%が進行期IA期からIB期の早期で診断されることです。解りやすく言えば不正性器出血等の症状があってから子宮体癌と診断されても、その時点では約60%が早期であり、きちんと治療すれば約80%は治癒する、ということです。しかし、子宮体癌は、type(タイプ)1(ホルモン依存性)とtype2(悪性度の高い)の2つに大別されます。検査や治療は、概ね同じですが、タイプ2は再発も多く、予後不良であるといわれています。また、乳がんの治療でホルモン剤を内服した既往のある方は、乳がんが完治したあとにも、ほかの方より子宮体がんのリスクが高いといわれております。
 この現状を考えると、子宮体癌の診断で最も大切なのは「初期症状である不正性器出血、異常なオリモノ(帯下)を放置しないこと」であると考えられます。当院ではこの様な現状をお話しした上で、症状がない方に対する子宮体癌検診は行っておりません。

子宮肉腫について

 子宮肉腫は子宮体がんの一種で、当院で1981〜2000年の間の子宮体癌治療症例全体の約4%と稀な悪性腫瘍ですが、1)予後が悪い、2)子宮筋腫との鑑別が難しい、ため、診断や治療に苦慮することがあります。以下、これらの子宮肉腫の特徴について述べます。
1)子宮肉腫は予後が悪い(再発が多い、生存率が低い)
 一般に子宮肉腫は予後が悪いと考えられています。当院症例で過去20年間に治療した子宮肉腫は21例ありますが、初期症例14例中6例が、進行症例では7例中5例が子宮肉腫のため亡くなられました。特に進行例で予後が悪いことを考えると、子宮筋腫の可能性が高くても、子宮肉腫の疑いがある場合には、安全性を考え手術をお勧めする場合が多いのです。
2)子宮肉腫は子宮筋腫との鑑別が難しい
 子宮筋腫は子宮筋に発生する一般的な良性腫瘍で、その頻度は女性全体の10%とも30%とも言われています。また、40歳以上の女性の4割にみられるという報告もあり、必ずしも治療が必要となるわけではありません。子宮肉腫は子宮筋腫と同様に子宮筋に発生するため、診察や超音波検査・画像診断では鑑別が難しい場合があります。悪性腫瘍は原則的に病理組織学的に診断するため、子宮内より悪性の組織が採取されたとか、画像診断で明らかな転移巣が認められるとか、悪性を示す結果が得られなければ、確定診断は手術で病巣を摘出するしかありません。
3)子宮肉腫を疑う場合
 ではどのような場合に子宮肉腫が疑われるのでしょうか。大きく分けると「急激に大きくなる」場合、「画像診断で腫瘍の描出像が典型的でない」場合、「腫瘍マーカー等他の検査で悪性が示唆される」場合、であると考えられます。単純に考えれば子宮肉腫の危険性は子宮筋腫患者さん全体の10,000分の1程度ですのであまり問題にならないかもしれませんが、以上のような場合には可能性が子宮肉腫の可能性が考えられます。
4)子宮肉腫の治療
 子宮肉腫は、子宮癌肉腫、子宮平滑筋肉腫、子宮内膜間質肉腫などに細分化されますが、原則として、診断の意味も含めて、子宮および附属器の摘出を行います。術後の進行期を参照にして、術後に薬物療法も考慮されます。
 子宮平滑筋肉腫の化学療法には、イホスファミド、ドキソルビシン、プラチナ製剤などが、使われてきましたが、その効果は高くありません。近年、標準治療ではありませんが、ドセタキセルとゲムシタビンの2剤併用療法の有用性が報告されているほかに、パゾパニブと呼ばれる分子標的薬が、転移性軟部肉腫に有用であると報告され、選択肢のひとつと考えられます。
 子宮内膜間質肉腫の場合、低悪性度子宮内膜間質肉腫と未分化子宮内膜肉腫に分けられ、低悪性度にはMPAなどのプロゲスチン投与やレトロゾールなどのアロマターゼ阻害剤の内服が選択されます。未分化の場合、ホルモン療法は無効と考えられており、イホスファミドの単剤療法、ドキソルビシンの単剤もしくはシスプラチンとの併用療法(AP療法)が有用との報告があります。

III. 子宮体がん、子宮体がん疑いと言われた方へ

 当院には他の病院で「子宮体がんと言われた」とか「子宮がん検診で異常と言われた」という患者さんが来院されます。子宮体がんは内診や超音波検査だけでは確認できない場合が多く、細胞診の結果だけでは、確定的ではなく、また、ホルモンの影響や、炎症などの影響も受け、診断することが難しいこともあります。他の医療機関で「がん」「がん疑い」と言われても、当院で再検査を行った場合に、異常が見つからない場合や、がんでなく、内膜増殖症などの疾患の場合もあります。
 また、子宮内膜異型増殖症(複雑型)と子宮内膜がん(グレード1)の鑑別は非常に難しいことがあります。
 当院での検査や治療を希望される場合は、他施設からの紹介状とできる限り、病理標本や細胞診標本を持参していただくことをお願いしております。また、きちんと診断するために、再度、子宮内膜細胞診や組織診断のやり直しをさせていただくことがございますので、ご了承ください。

IV. 遺伝性腫瘍

 遺伝性大腸がんのひとつである、リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス性大腸がん: Hereditary Non-Poluposis Colorectal Cancer: HNPCC)は大腸がんや子宮内膜、卵巣、胃、腎盂・尿管がんなどの発症リスクが高まる疾患で、リンチ症候群の遺伝子変異を持つ方では約80%の割合で大腸がんを発症し、女性においては、20-60%の割合で子宮体がんを発症するとされています。リンチ症候群の原因は生殖細胞系列でのミスマッチ修復遺伝子(MSH2, MLH1, MSH6, PMS1, PMS2)の変異であり、常染色体優性遺伝形式をとり、性別と無関係に50%の確立で遺伝します。
 血縁関係の深い親族の中で、若くして子宮体がんや大腸がんや上記のがんに罹患された方がいらっしゃる場合は、若い方でも、月経不順、不正性器出血などあれば、最寄りのクリニックを受診されることをお勧めします。また、その他のがん検診もお勧めします。(当院で、がんを治療されている方においては、院内の遺伝カウンセリング外来にご紹介が可能です。)

平成29年4月改訂

このページのトップへ