第十七改正日本薬局方について
収載医薬品に係る残留溶媒の規定が変わりました2016年10月3日
日本薬局方(以下、「日局」)は、医薬品の性状及び品質の適正を図るため、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、「医薬品医療機器等法」)第41条第1項の規定に基づき、厚生労働大臣が定める医薬品の規格基準書です。
日局の構成は、通則、生薬総則、製剤総則、一般試験法及び医薬品各条等からなります。日局は1886年(明治19年)の初版以来、医薬品医療機器等法第41条第2項の規定に基づき、少なくとも10年ごとに改正されてきましたが、科学技術の進歩をできるだけ速やかに反映させるために、近年は5年ごとに改正されています。
2016年(平成28年)3月7日に、第十六改正日本薬局方(以下、「日局16」)にかわって新たな第十七改正日本薬局方(以下、「日局17」)が公示され、同年4月1日から適用されました。
本稿では、日局17における主な改正点と日局16から大幅に変更された残留溶媒規制について解説します。
日局17における主な改正点
日局17では、「第十七改正日本薬局方作成基本方針」に基づき、医学薬学等の進展に対応するとともに、諸外国における基準との調和を図るため、以下に示した点を中心に改正が行われました。
- 日局全般に関わる共通ルールである通則のうち、通則12(製造要件)、同34(残留溶媒)、同35(意図的混入有害物質)、同40(無菌、滅菌、無菌操作)の新規収載及び同5(貯法)、同48(日本薬局方、アメリカ薬局方及びヨーロッパ薬局方の三局調和)の改正
- 製剤に関する一般的規則等を示している製剤総則のうち、製剤包装の基本的要件を記載した[2]製剤包装通則の新規収載及び[3]製剤各条(注射剤)の改正
- 収載医薬品に共通して用いられる試験法等が記載されている一般試験法のうち、糖タンパク質医薬品等の解析に用いられる2.64糖鎖試験法、貼付剤の粘着力を測定する6.12粘着力試験法等5試験法の新規収載、及び国際調和の内容を取り込んだ2.52熱分析法等18試験法の改正
- 収載医薬品の規格、試験方法等が記載されている医薬品各条のうち、抗生物質のドキシサイクリン塩酸塩錠、漢方製剤の防風通聖散エキス等76品目の新規収載、472品目の改正、及び国内で医薬品としての流通実態がない10品目の削除
詳しくは、厚生労働省"「日本薬局方」ホームページ"を参照してください。
日局17における残留溶媒規制
医薬品中の残留溶媒規制は、承認審査の国際調和を図るためにガイドライン(平成10年3月30日付審査管理課長通知「医薬品中の残留溶媒ガイドラインについて」)が発出され、平成12年4月1日以降に承認申請された新医薬品に適用されています。日局16では、新規収載医薬品に一般試験法と参考情報に収載された残留溶媒に関する規定が新たに適用されました。この規定を既収載医薬品にも適用するため、日局17では、残留溶媒に関する通則34が新規収載されています。また、一般試験法(2.46残留溶媒)が大幅に改正され、ガイドラインの考え方、限度値、残留溶媒試験法記載例の内容等が収載されています。規制対象となる溶媒は人の健康及び環境に及ぼすリスクに応じて3つのクラスに分類され、日局17では、このうち毒性のもっとも強いクラス1の溶媒について規定が適用されています。
各クラスの分類
- クラス1(医薬品の製造において使用を避けるべき溶媒)
- ヒトにおける発がん性が知られている溶媒や、ヒトにおける発がん性が強く疑われる溶媒及び環境に有害な影響を及ぼす溶媒
- クラス2(医薬品中の残留量を規制すべき溶媒)
- 遺伝毒性は示さないが動物実験で発がん性を示した溶媒や、神経毒性や催奇形性等発がん以外の不可逆的な毒性を示した溶媒及びその他の重大ではあるが可逆的な毒性が疑われる溶媒
- クラス3(低毒性の溶媒)
- ヒトに対して低毒性と考えられる溶媒で、健康上の理由から曝露限度値の設定は必要のない溶媒
溶媒 | 濃度限度値 | 使用を避ける理由 |
---|---|---|
ベンゼン | 2 ppm | 発がん性 |
四塩化炭素 | 4 ppm | 毒性及び環境への有害性 |
1,2-ジクロロエタン | 5 ppm | 毒性 |
1,1-ジクロロエテン | 8 ppm | 毒性 |
1,1,1-トリクロロエタン | 1500 ppm | 環境への有害性 |