愛知県衛生研究所

食品用器具、容器の規格基準における鉛とカドミウムの溶出限度値の引き下げについて

2008年10月8日

はじめに

食品を保存するとき、特にそれが長期にわたる場合、『容器から何かでてこないかしら?』と不安に思われる方がいらっしゃるかもしれません。食品と直接接触して使用される容器、包装及び器具の安全性は、有害な物質の溶出により食品が汚染されないよう食品衛生法において確保されています。今年7月にガラス製、陶磁器製及びホウロウ引きの器具または容器からの溶出値に関する規格基準が一部改正(平成21年8月1日施行)されましたので、法規制と検査の方法、現況などについてお知らせします。

改正点について

現在の法規制における規格基準は、1986年、当時の国際標準化機構(ISO)の規格に準拠して制定されました。ISO規格が1998年から2000年にかけて見直されました。従来『ここまでなら安全』という観点で設定されていた溶出限度値が、『現在の製造方法ならここまで抑えられるでしょう』という値に変更されたのです。これを受けて今回の改正では、重金属である鉛とカドミウムの溶出限度値が大幅に引き下げられるとともに、材質、使用方法によって区分が設けられました。100℃を超える高温で使用される「調理器具」(なべ、やかん、グラタン皿など)は、一般の食器よりも厳しい値が設定されています。なお、食品の温め直しなどに短時間電子レンジにかけるだけのご飯茶碗や皿、マグカップ、水蒸気によって調理される茶碗蒸しの器などは「調理器具」に該当しません。

金属の溶出について

ガラス、陶磁器、ホウロウ引き製品は高温で溶融、焼成して作るため、有機物は一般的に残存しません。しかし、輝きを増すため鉛を入れたり、金属を含む釉薬や顔料を使用することがあり、カドミウムや鉛などの金属類が溶出する可能性があります。過去には当所でも陶磁器から鉛の溶出を検出したことがありますがその後、焼成技術の進歩や工夫により、平成15年から19年に実施した69件の陶磁器溶出検査では、基準を超える鉛やカドミウムを検出しませんでした。

溶出検査について

鉛やカドミウムは酸性の液体に溶けやすい特性があるので、検査では、酢の物、果汁などの酸性(すっぱい味)の食品を想定し、食品と接する部分について4%酢酸水溶液で常温24時間溶出という実際の一般的な食品よりも溶出が起こりやすい条件で溶出させています。

最後に

今回の食品衛生法改正により、ガラス製、陶磁器製及びホウロウ引きの器具または容器について、さらに厳しく安全性を求めていく体制となります。安全性点検のため当所では、県内に出回っている器具、容器包装についての溶出試験を定期的に行っています。また、緊急時対応に備えて国内外から広く情報を収集しています。

参考資料
器具・容器包装の規格基準とその試験法(2006年3月改正対応版、河村葉子著、中央法規出版)