衛生研究所衛生化学部生活科学研究室>現在のページ


トリクロロエチレン等に汚染された地下水について


県内各地の井戸から高濃度のトリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなど揮発性の有機塩素系溶剤類が検出され、問題になっています。これらの溶剤類は油をよく溶かす性質があることから、トリクロロエチレンは主に機械部品などの脱脂洗浄に、また、テトラクロロエチレンはドライクリーニングの洗浄液として過去に大量に使用されていたことから、使用中の漏出や廃液の投棄などにより地下深く浸透し、地下水に混入したことがその主な原因であると考えられています。これらの溶剤は現在でも使われていますが、これ以上汚染が進まないよう工場排水等に含まれる溶剤類に排出基準が設けられるなど、法律により環境への漏出が厳しく規制されています。

これらの有機塩素系溶剤の多くは発癌性等が疑われています。したがって、これらの溶剤を高濃度に含む井戸水等を長期間飲用した場合には、健康に何らかの障害が発生する恐れがあります。そこで水道法では、下表のような水質基準を設けて、これらの物質が水道水に混入することを取り締まっています。したがって、水道事業体が供給する水道水を飲用している方は全く心配ありません。しかしながら、個人で井戸を所有し、それを飲用に用いている人にとっては、問題となる可能性も考えられます。

これらの溶剤類は揮発しやすいため、加熱をすれば簡単に取り除くことができます。そこで当研究所において、どの程度加熱すれば安全な濃度までこれらの溶剤類を取り除くことができるか実験しました。方法は、トリクロロエチレンとテトラクロロエチレンを1リットルあたり0.3および0.03ミリグラム(1ミリグラムは千分の1グラム)加えた水をフラスコに入れて電熱器で加熱し、加熱時間によるこれらの物質の減少を調べるというものです。その結果を下のグラフに示しました。実験結果は、いずれの化合物も加熱を始めて沸騰するまでに下表に示した基準値以下の濃度にまで減少し、さらに5分程度沸騰を続ければ、1リットル中の量として1マイクログラム(1マイクログラムは百万分の1グラム)以下にまで減少することがわかりました。すなわち、これら溶剤類の汚染が心配される井戸水を飲用するには、5分間以上煮沸すれば心配のない程度まで除去されることが判りました。ただし、これら溶剤類の除去効果は、加熱する容器の形や火力などによっても違ってきます。したがって、より確かな効果を得るためには、口が大きく開いた容器に水を入れて、蓋をせずに、強い火力で激しく沸騰させることがポイントとなります。また、大量の水を処理するような場合には、沸騰時間を長めにするなどの配慮も必要であると考えられます。


基準値(水道水1リットルあたりの量)
化合物名 基準値
トリクロロエチレン 0.03mg 以下
テトラクロロエチレン 0.01mg 以下


トリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンの除去実験の様子
左の写真は、トリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンを1リットルあたり0.3mg(300ppb)加えた水をフラスコに採り、電熱器上で加熱、沸騰しているところ。



衛生研究所衛生化学部生活科学研究室>現在のページ