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衛生研究所衛生化学部生活科学研究室
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巨大地震に備えて (その2)

2006年12月18日

水を消毒する

前回の「その1」では、地震に備えて飲料水を備蓄する際の注意点について解説しました。このような備蓄水は、押し入れや物置、床下などの冷暗所に置いておくのが最も理想的です。また、保存期限としては、市販の飲料水の場合にはボトルに記載された賞味期限を、自家製の備蓄水の場合には概ね半年、長くても1年程度を目安とするのが無難です。

しかし、このように細心の注意を払って備蓄した水でも、いざという時、細菌汚染が心配で飲めないことも考えられます。そのような場合には、消毒をすることにより、安心して飲むことができるようになります。

そこで今回は、水の消毒薬を中心に、その使い方や注意点について解説します。

@ 消毒の方法

水を消毒する方法には、大きく分けて2種類あります。一つは熱による煮沸消毒で、もう一つは薬剤、つまり、消毒薬による方法です。煮沸消毒は、最も原始的ですが確実な方法で、水を沸騰後5分程度沸騰させれば、ほとんど全ての病原菌を死滅させることができます。ただし、この方法には、ガスや電気などの熱源が必要となりますので、瓦礫や身の回りの紙くずなどを燃やして熱源とする場合は別として、全てのライフラインが遮断された状態では、あまり期待できません。

その反面、薬剤による方法は、前もって消毒薬を準備しておかなければなりませんが、どのような状況下でも実現可能な方法です。

なお、緊急避難的に川や池の水を利用しなければならない場合には、細菌以外にも、沈殿物や濁り等が気になりますが、これらの除去方法については、「巨大地震に備えて その3」で詳しく解説する予定です。

A 消毒薬の種類、入手方法

飲料水の消毒に使うことができる消毒薬には、災害時やアウトドア用に開発された粉末状のものと、ごく一般的な液体状のものがあります。粉末状のものは飲料水用に消毒濃度の調整等がされていて使いやすいのですが、まだ十分に普及していないため、スーパーやコンビニでの入手は難しいようです。しかし、災害用品専門店やインターネットの防災用品サイトからなら容易に購入可能です。

一方、液体状の消毒薬はドラッグストア等で容易に購入でき、飲料水の消毒の他に食器や汚物の殺菌消毒にも使えるなど用途が広く便利なのですが、飲料水に使うには一万倍以上に希釈する必要があり、扱いが煩雑だという難点があります。

粉末状の消毒薬は、「次亜塩素酸カルシウム(別名さらし粉)」と呼ばれる薬品で、それを主成分とした「粉末除菌剤」が、防災用品としてインターネット等で広く販売されています。その「粉末除菌剤」の価格ですが、5.5g入りの容器で1000円から1500円程度です。

液体状の消毒薬は、「次亜塩素酸ナトリウム」という塩素系化合物の水溶液です。これは、水道用の消毒薬と同じもので、「ミルトン」「ハイター」「ピューラックス」「アンチホルミン」「ハイポライト」などの商品名で市販されています。これら消毒薬の濃度には、有効塩素○○%という表示がされており、数%の薄いものから十数%の濃いものまで様々な濃度の製品があります。ちなみに、筆者の家の近くの薬局には、有効塩素6%の「ピューラックス」が置いてあり、500mL入りのボトルが600円台でした。

B 取り扱い上の注意

液体状の消毒薬は、強いアルカリ性の溶液であり、また、強い漂白作用があるので、原液が衣服等に付着した場合には、穴があいたり白くなったりすることがあります。皮膚についた場合には、すぐに洗い流せば問題ありません。人体に対しては、水の消毒に使う程度の濃度にまで希釈すれば、飲んでも害はないのですが、原液に酸を加えるなどして酸性にすると有毒な塩素ガスが発生するので、浴室など狭い空間での取り扱いには注意が必要です。また、このような消毒薬は、少しずつですが時間とともに分解するため、古くなると効きが悪くなります。そのため、これら消毒薬の容器には、食品の賞味期限と同じように有効期限が表示してありますので、その期限を過ぎているものについては多めに使う、あるいは、大幅に期限を過ぎているものは買い換えるなどの注意が必要です。

C 消毒薬の使い方

飲料水に適した消毒薬の有効塩素濃度(残留塩素濃度とも言う)は、0.1〜1ppmです。1%は10000ppm(同じことですが、1ppmは0.0001%)に相当しますので、先述した有効塩素濃度が6%の消毒薬原液の場合、それを消毒したい水で6万〜60万倍に希釈すればいいということになります。希釈の方法については、こちらの図(PDFファイル364KB)に詳しく紹介していますので参照してください。

もし、希釈倍率を間違えて濃度が10ppm程度になったとしても、多少カルキ臭い程度の害はあるものの、人体には影響がありませんのでご安心下さい。それに対して、粉末状の消毒薬の場合は、付属の小さなスプーン一杯分の消毒薬をすくい取り、コップ一杯の水に溶かすという非常に簡単な方法で、水の除菌(説明に消毒とは書かれていない)ができるようになっています。

以上の方法で消毒等を行なえば、ほとんど全ての細菌やウイルスをほぼ100%不活化することができます。ただし、いずれの消毒薬もすぐには効きませんので、消毒薬を加えてから飲めるようになるまで数十分〜1時間程待つ必要があります。

また、一部の原虫類には、ここで説明する薬剤が効かないものがありますので、川や池の水を薬剤で消毒して飲む場合には注意が必要です。

D ペットボトル等の消毒と保存用飲料水の作り方

「その1 @備蓄容器について」で予告しましたように、飲み終わった空のペットボトルなど細菌汚染が心配される容器を「次亜塩素酸ナトリウム」で消毒し、安全に水を備蓄する方法について紹介します。

用意するものは、液体状の消毒薬原液「次亜塩素酸ナトリウム」と食器用洗剤、5リットル程度のバケツ又は大きめの鍋、ビニールテープ、マジックペンなどです。まず、食器用洗剤で容器を洗浄し、水道水で十分にすすいでおきます。次に、同様に洗浄したバケツや鍋など清潔な入れ物に有効塩素濃度100ppmの消毒液を作ります。具体的な方法は、こちらの図(PDFファイル418KB)に紹介しましたのでご覧下さい。

その消毒液を、すすぎの終わった容器に、1/4から半分程度入れキャップをしてよく振り混ぜ、1時間程放置します。その後、消毒液を捨て、水道水でよくすすいでから、容器に飲料水を入れて堅くキャップします。

さらに、キャップがゆるまないようにビニールテープを巻き、マジックペンで日付を書いておくとよいでしょう。出来あがった保存用飲料水は、丈夫な箱にでも入れて冷暗所に保存するのがベストです。ただし、この方法も絶対ではありません。汚れのひどい容器や、干からびた付着物が見える容器は、使わない方が無難です。

また、このような飲料水は、充填した水や保存状態によって再び細菌等に汚染される恐れがありますので、できれば半年、最低でも1年に一度は作り替えることをお勧めします。

(衛生化学部生活科学研究室)

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