愛知県衛生研究所

クロム

クロムはヒトの体内に2〜10 mg含まれる。血液中では60〜70%がアルブミンと結合し、残りの一部がトランスフェリンと結合して臓器に運ばれる。肺内含量が最も高く、90〜720μg/gであるが、これは消化管からの吸収に加えて経気道吸収がかなりあることを示している。また、臓器中濃度は年齢、地域によってかなり差がある。肺、脂肪組織以外は新生児が高く加齢とともに減少するという、他の元素ではあまりみられない特徴がある。

クロムの生理作用としては、インシュリンが細胞膜でグルコースなどの摂取の際のCofactorとして働く糖代謝、ミトコンドリアヘの水摂取、アミノ酸代謝に関係があるとされている。また食品の精製化などで食品中のクロムが少ない文明国では、クロムの欠乏状態が出現することが懸念されているが、日本では欠乏症の報告はない。動物実験では低クロム食で耐糖能の低下がみられ、クロムは必須であるといえる。しかしヒトの場合は、食物のクロム添加実験によって糖尿病患者の耐糖能の改善はみられるものの、すべてに有効ではない。特殊な例ではあるが、経静脈高カロリー療法によるクロム欠乏で糖尿病状態がみられ、クロム投与で改善した報告がある。

クロム含有耐糖因子(GTF)は、クロム欠乏動物の耐糖能障害を改善する物質としてビール酵母から抽出され、命名された。クロム濃度の低下する老人では有効であるとの例が示されている。空腹時血糖低下、グルコース負荷時のインシュリン必要量の減少などの改善がみられた。またGTFが血清コレステロール低下など脂質代謝に影響することもよく知られている。クロムの多い食品は醸造酵母、牛のもも肉、小麦全粒パン等で、ヒトは食品で1日30〜100μg、水から10μg位摂取している。GTFは、エビオス20g中に40〜60μg含まれている。