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ジアルジア

図1 ジアルジアの生活環

ジアルジア症は地球規模で見るとごくありふれた腸管感染症で、世界での感染者数は数億人、患者数は数百万人と推定されています。特に熱帯・亜熱帯地域に多く、インドや東南アジア諸国、アフリカ諸国ではよく見られる感染症です。一方、先進国の米国においても水系感染性胃腸炎でごく普通に見られる病気とされています。日本人が感染する可能性は、多くの場合これらの発展途上国への旅行時が多いと考えられています。日本国内での感染率として正確なデータはありませんが、最近の報告で高知県のある病院における外来及び入院下痢症患者1,702名中の0.6%であったと記されています。

水や食べ物についたシストが経口的に体内に入ってから5〜25日後、主に下痢を主症状として、吐き気、嘔吐、腹痛、悪心などの症状が出現し、下痢が長引くと衰弱感、体重減少などの症状を引き起こします。下痢は1日数回から20回以上と様々であり、腹痛を伴う例と伴わない例が半々で非血性で水様ないし泥状便です。また、多くの場合感染しても症状が出現することは少なく(いわゆる不顕性感染が多い)、発熱は見られないとされています。

写真1 栄養型(コーン染色)

ジアルジア(Giardia lamblia)は、別名ランブル鞭毛虫とも呼ばれています。その生活環(図1)は栄養型とシストよりなり、栄養型虫体は特徴的な形態を有し、左右対称の洋ナシ型で、常時2 核で、4 対の鞭毛を持っています(写真1)。経口的に摂取されたシストは胃を通過後に速やかに脱嚢して栄養型となり、十二指腸から小腸上部付近に定着します。成熟シストは4核となり、他に軸子、鞭毛などが観察されます。通常、シストは外界の環境によく耐え、水中で3カ月以上生存が可能とされています。海外のヒトでの実験では10 〜25 個のシストの経口摂取により感染が成立したとの報告があります。ヒト以外の主な感染動物はイヌ、ネコ、ウシ、ヤギなどで、日本のある獣医師の調査では飼育犬の14.6%(151/1,035頭)からジアルジアが検出されたと記されています。また、北米ではこれらのペットや家畜に加えビーバーなども感染動物とされています。

我が国においては、クリプトスポリジウムの集団発生防止策の一環として行なわれている河川水調査と同時にジアルジアの調査も行なわれており、その結果(平成9年度)では全国94河川(277地点)のうち16河川(24地点、8.7%)でのみ検出されており、国内での感染の可能性はかなり低いものと考えられます。

治療には一般に抗トリコモナス薬が使われますが、その他の胃腸炎疾患との鑑別の必要もありますので、特に開発途上国から帰国した後、下痢などの症状が出現した時には早めに医療機関を受診することをお勧めします。

予防対策として、発展途上国への旅行ではヒトや動物の糞便で汚染されたナマ水やナマ物などの摂取により感染する可能性が高いため、これらの摂取を避けることです。

(生物学部医動物研究室)

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