愛知県衛生研究所

健康や地球にもやさしい酸化チタン光触媒

2006年10月25日

わが国で、酸化チタンを中心とする光触媒が活発に研究され始めて20数年。 “光触媒”は、日本発の世界に誇れる新しい技術です。当所(愛知県衛生研究所)においても酸化チタン光触媒を応用した「室内空気汚染物質の除去」や「細菌、カビ等の増殖抑制」に関する研究を行なってきました。そこで、「健康や地球にもやさしい」と今注目の“酸化チタン光触媒”についてお話します。

光触媒とは?

光を吸収することによって化学反応を促進するけれども、それ自身は反応の前後で変化しない物質を“光触媒”といいます。皆さんよくご存知の、植物の光合成反応(二酸化炭素と水からデンプンと酸素が生成する)における葉緑素は、それ自身が変化せず、しかも太陽の光を吸収することによってデンプンと酸素を合成するという、まさに光触媒なのです。

酸化チタン光触媒で何が起きる!

酸化チタン(TiO2)は特別めずらしい物質ではなく、化粧に使う白色顔料や白色ペンキに使われているごくありふれた白色の粉末物質です。顔料用としては、できるだけ光によって反応しない酸化チタンが利用されてきましたが、最近話題の光触媒を応用した空気清浄機などの製品では、逆に光反応性をできるだけ高めた酸化チタンが使用されています。

酸化チタン光触媒が波長380ナノメートル(nm;1m=109nm)以下の紫外線を吸収すると、その表面では2つの現象が起こります。一つは、光触媒分解というもので、たとえば、紫外線ランプを入れた空気清浄機のフィルターに酸化チタンを加工しておくと、酸化チタンの表面で生成する活性酸素種の強い酸化力によってフィルターにとらえられた汚れや細菌を分解し、最終的には二酸化炭素と水にしてしまいます。酸化チタン光触媒のもう1つの反応は、光親水化というものです。親水化とは、ガラスなどの材料表面に水がよくなじむ現象で、たとえば、酸化チタンをコーティングしたガラスについた水は、紫外線をあてると水滴にならず、ほぼ完全にガラス表面に広がっていき、その水が表面に付いた汚れの下に入り込み、汚れを流し落としてしまいます。

そこで、このような特性を生かして酸化チタン光触媒を様々な分野で利用しようとする試みがなされています。将来的に可能性のあるものも含めて、そのうちのいくつかをあげてみましょう。

「健康」や「環境」、暮らしに役立つ酸化チタン光触媒

病室
病院内の抗菌、脱臭
病院内の天井、壁、カーテンに用いて細菌、臭いを分解
シックハウス症候群の原因物質を除去
壁紙などに用いてホルムアルデヒドなどを分解
雨の日に曇らないサイドミラー
ガラス表面に用いて曇りや水滴の形成を防止

これからの可能性

空気をきれいにする道路
道路表面に使用し、排ガス中の窒素酸化物(NOX)を分解
がんの新しい治療法の開発
殺細胞効果を利用し、がん細胞の増殖を抑制
燃やしてもダイオキシンが出ない材料
材料に使用し、燃焼時の有害物質を吸着して分解
ピクニック

このように、最近急速に実用化が進んでいる“酸化チタン光触媒”ですが、光が届かないところではどうするか、効率的に反応を引き出すための接触面の確保や、物質と触媒との物理的距離の問題、それに、一度接触して反応を起こし生成された反応産物が触媒表面を覆ってしまう問題等、実用面では解決すべき問題も多く残されています。しかし、さらに研究を推進し、より効果的な光触媒の開発や新たな応用分野を切り拓くことによって、“酸化チタン光触媒”は、今後さらに大きく人類に貢献できる可能性も秘めています。