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生体と金属

生体内にはほとんどすべての元素が見いだされるが、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムなどのように比較的含量の多いものと極く微量しか存在しないものとがある。この微量の無機物、すなわち微量元素のあるものについては古くからその機能について注目されていた。鉄、ヨウ素、銅などがそれであり、必須栄養成分として栄養学的に、また酵素の活性化剤などとして生化学的にも研究されてきた。

生体内金属というと、私たちはすぐに有害金属を思い浮かべることが多い。確かに、金属による健康障害としては、メチル水銀による水俣病、ヒ素ミルク事件をはじめとして多くの事例が発生し、和歌山毒物カレー事件でのヒ素中毒は記憶に新しいところである。重金属の発ガン性、催奇形性は古くから知られているほか、最近の研究では、水銀カドミウムといった重金属が内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)の候補に挙げられている。また、有機スズ化合物はimposex(雌に雄性生殖器官が形成され繁殖不能となる疾病)という明らかな内分泌撹乱作用が報告されている。

近年、原子吸光法などの分析技術の発展により生体内の微量金属状態が把握されるとともに、必須性、酵素内での反応機序、代謝等が研究されている。また先天性の微量金属代謝異常の発見とともに、経静脈高カロリー栄養などによる人為的な欠乏症が次々に明らかにされつつある。亜鉛や銅の欠乏症についてはかなり研究も進み、現在最も注目されているのはセレンクロムの欠乏症であり、特に成人病である虚血性心疾患、がん、糖尿病、心筋症、高脂血症との関連で新しい知見が得られつつある(欠乏症と過剰症)。

また、有毒元素と考えられていた微量元素のなかには例えばヒ素、リチウム、ケイ素、カドミウムなどは動物にとって必須栄養成分であることが明らかになった。鉛でさえもヒトにとって必須性元素である可能性がでてきて、必須性、毒性と単純にきめつけることができないとともに、それらは動物側の条件あるいは微量元素の形態によっても著しく影響されることがわかってきた。



(衛生化学部生活科学研究室)

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