愛知県衛生研究所

ニッケル

体内ニッケル総含量は正常人で6〜10mgとされる。臓器では、肺、肋骨、皮膚、小腸に多いが、特異的にニッケルを大量蓄積する臓器はない。ただし、ニッケルカルボニル中毒者では、肺に蓄積傾向がみられる。

血清、尿中ニッケル濃度は曝露の指標となることが示されている。すなわち、ニッケル鉱山地区のニッケル職業性曝露者と対照との報告があり、対照が血清中ニッケル濃度2.6±0.9 (0.8〜5.2)μg/lに対し、4.6±1.4(2.0〜7.3)μg/lと増加がみられている。このときの尿でも、対照の 2.6±1.4(0.5〜6.4)μg/日に対し、7.9±3.7(2.3〜15.7)μg/日と増加がみられている。

ニッケルの毒性は化学形態とその物性で異なる。経口毒性は比較的低く、銅、コバルト、亜鉛など必須金属と同程度である。しかし、吸入ではニッケルカルボニルの毒性が大で、ヒトにとっての致死量は30ppm30分と推定されている。0.001ppm8時間曝露でも肺炎がみられる。一般には曝露24時間ぐらいで症状が出現し、病理学的には、肺うっ血・浮腫、間質性肺炎、肝変性および中心静脈周辺の壊死、腎・膵の変性がもっとも特徴的である。

ニッケルの必須性については以前から論議されてきたが、最近動物実験でニッケルの欠乏症の病理所見が明らかにされ、生殖低下、肝脂質・燐脂質代謝異常、グリコーゲン代謝低下等が報告されている。ヒトの1日必要量は動物データから推定すると0.05〜0.08mgと考えられる。この量はニッケル含量の多い穀物や野菜の通常摂取で十分である。ただし、植物中のニッケルはフィチン酸や繊維性成分と結合し腸管からの吸収は悪い。また動物性食品は一般に含量が低いことを考えておくべきであろう。肝硬変症、尿毒症、腎不全の患者では血漿ニッケル量は低く、潜在性欠乏症の可能性もある。