愛知県衛生研究所

スズ

スズは原子番号50、原子量118.69の周期律表第W族、炭素族元素の1つであり、銅の合金として古く青銅時代(3500B.C.)から利用され、ブリキやスズ−鉛合金のハンダとして生活の中で多用されている。スズの自然界における濃度は、検出不能から数mg/kgとばらつきが大きく、人の臓器中濃度においても地域差がみられる。

スズの生体内への侵入経路は、経口、経気道、経皮膚の3通りがあるが、一般環境中に生活する健常人では、大部分が食物、水と共に経口的に摂取され、その90%以上は腸管から吸収されないまま屎中に排泄される。また、微量のスズ投与は、微量元素を統御したラットの飼育実験において有意な成長効果をもたらすことから、スズは哺乳類にとって必須微量元素の1つとして考えられており、他の多くの重金属と同様、摂取量の多寡により金属毒性と生体必須金属としての両面を併せ持っている。

有機スズを除く通常のスズ化合物によるヒトの中毒としては、高濃度のスズを含む缶詰飲食品による急性胃腸炎と、良性の塵肺症であるスズ肺が知られている。一方、防汚または酸化防止を目的として魚網や船底の塗料に大量に使用されたトリブチルスズやトリフェニルスズ化合物のような有機スズは、近年「内分泌かく乱物質」の1つとして問題視され、これらの有機スズ化合物については厳しい使用規制が実施されている。