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ベロ毒素


1996年の5月から6月にかけて、岡山県や愛知県で児童が食中毒によって死亡する事件が起こりました。また、7月には大阪府堺市の小学校で起こった集団食中毒は、6000人以上の患者を出すという事態となりました。ともに、原因となったのは腸管出血性大腸菌O157であり、一種の社会不安を与えるほどの流行を示しました。


O157が産生するベロ毒素 (Vero Toxin、VT) は、大きく2種類 (VT1、VT2) に分類されています。一つは、志賀赤痢菌が産生する志賀毒素と同じ構造のVT1、もう一つは、VT1と生物学的性状はよく似ているが、免疫学的性状や物理化学的性状のまったく異なるVT2です。VT2には、出血性大腸菌の患者から分離された大腸菌の産生するVT2のほかに、多くの変異種が報告されています。


VTは毒素活性を担っているAサブユニット1分子と、受容体への結合に関与しているBサブユニット5分子から構成され、その分子量はいずれも約70、000です。VT1の場合、Aサブユニットは293残基のアミノ酸からなるタンパク質で、分子量は約32、000です。一方、Bサブユニットは69残基のアミノ酸からなるタンパク質で、分子量は約8、000です。VT1とVT2のアミノ酸配列の相同性は、Aサブユニットで55.6%、Bサブユニットで58.0%ですが、両毒素の生物学的性状は区別することができません。


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