愛知県衛生研究所

細菌の話題(一般向け)

話題の食中毒(サルモネラ菌によるもの)

菌の鞭毛の図←鞭毛

1.サルモネラ菌とは

サルモネラ菌には、食中毒や下痢症を起こすものなど今年(平成11年4月)から施行された感染症新法「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」において4類感染症に定めらたもから、腸チフス・パラチフスなどより危険度の高い2類感染症を起こすものまで多数あります(菌体抗原と鞭毛抗原の組み合わせにより、現在2,000以上の血清型が知られている)。周囲に多数の鞭毛を持ち、これを用いて動き回ります。

2.サルモネラ菌の分布

自然界に広く生息しており、ヘビ、トカゲ、カメなどのハ虫類、カエルその他の両生類、あらゆる種類のほ乳類及び鳥類が持っています。しかし、これらの生物と人間においても、菌を持っているにもかかわらず下痢などの症状が無く、健康そうにみえることもあります(健康保菌の状態)。家畜ではニワトリ、シチメンチョウ、ブタから見つかることが多く、またミドリガメはそのほとんどが体内にサルモネラ菌を持っていますので(健康保菌の状態)、ペットとして飼っている人は、ミドリガメをさわった後は手をしっかり洗うなど、注意が必要です。乾燥に対する抵抗力が強く、土壌中で数年間生存が可能です。

3.サルモネラ症

人の体内にサルモネラ菌が侵入しても感染が成立するには比較的多量(100万〜1,000万個)の菌が必要です。しかし、菌の種類により、差違が大きく、チフス菌の場合や小児や老齢者などの抵抗力の弱い人では遙かに少ない菌数でも発症することがあります。

菌の付いた食物を食べた後、12〜72時間で発熱、腹痛などの症状が急にでます。その後、悪心、嘔吐、下痢を主症状とし、発熱は38℃前後。便は主に水様便で時に粘血便。多くは数日で回復します。

血清型エンテリテイデイス、コレラージス、テイフィムリウム、オラニエンブルグ、ハイデルベルグ等では、腸の粘膜から菌が侵入して血液中に入り込む菌血症をおこすことがあります。その場合は、菌が全身に回って内臓をおかす敗血症という重い症状になることもありますので注意が必要です。

4.サルモネラ食中毒と主な原因食品

卵・・・・・・
ニワトリなどの卵巣に保菌されているサルモネラ菌(主にエンテリテイデイス)が卵黄に付着して排卵される場合(大体1,000〜2,000個に1個程度といわれています)がありますが、1個の卵を食べても食中毒を起こすほどの菌量はありません(保存状態が良くて、増えなかった場合)。また、卵が割れたり、割った時に、卵の殻の外に付いていた菌が中身に付くことがあります。このような卵を十分な加熱をしないで調理に使い、すぐに食べないで暖かいところに放っておく放っておいたりすると、菌が食物の中で増えて食中毒を起こすことがあります。
肉・・・・・・
と殺の際に腸管内容物が肉に付着したものを十分な加熱をしないで食べたりすると食中毒を起こすことがあります。
バリバリイカ:
今年の春に、“バリバリイカ”によるサルモネラ食中毒が全国で発生しました。その原因食品は、青森県のある水産会社で作られたバリバリイカなどの原材料であるイカの乾燥品に何らかの原因でサルモネラ・オラニエンブルグが付いていたために起こった例外的な事件でした。
その他に、カキ、魚介類、ココナッツ、果物、水なども原因となることがあります。

5.サルモネラ食中毒の予防

肉(特に豚肉、鶏肉)はかなりの程度で汚染されているので、しっかり火を通して食べる。卵については生で食べる場合、新鮮なものを割ったらすぐに食べる。割ってから時間がたったり、古くなった卵ではサルモネラが繁殖している恐れがあり生で食べるのは非常に危険です(厚生省は、生で食べる殻付き卵に消費期限または品質保持期限を今年の11月1日より、表示することを通知した。また、卵の保存は、10℃以下が望ましいことも表示することとした)。

その他、細菌の話題(医療関係者向け)トピックス(新興・再興感染症など)を参照して下さい。