新型インフルエンザウイルスについて
2009年5月8日掲載(12月28日更新)
全世界で流行し、日本においても既に1000万人以上が医療機関を受診したと推定される新型インフルエンザの症状やウイルスの特徴に関する新しい情報は、外部リンク(衛生研究所トップページの関連リンク参照)に提供されています。 当所における検索結果はこちら。
1 新型インフルエンザウイルスの抗ウイルス剤感受性について
2009年12月28日掲載
現在流行している新型インフルエンザウイルスAH1pdmN1は、既にアマンタジン耐性(豚ウイルス由来のM遺伝子)を獲得していますが、日本を含む各国で主に使用及び備蓄されている抗ウイルス剤オセルタミビル(タミフル)及びザナミビル(リレンザ)については、大部分が感受性と考えられます。
一方昨シーズン流行したAソ連型(H1N1)インフルエンザウイルスのほとんどはオセルタミビル(タミフル)耐性マーカー陽性となっていました。新型(H1pdmN1)についても耐性マーカーH275Yのサーベイランスが行われており、愛知県内からは名古屋市衛生研究所より2例報告されていましたが、25日までに60株以上を検索した結果、当所においても2株を検出しました。国立感染症研究所における薬剤感受性試験の結果は2株ともオセルタミビル耐性を示しましたが、ザナミビルには感受性でした。同様の変異は北米(アメリカ合衆国、カナダ)、ヨーロッパ(英国など)、西太平洋地域(オーストラリア、中国、香港、シンガポール、ベトナムなど)から報告があり、日本国内では各地より既に20例以上報告されています。
ウイルス遺伝子、とりわけ抗ウイルス剤耐性獲得、温度感受性変化や季節性ウイルスとの再集合体形成等については、今後も継続的な監視が必要です。
- 参考文献等
- ・Oseltamivir-resistant pandemic (H1N1) 2009 influenza virus, October 2009. Wkly Epidemiol Rec 2009;84:453-459
- ・Moscona, A. Global transmission of oseltamivir-resistant influenza. N Engl J Med 2009;360:953-956
- ・IASR 新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)オセルタミビル耐性株(H275Y)の国内発生状況 [第1報]
- ・オセルタミビル(タミフル)耐性を示す新型インフルエンザウイルスについて(ネットあいち:12月11日・18日記者発表資料)
- ・Moscona, A. Global transmission of oseltamivir-resistant influenza. N Engl J Med 2009;360:953-956
2009年5月8日掲載(5月12日更新・12月28日一部修正)
2 新型インフルエンザウイルスについて
- メキシコと米国の分離株は遺伝子レベルでほぼ同じ。
- 発育鶏卵での増殖はあまり効率的でない。
- 抗ウイルス剤オセルタミビル(タミフル)及びザナミビル(リレンザ)には感受性、アマンタジン耐性。
- ヒト、豚、鳥のA型インフルエンザウイルス由来の遺伝子をもつ reassortant (←遺伝子再集合体)である。下記の triple reassortant とアジア豚ウイルス由来NA遺伝子、北米豚ウイルス由来遺伝子から成る遺伝子再集合体。8本の遺伝子のうち、ワクチンなど感染防御、抗ウイルス剤感受性やPCRなど診断上重要な、赤血球凝集素(HA),ノイラミニダーゼ(NA)及びM遺伝子は豚ウイルス由来。PB1遺伝子はヒト、PA及びPB2遺伝子は鳥ウイルス由来。
- 1998年に、米国豚インフルエンザから分離された triple (←豚、ヒト、鳥の3種) reassortant はH1N1ではなくヒトウイルス由来H3,N2及びPB1遺伝子と鳥ウイルス由来PA及びPB2遺伝子をもっていた。
- HA遺伝子の系統樹解析からは、過去に米国及びユーラシア豚から分離された株とほぼ同程度の距離で独自の枝(lonely branch)を形成していることが判明。
- NA及びM遺伝子はユーラシア豚ウイルス由来。
- ウイルス遺伝子、とりわけ抗ウイルス剤耐性獲得や季節性ウイルスとの再集合体形成等について今後も継続的な監視が必要。
3 新型インフルエンザ患者について(米国41州から4月15日から5月5日までに報告された確定例642名中データの得られた患者に関する報告)
- 18%に発症前7日以内のメキシコ渡航歴があり、また学校集団発生が16%を占める。
- 発熱(94%)、咳(92%)等気道症状に加え、38%に嘔吐あるいは下痢がみられた。
- 入院したのはデータの得られた399名中36名(9%)、患者年齢は19ヶ月〜51歳。うち死亡2名。データの得られた22名中4名は5歳以下、妊婦1名、9名に基礎疾患(うち5名は喘息)、11名は肺炎確定、集中治療室(ICU)治療を要したのは8名、うち4名がレスピレーター使用。
- 患者年齢分布は3ヶ月〜81歳、40%は10〜18歳に集中しており、対照的に51歳以上は5%を占めるにすぎない。
- 2及び3に関する参考文献
- ・ Update: Novel Influenza A (H1N1) Virus Infections - Worldwide, May 6, 2009.MMWR 58(17) 453-458, 2009
- ・Novel Swine-Origin Influenza A (H1N1) Virus Investigation Team: Emergence of a Novel Swine-Origin Influenza A (H1N1) Virus in Humans..N Engl J Med 361, 2009. (10.1056/NEJMoa0903810)