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ウエストナイル熱について


2005年10月5日(2006年10月3日更新)

2005年10月3日付けで厚生労働省から我が国初のウエストナイル熱患者の報告がなされました。

ウエストナイル熱(脳炎)は蚊が媒介するウイルス性の疾患ですが、ウイルスを持つ蚊に刺されて感染したとしても、軽い風邪症状に似たウエストナイル熱を発症するのは感染者のうちの15〜20%程度の人だけで、命にかかわる重症のウエストナイル脳炎を発症する人はさらに少なく、感染したヒトの150〜200人に一人の割合で、それも高齢者や免疫機能が低下している人達に多いと言われています。

また、国内で実施されている蚊がウイルスを獲得するカラスなどのトリの検査では、ウエストナイルウイルスは未だ検出されていません。今回の患者さんは昨年来大流行しているアメリカ合衆国(USA)のカリフォルニア滞在中(旅行者としてロサンゼルスに約一週間滞在とされています)に感染したものと考えられています。

当所ホームページでは、約6年前のウエストナイル熱・脳炎のニューヨークでの突然の出現以降、USAでの感染拡大と予防対策等について情報提供をしてきましたが、今回の日本人患者発生を受け、従来の情報を最新のものと差し替え、再度最新の知識と共に情報提供をいたします。

1999年、ニューヨーク市で突然カラスが大量に死に始めました。ウエストナイルウイルスの北アメリカへの侵入の始まりでした。その年に62人の患者と7人の死者を出したウエストナイル熱(脳炎)は、その後も毎年流行地域を中部・南部へと拡大し、2002年には中部から西部に迫る勢いで広がり、4,156人の患者と284人死者を出す大流行となりました。2004年の流行はCDC(米国疾病対策センター)の集計ではカリフォルニア州の患者数779人(うち死者28人)を筆頭に、届けられた患者数は2,539人、死者は100人、翌2005年もやはりカリフォルニア州(患者880人、死者19人)から最多の患者及び死者の発生が報告されました(全米では患者数=3,000人、死者数=119人)。2006年は9月26日現在、アイダホ州を筆頭に(患者数=642人、死者数=10人)、カリフォルニア州(同:215人、3人)など西部地域を中心に全米の40州とワシントン特別区から報告されています(同全米2,720人、87人)。なお、お隣のカナダからも9月16日現在で102名の患者報告がなされています。

米国、カナダにおけるウエストナイル熱の流行状況の詳細は次のリンクからご覧になれます。

国立感染症研究所ウエストナイルウイルス関連サイト
米国CDC(West Nile Virus Home)

ウエストナイル熱(脳炎)はウイルスが蚊によって媒介されて感染するため、我が国ではウイルス保有蚊侵入を防ぐ目的で空港検疫所が蚊の捕獲検査を実施し、監視体制が敷かれています。また、我が国に生息する蚊のほとんど(14種類程度のうち11種類)がウエストナイルウイルスを感染させることができるとされているため、一度侵入すると猛威を振るうのではと懸念されています。

さて、普段から私たちは蚊に刺されることに悪い意味で慣れっこに、少なくとも病気との関連で蚊に刺されることを心配しなくなっています。刺されると痒いですから、蚊取り線香を焚いたり、夜は蚊帳を吊ってその襲撃から逃れる工夫をしてきました。

でも、本当に怖いのは蚊が伝染病を媒介することです。昭和20年代後半にはコガタアカイエカが媒介する日本脳炎の撲滅にむけ、ワクチンの開発に努力が傾けられました。今でこそ国内での日本脳炎の発生はあまり耳にしなくなりましたが、昭和30年代には毎年500〜1,600名という多数の死亡者が報告されていました。現在でも、東南アジアの米作地帯では毎年5万人以上(WHO資料)の患者が発生しており、蚊が恐ろしい伝染病である日本脳炎を媒介する重要な担い手であることに変わりはありません。





(厚生労働省結核感染症課ハンドブックより)

ウエストナイル熱 (脳炎)は、アフリカ、南ヨーロッパ、中東に分布していましたが、1999年以降北米にも発生がみられるようになりました。ウイルスは鳥と蚊の間で感染環が維持され、蚊を介してヒト、ウマなどに感染します。ウイルスに感染した蚊に刺されたとしても、多く(80%程度)の場合、感染はしたものの症状の出ない不顕性感染の形をとり、次に比較的軽い症状を示す通常型がみられ、脳炎や髄膜炎などの重い症状が出現するのは感染を受けた人の1%未満とされています。

ここ2〜3年、国内においてもウエストナイル熱(脳炎)が注目されている理由は、1999年のニューヨーク侵入以降、アメリカ合衆国内における流行がその患者数及び流行地域を爆発的に拡大しただけでなく、2002年の大流行では中西部を中心に患者数4,156人、死者数284人、2003年は流行地域がついにロッキー山脈を越え西海岸の州に及んだだけでなく、流行はさらに拡大し9,858人の患者が発生し、262人が死亡するという大流行となったことによります。2004年はカリフォルニア州(患者数771人、死者21人)が最多患者発生州となり、次いで同じく西部の州であるアリゾナ州(患者数391人、死者14人)、コロラド州(患者数276人、死者3人)から多数の患者及び死者の発生が報告されました。

2005年は9月27日現在で、既に述べたようにカリフォルニア州(患者数681人、死者15人)から最多の発生報告がなされていますが、次いで、中西部の北に位置するサウスダコタ州(患者数208人、死者1人)、それに、シカゴのあるイリノイ州(患者数172人、死者3人)を中心に40州から1,804人の患者と52人の死亡が報告されています。特に観光客も含め日本との交流が非常に盛んなカリフォルニア州は、2年連続第1位の患者数となっており、旅行される方は現地で蚊に刺されないようにするため、長袖シャツの着用や虫さされ予防薬を露出部の肌に塗るなど、日本に居るときとは異なる注意が必要です。

ウエストナイルウイルスは我が国に生息する多くの蚊が媒介することが可能なことから、一度国内にウイルスが侵入すると大流行する可能性も少なくありません。しかしながら、万一アメリカからの帰国者、観光客が国内でウエストナイル熱(脳炎)を発症したとしても、患者(感染者)を刺した蚊から別の人が感染する可能性はありませんので、パニックになる必要はありません。

我が国では北米におけるウエストナイル熱の大流行を受け、平成14年10月に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の施行規則の一部改正がなされ、ウエストナイル熱(脳炎を含む)は4類感染症に指定され、診断した医師は直ちに最寄りの保健所長を通じて都道府県知事に届け出なければならないことになりました。また、流行予測のために死亡カラス情報の収集も平成14年12月から実施されています。

●愛知県内のカラスの死亡報告状況

当衛生研究所では、全国の地方衛生研究所と国立感染症研究所(感染研)が平成15年度に連携して立ち上げたウエストナイルウイルスの遺伝子の検査体制確立事業に検査機関の一つとして参画し現在同検査の実施が可能な体制を整えているだけでなく、患者血清を用いた血清診断も実施できるようにELISA法とよばれる検査法を用いた血清学的検査体制も整っています。また、ウエストナイルウイルスにウイルス学的には非常に似ている日本脳炎ウイルスの検査体制(遺伝子鑑別、血清中のHI抗体検索)も整えています。




ウエストナイル熱(脳炎)の概要

病原体

ウエストナイルウイルス(フラビウイルス属)

電子顕微鏡写真はこちら

媒介蚊


イラスト提供:KINCHOホームページ

蚊を介した感染経路としては、カラスなどウエストナイルウイルスに感染したトリを刺した蚊がヒトを刺すことによる感染がそのほとんどだと考えられています。蚊を介したヒトからヒトへの感染は、ウイルスがヒトの抹消血へ大量に出現しないことから、起こらないとされています。北米では30種類以上の蚊からウイルスが分離されていますが、我が国では私たちの身の回りにいるほとんどの蚊が(14種類ほどの蚊のうち、ヒト及びトリの両方を刺す性質を持つ11種類)ウエストナイルウイルスを媒介する可能性があるとされています。その中でも特にアカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカが発生量・ヒト及びトリ嗜好性の点から重要視されています。

その他の感染様式としては、2002年以降、アメリカ合衆国では、8例の輸血による感染が確認されていますが、2003年7月からは輸血用血液はウエストナイルウイルスの混入をチェックされており、その後の感染例はありません。現時点(日本国内での症例が発生していない時点)では、国内においては輸血による感染を心配する必要はまずありません。

潜伏期

3〜15日

症 状

通常型は急激な発熱、頭痛、背部痛、めまい、発汗、約半数の症例で出現するとされる紅い小丘が密生した猩紅熱様発疹、それにリンパ節腫大などです。3〜7日で解熱し、短期間で回復します。脳炎型は頭痛、高熱、頸部硬直、感覚障害、昏睡、戦慄、麻痺など重篤な症状が現れ、高齢者に多く、死亡率は3〜15%とされています。

(平成17年10月2日時点では、以下の症状が出ても、流行地域からの帰国者以外はウエストナイル熱(脳炎)の可能性は全くありません。)

注意事項

発生地域に渡航する場合は蚊よけスプレーを使用するなど、蚊に刺されないようにすることが重要です。

対 策

その地域に分布する媒介蚊を可能な限り減らすことが最も効果的

  1. 環境改善による蚊の幼虫発生源(空き缶や古タイヤ、それに一寸した水溜まりも含む)を無くす。
  2. 発生した蚊は殺虫剤を用いて殺す。
  3. 家屋の窓に網戸を設置することや、屋外にいる場合は長袖シャツ、長ズボンの着用、それに露出部分の皮膚にDEET(ジエチルアミド)などの忌避剤を塗るなどの防御方法をとる。

イエカ類は数km四方と広い範囲を飛翔することが知られており、カラスは毎日ねぐらと餌場を往復しているため、カラスからウエストナイルウイルスが検出された場合には相当範囲(数10km四方)にウイルスの活動が広がったと考えられます。但し、平成17年10月4日現在、日本国内ではカラスなどの動物及び蚊からウエストナイルウイルスは全く検出されていません。



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