衛生研究所感染症の発生状況>現在のページ


WHO疫学週報抜粋抄訳


《お詫び》 現在更新をお休みしています。

Update 2009年11月26日
82巻wer82.pdf(366KB)
83巻wer83.pdf(366KB)
84巻 1・2号
11・12号
21号
31号
41号


22号
32号
42号
  3号
13号
23号
33号
  4号
14号
24号
34号
  5号
15号
25号
35号
  6号
16号
26号
36号
  7号
17号
27号
37号
  8号
18号
28号
38号
  9号
19号
29号
39号
  10号
20号
30号
40号
               


2009年10月16日(84巻42号)
  • リンパ系フィラリア症排除世界計画。

    リンパ系フィラリア症(LF)排除プログラムは08年においても進捗中。08年においてLF常在国は81カ国でうち66カ国が常在地区の地図作り完成、13カ国が作成中、2カ国はまだ着手していない。常在国のうち、薬剤集団投与(Mass Drug Administration, MDA)は以前風土病であった10カ国で不必要になり、現在常在71カ国中51カ国で実施中、20カ国では開始していない。アフリカ地域以外のMDA必要な37カ国のうち34カ国は全国または常在地で実施、3カ国(ニューカレドニア、パラオ、スーダン)はまだ開始していない。08年、LF排除世界計画は6億9,500万人を対象としてMDA実施、4億9,600万人(71.38%)が投与を受けた(07年より5,000万人以上減少)。東南アジア地域では07年より08年が5,600万人少なかった。08年、2億3,200万人を超える人々(投与者の46%)が多剤投与(ディエチルカルマバジン、DEC+アルベンダゾールまたはイベルメクチン+アルベンダゾール)をうけた。定点観測ないしスポットチェックから得られた治療インパクトのデータからMDA5~6回の実施で多くの常在地域、常在国でミクロフィラリア血症の減少が認められ、罹患率低下の公衆衛生学的利益は著明である(Disability Adjusted Life Yearsに関する記載あり、略)。現在27カ国で障害者治療が実施されている(世界地図あり)。08年における世界の国別のMDA使用薬剤、実施施設数、履行対象人数、投薬された人数、実施率(%)の報告一覧表、WHO地域別一覧表、就学前(1〜4歳)と学童(5〜14歳)の08年投与数WHO地域別一覧表あり。使用薬剤(DEC単独54%、DEC+ALB36%、IVM+ALB10%)、リスク者の地域別投与率(メコンプラスが08年MDA投与率80%、アフリカが20%台、など)の一覧表あり、世界地図が添えられている。以下、アフリカ地区、アメリカ地区、東地中海地区西太平洋地区の状況解説あり(略)、MDAのインパクトは大きく、MDA5〜6回の実施がLF排除に重要と考えられる。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年10月9日(84巻41号)
  • インフルエンザワクチンWHO推奨株。2010年南半球冬期用。

    (1)09年2月〜9月、世界のインフルエンザ流行:最初は従来の季節性インフルエンザAH1、AH3、B型主体であり、小規模発生主体であったのが5月以降A(H1N1)パンデミーウイルス(H1pdm)分離が増加、主体となっている(月別、国別分離ウイルスの一覧表あり)。

    (2)季節性インフルエンザ:北半球では09年2月から流行、3〜4月に減少、欧州ではA(H3N2)、日本、北米ではA(H1N1)とB。混合流行した国が多い。

    (3)パンデミックA(H1N1)インフルエンザ:4月に北米で始まった流行は7〜8月には全世界で従来の季節性インフルエンザと入れ替わって大流行。8月に少し減った東南アジアなどでもその後再増加、現在に至っている。

    (4)A(H5N1):09年2月1日〜9月21日のA(H5N1)人感染例37例、死亡5例。中国、エジプト、ベトナム、いずれも鶏舎で鶏の大量死に伴い密接接触例。03年12月以降440例のH5感染確定例で死亡262例(15カ国)。まだ人から人への伝播のエビデンスは得られていない。

    (5)最近の分離株は抗原性・遺伝変異をおこしているか:免疫フェレットを用いた交叉HI反応でほとんど抗原変異はなく、HA、NAの遺伝子解析から遺伝子変異も殆ど起っていない。

    (6)A(H1N1)ウイルス:上述のように急速に従来のH1N1ウイルスから新型H1N1主体に分離株は変わってきている。

    (7)最近のA(H3N2)ウイルス:フェレット免疫血清による交叉HI反応から長い間現行ワクチン株A/ブリスベーン/10/07やA/ウルグアイ/716/07と類似していたが、3月以降の分離株は抗原的にも遺伝子解析上もA/パース/16/09やA/香港/1985/2009に類似。

    (8)B型ウイルス:現行ワクチン株のB/ビクトリア/2/87、B/山形/16/88類縁株の分離が世界的に持続中。

    (9)抗ウイルス剤耐性株:@NA阻害剤:ほとんどのA(H1N1pdm)はタミフル感受性、全てリレンザ感受性。タミフル耐性はA(H3N2)とB型では見つかっておらず、季節性インフルエンザA(H1N1)ウイルスには多い。Aアマンタジンと類縁薬剤:すべてのA(H1N1pdm)、大多数のA(H3N2)は耐性。

    (10)現行不活化ワクチンの研究:A/ブリスベーン/59/07(H1N1)+A/ウルグアイ/716/07(H3N2)+B/ブリスベーン/60/08もしくはB/フロリダ/4/06の3混ワクチンの青壮年や高齢者の接種後HI抗体はA(H1N1)pdmと無関係であり、A/カリフォルニア/7/09類縁抗原を含むワクチンが最近の分離株の多くに抗体活性を示していた。

    (11)2010年流行期ワクチン組成WHO推奨株:A/カリフォルニア/7/09(H1N1)+A/パース/16/09(H3N2)+B/ブリスベーン/60/08、ないしそれぞれの類縁株。

  • インフルエンザA (H5N1)ウイルスとA(H5N1)ワクチン候補ウイルスの抗原・遺伝子特性

    最近のH5N1候補ワクチン臨床試験結果:

    http://www.who.int/vaccine_research/diseases/influenza/flu_trials_tables/en/index.html参照。

    (1)09年9月の状況:鳥と人のH5N1感染はいくつかの国で常在、抗原性と遺伝的解析が進められている。

    (2)09年2〜9月におけるH5N1流行:アフリカとアジアで分離。人の感染は中国、エジプト、ベトナムからWHOに報告があり、鳥からも報告されている。

    (3)抗原的、遺伝的特性:いくつかの進化群(クレード)に分類される。クレード2.2ウイルスはバングラデシュで08年以来鳥から分離、クレード2.2.1ウイルスがエジプトの鶏舎で大流行、人に散発、クレード2.3.2ウイルスが中国、香港、モンゴル、シベリアの鳥類、クレード2.3.4ウイルスが香港、ベトナム、ラオスの鳥類と人から分離 [A(H5N1)のクレード全体の系統樹あり]。香港の分離株は前年と類似。抗原的にはワクチン候補株のA/chicken/香港/AP156/08と類似。ベトナムの分離株は遺伝的に多様で、これらのウイルスは抗原的にはワクチン候補株のA/duck/Laos/3295/06と類似していた。

    (4)A(H5N1)ワクチン候補ウイルス:これまでの結果からは統一推奨株はなく、各地区で検討することが勧められる(入手可能なH5N1候補ワクチン一覧表あり)。WHOが提案しているのはA/chicken/香港/AP156/08とA/chicken/Viet Nam/NCDV-03/08。

  • WHO感染症ウエブサイト一覧表。
(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年10月2日(84巻40号)
  • B型肝炎ウイルスワクチン

    WHO公式見解。04年7月の本週報公式見解の改正版。

    (1)背景

    @疫学と公衆衛生:B型肝炎ウイルス(HBV)による疾患は世界的に分布。約3億6,000万人が慢性感染者で肝硬変、肝細胞癌による死のリスクにさらされている。HBV関連の死亡は世界で毎年約60万と推定される。HBV自然感染動物は人だけで、感染血液、体液の経皮、経粘膜暴露(主に精液、膣液)で感染。潜伏期は平均75日(30〜180日)、感染後HBs抗原が30〜60日で検出されるようになり長期持続、その7〜40%がHBe抗原保有(感染性高い)。出生時にワクチン接種しないとHBe抗原陽性の母親から出生した児は大多数が慢性感染する。HBの土着性には地域差があり、HBs抗原保有率で8%以上の典型的高侵淫地区、2%未満の低侵淫地区、2〜7%の中間地区に分けられる。高侵淫地区、低侵淫地区、いずれも伝播は周産期、新生児期の母子感染によるものが多く性的接触、注射器材の共用なども考えられ、HB伝播排除綜合的アプローチは出生時対策と思春期・成人対策がなされるべきである。HBワクチン接種導入は多くの国でHBV伝播の劇的減少をもたらし、HBV関連慢性肝炎、肝硬変、肝癌の減少が予測されている。08年時点で177ヵ国で乳児予防接種プログラムに導入、06年(成績のある最近の年)、世界の新生児の27%が出生時HBワクチン接種を受けており、HBワクチン価格低下が普及に役立っている。

    A病原と疾患:ヘパドナウイルス属の二重鎖DNAウイルス。人と霊長類の肝細胞で増殖するが試験管内培養細胞では培養できない。HBs抗原はウイルス外殻リポ蛋白で中和エピトープをもつ。HBV感染後の経過は年齢依存的で、無症状感染、急性B型肝炎、慢性B型肝炎、肝硬変、肝癌とさまざまで、急性B型肝炎は周産期感染の1%、1〜5歳小児期感染の10%、5歳をこえた年長者で30%にみられ、劇症肝炎が急性肝炎の0.1〜0.6%(死亡率70%)にあり、慢性化は感染時期と逆に周生期感染80〜90%、6歳以前の感染で約30%、健康成人で5%未満となっている。HIVとの同時感染、アルコールやアフラトキシンなど肝臓毒も経過に大きく関与しHIV同時感染における高活性レトロウイルス剤投与の影響が注目されている。慢性HBV感染者はHBV関連肝硬変、肝癌死亡リスクが15〜25%あるが他の肝炎ウイルスと臨床診断だけでは鑑別不可能で検査室診断が必須であり、急性HBV感染は血中HBs抗原の存在とHBcIgM抗体が特徴的で初期のウイルス増殖がさかんな時期はHBc抗原も陽性で、感染数週後HBs抗体出現と同時にHBs抗原は消失する。HBs抗原陽性が6ヵ月をこえて持続することが慢性感染の特徴で、HBs抗原存続が慢性感染・肝硬変・肝癌進展の基本的マーカーである。HBe抗原の存在は血液・体液の感染性の高いことを意味し、毎年約10%の慢性感染者はHBe抗原陰性、HBe抗体陽性となり、無治療の慢性感染例の1%が毎年HBs抗原消失すると推定されている。最近先進国では少なくとも7種類の慢性HBV感染治療薬が有効性が認められ、認可されている。この領域における進歩は著明であり、WHOのアメリカ地域・欧州地域などの肝臓病研究協会などが治療ガイドラインを発表しているが、副作用や耐性、ウイルス変異など長期の追跡が重要である。HBsIgG抗体が免疫有無のマーカーとして検査され、高抗体価グロブリンが暴露後のワクチン接種と同時に受身免疫に利用されているが、ワクチンによる基礎免疫があれば暴露後の追加接種でよく応答し、T細胞の細胞性免疫の持続も良好である。また、新生児感染における免疫的寛容と慢性感染の関連も重視されている。

    (2)HBワクチンとワクチン接種:リコンビナントワクチンが1986年に開発されそれまでの血漿由来ワクチンにとって変わられた。HBs抗原を酵母または動物細胞で発現させるのが基本。HBs抗原遺伝子(またはプレHBs遺伝子)をプラスミドで挿入された細胞を培養、HBs抗原精製、アラムやチメロサール添加。単味ワクチンの輸送は2〜8℃。凍結しないこと。45℃までで1週間、37℃までで1ヵ月間、抗原性安定(高温を避けること)。単味ワクチンとDTP三混、Hib、A肝との混合ワクチンもあり、混合ワクチンと各ワクチン単独接種の間に免疫獲得状況に差はなく、干渉したりしない。 @免疫原性、臨床的有効性、有効率:液性・細胞性免疫ともに獲得良好。3回接種で95%を超える接種者が感染防御レベルを超える免疫獲得。40歳をすぎた接種者は抗体獲得やや低下、3回接種後の抗体価が低い例では追加接種によく反応する。最近のメタ解析でも出生時HBワクチン接種の有効性が証明されている。 Aワクチン接種量と接種:一般的に新生児と15歳以下小児では成人の半量を筋注。新生児では生後24時間以内が望ましく、BCGとか複数の単独ワクチンを同時に接種する時には接種部位を別々にすること。 B接種スケジュール:選択肢は多いが1回目は出生直後、24時間以内(これは低侵淫地区でも)。その後少なくとも4週の間隔をおいて2回か3回。間隔をあけることで抗体価は上昇するが陽転率がよくなるわけではない。通常初回は3回、1回目は単独、2回目3回目は他の定期接種と混合または同時接種。その国の定期接種スケジュールにあわせ、4回の場合も。施設における出産とか訓練を受けた助産スタッフの指導がHBワクチン普及に関連。中断した場合残り回数を追加。未熟児の場合、成熟児と同じでよいが出生時体重2kg未満児では1回目を勘定にいれず、その国のスケジュールでその後の3回を実施。 C"catch up" 作戦:低侵淫度地域(血清疫学調査が重要)居住者では医療従事者、医療関係学校入学者、高侵淫度地域への旅行者、医療現場で針刺しリスクの高いものへの現場中心の"catch up"作戦履行が重要となる。

    (3)ワクチンによる免疫持続と追加接種の必要性:台湾の調査で15〜18年間、ガンビアの調査では15年間は新生児接種・追加接種後の抗体価は安定しており、他の経過観察調査でも新生児接種後22年間有効との報告もあり、いまだ結論は得られていなくて今後の検討が必要であるが、現在のところ、追加接種は勧められていない。

    (4)免疫不全者への接種:HIV陽性妊婦からの出生児にはHIV感染対策を(まだ一定の結果が得られてなくて方針も確定していないが)優先。

    (5)禁忌:初回とか2回目3回目でアレルギー反応をおこした者。

    (6)ワクチン接種前後の血清検査:ワクチン接種前の血清ルチーン検査は原則としてすすめない。但し出来る状況下では接種対象の選択、接種後の抗体獲得判定に抗体検査が実施されている。抗体測定が勧められるのは(1)医療事故、(2)HBs抗原陽性妊婦からの出生児、(3)慢性腎透析者とHIV感染者、(4)HBs抗原陽性の男性同性愛者のパートナー。ワクチン接種後1〜2ヶ月で抗体測定。

    (7)ワクチン接種後の副反応:稀。軽症が多い。アナフィラキシーの報告は稀でギランバレ症候群や多発性硬化症のような脱髄疾患の報告はない。

    (8)免疫グロブリンによる受身免疫:HBワクチンに対する免疫グロブリン(HBIG)投与が(1)HBs抗原陽性妊婦の新生児に対し出生時にワクチンと同時に投与、(2)針刺し事故直後、(3)性感染症リスク後、(4)肝移植で感染リスク例、に実施されている。いずれも原則としてワクチン接種と同時に実施。

    (9)WHOのHBワクチン公的見解:HBV高侵淫国=HBV慢性感染が新生児期感染が主体である国=では生後24時間以内に全新生児に定期接種としてHBワクチン接種を勧める。HBV低侵淫国では妊婦の検査や新生児ワクチン接種が可能かどうか、状況に応じて考えること。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年9月25日(84巻39号)
  • 麻疹コントロール進捗。WHOアフリカ地域。01〜08年。

    01年、WHOのアフリカ地域46ヵ国は05年には1999年比で麻疹死亡を50%減らすという世界作戦参加を開始。WHO/ユニセフの麻疹死亡減少作戦に含まれているのは(1)麻疹ワクチンを含むワクチン第1回接種(MCV1)を全ての小児に実施する。(2)補充予防接種活動(SIA)で2回目接種(MCV2)接種の機会を作る。(3)麻疹治療改善。(4)症例毎の検査室診断サーベイランス実施。WHOアフリカ地域では01年目標は達成され、次の目標を麻疹死亡90%減に設定。本報はWHOアフリカ地域における進捗状況の概略である。

    (1)定期接種:WHOアフリカ地域ではMCV1定期接種を生後9ヶ月に実施。WHO/ユニセフの推定によればMCV1定期接種率は01年51%が08年73%に増加(グラフあり)、08年の同地域の46ヵ国中42ヵ国はMCV1接種率60%を超え、22ヵ国で80%を超え、9ヵ国で90%を超えた。MCV2については5ヵ国が実施。うち2ヵ国は70%以上、3ヵ国は80%以上となっている。

    (2)定期外予防接種活動(SIA):(注:2種類あり。@流行状況に応じて地域・対象を設定して一斉接種を短期間に実施=catch-up SIA 。A実施できなかった者など状況を見て実施=follow-up SIA.)。00年以前にcatch-up SIA完了していたのは南アフリカなど7ヵ国、08年末にはアルジェリアなど3ヵ国を除き全ての国が完了。01〜08年、約397,625,156名の小児がSIA参加。うち236,594,609名(34ヵ国)はcatch-up SIA、161,030,547名(39ヵ国)はfollow-upキャンペーンで接種(国別一覧表あり)。

    (3)麻疹サーベイランス:1980年代から臨床診断による報告がWHO/ユニセフ合同報告様式に従い各国からアフリカ地域事務所に届くようになり、99年から全ての臨床診断例についてWHOの支援で検査室診断が実施されることになった。麻疹IgM抗体で実施。集団発生の場合IgM抗体で確認できれば疫学的なつながりのある例は以後の例はやらなくてもよいとし、08年12月にはアフリカ地域で6ヵ国を除き症例別の報告が届くようになった。症例別の報告は(1)80%を超える例からの採血、(2)非麻疹発熱発疹症が人口10万当り2例を超えること、を目標として設定、08年には症例別の報告のあった40ヵ国の21ヵ国で80%を超える地区の1例以上の疑い例の報告があり、24ヵ国で人口10万当り2例を超える非麻疹発熱発疹症の報告、16ヵ国でこの両方の報告があった。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年9月18日(84巻38号)
  • オンコセルカ症

    第18回オンコセルカ症(オ症)に関するアメリカ地域カンファレンス。08年11月。現在WHO南北アメリカ地域でオ症が常在するのは6ヵ国(ブラジル、コロンビア、エクアドル、グアテマラ、メキシコ、ベネズエラ)の13地区である。オ症排除アメリカ計画(OEPA)は常在諸国とWHOアメリカ地域事務所(PAHO/WHO)、カーターセンター、国際ライオンズクラブ、米CDC 、ビル・メリンダ・ゲイツ基金、メルク社などが参加、作戦のゴールは少なくとも年2回の経口イベルメクチン集団投与(Mass Drug Administration、MDA)で常在地域住民の少なくとも85%に投与されることであり、PAHOの主要行事となっている。オ症アメリカ地域カンファレンス(IACO)は関係機関・関係者の参加で毎年開催、今回は08年11月12〜14日メキシコで90名を超える参加者の出席で開催、MDA参加率が重要な話題となった。アメリカ地域のMDA実施地区はオ症排除が進むにつれて06年には13地域、投与人口は852,721人であったのが08年に9地域、736,983人に減少、4地域では08年には中止されている。WHOのオ症排除認定基準はガイドラインとして治療後サーベイランスで3年間全国新規患者の発生を認めないこと、となっている。上記08年MDA実施数は前年の国勢調査を母数として推定すると実施率92.9%となっている。国別の状況として@ブラジル:ベネズエラ南部と地続きの広大で人口密度の少ない地域で常在。Aコロンビア:常在地1ヵ所の07年までのMDAを09年中止。Bエクアドル:常在地1ヵ所。08年の第1回MDAが85%に達していない。第2回で93.8%と目標の85%を超えた。Cグアテマラ:常在地だった4ヵ所のうち1ヵ所でMDA実施。08年の実施率92%、他の3ヵ所は06〜07年排除されMDA中止。Dメキシコ:常在地だった 5ヵ所のうち2ヵ所で08年MDA実施。Eベネズエラ常在地は3ヵ所。ブラジルとの国境地帯。人口の94%にMDA実施。これら6ヵ国の排除認可申請予定年のグラフあり。

  • ワクチン由来ポリオウイルス。世界における検出状況。08年1月〜09年6月。

    1988年世界保健会議が目標として世界からのポリオ根絶を決議、以後世界ポリオ根絶作戦の結果野生株ポリオウイルス(WPV)感染発病例数は世界的に減少、08年にWPVの伝播断絶が出来ていないのはアフガニスタン、インド、ナイジェリア、パキスタンの4ヵ国となっている。しかしながらワクチン由来ポリオウイルス(VDPV)による麻痺性ポリオ流行が経口生ワクチン(OPV)接種率の低い地域で目立ち、一方でOPV接種を受けた免疫不全者個体でOPVウイルスが持続感染、感染源となる可能性があり、WPV伝播が排除された地域でのOPV中止・不活化ポリオワクチン導入が検討されている。本報は08年1月〜09年6月のVDPV検出状況の要約で、同期間VDPV流行(伝播、circulating VDPV、以下cVDPV)の新規事例が2事例確定。4〜20例(コンゴ民主共和国とエチオピア)。cVDPVは従来からナイジェリアで持続していて同期間に292例あり。免疫不全のポリオ麻痺患者でVDPV検出(以下iVDPV)が同期間に2例(アルゼンチンと米国)、由来不詳のVDPV(以下aVDPV)は11ヵ国で分離されている。

    (1)VDPVの特性:麻痺性ポリオを発症、伝播する可能性あるポリオウイルス。OPV親株のセービンワクチン株の主要表面蛋白VP1をコードする遺伝子の配列解析により(1)変異が1%未満のセービンワクチン関連株、(2)1%を超えるVDPV、(3)ワクチン株と関連のないWPVに分けられ、さらに(1)2例以上の麻痺患者をみた場合をcVDPV、(2)免疫不全患者関連のiVDPVと(3)由来不詳とか環境材料から分離されたaVDPVに分けられる。

    (2)VDPVのウイルス学的検査:ハイブリダイゼーション、RT−PCR、免疫学的なELISA法などの組み合わせが採用される。

    (3)cVDPV各論:a.コンゴ民主共和国:セービン2型関連ウイルスが東部カタンガ州で麻痺患者から分離。遺伝子解析からいくつかの集団に発生していることが判明。b.エチオピア:4例cVDPV2型。c.ギニア:象牙海岸からの難民女児6歳。2型。ナイジェリアの株と類似。d.ナイジェリア:1型と3型WPV流行が常在している北部カノ州を中心にcVDPV2型が毎年発生中。定期外補充予防接種活動(SIA)が06年から26回実施されているが北部では接種率が低いままである。

    (4)iVDPV:アルゼンチンの15ヶ月男児。先天性無γグロブリン血症。OPV定期接種後麻痺発症。VDPVが1ヵ月以上の間隔で2回分離。周囲の接触者からは分離陰性。米合衆国44歳女性。複合先天免疫不全。神経合併症などで09年3月死亡。VDPV2型が便材料から分離。13年前にOPV3回接種、これが感染機会と考えられる。

    (5)aVDPV:アンゴラで麻痺例から2型DVPV分離。2例。中国で18ヶ月麻痺児から2型分離。エジプト下水材料から2型1株、エストニア、フィンランド、インドのムンバイ、それぞれの下水材料、イスラエル(87~88年WPV1の流行後定期的調査)の下水材料、インドではアッサム州の麻痺患児から1型1株、ビハール州AFP患児からVDPV2型、ウタルプラデシュ州麻痺患児からVDPV3型、ロシアで健康児から2型、ソマリアで麻痺患児から2型、スイスで下水材料から1型と2型のVDPVが分離されている(aVDPV各株の遺伝子配列のずれの%が記載されている。略)。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年9月11日(84巻37号)
  • ポリオウイルス。野生株の研究室・検査室(以下ラボ)内封じ込め。国立ラボ一覧完成。  08年12月。西太平洋地域。

    ポリオ野生株(WPV)の流行が根絶された場合、感染性WPVやウイルス材料が存続するのはラボ内だけとなる。08年5月、世界保健会議は全てのWHO加盟国にWHO野生株封じ込め計画に従い第1相ラボ内封じ込め活動を依頼した。第1相活動はWPVを扱うラボ全てが対象で、西太平洋地域では99〜08年の間に37ヶ国に77,260のラボ、08年1相終了時に45ラボがWPVを保有していた。本報は当地域の封じ込め活動の概略である。第1相活動開始は97年、ガイドライン完成99年、以後各国のWPV保有ラボ調査と不要WPVの処分廃棄、生物学的安全レベル維持が勧告され、2000年10月、西太平洋地域全域がポリオフリーと認定された時点で全加盟国は第1相活動を開始、06年、第1相は膨大な数のラボを保有する中国と日本以外で完了。その後活動は進捗、08年時点でWPVを保有しているラボ数は中国27、日本15、オーストラリア2、韓国1となっている(完了国数と保有ラボ数のグラフ、保有の理由=診断材料、研究教育用、資材用などと保有株数の一覧表あり)。

  • ポリオ。09年8月18日時点WHO報告数。

    AFP調査。野生株ポリオ患者数。09年におけるポリオ確認患者数と野生株確認患者数国別一覧表。多い順にナイジェリア487(野生株確認患者数363)、インド206(206)、スーダン44(44)、パキスタン35(35)、象牙海岸24(24)、ベニン20(20)、アンゴラ19(19)、ケニア17(17)、アフガニスタン17(17)など。

  • オンコセルカ症(オ症)。排除可能性。

    イベルメクチン投与によりオンコセルカ症が排除可能と09年7月21日、WHOは発表。これまで限られた地域で実施されていたイベルメクチンによるオ症排除の可能性をマリとセネガルの広い地域で履行、可能性立証。

    (1)伝播予防の年間治療:オ症は川沿いに発生するブヨが媒介する糸状虫症で、失明に至るのでRiver blindnessと呼ばれている。メルク社が開発したイベルメクチンの年1回ないし2回の内服で駆除可能。同社の寄付により無料でアフリカ26ヶ国で6千万人を超える人々08年に投与を受け、排除の可能性が確かめられた。

    (2)さらに必要な研究:いつ中止するか。財源をどうするか、など。

  • 感染症関連WHOウェブサイト一覧。
(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年9月4日(84巻36号)
  • パンデミック新型インフルエンザA(H1N1)の世界インフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN):検査室サーベイランスと対応。

    <背景>今回のパンデミー開始以降、WHOにより作られたGISNが情報交換、施策決定に大きく貢献している。GISNはWHO5WHO地域WHO協力センター(WHOCCs)、4基本的標準検査室(ERLs)、99ヶ国の128国立検査室が参加している。本報は最近のGISNの活動のまとめである。

    1.診断検査法:今日までに米CDCが開発したPCRキットが600を超える米国と世界のGISN参加検査室に配布。HI抗体テストキットを米国と25ヶ国の40検査室に配布。多くの他の検査室は新H1N1ウイルス検出と確認のためのリアルタイムPCR、従来のPCR、遺伝子配列決定プロトコール開発。WHOがこれらの活動支援。

    2.新パンデミックウイルスと季節性インフルエンザウイルスの混合流行監視:インターネットによる報告網FluNetとWHOへの直接情報であるWHOCCsでデータ収集すると4月19日(17週)〜8月1日(31週)に60,655検体がインフルエンザA陽性で35,585(56.7%)新型インフルエンザA(H1N1)陽性であった。季節性に対する新型の比率は17〜31週で増加している(図あり)が、この時期流行している国全てからFluNetに報告が届いているわけではないので注意が必要である。8月1日までに119ヶ国8,042検体の臨床材料と2,000株のウイルス分離株がWHOCCsに分配され、8,062検体がテストされ6,153(76.3%)検体がインフル陽性、うち3,586(58.3%)検体が新型A、1,990(32.3%)検体が非新型A、577(9.4%)がB型であった。流行期に入った南半球諸国などで従来の季節型から新型への入れ替わりが目立っている(グラフあり)。

    3.パンデミックA(H1N1)ウイルスの進化監視:抗原性と遺伝的特性。GISNによる監視。8月1日までに56ヶ国から119事例の搬入がWHOの資金でWHOCCsあて実施。全ての送付ウイルスはHI反応による抗原性はフェレットの免疫抗体による交差反応でA/カリフォルニア/7/2009と同一。遺伝子配列解析の結果から進化による他のインフルエンザウイルスとの新しい組換えは起っていないことも明らかになった。WHOCCsの血清疫学的研究から高齢者がある程度の交差中和抗体をもつことが示唆されている。日本からの報告では30名の72〜103歳(平均83歳)の高齢者の40%が40<の中和抗体を新型ウイルスに対して有しており、米国のデータでは<30歳の小児青年ではほとんどないのに対し60歳以上の成人では約1/3に≧80の中和抗体が検出されている。最近のA/ブリスベーン59/07類似ウイルスを含む季節性インフルエンザワクチンによる交差反応による新型ウイルス防御は期待できない。

    4.抗ウイルス剤耐性監視:GISNによる監視が継続されている。一般的に言って新型ウイルスはアマンタジン・リマンタジンには耐性であるがオセルタミビルとザナミビルには感受性で、オセルタミビル耐性ウイルスが12株、カナダ、中国、デンマーク、香港、日本、シンガポール、米国で分離されているが、全ての例が典型的インフルエンザ症状の経過をとり完治、合併症なし。散発的で接触者に伝播はおこっていない。検索全株がザナミビル感受性。

    5.ワクチンウイルスと試薬開発:a.候補ワクチン株:抗原分析と遺伝子解析から5月26日、WHOはA/カリフォルニア/7/09ウイルスをワクチン株として推奨。b.パンデミックワクチンウイルスと試薬開発:WHOCCsは関係機関、メーカーと共同で新型ワクチン候補として現在までに10種の組換えウイルス、4種の野生株ウイルスを配布。試薬についてもWHOERLsはメーカー共同開発中

    6.情報交換:WHOはGISNと共同、WHOウェブサイト活用中。

  • ポリオ。野生株とワクチン由来ウイルスの世界検出状況。08年1月〜09年6月。

    現在97ヶ国、144検査室参加の世界ポリオ検査室ネットワークは1988年にWHOにより設立され、急性弛緩性麻痺(AFP)材料などからのポリオウイルス分離を実施、野生株(WPV)かワクチン由来株(VDPV)かの同定、輸入野生株の由来、国内流行がないことの確認などでポリオ根絶作戦(Polio Eradication Initiative)に大きく貢献している。本報は08年1月〜09年6月の概略である。

    (1)検査の精度管理、新導入術式:WHOは毎年、ネットワーク参加検査室の精度管理を実施。08年にはより迅速なウイルス検出のための新術式導入精度管理実施。08年には参加144中136(94%)検査室が合格。報告期間に関してはWHOの6地域中西太平洋地域が「AFP患者発症後60日以内に型内同定ITD報告」という目標に間に合わなかった(08年、09年の一覧表あり)。

    (2)仕事量:同時期、ネットワーク検査室は247,794のAFP便材料を検査、14,260株のポリオウイルス、46,462株の非ポリオウイルス検出、前年同期の仕事量の6%増。新術式導入で報告期間短縮、ITD実施可能な検査室数増加。

    (3)WPV検出と伝播経路:22ヶ国のAFP材料から4,261株のWPV分離(表あり)。12ヶ国は1型野生株(WPV1)だけ、1ヶ国はWPV3だけ、9ヶ国はWPV1とWPV3両方。アフリカ地域17ヶ国、東地中海地域3ヶ国、東南アジア地域2ヶ国。2型WPVはなかった。遺伝子解析による伝播経路研究の結果、05年以降の流行WPV4系列だけで、ナイジェリア常在の西アフリカB(WEAF−B)と呼ばれるWPV1とWPV3、アフガニスタン、パキスタン、インド常在の南アジア(SOAS)と呼ばれるWPV1とWPV3で、この常在4ヶ国で世界のWPV分離株の83%を占めている。WEAF−B系列陽性の非常在国は14ヶ国、SOAS系列陽性の非常在国3ヶ国、両方陽性の国が1ヶ国となっている(一覧表あり)。アフリカ諸国のWPV伝播はナイジェリアからWEAF−Bが直接近隣諸国へ、もしくはチャド、スーダンなどを経由して伝播、さらに東アフリカに伝播、一部はインド由来のSOAS起源ウイルスがアンゴラへ伝播、アジアではインド由来のWPV1がネパールに輸入、国内伝播をおこしている(アフリカの国名の羅列、略)。インドではSOAS系列ウイルスがウタルプラデシュ、ビハール両州で常在、大都市ムンバイの下水からも分離されている。パキスタンとアフガニスタンでは国境の部族支配地域を中心にSOAS系列ウイルス常在。

    (4)ワクチン由来ポリオウイルス検出:AFP患者から分離されたセービンワクチン類似9,999株の検索では4.6%がワクチン由来伝播株(circulating Vaccine Derived Poliovirus)であった。

  • Dracunculiasis(メジナ虫、ギニア虫)例数報告。09年1月〜7月。

    常在国報告例数:スーダン1,658、ガーナ236、マリ31、エチオピア23。輸入例:ゼロ。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年8月28日(84巻35号)
  • 麻疹ワクチン。WHO見解文書。

    04年3月、当週報に掲載された公的見解文書を今回改訂。

    http://www.who.int/immunization/documents/positionpapers/en/index.html参照。

    <背景>

    (1)麻疹の疫学:ワクチンがなかった時代、90%を超える10歳以下小児が罹患・発病していた。気道飛沫感染か直接接触感染、感染機会から発疹出現まで10〜14日、発疹出現前3日〜出現後4日まで感染源となり、熱帯では乾季、温帯では冬〜早春が流行期である。ワクチンで予防可能な疾患であり07年には世界の麻疹ワクチン初回接種率は82%に達し、00年から07年で麻疹死亡は75万人から19.7万人に減少した。しかし麻疹死亡・後遺症は保健インフラ不良地域では重要であり、接種率維持向上が重要課題となっている。

    (2)病原と疾患:RNAウイルス。抗原構造の単一性・世界共通性維持。遺伝子はH蛋白とF蛋白を含む8種の蛋白(ウイルス中和はH蛋白抗体)をコード、遺伝子解析から23の遺伝子型があり、分子疫学に利用されている。潜伏期末期に高熱、鼻汁、咳、結膜炎の前駆期が数日あり、その後固有の発疹出現、発病後7〜10日で治癒。重症度は罹患年齢、栄養、居住地域などに左右され、途上国では罹患死亡率5〜10%、先進国では死亡は稀となったが健康児でも可能性あり、比較的多い合併症として中耳炎、喉頭気管支炎や肺炎がある。途上国では長期の下痢が乳児で問題となる。麻疹脳炎の合併が1,000例に1例、SSPEが1〜10万に1例合併する。

    (3)麻疹とビタミンA:ビタミンA不足による失明が麻疹合併症として特にアフリカで多発。麻疹治療中ビタミンA2回投与の有効性が確認されていてWHOは投与を勧めている。

    (4)麻疹後の防御免疫:液性免疫、細胞性免疫共に獲得、終生免疫獲得。

    <麻疹ワクチン>

     多種類の単独ワクチン・混合ワクチン(measles containing vaccine, MCV)が入手可能。MR、MMR、水痘を混ぜたMMRVがあるが免疫原性も安全性も差はない。

    (1)ワクチン株とその性格:多くの麻疹弱毒生ワク株は1954年エンダースとピーブルスが分離したエドモンストン株由来で、シュワルツ株、AIK-C株などがよく知られ、非エドモンストン由来に微研CAM、レニングラードなどが知られている。副反応、免疫原性は単独ワクチンであれ混合ワクチンであれ上記のように大差ないので本報では「麻疹ワクチン」と記載。接種者から周囲への人→人伝播は認められない。凍結乾燥品でワクチンの保管、溶解液の保管、溶解後のウイルス量などは検定基準があり、溶解後は2〜8℃保管、溶解後6時間以内に接種すること。

    (2)MCV接種後の免疫応答:自然感染同様の液性免疫、細胞性免疫獲得。IgM、IgA、IgG抗体産生、CD4、CD8などT細胞免疫獲得。実際には抗体獲得状況はELISAで測定されることが多い。生後6ヵ月以前の麻疹ワクチン接種は免疫機能の未熟性だけでなく、妊娠中の母体からの経胎盤受動免疫により不良であり(母体の自然感染、ワクチン接種に差はない)、生後8〜9ヵ月児で抗体陽転率89.6%、11〜12ヵ月児で99%と良好になる。第1回接種(MCV1)で抗体獲得しなかった児の第2回接種後の抗体獲得は良好で97%、MCV1で獲得した抗体はその後低下する(時に検出不能にまで)が免疫記憶は残されており、MCV2ないし自然感染機会に際し免疫応答あり、防御機能が発揮される。

    (3)ワクチンの有効性と予防効果持続:良好。中和抗体レベル持続26〜33年間良好という報告あり。ただし1回接種だけで自然感染によるブースターなしでも終生免疫が続くかは異論があり、下記の追加接種が話題となる。

    (4)配布作戦:麻疹ワクチン実用化初期の頃は定期接種拡大計画(EPI)で1回接種だけであったがその後生後9ヵ月で1回接種児の抗体獲得失敗児10〜15%という事実から作戦が変更され08年時点でWHO加盟193カ国の192カ国が2回接種配布システムをひいている。全国一斉定期接種2回の国、2回目を補充定期外接種(SIA)で実施している国、未接種時拾い上げ作戦など各国が実情にあわせ作戦展開中。

    (5)HIV感染と麻疹ワクチン:WHOのワクチン安全性に関する世界助言委員会(GACVS)による系統的レビューとメタ解析が最近発表された。安全性、有効性共に問題なし。

    (6)副反応:一般的に軽く、一過性。接種24時間以内の軽い局所反応あり。5%以下に7〜12日目に39.4℃までの発熱1〜2日間、3千人に1人熱性痙攣あり。約2%に一過性発疹。血小板減少性紫斑病3万人に1例。MCV2ではアナフィラキシー(10万当り1例)以外、副反応なし。副反応は単独ワクチンでもMMR、MMRVでもほぼ同じ(MMRVで熱性痙攣やや多いという報告あり)。多くの国の報告でギランバレー症候群を含む神経系後遺症なし。

    (7)適応、注意事項、禁忌:小児期の定期接種、青年の追加接種、いずれも特別な禁忌事項なし。免疫グロブリン製剤については投与後3〜11ヶ月は麻疹ワクチン接種せず、麻疹ワクチン接種後2週間はグロブリン製剤投与をしないこと。高熱など全身疾患、妊婦は接種見合わせ。ワクチン含有物にアナフィラキシーを呈したものは禁忌。

    (8)麻疹ワクチンの経費有効性:ラテンアメリカ、カナダ、米国などで2回接種の経費有効性が認められ、アフリカや東南アジアなどでSIA、集中的追加接種キャンペーンの経費有効性が認められている。

    (9)麻疹ワクチンに関するWHO見解:禁忌者を除き小児であれ成人であれ感受性者は接種を勧める。免疫度93〜95%を維持すること。

    (10)MCV1の最適接種年齢:麻疹死亡リスクのある流行国では生後9ヵ月。感染リスクの少ない国では生後12ヵ月過ぎ。

    (11)定期的SIAの間隔:就学前定期接種率に応じて。

    (12)定期MCV2導入:流行状況とMCV1接種率に応じて決定。

    (13)MCV2定期接種準備の最適時期:麻疹が流行しMCV1接種が生後9ヵ月の国では生後15〜18ヶ月にMCV2を1ヶ月あけて接種。非流行国でMCV1接種率が90%を超え小学校入学率が95%を超える国では小学校入学時。

    (14)追跡SIA中止の要件:MCV1接種率が90~95%を超え、MCV2定期接種率が3年間90〜95%を超えること。集団免疫度が90〜95%を超えていること。

    (15)HIV陽性児:接種すべし。

    (16)集団発生時の対応:2日以内に緊急接種。免疫不全者には3〜5日以内に免疫グロブリン投与。

    (17)ワクチン安全性サーベイランス:重要。WHOの指針が発表されている。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年8月21日(84巻34号)
  • パンデミックインフルエンザA(H1N1)09の数理モデル化。

    <背景>集団発生時の対処方針決定にデータの数理学的、電算的モデル化が有用であることは03年のSARSの経験で明らかであり、今回の新インフルA(H1N1)についても09年7月始め、数理モデル化ネットワークをWHOが専門家委員会を招集、本報は会議の討論と進行中のモデル化の概略である。

    <モデル化の公衆衛生優先順位>:伝播動態、個人レベル・集団レベルの重症度、薬学的・非薬学的介入。

    <伝播動態>:世界各国で得られた結果から試算。a.感染者の基礎的再生産数(basic reproduction number):地域、報告によりまちまち。米合衆国と欧州で1.2〜1.7、日本の神戸の発生で2.3、封じ込め作戦で低下(封じ込めでどれくらい低下するかグラフあり)。b.二次患者発病までの日数は初発患者の発病後2.5〜3日。潜伏期は1.4日。家族内の二次伝播は10〜30%、学級内二次伝播は日本では低くて<1〜5.3%。c.伝播の季節差:重要。よく分かっていない。09年新インフルの南半球の伝播注目。

    <重症度特性>:個別の問題(基礎疾患の性質・治療)と集団特性(集団免疫度、対策履行状況)に左右される。個別重症度は通常罹患死亡率(CFR)、要入院率で表されるが軽症や不顕性感染を含まず、母数が過少であるという問題があり、さらに報告の遅れも問題となる。新型A(H1N1)の集団免疫度に関しては血清サンプルの収集対象と標準的抗体測定法の選択の問題が残されている。免疫度測定には年齢とかリスク群のようなどの集団を優先調査するかの問題も関連している。

    <薬学的・非薬学的介入の影響力>:a.非薬学的介入:学級閉鎖、集会制限、有症者自宅隔離、手洗いやマスクなど個人的手段。b.薬学的介入:ワクチン接種と抗ウイルス剤投与。ア)ワクチン接種:ワクチン供給が充分であればパンデミー中断のために伝播源である青年、小児に対する接種が作戦の中心となるが、供給不充分のうちにパンデミー開始の場合接種優先順位を考慮する(流行の山が接種でどう変わるかグラフあり)。イ)抗ウイルス剤:タミフル耐性ウイルスが09年7月27日までに6株(タミフル治療例から5株がカナダ、デンマーク、日本で、非治療例が香港で1株)分離されているが周囲への人→人伝播は認められていない、監視が重要である。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年8月14日(84巻33号)
  • ハンセン病。09年の世界の状況。

    ハンセン病コントロールの主要原則は新規発病例の時機を得た発見と早期の多剤併用治療(multidrug therapy, MDT)である。この原則は常在地で広く履行、全ての例は無料MDTとなっている。各国とも末端までのプライマリヘルスケアシステム網がはりめぐらされ、地域センターでの診断と治療、合併症の予防が実施されている。

    <ハンセン病の疾病負担>09年、121カ国(地域)から報告あり、31カ国がアフリカ、25カ国が南北アメリカ、10カ国が東南アジア、22カ国が東地中海、33カ国が西太平洋各地域となっている。08年年間新規例は121カ国から249,007例だった(地域別の表あり)。02〜08年の新規例数は減少傾向で(表あり)、07年/08年比で3.54%減。08年に1,000例以上の新規例があったのは17カ国で、この17カ国で世界全体新規例の94%を占めていた(表あり)。新規例中の多菌型(MB)、小児、女性、2度以上の障害者の占める割合は地域・国でまちまちであった:例えば新規患者数最多の東南アジア地域でMBがバングラデシュ45%〜インドネシア87%、女性がインド35%〜タイ42%、小児がタイ3%〜インドネシア11%、2度以上の障害者がインド3%〜ミャンマー13%であり、次に多い南北アメリカ地域ではMBがボリビア39%〜メキシコ78%、女性がアルゼンチン7.2%〜キューバ46%、小児がアルゼンチン0.5%〜ブラジル7.5%、2度以上の障害者がアルゼンチン3%〜コロンビア10%であった(他の地域:略。09年初頭の登録患者数、新規患者数、新規患者のMB数、2度障害者、再発例の国別一覧表あり)。

    <登録患者数の多い国>インド86,331例、ブラジル41,817例、インドネシア21,538例、ナイジェリア6,906例、コンゴ共和国4,832例、エチオピア4,238例、バングラデシュ3,928例、ネパール3,644例、中国3,388例、フィリピン3,338例などであった(国別一覧表あり)。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年8月7日(84巻32号)
  •  ワクチンの安全性に関する世界助言委員会会議。09年7月17〜18日。

    WHOが開設したWHOと独自の立場で世界的に重要なワクチンの安全性に関する助言委員会の第20回会議。マラリア、ロタウイルス、人パピローマウイルス(HPV)、新型インフルエンザウイルス各安全性とHIV感染児の麻疹ワクチン接種安全性について検討された。

    (1)実験的マラリアワクチンRTS、S/AS01の安全性:熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト抽出C末端から約190アミノ酸にB肝ウイルスS抗原結合、アジュバント添加ワクチン。サハラ南縁諸国を中心にEPI(定期接種拡大計画)小児を主体に実施された1〜3相試験の報告を検討。委員会の結論は接種人数が比較的少ないけれど安全性は許容出来そうなこと、アジュバント除去などワクチン安全性考慮がさらに必要、であった。

    (2)ロタウイルスワクチン接種年齢:09年4月、WHOのワクチン作戦助言専門家会議(SAGE)が認可されている2種類のワクチン(ロタテックとロタリックス)の有効性と安全性を検討(既報)。全ての乳児の定期接種に導入することを提言。5歳未満の小児の死因の10%以上が下痢症であるような国々で導入すべきことを強調した。ロタテックは3回接種、ロタリックスは2回接種でSAGEは接種開始を生後6〜15週(最終年齢32週)とすることを両ワクチンについて提言、これにより接種率向上(初回接種50%→70%)が期待され当委員会もこの年齢拡大を支持。安全性に関し接種年齢拡大による腸重積増加の問題があるがロタワクチン非接種児の腸重積は乳児期後期に多く接種児の腸重積発病は偶発的と考えられる。今後も監視が重要である。

    (3)HPVワクチンの安全性:委員会は安全性報告をレビュー。09年3月には4価または2価HPVワクチンが>6千万回分、21ヶ国において国の予防接種または個別接種として実施された。青年男女における市販後の安全性データが公的当局とメーカーから提出され、委員会は結果を検討、安全性は良好で接種部位の局所反応と筋痛だけ。目まい、失神があることが注意事項として記載されている。妊娠直前とか妊娠中の接種と流産とは無関係という成績が得られているが委員会は今後も調査が必要と提言。委員会はHIV侵淫地区のアフリカ諸国での調査を歓迎、背景の異なる各国での安全性調査は今後も必要である。

    (4)新型インフルエンザワクチンの安全性評価:委員会は安全性上の問題点となりうる二点について検討:豚インフルエンザワクチン接種時に問題となった副作用としてのギラン・バレー症候群(GBS)とアジュバント添加。@GBS:1976年、米合衆国で豚インフルエンザワクチン接種後8週に少数であるが重視すべきGBS発症、接種10万当り1例。原因不明。新型A(H1N1)ワクチンは豚型ウイルスの遺伝子分枝を含むので委員会として重視。その後、1976年以降の季節性インフルエンザワクチンによるGBS合併はゼロないし100万接種当り1例と稀であるが新型ワクチン接種に当り広く一般的なプロトコールに従ったサーベイランスが必要で、その準備が急務であると委員会は勧告。途上国などにおけるポリオサーベイランスで重要な急性弛緩性麻痺(AFP)との関連も討論された。Aアジュバント添加:3歳未満小児や妊婦などなどにおけるアジュバントの副作用についてはまだ明確になっていない。アジュバントを添加するのは初回か追加接種かとか、アジュバントと自己免疫疾患とか、データは得られていない。Bその他:A(H1N1)ワクチン株の選択、ワクチン製造法などに関し季節性インフルエンザワクチンに準じた認可のための条件検討が急務である。接種開始後の安全性・有効性監視サーベイランスシステムの構築を各国はチェックすること。

    (5)HIV感染児に対する麻疹ワクチンの安全性:委員会は09年2月までに出されている8データベースと723編の論文をレビューした。まとめ:@得られたエビデンスでは麻疹ワクチンはHIV感染児に重篤な副反応をおこしていない。何百万接種がHIV陽性児に実施され1例だけが重症副反応報告。要確認。AHIV感染児の方がHIV陰性児よりも死亡率が高いが、この差は麻疹ワクチン接種と関係なし。B多くのHIV陽性児で麻疹ワクチン接種後の抗体獲得良好。追加接種の必要性については要検討。C文献レビューから委員会はHIV陽性児に対する麻疹ワクチン接種に関するWHOの勧告の変更に必要性を認めないと結論。DCDリンパ球数低値など重症免疫不全では麻疹ワクチン接種は禁忌であるとWHOは勧告。今後の研究としてHIV陽性児の肺炎に占める麻疹と麻疹ワクチンの重要性やほとんど報告が得られていない高度活性抗レトロウイルス治療(highly active antiretroviral treatment, HAART)が麻疹ワクチン接種に与える影響とか、HIV陽性児への麻疹ワクチン追加接種の問題がある。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年7月31日(84巻31号)
  •  世界のコレラ。08年世界のサーベイランスのまとめ。

    WHOへの報告例数合計も報告国数も共に07年より増加しており、08年の報告登録例数は世界総計190,130例、死亡数5,143例(罹患死亡率CFR2.7であった(国別表あり)。07年比で患者数7.6%増、死亡数2.7%増、前年同様東南アジア、中央アジア、南部アジア、アフリカの広大な地域における50〜70万人の水様下痢の患者数は含まれていない。世界的傾向としてコレラ患者数は増加、今世紀に入り、5年毎の報告数累計は04〜08年が838,315例とその前5年間の24%増となっている(グラフあり)。死亡についても07年から08年には27.5%増、死亡例の98%はアフリカであった。CFRの分布の世界地図あり、08年のWHOへはラテンアメリカを除くWHO地域全て、56カ国からの発生報告があった。国内発生国が48カ国、輸入例の国が12カ国であった(地図あり)。WHO地域別ではアフリカが世界の94.3%、アジアが5%、北米は輸入例と国内例、欧州は輸入例だけであり、最大の流行はジンバブエとギニア・ビサウであった。08年、WHOは62事例の下痢発生の確認検査に参加、34カ国55事例(89%)がコレラ発生事例と確認された。うち45事例がアフリカ地域であった。世界的にコレラ報告数は実際の患者数よりはるかに少ないことが周知の事実で、報告もれ、診断基準や用語の不統一などサーベイランス上の大きな問題があり国によっては検査陽性例だけを報告したり、多数の国では急性水様下痢とだけされていたりしている。コレラは封じ込め可能な疾患であり、適切なサーベイランス、綜合的公衆衛生活動履行がハイリスク地区住民を感染から守るために重要であり、適切な治療、安全な水供給を含む環境整備・住民教育、適切な経口コレラワクチン(OCV)導入がポイントとなる。07年6月から施行されている国際健康規則(IHR05)が国際的な情報源として利用されている。多くの国がコレラ封じ込めのため膨大な努力を払っているが患者数の増加、CFR上昇はこうした努力がまだ不十分であることを示している。また、OCV導入に関しては有効性や経済性の評価が必要である。最近数年間ジンバブエの流行にみられるような症状の重症化、薬剤耐性株出現が緊急問題となっている。

    <伝播様式と発生>:

    a.アフリカ:多発国はアンゴラ、コンゴ共和国、ギニア・ビサウ、スーダン、ジンバブエ。この5カ国でアフリカ地域報告例の74%、死亡例の80%を占め、南アフリカ5カ国(マラウイ、モザンビーク、南アフリカ、ザンビア、ジンバブエ)でアフリカ地域の42%を占めている。最大の流行は08年8月中旬に始まるジンバブエの流行で首都ハラレ郊外の人口密集地区で始まり同国全ての州に拡大、09年7月までに98,591例、死亡4,288例(CFR4.3%)が報告されている(地図あり)。従来ジンバブエではコレラは比較的良くコントロールされていたが、最近の全国的保健サービス活動低下、基本的資材不足と訓練された人材不足がこの流行を来たしている。スーダンの流行は南部中心で、この2年間隣接する東アフリカ(ケニア、タンザニア)で報告数増加。西アフリカ各国ではガーナ、ニジェールなどで増加、目立つのはギニア・ビサウで(地図あり)、5〜11月に大流行、14,323例、死亡225例(CFR1.6%、僻地はさらに高い)の報告あり。

    b.アメリカ:中南米からは報告ゼロ。北米で輸入例と国内例合わせて7例。

    c.アジア:07年より15%増。11カ国から13,023例報告。目立つのはミャンマーからの越境者に関連したタイの患者数増加。報告数が多いのはアフガニスタン4,384、インド2,680、インドネシア1,007、ベトナム853で日本からは報告ゼロ。アフガニスタン以外の中央アジア諸国では発生しているが報告されていない。メコン川流域は流行地であり、バングラデシュも常在地、雨期の洪水後の流行が多い。

    d.欧州:6カ国22例輸入例。

    e.オセアニア:ゼロ。

    <株変異>:92年ベンガル湾沿岸のコレラ菌変異株O139発見が新しい大流行の可能性あり、と話題になった。コレラ菌O1とO139型の鑑別が各国で勧められている。08年、中国とタイにおける分離株でO139が見つかっているがアフリカでは流行は発生していない。最近新しい血清型の菌がバングラデシュで分離され東アフリカでも見つかり病原性が注目されている。前述のように多剤耐性菌が大きな問題となっている。

    <国際旅行と物流>:WHOとしては基本的に旅行制限、物流制限は勧告していない。旅行者の予防内服も勧めていない(無効であり耐性菌発生と不作用の問題)。情報収集とサーベイランス。発生国隣接地が重要。入国者のチェック(ワクチン接種証明書)、必要に応じて菌検査、汚染食品の持込みチェックと疑わしい食品の処分。

    <OCV最近の話題>:背景:WHOは従来の注射用不活化ワクチン接種は有効性が低く実用的ではないとして勧めていない。現在いくつかのOCVが有効性安全性を認められ、認可されている国もある。

    @WC/rBSワクチン:不活化コレラ菌O1全菌体にコレラトキソイドBサブユニットを結合、精製。2回投与。バングラデシュとペルーの治験で安全かつ有効。最近のバングラデシュの再調査で集団免疫増強が認められた。数カ国で認可されている。

    AWC/rBC変異ワクチン:ベトナムで改良。インドでも認可。

    BCVD103-HgRワクチン:認可されている唯一の弱毒生ワクチン。メーカーの事情で製造中断。入手できない。O1株の弱毒変異株を利用。米合衆国の成人の志願者治験で有効性あり、安全。インドネシアの大規模治験では有効性が認められなかったがミクロネシアでは有効だった。

    <OCV使用の可能性>:WHOにより提言されたコレラのコントロールの基本は基礎的な消毒と衛生であり、適切に応用されればそれだけで充分であるが完全に履行されることが困難な場合もあり、OCVが伝統的な方法を補うものと考えられ、いくつかのOCV集団接種がWHOの支援で開始されている。最初の03〜04年モザンビークで実施、安全性・有効性優秀(HIV多発国。HIVとの関連不明)。WC/rBSのリスク集団に対する緊急集団接種が南スーダン・ダルフル地区で04年、インドネシア・アチェ地区で05年実施。結果は有望であったが評価が非常に困難で、WHOの複合緊急時のOCV使用に関する提言(05年・カイロ)では多方面の要素を勘案した多原則的策定が必要で(1)流行発生リスク、(2)封じ込め能力、(3)集団接種実施の可能性、がポイントとなっている。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年7月24日(84巻30号)
  •  予防接種に関する専門家作戦助言グループ(Strategic Advisory Group of Experts、SAGE)のインフルエンザA(H1N1)09年パンデミーに関する特別会議。09年7月7日。  会議目的:(1)疫学:臨床の最新エビデンス解析。(2)季節性インフルエンザワクチンとA(H1N1)ワクチン製造量。(3)A(H1N1)ワクチン接種優先順位。

    (1)SAGEの勧告:1.全ての国は医療従事者のワクチン接種を最優先する(医療従事者の感染発病は医療活動レベルの低下をもたらし、同時に彼らが感染源となり施設内感染など感染拡大をもたらす)。2.ワクチン供給が充分でない時期、まず接種を考慮すべきグループとしてSAGEは下記を提言:@妊婦。妊娠中期・後期の感染発病重症化と流産・死産のリスク防止。従来の季節性インフルエンザワクチンの妊婦に対する接種の安全性は確認済み。A生後6ヵ月を超える年齢の慢性疾患患者(喘息など)。B15~49歳の健康青壮年(罹患・死亡減少目的)。C健康小児:感染拡大防止目的(現在のところ感染拡大防止が可能かはっきりしていない)。D49〜65歳の健康成人。E65歳を超える健康成人。いずれも罹患と死亡の減少目的。

    (2)SAGEの追加討論:@アジュバントワクチンの開発の検討をすること。A弱毒生ワクチンの有効性が期待される。B従来の季節性インフルエンザワクチンの安全性と有効性は確認されているが、A(H1N1)不活化ワクチンの安全性・有効性テスト急務。C迅速な国際情報交換が重要。

  •  09年A(H1N1)パンデミックウイルスの南北アメリカ入院患者の最新情報のまとめ。

    09年A(H1N1)感染で入院を要したカナダ、チリ、メキシコ、米合衆国の臨床像のまとめ。情報源は主としてWHOにより組織され支援された各国保健当局、さらに直接に保健医務官・医療担当者によった。

    (1)入院状況:WHOの09年5月の報告では入院を要したのはA(H1N1)確認例の2.6%であったがその後の確認検査対象例選択の変化などでこの数字の評価は注意が必要で、例えばチリでは以前は1.7%であったのが最近は3.8%となっている。米合衆国では全体として0.3%、ニューヨークでは09年7月7日時点で1%未満となっている。

    (2)入院例の特性:09年A(H1N1)例の大多数は軽症のインフルエンザ様疾患で入院を要したのはごく少数であった。入院例は全ての年齢層に及んでいたがやや高齢(15〜42歳)に多く、65歳を超える高齢者では比較的稀で死亡例は40歳以上が殆どである。カリフォルニアでは感染者全体の年齢の中央値は17歳、入院例の年齢中央値は26歳、死亡例年齢中央値は46歳であった。男女比は1:1、文化社会経済的背景ははっきりしない。入院の主な原因はウイルスに直接の侵襲によるウイルス性肺炎と急性呼吸障害症候群(ARDS)で二次感染による細菌性肺炎は稀であった(カリフォルニアの死亡例50例で7例。長期人工換気例で最近の院内感染があった)。

    (3)要入院例の基礎疾患:入院例の同時罹患背景疾患の有無については地域により差があり、カナダ全体では37%が1種以上の疾患があり慢性呼吸器疾患(含喘息)が最多、他に心疾患、腎疾患、免疫不全、妊娠があった。米合衆国では入院患者の>70%、死亡患者の>80%が季節性インフルエンザでハイリスクとされている基礎疾患を持ち、妊娠末期の重症・死亡と流産・死産が目立ち(時に緊急帝王切開が必要)、高度の肥満についてはまずメキシコから、次いで米合衆国各地やチリから報告があり基礎疾患としての重要性が注目されている(最近のミシガンからの報告では集中治療室で人工換気を要した10名のうち9名のBMIが30を超え、7名がBMI>40という高度の肥満であった)。

    (4)非定型的症状:嘔吐下痢などの消化器症状が感染者の50%に及んでいるが要入院例では少ない。23ヵ月児の乳児突然死症候群例が1例あり、小児の急性脳症合併例報告が米合衆国、チリなどから数例あり、チリからは黄色ブ菌、溶連菌感染症、肺炎球菌感染症合併例の報告もあった。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年7月17日(84巻29号)
  •  ポリオワクチン。ポリオ根絶助言委員会(ACPE)の1型3型2価経口生ワクチン(bOPV)勧告。

    07年11月ACPEはポリオ1型野生株(WPV1)と3型野生株(WPV3)が混合流行している地域にbOPV導入を勧告。09年6月11日ACPEによる治験の結果と最近の世界の疫学のレビューから定期接種、補充予防接種活動(SIA)によるbOPV接種導入が3価生ワクチン(tOPV)、単価1型、3型生ワクチン(mOPV1とmOPV3)に替わるポリオ根絶作戦として提言された:@北インドのようなOPV有効性不良地区。Aナイジェリア、パキスタン、アフガニスタンのようなWPV1とWPV3の混合流行国。Bネパール、サハラ南縁諸国のような輸入リスク国。CWPV再感染国。09年11月18〜19日次回ACPE会議で討論予定。

  •  新生児破傷風排除(Elimination)状況確認。タンザニア。

    02年のWHOの推定では世界の新生児破傷風(NT)患者数は21.8万例、死亡18万例でその39%がアフリカ地域で死亡7.2万例となっている。多くの国でNTの罹患死亡率は50%を超え、保健施設へのアクセスの悪い地域では80%を超えている場合もある。1989年、世界保健会議は世界からのNT排除を目標のひとつに設定。排除の定義として千出生当り1未満とした。NTは@出産可能年齢女性に対し妊娠前とか妊娠中に破傷風トキソイド(TT)を接種すること、A分娩後の処置など清潔な出産、で予防可能な疾患である。NT予防の原則作戦は妊娠可能年齢の女性に対するTTとか破傷風ジフテリア二種混合ワクチン(Td)の定期接種や定期外補充接種(SIA)と資格を持つ助産婦による清潔な分娩である。00年、58ヶ国がNTハイリスク国でうち14ヶ国(24%)が00〜09年4月の間に排除確認が可能で残り44ヶ国に排除努力が集中、99〜08年末、40ヶ国を超える国でTTによるSIA実施、8千万人を超える女性が接種を受けている。タンザニアでは1980年代から全ての妊婦を対象としてTT2回接種(TT2)を導入、02年にハイリスク地域2地域でTT2による妊婦SIA履行。その後のNT対策進捗からNT報告例数は00年の48例から05年の7例に減少。05年のNT死亡は千出生当り0.005となっているがこれは過小評価の可能性があり、タンザニア政府はWHOとユニセフにNT排除確認調査の支援を依頼した。

    (1)方法:07年5月開始。NTの最もハイリスクな地域の地域特性をタンザニア政府、WHO、ユニセフ資料をタンザニア政府厚生省、ユニセフ、WHOの専門家が検討、指標は(@)乳児のDTP3回接種率、(A)妊婦のTT2回以上(TT2+)接種率、(B)清潔な分娩の率、である。NT例数やNT罹患率は全ての地区の報告がNT排除閾値以下であり考慮されなかった(最もハイリスクと考えられる4地区と全国の一覧表あり)。

    (2)集団調査:タンザニア北西部、ブコムベ地区。07年6月21~28日、WHOの集団調査用プロトコールLQA-CSにより1回目975名、2回目1,760名の新生児を調査、調査数は調訪問可能な世帯数、世帯当り出生数などから算定。調整員が全てのスーパーバイザー、メディカルオフィサー、面接調査員に対しNTの教育(テストも)実施。

    (3)調査結果:1回目調査で2例のNT死亡例発見。2回目調査が必要となり、1回目と2回目調査で計5例のNT死亡例が見つかり、NTは排除されていないという結果となった。調査世帯数6,476、住民38,406名、調査新生児2,752名、新生児死亡数は108名、母親のTT1接種率95%、TT2接種率87%、TT3接種率65%で、男児49%、保健施設分娩35%、有資格助産婦による分娩が37%であった。

  •  A(H1N1)09年パンデミー短報1。Oseltamivir(タミフル)耐性ウイルス同定。

    09年7月8日、ジュネーブ。WHOはデンマーク、日本、香港各当局からタミフル耐性ウイルスが分離同定されたと報告を受けた。3例とも軽症、治癒。周囲の密接な接触者の検査からは接触者への伝播は起っていない。抗ウイルス剤耐性検査世界インフルエンザネットワークの検査室ではこれまで1,000近くのA(H1N1)ウイルスが検査されているが全てが oseltamivir、zanamivir両方に感受性であった。この作業はWHOとその協力機関により継続予定。これまでの報告からこれら耐性ウイルスは散発例で耐性ウイルスの流行は起っていないと思われる。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る



2009年7月10日(84巻28号)
  •  ポリオ。インドにおける根絶進捗。07年1月〜09年5月。

    インドはポリオ野生株(WPV)流行4カ国のうち最大人口国(他はナイジェリア、パキスタン、アフガニスタン)である。流行は北部のビハール、ウタルプラデシュ(UP)の2州に局在(この2州で全インドの過去5年間の患者の94%)、他の州では00〜02年の3価経口生ワクチン(tOPV)による補充予防接種活動(SIA)の結果野生株伝播は根絶され04年以降は両州からのWPV持込だけになっている。インド政府は1型野生株対策としてtOPVより1型単価生ワク(mOPV1)によるSIAを優先、その結果WPV1は減少、07年に83例、08年75例、09年1月〜5月29日(以下09年前半)18例の報告があり、以前は世界最大の流行地域であった西部UP地区で06年9月〜08年5月WPV1ゼロ、08年5月にビハールから輸入、WPV3流行が07〜08年発生(07年794例、08年484例)、mOPV3によるSIA実施で減少、09年1月〜5月29日には41例報告となっている。本報は07年1月1日〜09年5月29日のインドにおけるポリオ根絶努力の概略でビハール州とUP州西部がキーとなっている。

    (1)予防接種活動:インドにおける現行スケジュールは定期接種としてtOPVを出生時、生後6週、10週、14週、16〜24月に接種、全国的に07〜08年の調査では12〜23ヶ月児で12ヶ月までにtOPVが3回以上接種されているのは66%であった。tOPV定期接種率はビハールで53%、UPで40%であった。07年〜09年、インド政府は地域流行状況に応じてtOPV、mOPV1、mOPV3のどれかで一斉接種実施、さらに流行や新規発生に応じてmOPV1かmOPV3で地域一斉絨毯爆撃的接種実施(地図あり)。SIA終了時点のモニタリング調査ではUP州小児の2〜3%、ビハール州では1%未満の小児が未接種だった。

    (2)急性弛緩性麻痺(AFP)サーベイランス:インドにおける15歳未満小児人口10万当りの非ポリオAFP報告数は07年9.4、08年10.2、09年前半6.6でビハール、UPでは07年〜09年前半で12.9〜28.4であった。全国的にAFP例からの適切な便材料収集率は07年と08年が84%、09年前半が86%であった。AFP例の便材料は8ヵ所のWHO認定世界ポリオ検査ネットワーク検査室でウイルス分離、同定、野生株の遺伝子解析実施、07年80,614検体、08年91,222検体を検査、07年の新術式導入後80%を超える型内鑑別が21日未満に報告されるようになった。AFP発病から検体採取までの平均日数は07年1〜3月に58日だったのが09年同期には22日に短縮、ムンバイの標準検査室が全WPV分離株の遺伝子解析実施。

    (3)WPV疫学:インドWPV患者総報告数は07年13州で874例、08年13州で559例(図、表あり)09年前半には4州から59例報告があり、07年〜08年の報告例で867例(61%)が24ヶ月未満、44例(3%)が5歳を超えていた。1,108例(77%)がOPV接種が7回を超え、265例(18%)が4〜7回、40例(3%)が1〜3回、20例(1%)が接種ゼロまたは不明であった。(注:OPV接種歴が何回かあってもWPV陽性AFP患者が発生している理由については明確なコメントなし。Editorial noteに低栄養や下痢が多いことが関連していると考えられると記載されているだけ)。遺伝子解析から08年のUP起源のWPV1が一度消失後ビハール由来のWPV1がUPで流行、WPV3の流行はUP、ビハール共にビハール起源の株であった。

  •  09年7月6日時点の新型インフルエンザウイルスA(H1N1)感染確認例と死亡例発生国世界地図
(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る



2009年7月3日(84巻27号)
  •  新型インフルエンザA(H1N1)。流行インパクトを鎮静するための授業中止や集会制限に関するWHOコンサルテーション。

    (1)学校活動:メキシコでは全国の学校が09年5月、2週間学校閉鎖を指令。それ以外の世界各国では国内の地域レベル、学校・学級レベルで対応。全ての国が流行早期の学級閉鎖が学級内の感染拡大減少に有効であることを認めているが、地域での拡散防止は阻止できていない。学校閉鎖が人種差別など差別問題につながらないよう注意が必要である。

    (2)集会:メキシコで09年5月世界選手権開催が中止された以外、集会の制限・警戒実施の報告はない。

    (3)地域レベルの社会的隔離手段(Social distancing measure)とマスク使用:メキシコ政府は特にA(H1N1)感染者と接触する際マスク着用を奨励。日本では特に公共交通機関内でのマスク使用を含む社会的隔離手段強調、メキシコでは伝播鎮静のため、特に学校(他にレストランなど)での手洗いなど他の衛生手段ガイドライン実施。

    (4)WHOの提言:@学校閉鎖・集会制限の考慮に際し担当部局は何で、法的手続きは何かを当局は考慮すること。A伝播拡大沈静目的には、全学閉鎖でなく学級単位で考慮する。B個人衛生作戦は学校のタイプ(幼稚園・保育園、小学校、中学高校など)で対応を考慮する。C今回のパンデミーでは事態は流動的、日々変化し良好なコミュニケーションが決定的である。公衆衛生当局は強力で継続的な、容易に理解できる情報を住民や保健活動従事者に提供、手洗いや咳が出たときの作法など公衆衛生予防手段を守るよう情報提供すること。医療機関受診を勧めること。

  •  麻疹。WHO西太平洋地域。排除目標年2012年への進捗。

    2003年WHO西太平洋地域は麻疹排除を目標とすることを宣言、05年にはこの地域からの排除目標年を2012年と設定した。作戦として(@)ワクチン定期接種、定期外補助接種(SIA)により麻疹ワクチン2回接種(MCV1とMCV2)接種率95%を維持。(A)感度が良く、時期にかなった、症例ごとのサーベイランス維持。(B)疑い例のための麻疹検査室診断認定ネットワーク構築。分離麻疹ウイルス遺伝子型同定。麻疹排除の指標として輸入関連を除く麻疹認定例発生数を人口百万当り1未満と設定。本報は08年末までのこの地域における進捗のまとめである。進捗は全体として良好で同地域所属37ヶ国のうち24ヶ国は排除ないしほぼ排除されているが問題は中国と日本で、中国の08年の確認数131,441例(人口百万当り98.4)、日本の08年の確認数11,015例(人口百万当り86.1)でこの両国でこの地域の人口の82%を占め、この地域での確認例の97%を超えている。両国における排除努力が12年の排除目標到達に急務である。

    (1)定期接種:所属37ヶ国中35ヶ国におけるMCV1接種率は90〜95年(麻疹コントロール期)80.8%、96〜02年(コントロール強化期)89.0%、03〜08年(排除期)91.6%であった(グラフあり)。

    (2)SIA:96〜08年に約9,440万人の小児・青年が同地域28ヶ国で接種された(国別、地域別一覧表あり)。

    (3)サーベイランス活動:08年、地域加盟の全ての国で症例毎の検査が382検査室の参加する麻疹風疹検査網で実施。東京の地域中核センターとオーストラリアと北京、香港の検査センターでチェック。良質なサーベイランス実施の指標は(@)疑い例で非麻疹として除外された例が人口10万当り最低2例。(A)適切な検査検索例数の目標は80%以上。(B)発疹が出てから28日以内に臨床材料収集。目標は80%以上。(C)検査結果報告は検体搬入後7日以内。目標は80%以上。08年報告31ヶ国で疑い例で非麻疹として除外された例が人口10万当り1.6、適切な検査・検索例47%、適切な血清検体収集62%、76%の検査室が7日以内に結果報告、地域事務所への報告国数が増加、報告は早くなっていた。分離ウイルスの遺伝子解析結果は07年以降日本D5、ラオス、マレーシア、ニュージーランドD9、香港とベトナムH1であり、B3、D4、D8、G3が輸入例を含め分離されている。

    (4)麻疹症例数監視:IgM抗体上昇など検査室診断による確認と確認例との疫学的関連による確定数でモニタリング実施。中国を除きこの地域の確認例数は00年の106,172例を最高に08年には14,724例に減少(グラフあり)。中国は07年に109,023例、08年131,441例、日本での流行は大きく07年には18,000を超える報告があり、08年には11,015例の報告があった。両国を除く同地域の他の国の報告は08年3,564例、カンボジア、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ラオスが多かった。

    (5)麻疹排除国:06年、韓国はWHO作戦により麻疹排除が出来たと宣言。オーストラリアは02年麻疹患者数は人口百万当り0.5〜6.1例で、症例検索とウイルスの遺伝子解析の結果はその殆どが輸入例か輸入例関連であった。マカオでほぼ排除されており、太平洋島嶼諸国では07年、08年には麻疹報告ゼロであるがサーベイランス網に問題が残されている。

  •  Dracunculiasis(メジナ虫、ギニア虫)。09年1〜5月。新規届出数

    スーダン257例、ガーナ45例、エチオピア5例。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年6月26日(84巻26号)
  •  WHOの対新型インフルエンザA(H1N1)公衆衛生活動ガイダンス。6月17日発表。

    09年4月以降の経験を基にWHOが国・地域あて発生状況別にまとめたガイダンス。これまでのインフルエンザパンデミーは初年度流行が最大であったが今回は翌年の流行も予測され、以下、重要なガイダンスである。

    (1)全ての国に対する一般的ガイダンス:@パンデミー監視:各国はパンデミー期を通じてサーベイランスを維持すること。ウイルスの遺伝的特性、抗原性、抗ウイルス剤感受性などの監視。発生・流行状況や臨床像、合併症監視、最初の100例までの詳細な臨床的・疫学的特性を調査、WHOへの頻回かつ急速な報告に努める。A情報公開。B09年のパンデミーの経験を基に既存の活動計画・履行を改良すること。

    (2)広範な地域単位の伝播が起っている国に対するガイダンス:@サーベイランス。a.サーベイランスで追求すべきは@)パンデミックウイルスによる患者数、死亡数の増減。A)保健システムの機能、B)ウイルスの変化。b.パンデミー期が続いている間、ウイルス材料採取は必ずしも全例に実施になくてもよいが、重要な情報であり、症例を選んで実施すること。A制御手段(control measures):自宅とか病院などでの適切な治療、医療システムの機能維持、学級閉鎖とか集会の中止・延期は社会的影響を考慮した上でケースバイケースで履行する。

    (3)パンデミー報告のない国に対するガイダンス:@サーベイランス:a.各国は自国のサーベイランス網を確認すること。検査についてはWHOが支援。b.学校、医療施設などの閉鎖集団を重点にする。c.空港における出入国者のスクリーニングと接触者の追跡が考えられるが必要な資源は膨大であり、無症状感染者が発見できないなど、感染伝播が拡大につれて利点は減少、問題が多い。A制御手段:保健担当部門による呼吸器疾患増加状況の把握、重症例に対する適切な治療が実施されているか確認、ワーカーの教育・訓練が重要である。WHOは国境閉鎖や旅行制限は勧告していない。

    (4)過渡期の国に対するガイダンス:サーベイランス:国際保健規則(IHR05)に従いWHOに検査室確定例を報告。最初の(出来るだけ多く)100例に関する疫学的、臨床的、ウイルス学的情報収集、重症度の情報収集、接触者追跡など高度のサーベイランス。A制御手段:パンデミー発生国に準ずる。抗ウイルス剤の予防内服は一般的ではないが備蓄すること。

  •  ハンセン病。多剤耐性らい菌。

    世界的調査網確立のため06年11月インド・アゴラ、08年10月ベトナム・ハノイで専門家国際会議開催。WHO東南アジア地域事務局がガイドライン発表。本報はコロンビア(06〜08年)、インドネシア(00〜05年)、ミャンマー(05〜07年)の状況である。多菌型(MB)らいで再発例、Dapsone、Ofloxacin、Rifampicinのうち2剤以上に耐性を示す例が定点医療機関で調査報告された。定点はミャンマーはヤンゴン総合病院皮膚科(東京・国立感染研支援)、コロンビアは熱帯病病院(米コロラド大学支援)、インドネシアは北スラウエシ・メナドの県立らい結核計画サービス(東京・国立感染研支援)。MBで再発例はコロンビア28例、インドネシア21例、ミャンマー20例。年齢分布はコロンビア45〜59歳群最多、インドネシアは15~29歳群が多いが30~59歳群も多く、ミャンマーは15〜29歳群が多く、男女比は3国とも男性が多い。DNA解析でDapsone耐性菌はコロンビアで4例、インドネシア1例、ミャンマー3例、Ofloxacin耐性はインドネシア未実施、コロンビアとミャンマーではゼロ、Rifampicin耐性は3国とも2例ずつであった(一覧表あり)。

  •  84巻1〜26号国別、事項別索引。
(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年6月19日(84巻25号)
  •  新型インフルエンザA(H1N1)の人感染。09年6月の世界の疫学的状況。

    6月11日WHOは新型インフルエンザA(H1N1)のパンデミー警告をフェーズ5から6に強化。フェーズ6警告はWHO地域の2地域以上で最少1カ国において地域単位の人〜人感染が確認された時発令される。本報は6月11日時点の世界の疫学的状況のまとめである。

    (1)地理的拡散と伝播動態:6月11日時点でWHOへの報告数は確認例28,119例(死亡144)。WHO地域の5地域、74カ国で発生(世界地図あり)しているが90%は南北アメリカで、その他欧州各国、日本・中国・オーストラリアを含む西太平洋地域から報告され、アフリカ地域からは報告されていない(地域別報告数一覧表あり)。国際旅行が地理的拡散を助長、都市部が中心となっていて、最初の欧州地域の発生は発病の前の週のメキシコや米国への旅行に続く例であったが6月1日以降国内感染が増加している。メキシコ以外の多くの国で確認例数増加、国内で地域差が大きく、学校関連発生が目立ち、確認例との接触が明らかな例が多い。

    (2)基本的な患者複製数(basic reproduction number)の試算:1918年のインフルエンザパンデミーで2〜3、今回のA(H1N1)では流行早期で1.2、神戸の発生で2.3であり、この高さは閉鎖集団内での密接接触によると思われる。

    (3)年齢、性別分布:現在のところ全ての発生国で大多数は思春期、青年成人。男女差なし。流行早期の例は北半球の春休みにメキシコか米合衆国に旅行に出かけた学生。チリ、欧州、日本、ベトナム、メキシコからWHOへの報告では報告例の25%が0〜9歳、36%が10歳代、17%が20歳代、9%が30歳代、7%が40歳代、5%が50歳以上であり、カナダでは16.5%が9歳以下、10歳代と20歳代が57.8%、65歳以上が0.7%、チリでは中央値13歳(分布1〜65歳)、日本では約80%が10歳代、フィリピンでは大半が5〜24歳、英国では中央値12歳、平均20歳、分布0〜73歳であった。5月21日時点で欧州地域の報告例年齢中央値24歳、分布0〜69歳、西太平洋地域の中央値は23歳であった。現時点で若年成人層に多発している理由は不明である。

    (4)世界の罹患・死亡率:重症・死亡例もあるが全体として軽症。神戸の発生では5月25日時点での報告例49例で回復は早く、有熱日数は1〜8日(中央値3日)であった。a.入院例:米合衆国では確認され入院状況が判明した399名中36名(9%)が要入院、データのある入院患者22名中4名(18%)が5歳未満、1例が妊婦、9例(41%)が他の疾患を有していた。6月11日時点、ニューヨーク市当局の発表では入院56例、死亡16例を確認、入院例は季節性インフルエンザより若年で約79%が50歳未満、46%が18歳未満、20%が5歳未満で65歳を超えるものは5%だけであった。カナダ保健省は5月30日時点で84例の入院患者を確認、年齢の中央値17歳(分布1〜78歳)、13例(15.5%)が集中治療室収容、40例(47.6%)について基礎疾患有無判明、12例に肺疾患、慢性心疾患などがあり、妊婦が1例入院した。欧州地域では6月8日時点で291例報告、105例入院オーストリア、ベルギー、フランス、ルーマニアを含む諸国では隔離目的の入院であった。WHO西太平洋地域では1,077報告例のうち116例(11%)入院、重症例割合など不詳。b.同時に罹患していた疾患:喘息、循環器疾患など同時罹患疾患の報告や妊婦の罹患など多数報告されているが正確な調査はいくつかの国で開始されたばかりである。ニューヨーク市の576例の入院患者では80%が少なくとも一つの重症化ないし合併症のリスクファクターをもち、喘息が最多で確定・入院患者の41%を占めていた。他に妊娠(28%)、2歳未満小児(12%)、糖尿病(11%)、免疫不全(9%)、循環器疾患(9%)であった。c.地域単位調査:ニューヨーク市で5月1日〜20日に住民調査。回答者の6.9%(分布3.6〜9.4%)がインフルエンザ様疾患に罹患、新型A(H1N1)か否か不明であるが、広く罹患していた。d.家族内二次感染:季節性インフルエンザで5〜15%、新型A(H1N1)で22〜33%。

    (5)地域保健活動へのインパクト:カナダ、チリ、メキシコ、米合衆国においては日常地域保健サービス業務には今回の発生はほとんど影響していない。

    (6)新型A(H1N1)と季節性インフルエンザの同時流行:多くの国で同時流行が見られ、チリでは新型A(H1N1)が季節性インフルエンザに置き換わっており、5月末には90%が、6月2日の週末で65%が新型ウイルスであった。抗原分析、遺伝子疫学解析からは欧州地域の第23週までの分離株2,548株のうち18株(0.5%)が新型、米合衆国の第22週までの分離株2,663株のうち2,071株(77.8%)が新型であった。

  •  世界のポリオ。09年6月20日時点のWHO報告数

    全世界各国の08年、09年の急性弛緩性麻痺(AFP)患者数、15歳未満小児人口10万当り非ポリオAFP報告例数、適切な検体採取%、野生株ポリオ患者数の国別一覧表。目立つ国を下記:08年患者数(野生株確定数)→09年患者数(野生株確定数)で示すと、ナイジェリア861(799)→359(288)、インド559(559)→59(59)、パキスタン117(117)→17(17)、チャド37(37)→1(1)、アフガニスタン31(31)→7(7)、アンゴラ29(29)→6(6)、スーダン26(26)→35(35)、ケニア0→13(13)

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年6月12日(84巻24号)
  •  人新型インフルエンザウイルスA(H1N1)感染臨床像。09年5月11〜24日の兵庫県神戸市の学校集団発生の臨床像のまとめ。

    (1)背景:09年6月2日時点で日本厚生労働省はWHOに379例の検査室確定新型インフルエンザA(H1N1)感染例を報告。日本における最初の新型インフルエンザA(H1N1)確定例はカナダからの5月8日の帰国例。その後本号発行までに21例の輸入例が報告されている。09年5月16日、それまで確定しているA(H1N1)感染者と疫学的に無関係な兵庫県の高校生が新型インフルエンザA(H1N1)感染確定、さらに隣接する大阪府に拡大した。本報は5月25日までに検査室診断で確定、感染症法の2類感染症として隔離・入院した兵庫県の高校生49名の臨床像のまとめである(その後軽症例が多いことから重症者以外は入院不要・自宅隔離と兵庫県・大阪府は変更した)。

    (2)確定例のまとめ:a.人口統計的情報と基礎疾患:49例の大半が思春期青年で年齢中央値17歳(分布5〜60歳)、男女比1:1、基礎疾患として慢性気管支喘息6例、アトピー性皮膚炎2例、アレルギー性鼻炎1例、他には心疾患や糖尿病、免疫不全はなく、妊婦もいなかった。33例が学校における集団発生での接触機会あり。b.季節性インフルエンザワクチン接種と季節性インフルエンザ罹患歴:ワクチン歴が判明した43例のうち、22例が08/09用ワクチンを接種していた。罹患歴は45名中4例に08/09年流行期にあり(型不明)。c.迅速キット:発病〜迅速キットによる診断までの日数は0〜4日(中央値1日)、38℃以上の有熱者43例中陽性25例、陰性18例(表あり)。全例についてrRT-PCR実施、陽性と確認。d.入院時臨床症状:発病〜入院時症状所見までの日数は0〜7日(中央値1日)。49例の90%以上が38℃以上の発熱、他に高率に(60〜80%)全身倦怠、熱感、咳、咽頭痛あり、約50%に鼻閉、鼻汁、頭痛、筋肉痛、関節痛あり(表あり)。胃腸症状10%、神経症状なし。

    (3)一般検査に特記事項なし。

    (4)臨床経過:38℃以上の発熱者43例では通常上気道症状が発熱前から解熱後まで続いていた。殆どの例で熱と共に頭痛、筋肉痛、間接痛あり(表と図あり)。全例合併症なし。1例を除き全例抗ウイルス剤治療(表あり)。有熱期間は1〜8日(中央値3日)。6月2日時点で人工換気を要したり死亡した例はない。

    (5)抗ウイルス剤治療:49例中48例(22例Oseltamivir 、26例Zanamivir)投与。発病後投与までの平均日数は1日(分布0〜4日)、両群に差なく、早期治療が有熱期間を短縮する傾向あり(表)。副作用は認められなかった。

  •  専門家作戦助言グループ(SAGE:前号参照)の鳥インフルエンザA(H5N1)プレパンデミック認可ワクチンの使用優先順位に関する提言:4月6〜8日、WHO本部。SAGEのWHO事務長への提言。認可プレパンデミックA(H5N1)ワクチン接種優先順位:@最優先群は高病原性鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)を実験室で直接取扱う研究者・検査室検査従事者。A接種勧奨者:鳥におけるインフルエンザ集団発生に最初に現場対応する業務従事者、獣医関係者。B可能であれば接種すべき業種:@以外の検査室業務従事者と医療従事者などA(H5N1)ウイルスに接触する可能性ある職種。C接種を勧奨しない職種:鳥インフルエンザ発生地域を除く一般的保健活動従事者。一般住民。
(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年6月5日(84巻23号)
  •  新型インフルエンザA(H1N1)の人感染。メキシコの最新情報:09年3月〜5月。

    メキシコ政府発表。3月1日〜5月29日の急性呼吸器感染症患者報告数41,998名、うち5,337名(12.7%)がRT-PCR法で新型と確定。5月29日時点で検査室確定例のうち97例が死亡。地域によっては発生が続いているが全国的には4月下旬にピークは越えた模様。

    (1)強化サーベイランス:09年3月5日〜4月10日、ベラクルズ地区で急性気道感染症多発が報告され、A(H3N2)とB、A(H1N1)各1例が検出されたが詳細不明。重症・死亡例なし。3月〜4月、メキシコシティを含む大都市で急性肺炎集団発生、47例(死亡12例)。この死亡例のうち4例からA(H1N1)検出。4月17日、メキシコ政府は全国サーベイランス強化開始。4月21日に入院患者材料の検査をカナダ国立と米国CDCで開始。新型インフルエンザA(H1N1)検出。4月26日から症例報告ネットワーク発足。5月にはそれまでのA(H1N1)疑い例の症例定義を保健省は改定、5月11日、さらに改定して発熱、咳、頭痛、鼻汁、鼻閉、関節痛、筋肉痛、衰弱、咽頭痛、胸痛、腹痛のうち最低1項目とした(5歳以下小児では頭痛を不機嫌とした)。検体のRT-PCR陽性例を確定例とした。08年の間に国際保健規則(International Health Regulation 2005)に応じて報告定点を保健省は380ヵ所から520ヵ所に増加、検査能力を4州追加、国立検査室の検査能力を1日30検体から900検体に増加、RT-PCRを8州、蛍光抗体法を30州に拡大した。09年5月29日時点で合計22,814検体がリアルタイム(r)RT-PCRで検査され、5,387(24%)が新型A(H1N1)陽性、そのうち41.9%が<15歳、32.3%が15〜29歳、23.7%が30〜59歳、2.1%が60歳を越えていた。死亡例の年齢分布はやや年長で55.7%が30〜59歳であった(表あり)。確認例の49%が女性。地域分布はメキシコ市が最多、時期的には4月27日に発病が最多で(グラフあり)、確認例は全国の州に及んでいた。

    (2)対応手段:4月24日、メキシコ政府は国家パンデミー対応計画強化、メキシコ市首都圏の学校閉鎖を発表、同時に保健省は報道キャンペーン開始。手洗いなど個人的伝播防御、大規模な集会の中止/延期を呼びかけた。5月11日、学校再開、有症児童の欠席勧告、教員と両親に登校時に発熱と気道症状チェックが勧告され、教育保健当局は2学級を超えるクラスで2人を超える有症者があれば休校するよう勧告、この作戦開始日には91,357名の有症者が発見され、このスクリーニングは5月23日続行中。

  •  予防接種作戦助言専門家グループ会議の結論と勧告。09年4月。

    予防接種に関する作戦助言専門家グループ(Strategic Advisory Group of Experts、SAGE)がWHO事務長に予防接種全般に関して提出した助言。09年4月6〜8日WHO本部で会議開催。

    (1)WHOの予防接種・ワクチン・生物製剤部門(Department of Immunization, vaccine and Biologicals、IVB)から前回のSAGE委員会以降の進捗と2010〜15年作戦計画発表。ワクチンに関する公式見解文書を含むWHOの提言は

    http://www.who.int/immunization/policy/immunization_tables/en/index.htmlに発表済みで、今後も追加予定。予防接種サービスが及んでいない小児に関するSAGEへのWHOによる解析実施・報告は09年10月、スイス熱帯病研究所や米国CDCの貢献により実施予定。定期予防接種の接種率改善監視はWHOとユニセフの共同作業で履行中。ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンのWHO公式文書が09年4月10日発表。WHOアメリカ地域の先進2カ国で公的に導入されているがワクチンの価格が多くの低資源国で普及の障害となっている。ペルーとウガンダでの学校単位の接種調査が注目される。髄膜炎菌AC型と髄膜炎菌ACW多糖類ワクチンの1,300万接種量の備蓄が世界ワクチン予防接種同盟(GAVI)と欧州人道支援事務所により準備されサハラ南縁諸国で集団接種開始予定。B肝ワクチンの世界作戦がWHO西太平洋地域の調査事例とSAGEの意見により他のWHO地域でも取り上げられる予定;。WHO各地域は各国の予防接種技術助言グループ(immunization technical advisory group、ITAG)設立・強化予定。

    (2)WHO地域報告:a.アフリカ:ワクチン普及率の伸びが止まり、未接種児の80%が低普及国8カ国に集中。B肝ワクチン導入は96%の国で、Hibワクチンは80%の国に導入されているがワクチン普及そのものが低く、監視改善が必要。ポリオ野生株土着国があるなど、問題が多い。b.東地中海地域:定期接種率はかなり改善されたが、90%に及んでいない国があり"child health days(weeks)"で普及活動中。Hibワクチンは90%の国で導入されているが貧困層には普及していない。B肝ワクチンは多くの国に導入されているが抗体保有率の高い国で実施されていない。血清疫学調査と接種キャンペーンが重要で09年10月会議予定。SAGEはパキスタンのDTP・Hib混合ワクチン接種普及を勧告。c.東南アジア地域:ポリオについてはインドからの野生株輸出は減少、サーベイランスの感度維持、ワクチン接種率維持が重要。インドやインドネシアのような小児人口の多い国で麻疹による死亡が減っていない。ワクチン接種率向上が重要。DTP3接種率がインド、インドネシア、東チモールで80%に及ばず、腸チフスワクチン導入が地域での合同会議で話題となり疾病負担調査開始予定。地域ITAGはB肝、風疹、腸チフス、季節性インフルエンザ各ワクチンの各国の状況を検討し施策化することを各国に勧告。

    (3)他の予防接種関連の助言委員会からの勧告:技術的・兵站学的助言委員会からは予防接種製剤のコールドチェーンによらない常温保管、1回使用した残りを使用出来ないか多数回使用の可能性の研究報告あり、SAGEが重視している。

    (4)GAVI同盟からの報告:新委員会発足。

    (5)WHO予防接種基準・法制化強化:実務担当者のパネルディスカッションがSAGEに報告された。

    (6)ポリオ根絶:野生株常在4カ国のうちナイジェリア(北部カノ市中心)、とパキスタンが定期接種とSIA強化。野生株輸入例増加が注目される。ポリオ不活化ワクチン(IPV)作業グループがポリオ根絶後のIPV導入の作業網発表、WHO見解が2010年4月出される予定。

    (7)B肝ワクチン:SAGEはB肝ウイルスの周生期伝播予防のための出生時ワクチン接種と長期予防のための定期接種導入に関する作業グループの最新報告から、出生24時間以内の新生児接種が慢性肝炎予防に有効であり、その後の定期接種にも導入すること、出生時の免疫グロブリン投与については経費などの点から必須とはしないことを勧告。

    (8)麻疹ワクチン:SAGEは08年以降麻疹対策の財政的支援が著明に減少していることを非常に憂慮、麻疹死亡制圧の日が遠のくのではないかと心配している。SAGEは麻疹ワクチン作業グループの報告を検討、次の問題点を指摘・提言:@定期接種1回目(MCV1)接種率が80%以上の国ではMCV1以降3年以内にMCV2接種。80%以下の国ではMCV1普及を優先。アメリカ地域の経験ではMCV1接種率が90〜95%を超えると麻疹制圧が可能、となっているが、1)地域による感受性者蓄積がないよう注意する。2)93〜95%を超える集団免疫維持、3)2歳児の訪問保健活動維持のためMCV2は維持したい。現在も麻疹が流行中の国では生後9ヶ月でMCV1、15〜18ヶ月でMCV2、麻疹低頻度の国ではMCV1を生後12ヶ月、MCV1接種率高く小学校入学率の高い国ではMCV2を小学校入学時に接種することが勧められる。麻疹ワクチンキャンペーンの中止・変更にあたってはワクチン接種状況と麻疹発生状況について地域単位の正確なサーベイランスと解析をSAGEは提言している。

    (9)ロタウイルスワクチン:経口弱毒生ロタウイルスワクチンにはロタリックスとロタテックの二種類があり、ラテンアメリカ、欧州、米合衆国などや途上国を含む各国における接種試験の結果報告の解析検討の結果SAGEは下記の勧告を発表している。@有効性、安全性ともに優れている。A5歳未満の小児の死亡原因の10%以上が下痢であるような途上国において乳児の定期接種に導入することを勧告。Bポリオ生ワクチン(OPV)と同時接種しても干渉されない。HIV感染児にも安全で有効。C母乳が有効性を低下させたりしない.DこれまでDTP三混やOPVと同時に2回ないし3回接種した報告あり、安全性も認められ、SAGEとしてはDTP1回目と2回目にロタリックスと同時接種を勧めているが新しい成績報告が待たれている。ESAGEは重症ロタウイルス感染症の定点観測の重要性、下痢対策としての安全な水供給事業が同時に実施されることの重要性を重視している。

    (10)鳥インフルエンザA(H5N1)プレパンデミックワクチン:次号で発表。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年5月22日(84巻22号)
  •  インフルエンザパンデミーの激烈度評価に関する考察。

    WHOのパンデミーのフェーズ決定はパンデミックウイルスの地理的広がりに基づき、世界各国に警告、対策を呼びかけてパンデミーに伴う罹患・死亡を減少させることを目的にしている。パンデミーの激烈度(Severity)は各種の要因が関与している:@国により、集団により違いがあるので過去の事例が当てにならない。A激烈さは事例により異なるので症状、合併症、伝播力、病原性などの監視が基本となる。B激烈度評価が上手く出来るかは病原性や流行集団に関する情報に左右されるが、流行開始時期には情報不足が多い。Cさらに罹患死亡率(CFR)のような激烈度の重要なパラメーターには患者数と死亡者数が判明するまでの時間が必要である。

    (1)激烈度の決定要因:

    @パンデミックウイルスの疫学的特性:疑い例、確定例、死亡例の例数、年齢、性別、基礎疾患の有無、罹患率とCFRなど。  A臨床的特性:症状、経過と転帰、要入院例か軽症か。

    Bウイルス学的特性:抗ウイルス剤感受性、ウイルスの分子学的マーカー、抗原性(一覧表あり)

    (2)パンデミックウイルスの集団への侵襲度(Vulnerability、傷つきやすさ):

    @免疫度=過去の流行で高齢者集団がある程度の免疫がある場合。

    Aハイリスク集団=乳幼児、高齢者、妊婦、循環器・呼吸器系疾患や糖尿病患者、HIV感染を含む免疫不全者、悪性腫瘍患者。途上国においてはこうした疾患の実情が把握出来ていないし低栄養やマラリア、結核の蔓延も問題となる。

    BWHOは最近、侵襲度のアセスメント手段の開発を進めている:a)保健活動と適切な治療。b)適切な情報活動・社会活動。c)計画立案・準備進捗。

  •  食品由来疾患(food borne diseases) の世界的負担(Global burden)試算:共同研究努力。

    病原体感染や毒物汚染食品による疾病の社会経済活動上の損失は重要であるが明確にされていない。WHOの食品由来疾患の疾病負担(disease burden)試算作業の目的はこの食品由来疾患の医療経済学的な健康情報を豊かにすることであり、国際共同研究を呼びかけることである。WHOは各国の実務担当者(Stakeholders)による共同作業召集、現在欧州地域で30カ国近くが参加して18以上の疾患について欧州疾病対策センター(欧州CDC)における研究が開始されている。本報は09年に発表された欧州CDC報告の紹介である。

    http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?Articleld=19195

    (1)食品由来疾患の疾病負担:単なる疾患サーベイランスではなく、疾病負担の考え方として疾病により失われた生活年で表現されるDisability-adjusted life year、DALYを導入すること。

    (2)食品由来疾患の世界的負担試算の理由:食品市場のグローバル化が大きな理由としてあげられる。

    (3)食品由来疾患疫学レファレンスグループ(Foodborne Disease Burden Epidemiology Reference Group、FERG):マラリア監視評価レファレンスグループや小児健康レファレンスグループなどWHO専門家レファレンスグループの活動を参考として発足(WHO事務局、FERG親委員会、助言委員会、5作業部会の関係を示すグラフあり)。

    (4)共同者:WHOの小児思春期保健部門や軽視された熱帯病(neglected tropical disease)コントロール部門、公衆衛生・環境部門など。

    (5)外部の実務担当者との共同:EUなど諸国の担当者参画。

    (6)実務担当者とのイベント:08年11月、第2回FERG会議実施。

    (7)欧州CDCとの協力:WHOとの共同作業進捗中。

    (8)結語:世界疾病負担試算にDALYの概念導入が重要である。

  •  Dracunculiasis(ギニア虫、メジナ虫。前抄訳20号参照)の月報09年1〜4月。

    新規例報告。土着国ではスーダンが圧倒的に多く1,243例、次いでガーナ(131例)、マリ69例。月別報告数一覧表あり。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年5月22日(84巻21号)
  • 人の新型インフルエンザA(H1N1)感染。メキシコと他の流行国における臨床的所見。

    本報は新型インフルエンザA(H1N1)の人感染例の臨床像と治療に関する最初のWHOガイドラインである。

    (1)臨床像:無熱で軽い上気道症状だけの例から重症・致死的肺炎まで幅が広い。多くの例は合併症なく自然治癒するインフルエンザ様疾患の経過をとり、報告されている症状は咳、発熱、咽頭痛、倦怠、頭痛である(表あり)。外来患者や入院患者でも治癒例6例に1例までが発熱していない。悪心嘔吐、下痢(あったりなかったり)、などの消化器症状が米国の外来患者の38%に及んでいる。

    (2)入院患者:確認例で入院したのは米国、カナダで2〜5%、メキシコで6%。メキシコで急性呼吸器症状で加療された例の13%がA(H1N1)陽性(約1/5が季節性インフルエンザに罹患していた)、そのうち約10%が要入院、入院患者の1/3が人工換気を必要とした。米国の入院患者の約1/2、メキシコの入院患者中データが得られた死亡例45例のうち21例(46%)が妊娠とか喘息など肺疾患、糖尿病、高度の肥満、自己免疫疾患、免疫抑制治療中、神経系や循環器疾患を基礎疾患として持っていた。米国のA(H1N1)確認妊婦20名中3名が入院を要し、1名死亡(この例は発病13日目にタミフル投与)、米カリフォルニア州の入院例30例の64%が基礎疾患をもち、妊婦5例のうち2例に自然流産とか早期破水がみられた。メキシコの死亡例45名中54%がそれまで健康であり、殆どが20〜50歳(1例が妊娠34週の妊婦)、罹患死亡率(CFR)は成人より小児や10代青年が低かった(表あり。理由不明)。急速に進行する呼吸障害が重症ないし死亡例の特徴であった。メキシコの死亡例45例の発病〜入院の日数の中央値は6日(分布1〜20日)、それに対し米国の入院例では発病〜入院の日数の中央値は4日。症状としては発熱、息切れ、筋痛、重い倦怠、頻脈、多呼吸、動脈血酸素飽和度低下、時に低血圧とチアノーゼあり、数例に病院到着直後に心停止がみられた。下痢は入院例では稀で、重症肺炎の胸部放射線像著明、呼吸速迫症候群、腎不全、多臓器不全(死亡例の24%)の経過をとり、発病〜死亡の日数中央値は10日(分布:2〜33日)であった。カリフォルニア州の入院例で確定25例では15例(60%)に放射線像で肺炎を示唆する所見があり、4例で人工換気が必要であった。入院例では白血球増多・減少共にみられ、メキシコの入院例では多くがリンパ球減少、アミノトランスフェラーゼ上昇、LDH上昇(死亡例全例)、CPK高値例もあった。入院例の半数以上である程度の腎機能不全が認められた。心筋炎合併を疑われた例もあったが脳炎合併例はなかった。

    (3)微生物学・病理学的所見:入院時の細菌感染合併例はほとんどなく、膿胸、壊死性肺炎や人工換気に合併した細菌感染が時に認められるが少なく、メキシコの死亡例の病理所見はウイルス性肺炎による急性呼吸速迫症候群と一致していた。

    (4)新型A(H1N1)インフルエンザのWHOの最初の治療ガイドライン:a)軽症=保存的。小児ではアスピリンなどサリチル酸製剤を使用しないこと(ライ症候群)。b)入院例=タミフルによる治療を推奨。重症入院例はA(H5N1)ガイドラインを応用。c)呼吸補助=酸素吸入、人工換気。d)抗生剤=地域の市中肺炎の状況に合わせて抗生剤選択。e)抗ウイルス剤=タミフルの早期投与が予後改善。メキシコの死亡例27例の発病〜タミフル投与開始までの平均日数は8日(分布1〜26日)だった。f)ステロイド剤=無効の例が多く、推奨しない。

  •  ハンセン病。イエメンの患者数推移。1982年〜2008年。

    イエメンのハンセン病制圧国家計画は05年に発足、WHOはハンセン病疾患負担軽減世界作戦06〜10年を展開中で、本報はそのひとつである。

    (1)年別新規例数の推移:82〜08年の新規届出数を解析(表あり)。多菌型、性別、小児例、2度以上の障害例の分類を実施。初期の82〜83年から、90年に患者発見強化、93年に新規例数最多、年間721例、人口10万当り5.1であった。

    (2)診断アクセス:居住地から診断医療機関までが50km以上あるような例が増加、アクセスの改善が認められた。

    (3)村落調査、プライマリヘルスケアセンターからの紹介、患者接触者の調査、患者の自発的届出によっている(以下4〜7については年別グラフ、表あり)。

    (4)新規例の多菌型ハンセン病年別頻度:55〜65%と変動。

    (5)新規例中の小児例:97年45%〜08年73%と変動。

    (6)男女比:女性患者数は調査期間を通じて新規例のほぼ1/3。

    (7)新規例中の2度障害者例数:98年117例が最高。変動が大きい。

    (8)結語:サーバイランスの運営は順調。排除の努力が実ることが期待される。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年5月15日(84巻20号)
  •  新型インフルエンザウイルス(H1N1)感染。世界サーベイランス要約。09年5月。

    09年3月中旬、メキシコ保健省が通常の季節性インフルエンザ流行減少後インフルエンザ様疾患の異常な増加と健康青壮年における重症肺炎多発に注目、全国調査開始。3月下旬、隣接する米国南カリフォルニアで2例の小児の急性発熱例からインフルエンザAウイルス陽性、米国CDCでの遺伝子分析から豚インフルエンザウイルス由来の新型ウイルスと判明。この2例は豚との接触とか互いの接触なし。4月17日、米国政府はWHOにこれらの例を国際保健規則(IHR)監視対象者として告知、4月24日にはカリフォルニアとテキサスで6名の追加例発生。4月23日、カナダ国立衛研でメキシコの材料、カリフォルニアの材料共に豚由来のA(H1N1)ウイルスであることが判明。4月25日、IHRが召集した専門家委員会がWHO加盟各国にサーベイランス強化を勧告。4月27日、カナダ、メキシコ、米国の報告を基にWHOはパンデミーインフルエンザ対策として封じ込め(フェーズ3)は今や困難であり、拡散鎮静(フェーズ4)に対応を変更した。本報は5月12日時点の新型インフルエンザ(H1N1)の地球規模の状況の概略である。

    (1)疫学的サーベイランス:5月12日時点で30カ国、5,251名の確認例報告。5,030名(95.8%)がアメリカ地域、204例が欧州地域、17例が西太平洋地域で他の3地域からは報告されていない(例数グラフと世界地図あり)。

    @アメリカ地域。

    a.メキシコ:最初の確認例の発病は3月10日。確認例の72.2%が30歳未満、19%が60歳以上(グラフあり)。確認例で死亡例のうち71.4%が45歳未満、58.9%が15〜44歳であった。

    b.米国:初発4月15日。確定例の84.1%が30歳未満。

    c.カナダ:初発4月10日。4例入院、1例死亡。

    A欧州地域。15カ国、204例確認。スペイン95例、英国55例など。多くは軽症、死亡例なし。殆どの例が今回のA(H1N1)流行地に旅行歴あり。

    B西太平洋地域:5カ国、17例確認。日本4例、ニュージーランド7例、韓国3例など。軽症。

    (2)臨床像/伝染性:軽症が多く、伝染性は強い。次号でその後の例も加え報告されているので略。

    (3)分離ウイルスの解析:新型インフルエンザウイルスA(H1N1)はこれまでどんな動物からも同定されていない。最近の知見で少なくとも10年以上前に北米で流行した豚のインフルエンザウイルス3種類の遺伝子組換えウイルスであること、NAとM蛋白遺伝子が欧州やアジアの豚インフルエンザウイルスと酷似していることが判明している。現在、豚における豚インフルエンザウイルスの分子疫学は不明確であり、今後の課題である。豚から人への伝播様式は未だ不明で、これまでのパンデミックウイルスやA(H5N1)の病原性マーカーと同じであるという証拠も得られていない。

  •  小児細菌性髄膜炎サーベイランスネットワーク。01〜08年。WHOアフリカ地域。

    サハラ砂漠南縁諸国が世界的に細菌性髄膜炎の多発地域として重視されている。本報は01年に開始され、02〜08年、24カ国(08年には22カ国)参加(地図あり)によるネットワーク活動の概略である。5歳以下の髄膜炎疑い患児74,515例(年別の一覧表あり)。72,111例(97%)が腰椎穿刺を受け、69,208例(96%)が髄液細菌培養実施、10,127例(15%)が化膿性髄液、うちH.インフルエンザ桿菌(多くは血清型B)陽性11,575例、肺炎球菌陽性2,912例、髄膜炎菌陽性907例であった。ロタウイルス下痢症サーベイランス定点観測刻14カ国中9カ国でこの髄膜炎サーベイランスが統合して定点観測された。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年5月8日(84巻19号)
  •  黄熱。コンゴ共和国。

    09年4月1日、コンゴ共和国保健省は1月28日に、黄熱サーベイランスで確定された例が1例あったと報告。コンゴ共和国国立衛研で陽性、セネガル・ダカールのパスツール研で確定。初発例は55歳農夫。急性の腹痛に続く発熱と黄疸。保健省とWHO専門家からなる黄熱発生調査チ−ム4月23〜25日現地調査、初発例の血清サンプルの精査、パスツール研でペア血清の中和抗体検査(HI法より正確)、で確定。続発例は調査の結果発見できなかった。コンゴ共和国では1930〜60年、黄熱ワクチン集団接種実施、黄熱確定例最終報告は81年で以降発生報告はなかった。保健省は今回の発生に対応して4月11日に73,011名を対象にワクチン緊急集団接種予定。

  •  Dracunculiasis根絶。世界サーベイランス。08年。

    (ギニア虫、メジナ虫。注:経口線虫感染症。中間宿主ミジンコ。仔虫を食べたミジンコに汚染された生水を飲み感染。仔虫は腸から全身を回って下腿皮下で成熟、雌虫は感染者が水汲みなどで水に入ると踝などの皮膚を破って尾部から水中に仔虫放出。この際疼痛を伴う皮膚炎と慢性の運動障害発生。安全な水供給作戦:加熱とか井戸に蓋をする=暗くするとミジンコは増えないし、井戸水も生活雑排水で汚染されない=で世界的に激減)

    年度ごとの報告数は確実に低下。報告制度開始の89年に892,055例であったのが08年4,619例で99%減(グラフあり)。07/08年比で52%減。報告あり村落数は91年23,735であったのが08年1,463で94%減。07/08年の減少に寄与したのはガーナの85%減とニジェールの82%減で、それに対しナイジェリアは48%減、南スーダン38%減、マリとエチオピアでは増加している(グラフあり)。08年の月別報告数の国別一覧表があり、患者数最多国は南スーダンの3,618例(世界の78%)、ガーナは激減しているが第2位で501例(世界の11%)、次いでマリ417例(世界の9%)、他の2%がエチオピア41例、ナイジェリア38例、ニジェール3例となっている(グラフあり)。08年の報告数4,619例のうち2,633例(57%)が封じ込め出来ている。以下、常在国のエチオピア、ガーナ、マリ、ニジェール、ナイジェリア、スーダンの状況と、報告数がなくなり、根絶認定待ちのベニン、チャド、象牙海岸などの状況概略あり(略)。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年5月1日(84巻18号)
  •  豚インフルエンザ。

    WHOは豚インフルエンザ(H1N1)人感染例に関し地球規模で対応、監視中である。情報は

    http://www.who.int/csr/disease/swineflu/en/index.html.

  •  豚インフルエンザ。よくある質問への回答。

    @豚インフルエンザとは何か:高感染性で低死亡率(感染豚の1〜4%)の豚の呼吸器感染症。空気感染、飛沫感染、直接・間接的接触感染症で温帯では秋〜冬期に増加、多くの国で豚に予防目的に豚インフルエンザワクチンが接種されている。流行豚インフルエンザウイルスの多くはA(H1N1)型であるがH1N2とかH3N2のようなサブタイプも流行している。多くの場合豚インフルエンザウイルスが豚の間で流行しているが豚は人インフルエンザウイルスや鳥インフルエンザウイルスにも感受性があり(豚のH3N2ウイルスは人由来)、いくつかのウイルスの混合感染もあり、この場合遺伝子組換えウイルスが作られる場合がある。豚インフルエンザは多くの場合豚の間だけで流行するが時に種の壁を越えて人に感染を起こす(次項)。

    A人の健康との係わり:豚インフルエンザウイルスの人における集団発生や散発例の報告がこれまでもあり、臨床像は無症状感染から肺炎合併まで、人の季節性インフルエンザと同様、広い。無症状感染が多いので実態把握が困難である。

    B人の豚インフルエンザ感染発生国:07年の国際健康規則(IHR05)発効以降WHOは米合衆国とスペインの発生を認定している(注:周知のように今回のメキシコの流行を始めとして激増中)。

    C人の感染者:通常感染豚との接触で感染。濃厚接触で人―人感染も発生している。

    D豚肉、豚肉製品を食べてよいか:70℃加熱でインフルエンザウイルスは失活。安全。

    E豚における流行:豚インフルエンザは国際獣疫機構(OIE)報告疾患でないので詳細は不明であるが、豚インフルエンザ集団発生は南北アメリカ、欧州、アフリカ、日本を含む東アジアなど世界的に報告されている(途上国では検査もされず、報告がない)。

    Fパンデミーのリスク:豚と常時接触している人以外は、通常の人は豚インフルエンザに無免疫で、人―人感染力を持つようになった豚インフルエンザウイルスはパンデミーを起こし得る。要因としてウイルスの病原性、集団免疫度、季節性インフルエンザで獲得した免疫との交叉反応などが考えられる。

    G豚インフルエンザに対する人用のワクチンはあるか:ない。現行ワクチンの有効性は不明。インフルエンザウイルスは変異しやすいのでWHOはワクチン製造株として最新流行株を収集中。

    H豚インフルエンザ人感染例の治療薬:抗インフルエンザウイルス薬のOseltamivir、Zanamivir、共に有効。早期投与。予防にも有効。米国、メキシコにおけるさらに詳細な調査が重要。

  •  精神衛生。外国旅行に際しての精神衛生上の問題点。

    外国旅行による異文化体験、日常生活の変化などが精神衛生学的疾患の発病や悪化、治療上の問題をもたらすことがよくある。

    (1)精神障害と外国旅行。

    @予防:旅行計画を立てる時点から医師も参加・助言すること。情報により目的地(目的国)や旅行手段(経由地、フライトの会社など)を変更すること。例えばマラリア予防のためのメフロキンは精神障害の危険あり、など。また、投与されている向神経薬が現地で入手できるか(処方箋を必ず持参すること)、持込みが出来るか(国によってはある種類の向神経薬が持込み・使用禁止されている場合あり)情報収集と対処は重要である。

    A精神障害として不安障害、フライト恐怖(phobia of flying)、パニック障害などについて旅行関係の医師は熟知すること。

    B気分障害(躁鬱病)と自殺:外国旅行や転居が契機となり数週以上に及ぶ落ちこみ気分、興味喪失、不活動、不眠と食欲不振、体重減少などを特徴とする欝状態、鬱病となり監視が必要な自殺企画が見られたり、時に旅行中に躁状態になる例もあり、旅行前の準備や旅行中の専門医受診が重要である。

    C精神科疾患:a)急性、一過性の精神反応。長期の過酷な旅行とか重大な宗教行事参加の巡礼者で発生、要入院例もあり。b)精神分裂病(原文がShizophrenia。現在、本邦では統合失調症):寛解状態にあったものの旅行中の再燃、悪化が問題。専門医受診、治療が必要。

    D精神作用物質使用による障害:アルコールと薬物使用。外国旅行中はアルコール使用、薬剤乱用が増加(18〜35歳のバックパッカー1,008名の55%が1剤以上の向神経薬使用という報告あり)。薬剤依存者の外国旅行に際しての持ち込み、現地での入手がチェック出来ないことからa)中毒症状(急性期の各薬剤固有症状)とb)離脱症状に関する現場医師認識、教育が重要。薬物規制の国による違い(大麻所持が違法でない国とか、ある種の向神経薬が持込み禁止だったりする)に注意。

    E関連する他の注意事項:a)激怒(Rage):言葉の暴力や暴力行為が乗務員や同行者に加えられる。b)カルチャーショック、帰国後の逆カルチャーショック。いずれも落着くまで臨床的対応が必要になる場合がある。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年4月24日(84巻17号)
  •  新生児破傷風(NT)排除(Elimination)認定。トルコ。

    破傷風排除母子世界作戦がWHO、ユニセフ、国連人口基金により実施されており、WHOはNT排除認定の基準をその国の全地域の1,000出生当りNT発生1未満と設定。今回トルコがNT排除国と認定された。背景:NTの重要性としてWHOは全世界で04年に12万8千人がNTで死亡と推定。トルコの人口は7,200万、年出生数約130万、約75%が都市居住、08年の統計では新生児死亡13/1,000出生で、91.3%の分娩が訓練された助産者介助、89.7%の分娩が病院、WHOの提言に従い女性は妊娠可能年齢期間中に破傷風ジフテリア二混(Td)ワクチンを5回、小児は乳児期にDTP三混3回と1〜2歳で追加1回、小学校入学時にTd追加1回接種、06〜07年、Td二混の定期外補充予防接種(SIA)が3回、15〜49歳女性にハイリスク60県で実施された(表あり)。NT報告数は05年の32例が08年の7例に低下しているが報告システム感度が充分評価されていない。09年2月、トルコ保健省はWHOとユニセフの協力でNT排除のコミュニテイレベルの調査を実施した。

    (1)方法。

    @調査地区選択:07年のDTP三混、Td二混、麻疹ワクチンの接種率、NT報告数とNT罹患率、妊婦検診訪問率、06年の訓練された助産婦の介助分娩率介助率、都市部居住か農村部か、人口当りのヘルスセンター数とヘルスワーカー数などから5県がハイリスク地区として選ばれた。

    A調査プロトコール:WHOのプロトコール使用。

    B集団選択:1チームが勤務時間中に訪問できる世帯数、1世帯当り人数と出生数、などから調査集団数決定。訪問世帯3,394、26,621名(一覧表あり)。

    C調査員訓練:09年2月16〜17日、スーパーバイザー訓練:18〜19日、医師が担当。

    D調査履行:第1回調査を09年2月23〜25日に32調査チームが実施。面接者は地域の状況に詳しい看護師、助産師、保健師(90%は若い女性)とガイド=地域の状況と言語に詳しい若い女性=が面接、12名のスーパーバイザーは医師(多くは公衆衛生専門家)。さらに上級スーパーバイザーとして保健省の専門家がチェック。

    (2)結果(表あり):出生960名中、17名の新生児死亡あり、NTはゼロであった。ゼロであることから第二回調査は実施しなかった。960名の分娩の69.2%が保健施設で、72.5%がヘルスワーカーの介助で分娩、74.7%の母親がTd二混を1回以上接種していた。

  •  軽視された人畜共通感染症(Neglected Zoonotic Disease)の綜合的コントロール。アフリカ。

    07年11月、ケニア・ナイロビで会議開催。WHOなど多数の国際機関が主催。約90名(60名が公衆衛生学、公衆獣医学専門家、他に疫学、社会環境、経済文化など専門家)が参加。疾患として炭ソ、ブルセラ症、牛型結核、包虫症、有鉤嚢虫、エキノコッカス症、狂犬病などの風土病ないし時に集団発生する人畜共通感染症。途上国に広く分布、貧困が深く関連。獣医学、医学を含む各部門のギャップが特に貧困途上国で著明で対策困難。会議の提言:適切かつ継続可能な人畜共通感染症コントロール作戦計画として@地球規模、地域規模のリーダーシップ確立。A各国の公衆獣医組織の確立ガイドライン提示。B政策首脳者にこれら疾患のコントロールの重要性に関する情報提供する努力の支援。Cこれら疾患の綜合的サーベイランス、予防、コントロール活動ガイドライン作成と実施、報告

    。http://whqlibdoc.who.int/hq/2008/WHO_HTM_NTD_NZD_2008.1_eng.pdf

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年4月17日(84巻16号)
  •  ポリオ。1型と3型野生株の流行リスク再燃。アフリカ。

    08年1月〜09年4月の間、アフリカ諸国で、それまでポリオフリー(1年以上ポリオ野生株の国内流行なし)であったのに、ポリオの常在国からの輸入や輸入後国内流行が発生した国が増加、緊急事態となっている。患者からのウイルス分離と遺伝子検索により伝播経路の解析が世界ポリオ検査室ネットワークにより実施されている。

    <状況(地図と事例別一覧表あり)>:アフリカ諸国への野生株輸出国はナイジェリアとインド。同期間にアフリカ15カ国で32の輸入事例、野生株ポリオウイルス患者96例あり、ナイジェリア由来が29事例、患者数68名、インド由来が3事例、患者数28例で中西部アフリカ、アフリカの角、中南部アフリカの3地域から報告されている。

    @中西部アフリカ:ナイジェリアから直接もしくはナイジェリア隣接国経由で伝播。ベニン、ブルキナファソ、チャド、象牙海岸、ガーナ、マリ、ニジェール、トーゴ。

    Aアフリカの角:ナイジェリアからチャドに波及、さらにスーダン、エチオピア、ケニア、ウガンダに拡大(注:アフリカの角とは通常、海賊で有名なソマリアなどの海岸地帯を指すが、本報ではスーダン、ケニアやウガンダなど内陸国も含めてある)。

    B中南部アフリカ:アンゴラ(インド由来)、コンゴ民主共和国(アンゴラから)、中央アフリカ(コンゴ民主共和国から)。 <対応>:これら15カ国においては輸入例初発日から平均31.5日で検査結果が報告され、平均27.5日には定期外補充集団接種(SIA)が開始されている(一覧表では定期接種接種率が低い国が多い)。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年4月10日(84巻15号)
  •  髄膜炎菌感染症。アフリカ、髄膜炎ベルト。

    (注:髄膜炎ベルト=サハラ砂漠南縁の髄膜炎菌髄膜炎多発諸国)。 09年第11週までに24,868例報告(死亡1,513)。85%を超える例はナイジェリアとニジェールからの報告でニジェールでは1月1日〜3月15日に4,513例の疑い例、死亡169例、ナイジェリアでは同期に17,462例の疑い例報告、死亡9,610例、両国国境地帯に集中、いずれも髄膜炎菌血清型A群。WHO、国際赤十字・新月社、ユニセフ、国境なき医師団などが国際緊急対応機構の支援のもとに緊急集団予防接種実施。

  •  人パピローマウイルス(HPV)ワクチン。WHO見解文書(position paper)。  本報は08年9月までに得られたエビデンスを基にしたHPVワクチンに関するWHOの最初の見解文書である。WHOは主として性交渉で感染するHPV関連疾患、特に子宮頸癌の地球規模の公衆衛生学的重要性から、HPVワクチン接種が全世界の各国で予防接種計画に導入されるべきであると提言している。

    (1)背景。

    @疫学:05年の調査で子宮頸癌患者数は世界全体で50万人、死者26万人、女性人口10万当り1〜50人で、地域差が大きく、ラテンアメリカ、カリブ海諸国、サハラ以南アフリカ、東南アジアで多発、40歳を超える女性がほとんどで、集団検診普及など対策が進んだ先進国と異なり途上国では子宮癌死亡が多発している。

    Aウイルス:DNAウイルス。100以上の血清型があるが子宮頸癌と関連するのは13種類でうち16型と18型が子宮頸癌の70%(16型最多)に関連している。

    B免疫学、病理学、診断学:HPV感染は子宮粘膜上皮に限局、持続感染して(免疫反応が弱くてウイルスが排除されない)上皮細胞の前癌病変がおこり、上皮内新生物(cervical intraepithelial neoplasia CIN、2度と3度に分類)、さらに内在腺癌(adenocarcinoma in situ 、AIS)と進み、感染後約20年で癌化する。診断は生検材料の病理所見とDNA検出(途上国では実施困難で普及していない)。

    CHPVワクチン:認可され、入手可能なワクチンは2種類。性交渉・HPV感染機会前の思春期少女が対象。血清型6、11、16、18の4価ワクチンが06年、16、18の2価ワクチンが07年認可。いずれもウイルス表面抗原蛋白をもつウイルス様粒子を遺伝子工学的手法で生合成した感染性のない不活化ワクチン。4価ワクチンは少女(国により9歳)、2価ワクチンは10歳以降の接種が認可されている。

    D保管、接種スケジュール:2〜8℃保存(凍結しない)。4価ワクチンは初回、2ヵ月後、6ヵ月後の3回接種、2価ワクチンは1ヵ月、2ヵ月半あけての3回接種(他の方式も考えられている)。

    E免疫原性:両ワクチンとも3回接種後の抗体獲得は良好。接種後5〜6.4年の追跡調査では抗体価は3回接種で最高となり、初回接種後24カ月で消失、10〜15歳少女の方が16〜23歳(4価ワクチン)や15〜25歳(2価ワクチン)女性より抗体反応良好。HIV感染女性への接種結果は未発表であるが米国の7〜11歳の抗HIV剤投与中の120名の女児で4価ワクチン接種後95%を超える抗体獲得あり、平均抗体価は非HIV感染者よりやや低かった。B型肝炎ウイルスワクチン、DTP三混、ポリオワクチンと同時接種しても干渉は起っていない。

    F臨床的有効性と防御持続:臨床的有効性は、通常HPV感染後5年までに発生する前癌病変(上記CIN、AIS)の有無で判定することが採用されている。多センター、無作為・二重盲検法による第2相、第3相試験が15〜26歳女性(4価ワクチン)や15〜25歳女性で実施されている。a)4価ワクチン:5,455名の16〜24歳のHPV感受性女性の3回接種後1ヵ月における臨床的有効性調査の結果は有効率100%。他の第3相試験で初回接種後3年で有効率98%、他の17,622名の第3相試験で3回接種後平均3年の調査で有効率100%、他にも第2相試験で99%の有効率が得られている。b)2価ワクチン:15〜25歳女性18,644名の第3相試験で、14.8ヵ月の追跡調査の結果臨床的有効率90%。15〜25歳女性766名の第2相試験では接種後6.4年で臨床的有効率100%であった。

    G副反応と安全性:接種局所の軽い局所反応以外、全身反応なし。

    H禁忌:1回目、2回目で重症アレルギーを呈した者。催奇形性のリスクはデータがなく、エビデンスなしであるが、妊婦には接種を見合わせる。

    I費用−効果(cost effectiveness)の問題:各国、各地域の状況が異なり、一定の評価は困難であるが、概して導入するだけのメリットはある、とWHOとしては判断。

    (2)WHOの見解:HPV感染・子宮頸癌の世界的重要性に鑑み、WHOは有効性・安全性優秀なHPVワクチンの接種を勧める。最終目標は子宮頸癌を減らすこと。接種対象のターゲットは、まず9〜10歳から13歳までの少女。4価ワクチンと2価ワクチンの選択は各地域の特性に合わせること。学校単位の集団接種が普及に有効であり、地域保健活動の一環として保健教育、特に学校教育活動が重要である。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年4月3日(84巻14号)
  •  コレラ。ジンバブエ。

    09年3月23日。ジンバブエのコレラ大発生はやや小康状態を示しはじめ、大流行ではあるが3月14日の患者数は2,076例でその前の週の3,812例より減少、2月上旬の毎週8,000例をこえる患者数よりおさまってきており、罹患者死亡率も改善している(3月1〜7日、医療機関での正確な統計で0.8%。僻地ではもっと悪い)。昨年8月の発生開始以降3月17日時点までの総患者数は91,164例(死亡4,037)、WHOの世界流行警告対応ネットワーク(GOARN)が中心となって首都ハラレの対策センターを中心に対策推進中。

  •  ポリオ。ポリオ野生株伝播中断の進捗状況。08年。

    3型あるポリオウイルス野生株(WPV1〜3)のうち2型ウイルスは1999年以降発生は終息、1型と3型がナイジェリア、インド、パキスタン、アフガニスタンに土着・常在、伝播・流行している。07年の世界ポリオ根絶作戦(イニシアティブ)首脳者会議の勧告に沿った努力にもかかわらず、野生株ポリオ患者数は08年には世界全体で1,655例とかえって増加を示している(07年は1,315例。08年の状況の地図と一覧表あり。前号の数字とほんの少しずれているがそのまま記載)。これは主としてナイジェリア北部から南部、さらに近隣諸国に及ぶWPV1流行、インド北部でビハール州に始まり過去最大の発生州だったウタル・プラデシュ州への再流行(WPV1と3)、とアフガニスタン・パキスタン国境地帯からはじまるWPV1と3の拡大が理由となっているが、08年後半になって定期接種外の補充予防接種活動(SIA)実施強化と共にどの地域もやや事態は改善されている。本報は世界における08年における進捗の概略である。

    (1)経口生ワクチン(OPV)定期接種接種率:07年の乳幼児定期接種による三価生ワク3回接種率は世界全体で推定82%、東南アジア地域70%、アフリカ地域73%、東地中海地域87%、アメリカ、欧州、西太平洋地域では92%以上であり、常在流行国ではアフガニスタンとパキスタン共に83%、インド62%、ナイジェリア61%であるがナイジェリア北部、インドのビハール、ウタルプラデシュ州、アフガニスタン・パキスタン国境地帯では定期接種率は低く、40%未満である。

    (2)08年のSIA実施状況:36カ国で241回のSIAが34億の5歳未満を対象として実施された。241回のうち102回が常在4カ国、他は輸入国や輸入・流行リスク国で実施、1型単味ワクチン接種が40%に増加している。

    (3)急性弛緩性麻痺(AFP)サーベイランス:AFPサーベイランスの良否は@15歳未満小児人口10万当りの非ポリオAFP例報告数が1例を超えていること。AAFP例の80%を超える例から適切なウイルス検査材料が検査されていること。の二点が基準として設定されているが、08年にはWHOそれぞれの地域でこの基準が満足されていた(地域、国別の一覧表あり)。便材料のウイルス検査は08年には世界ポリオウイルス検査ネットワークに参加している141検査室で、AFP患者便約157,700検体、非AFP例便(患者接触者とか下水材料)約13,000検体が検査された。WPV1と3がインド・ムンバイなどの地域の下水材料で検出、ワクチン株由来ポリオウイルス(VDPV)がAFP例からナイジェリア(59例)、コンゴ共和国(13例)、アンゴラとエチオピア(各2例)などで分離されており、これらの分離ウイルスは1例を除き全例2型ワクチン株であり、ナイジェリアでは2型ワクチン株は06年から継続して分離されている。

    (4)ポリオ野生株によるポリオ例:08年に全世界で1,655例報告(地図、国別一覧表あり)。07年より26%増。報告例の91%は常在4カ国。1型が増加、3型は減少。

    (5)各論

    @ナイジェリア:北部カノ市を中心にWPV1と3の流行が続き近隣周辺諸国への伝播が相変わらず問題。流行が続く最大の原因はワクチン接種率の低さで、北部では20%を超える小児が1回もポリオワクチンを接種されていない。08年、北部を中心にSIA強化。

    Aインド:北部のビハール州、ウタル・プラデシュ州に常在。大規模SIAと定期接種接種率向上の結果、最大の流行地であったウラル・プラデシュ州西部で08年に隣接のビハール州から輸入されるまで一時伝播が中断できた実績があり、対策進捗で野生株排除の可能性あり、と注目されている。

    Bアフガニスタンとパキスタン:アフガニスタンの流行は内戦激化、治安不良の南部に集中。WPV1と3。従来接近困難だった部族支配地区での活動が試みられている。パキスタンにおける野生株(1型と3型、遺伝的にはアフガニスタン流行株と同一)患者は国境地帯から内陸部に拡大。内乱による住民の移動が関与。定期接種率上昇とSIA(両国同時に実施)強化を実施中。

    Cその他の国:08年に目立つのはナイジェリアからアフリカ諸国6カ国(国名略)、さらにネパールに及ぶWPV1と3の輸出、インドからアフリカのアンゴラとコンゴ共和国への遠隔地への伝播が注目される。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年3月27日(84巻13号)
  •  黄熱。アフリカと南米。07年。

    07年のWHOへの黄熱検査室確定報告例数は世界で59(死亡41)例で死亡数は06年とほぼ同じであった(表あり)。報告国はアフリカと南米の10カ国(地図あり)。全例、非都市型(注:黄熱には人→蚊→人主体の集団発生・都市型と、猿(人)→蚊→猿(人)の散発的なジャングル熱=非都市型黄熱に分類される)。06年、国際赤十字・赤新月社、国境なき医師団、ユニセフ、WHOなどによる黄熱作戦(イニシアティブ)発足、サーベイランス(患者発見と検査室診断確定)、発生対策として発生地域住民ワクチン集団接種と小児定期予防接種への導入などが履行されている。09年3月現在、アフリカ22カ国、中南米14カ国が小児に黄熱定期接種を実施、世界ワクチン・予防接種連盟が財政的支援実施。黄熱イニシアティブは黄熱発生国として環境因子では地理的位置(北緯15度〜南緯10度)、湿性サバンナか乾燥林であることとか、60年以降に保健省による確定患者の報告があること、ないし報告発生地区に隣接していること、など5項目が設定され、イニシアティブ第一期07年には西アフリカ12カ国が黄熱に最もハイリスクとされている。

    (1)黄熱イニシアティブの作戦:WHO/ユニセフの提言は@生後9カ月をこえた小児の定期接種への黄熱ワクチン導入、A発生地区住民を対象とした緊急集団接種。79年以降のこの二作戦が黄熱封じ込めに有効であることが証明されている。

    (2)アフリカにおける集団接種キャンペーン:07年8〜9月、トーゴ北部を中心に360万名を対象に住民集団接種、接種率84〜94%(地図あり、詳細略)。07年12月7日〜12日セネガルの黄熱ハイリスク地区で312万人対象に集団接種、接種率は94.2%。アフリカ全体で07年には11例の確定例報告あり(表あり)、ブルキナファソ、カメルーン、マリ、セネガル、トーゴそれぞれ各国の状況説明あり(セネガルの地図あり)、略。

    (3)南米:07年に48例(死亡40例)報告、罹患者死亡率83%。表あり)。症例の主体はジャングル型黄熱に暴露したワクチン未接種の青年で、都市型はなく、07年末までの動物間流行(猿に流行、死亡猿の多発)が注目された。07年の黄熱確定例の報告数はボリビア6(死亡6)、ブラジル13(死亡10)、コロンビア6(死亡6)、ペルー23(死亡18)で、ボリビア、ブラジル、コロンビア、ペルーの状況報告あり(略)。

  •  世界のポリオ。2008年患者数。

     09年3月17日現在のWHO本部への届出数。世界全体で確認数1,738例、野生株ポリオ確認数1,659例。国別に多いのはナイジェリア867(野生株806)、インド559(559)、パキスタン117(117)、チャド37(37)、アフガニスタン31(31)、アンゴラ29(29)、スーダン26(26)、コンゴ共和国19(5)。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年3月13日(84巻11/12号)
  •  デング熱。アフリカ・象牙海岸(コートジボアール)。デング3型ウイルスの緊急事態。

    (1)デング熱の概略:蚊によって媒介される発熱性ウイルス感染症。血清型1〜4型。初感染は発熱、筋肉痛と軽い発疹。自然治癒するが、初感染後他の血清型ウイルスに感染するとショック、出血熱による致死的経過をとることが知られている。有効な治療法、ワクチンなし。100カ国をこえる熱帯、亜熱帯諸国に常在。黄熱、西ナイル熱と同じフラビウイルスに属しているがワクチンがあり、サーベイランスが実施され、報告がされているのは黄熱だけである。

    (2)08年の象牙海岸の緊急事態:08年4月3日、3例の黄熱確定例が象牙海岸で発生、国際的に警告発表、次いで日本人旅行者1名とフランス人旅行者1名が象牙海岸最大都市アビジャンから帰国後発熱、東京とマルセーユで入院、デング熱ウイルス3型感染確定(アビジャン滞在はそれぞれ08年5月と7月)。国際的警告が発表され、象牙海岸からの帰国者・入国者で3型ウイルス感染確定者が増加していることが血清IgM抗体上昇、RT−PCR法による遺伝子検出で証明されている。アビジャンでは黄熱が同時に発生しており、ワクチンの緊急集団接種が開始されている。

    (3)検査室診断技術移転:08年9月と10月の2回、パリとセネガル・ダカールのパスツール研はWHOの支援で象牙海岸パスツール研に専門家チーム派遣、中和抗体法、酵素抗体法による型特異的抗体測定、RT−PCR法による遺伝子検出の技術移転実施。

  •  国際疾患根絶実行委員会。第13回会議。08年10月29日。米国アトランタ・カーターセンター。

    今回の話題はリンパ系フィラリア症(LF)とギニア虫(メジナ虫、Dracunculiasis)排除世界キャンペーン、ヒスパニョーラ島(ドミニカとハイチ)におけるマラリアとLF排除、第1回のブルリ潰瘍コントロール計画、である。

    (1)LF排除(注:LFは蚊が媒介する糸状虫症。
     主なものに仔虫が流血中に夜間出現するバンクロフト糸状虫と昼間出現のマレー糸状虫があり、感染者の流血中の仔虫を蚊が吸血、蚊の体内で仔虫が増殖、吸血で人が感染、リンパ系に寄生、象皮病や陰嚢水腫など慢性障害発生。ワクチンなし。有効な抗フィラリア剤あり:下記。犬のフィラリアは人に感染しない)。常在地における住民全員を対象とした抗フィラリア剤:ジエチルカルマバジン(DEC)+アルベンダゾールの集団投与(Mass Drug Administration、MDA)。目標は伝播中断・新規感染の制圧。サーベイランス履行、新しい検査法開発、MDAを何時まで続けるか、MDA中止後のサーベイランス・監視をどうするか、が重要と委員会は助言。

    (2)ギニア虫
     注:水系経口線虫感染症。雌虫が下肢の皮下に寄生、感染者が水に入った時に尾部が皮膚を破って幼虫放出、潰瘍を作って疼痛・運動障害発生、水中に放出された仔虫をミジンコが食べ仔虫が体内で増殖、その生水を飲んだ人が感染。熱帯途上国に広く分布していたが住民教育、安全な水供給普及で常在国は減少。委員会はこれまでの根絶計画の進捗状況を推奨、優先課題として南スーダンにおける封じ込めなどを提言している。

    (3)ハイチ・ドミニカのマラリアとLF排除
     カリブ海諸国で両疾患が唯一常在している地域。委員会は@国際基金に支援された両国政府による排除計画進捗を推奨、A両国の協力強化とBハイチにおける塩類強化DECの効果研究継続を提言。

    (4)ブルリ潰瘍計画検討
     委員会は08年10月に西アフリカ・ベニン・コトヌーで開催された第1回ブルリ潰瘍計画会議結果を再検討、高く評価。「内容は本週報09年2月6日号をみること」と本文にあるのみ。

  •  薬剤耐性マラリア。タイ・カンボジア国境地帯。

     マラリア対策上大問題の多剤耐性熱帯熱マラリアの救世主的治療薬であったアルテミシニンに対する薬剤耐性がタイ・カンボジア国境地帯で発生していることがWHOによる調査で判明、緊急事態となっている。今後アルテミシニン耐性マラリア排除のため、ターゲット地区の全マラリア患者の掘り起こしと適切な治療実施の確認(耐性が発生しやすいアルテミシニン単独使用ではなくて、多剤併用をWHOは勧めている)、蚊対策として環境整備・住民教育などがWHOや両国保健省、大学・研究所、国際機関により開始されており、ビルとメリンダ・ゲーツ財団拠出の基金により支援が予定されている。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年3月6日(84巻10号)
  •  ポリオ根絶。アフガニスタンとパキスタン。08年。

    世界におけるポリオ野生株(WPV)土着・流行4カ国のうちのアフガニスタン・パキスタンは国境をはさんで流行、流行として一つのブロックを形成、両国は共同してポリオ根絶のためSIA(Supplementary Immunization Activity、定期外補充予防接種活動)実施。アフガニスタンでは南部の紛争・内戦地域以外では流行していないがパキスタンでは従来のアフガニスタン国境の北西辺境州のWPV1型(WPV1)流行がパンジャブ州に広がっている。本報は09年2月でまとめられた08年の状況である。両国とも紛争・内戦・治安の悪化が大きな障害となっている。

    (1)予防接種活動:@定期接種:07年の両国における定期3価生ワクチン(OPV3)3回接種率は全国で83%となっているがAFP(Acute Flaccid Paralysis、急性弛緩性麻痺)調査などで得られた実際の接種率ははるかに低く、地域差が著明でアフガニスタンで中央州69〜南部州13%、パキスタンでパンジャブ州72〜バロチスタン州37%となっている。ASIA::5歳未満小児を対象とした戸別訪問(house to house)のOPV接種が両国で08年も大規模継続実施された。アフガニスタンでは全国一斉SIA4回とパキスタン国境地域を中心に地域SIAを5回実施して対象児の50%に接種、さらに内戦で実施できなかった地域に小規模SIA実施。パキスタンでは流行州を主体に5歳未満小児の40〜50%を目標に全国SIA5回と準全国SIAを6回実施。08年、両国ではSIA参加小児のfinger-marking(注:筆者の経験では総選挙などでも利用。参加者の爪を黒く塗って目印にする)を開始、SIAの実態把握。アフガニスタン南部やパキスタン北西辺境州の部族支配地区の07年以降の治安の悪化がSIA監視国連要員の活動を困難にしている。

    (2)AFPサーベイランス:08年の15歳未満小児10万人当り非ポリオAFP患者報告数はアフガニスタン7.6例、パキスタン6.5例と良好。AFP患者からの適切な便材料採取がアフガニスタンで93%、パキスタンで90%と良好であった(州別一覧表あり)。08年年間3,465検体(うち21%はAFP接触者)がアフガニスタン、13,086検体(うち21%はAFP接触者)がパキスタンの国内ポリオウイルス検査室で検査され、さらにパキスタン・イスラマバードの国立予防衛生研究所で型内鑑別、分子疫学的検索などの検査が実施された。

    (3)野生株ポリオ患者数:@アフガニスタンでは08年31例(07年17例)。1型25例、3型6例。Aパキスタンでは08年118例(07年32例)。1型81例、3型37例。B地域的には上記のアフガニスタン南部とパキスタン北西辺境州、パンジャブ、シンド州に多発(地図あり)。C遺伝子解析の結果はこれまでの流行ウイルスの存続とパキスタンパンジャブ州へのWPV1の侵入(地図あり)。

  •  ポリオ流行。スーダン。国際的拡大リスクの高まり。

    これまで南スーダンと西エチオピアに限られていた1型野生株ポリオ発生がケニア、北部スーダン(首都ハルツームと港湾都市ポートスーダン)、ウガンダに拡大している。特にポートスーダンは04〜06年のインドネシア、サウジアラビア、ソマリア、イエメンを含む1,200例をこえる国際的流行の伝播源として注目される。南部スーダンとエチオピアでは30%をこえる小児がポリオワクチン未接種であり流行リスクは高い。対応策として2月15日、北部スーダンで大規模SIA実施、3月23日、4月下旬にも予定。南スーダンでも1月13日、2月23日にSIA実施、雨期前の3月下旬、4月にも予定。ウイルスの遺伝子解析からケニア、ウガンダの分離株も同一でSIA予算措置がとられている。中央アフリカから湾岸諸国のサーベイランスが重視されている。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年2月27日(84巻9号)
  •  インフルエンザワクチン。09〜10年北半球冬期用ワクチン組成WHO推奨株。

    (1)08年9月〜09年1月のインフルエンザ流行:北半球は全体として平穏。日本や欧州諸国でA(H3N2)、北米でA(H1N1)、A(H3N2)とBが混合流行(世界各国の一覧表あり)。

    (2)最近の分離株の抗原性と遺伝的特性:ワクチン推奨株決定に重要。発育鶏卵や培養細胞で分離培養したウイルスで免疫したフェレット血清を用いたHI法などによる抗原性検索と、HA,NA遺伝子の解析が実施されている。

    (3)A(H1N1)ウイルス:最近の分離株は遺伝子系統樹では08〜09年ワクチン株のA/ブリスベーン/59/07分枝が主体。中国の分離株はA/香港/2652/06分枝に属しているが、抗原的には同一。

    (4)A(H3N2)ウイルス:最近の分離株はワクチン株のA/ブリスベーン/10/07、A/ウルグアイ/716/07と一致。遺伝子はA/ブリスベーン/10/07と同じ分枝。

    (5)B型ウイルス:ワクチン株のB/山形/16/88とB/ビクトリア/2/87と同じ分枝ウイルスが相変わらず流行中。ビクトリアウイルスは遺伝的にいくつかの分枝に分かれているが抗原性は同じ(詳細略。交叉HIテストの表あり)。以上(2)〜(5)をまとめると昨年のワクチンは流行株によくマッチしていた。

    (6)A(H5N1)ウイルス:08年9月〜09年2月11日、A(H5N1)感染確認人患者は21例(カンボジア、中国、エジプト、インドネシア、ベトナム)。鳥との接触者が多く、人→人の伝播はまだ発生していない。パンデミー対策は第3段階(3相)。

    (7)薬剤耐性

    @NA阻害剤耐性:世界各国でNA剤耐性A(H1N1)が発生しているがA(H3N2)ウイルス、B型ウイルスでは発生していない。
    最新情報は、http://www.who.int/csr/disease/influenza/h1n1_table/en/index.html

    AM2阻害剤:アマンタジンなどのM2阻害剤の多くは薬剤耐性が発生している。

    (8)不活化ワクチンの研究:現行A(H1N1)ワクチン接種後獲得された平均抗体価は最新流行株に対してやや低く(平均低下率が小児で51%、成人56%、高齢者42%)、B型ワクチンでもほぼ同様の低下、A(H3N2)ワクチンでは低下は見られなかった。

    (9)WHO推奨ワクチン株組成:A/ブリスベーン/59/2007(H1N1)+A/ブリスベーン10/2007(H3N2)+B/ブリスベーン/60/2008それぞれの類似株。

  •  人用A(H5N1)ワクチン候補株の抗原性・遺伝子特性。

    鳥類ないし鳥から感染した人から分離されたH5N1ウイルスによる人用H5N1ワクチンがプレパンデミックワクチンとして開発され接種試験が進行中ないし終了・認可されている。本報は09年2月における状況の概略である。

    (1)H5N1ウイルスの分子疫学:これまでの分離H5N1ウイルス121株のHA遺伝子の系統樹、ワクチン作製状況の詳細な図あり、略。

    (2)候補H5N1ワクチンウイルスの抗原的特性:開発された候補ワクチンの抗原性は免疫フェレット血清のHI交叉テストで分離株とよく一致(分枝別の一覧表あり)。

    (3)可能H5N1ワクチンウイルス:ウイルス株名、分枝、研究所、入手可能性の一覧表。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年2月20日(84巻8号)
  •  麻疹排除の進捗。WHO欧州地域。05〜08年。

    欧州地域の麻疹風疹排除目標年は2010年。戦略計画は麻疹ワクチン2回以上(MCV1とMCV2)と風疹ワクチン1回以上を定期接種と定期外補充接種supplementary immunization activities(SIAs)で実施。その結果07年、08年麻疹患者数は人口100万当り10未満に減少、12〜23ヵ月児の麻疹初回接種率は93〜94%に達している。問題は(@)西欧では接種率が完璧ではないので輸入例に続く国内流行がある。(A)東欧では08年のSIAが頓挫している。

    (1)欧州における予防接種活動:@定期接種:08年までに域内53カ国全部が麻疹ワクチン2回定期接種実施、51カ国(96%)がMMR3混。全体ではMCV1推定接種率は00〜04年に90〜91%であったのが05〜07年に93〜94%に増加(00〜08年の麻疹患者数とMCV1接種率のグラフあり)、しかし07年に目標のMCV1接種率95%に達しているのは36カ国に止まっている(05〜08年の欧州全域の麻疹患者数、予防接種とサーベイランス達成目標=Milestoneと達成度の一覧表あり)。ASIA:05〜08年、東欧8カ国で2700万名がSIAで接種を受けた。カザフスタン、トルコ、ロシア、アゼルバイジャンなど9カ国におけるSIA計画と実施状況(一覧表あり)では接種率の国による差(50.3%〜100.6%)が大きく、M単独やMR2混の国が多い。

    (2)サーベイランス:53カ国全てに届出制度あり。臨床診断例数は毎年WHOに報告。39カ国(74%)は毎月ガイドラインにそった臨床診断例数を報告。地域検査室網(08年には48検査室参加)がサーベイランスを支援、18,721検体中3,549検体陽性。分離ウイルス遺伝子型はD4型が40%を超えていた。

    (3)麻疹患者発生状況:欧州地域の麻疹患者報告数は08年には7,814例であった(表、グラフあり)。3,575(45.8%)例は検査で確定。08年報告の7,622例が年齢やワクチン接種歴が分っていて6,281(82.2%)例がワクチン未接種者、2,899(38.9%)例が15歳以上であった。05〜08年、麻疹集団発生は120事例あり、250例を超えたのが17事例、28カ国、目立つのは05〜07年のウクライナ46,121例、ルーマニア85,420例、グルジア8,391例などで05〜06年東欧諸国の発生が発端となっている(一覧表あり)。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年2月13日(84巻7号)
  • エボラウイルス・レストン型(ERV)。豚と人の感染。フィリピン。

    (注:高い致死率と強い感染力、治療法もワクチンもないことから1類感染症に指定されているアフリカ土着のエボラ出血熱ウイルスにはこれまでの発生地区の地名でスーダン型、ザイール型と呼ばれる型が知られている。それとは別にフィリピンから米国に輸入されたサルに大量死が発生、その研究所の場所の名前から分離ウイルスがレストン型エボラウイルスと命名。このサル取扱い者に抗体陽性者がいたが、無症状であり、人に病原性のないエボラウイルスとされていた)

    09年1月23日フィリピン保健省は病死した豚の接触者1名がERV・IgG抗体陽性、1月30日にさらに4名が抗体陽性であったと発表した。マニラ近郊居住者。5名全員、健康で過去12カ月間無症状、5名とも病気の豚と直接接触あり。この5名との接触者を調査中で、病死した豚の農場2ヵ所が閉鎖され、豚と豚肉製品移動中止。WHO、フィリピン当局が監視中。

  •  コレラ集団発生。ジンバブエ。

    歴史上最悪の流行がコントロール出来ない状況。08年8月以降09年1月29日時点で60,401名(死亡3,161名)。さらに罹患者は増加し周辺諸国に広がる様相。緊急策として草の根レベルの教育・社会活動、経口輸液を含む地域レベルの適切な治療とスタッフ動員、国境なき医師団などNGO参加、WHOなど国際機関参画。対応として保健省はWHO支援の下に首都ハラレにセンター設置、40を超える国内外専門家チームを動員、オーストラリアのバーネット研、ロンドン大学熱帯医学研究所、バングラデシュ国立下痢研、米国CDCが支援中で薬剤、器材などの支援も国際機関が実施中。

  •  国際保健規則(International Health Regulations、IHR2005。注:国際感染症としてWHOに届出義務あり)。届出4疾患の基準(case definition)

    (1)新型インフルエンザ:PCR、ウイルス分離、ペア血清による抗体上昇でA型パンデミックウイルス感染が確認された例。

    (2)野生株ウイルスによるポリオ:ポリオ疑いの急性弛緩性麻痺例でポリオ野生株が便材料から分離同定された例。

    (3)SARS:a.臨床診断(発熱+下気道症状+X線像+他の疾患の除外)。b.検査室確認検査:SARS患者ないしSARSコロナウイルス取扱い者で@ウイルスRNA検出。A血清抗体検査:ELISAまたは蛍光抗体法で抗体上昇確認;詳細は次のリンクから原文を参照

    http://www.who.int/csr/resources/publications/WHO_CDS_CSR_ARO_2004_1/en/index.html

    (4)天然痘(痘瘡):38.3℃以上の突然の発熱、全身倦怠、頭痛と腰痛を伴う疲労感+2〜3日後、顔面と前腕から躯幹、下肢に広がる発疹:紅斑、丘疹→水泡、膿泡(臍あり)→かさぶた。発疹はこの順に一連の進行、水痘のように混在しない。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年2月6日(84巻6号)
  •  レプトスピラ症(以下レ症)。科学的会議。フィリピン・マニラ。08年11月。

    フィリピン大学と九州大学の合同で@ワクチン開発、A検査室診断、B予防と対策、を話題として会議開催、フィリピンを含むアジア太平洋地区の現状と対策を討議。

    (1)背景:主としてネズミが保有する世界的に分布している細菌感染症。ネズミとの直接の接触以外に排泄物に汚染された水、土壌=特に洪水などの災害時・災害後(注:先日のミャンマーの大洪水)、汚染食品で感染。多くは無症状感染であるが、重症感染では罹患死亡率は20%に及んでいる。アジア太平洋地区では途上国中心に広く分布(注:日本では黄疸と出血をきたす重症感染(ワイル病)と軽い発熱発疹(秋やみ)として広く知られている)、有効なワクチンが中国、日本、ベトナムで開発され入手可能。重要なのは洪水に襲われたとき・洪水後の集団発生である。

    (2)会議の目標:アジア太平洋地区におけるこれまでの報告の再検討。レ症の情報・教育・報道材料のガイドライン作成。フィリピンにおける国家的疾病負担研究指針など。

    (3)活動のまとめ:@98〜01年、02〜07年におけるフィリピンの状況報告、Aフィリピン分離株検索、Bアジア太平洋地区諸国用ガイドライン作成。

    (4)結語と提言:@フィリピンにおける調査はフィリピン大学がすること、A「アジア太平洋地区におけるレ症概観」という文書を出版すること、B病原体の分子生物学的検査手法を導入すること、Cワクチン開発、特にフィリピンで流行中の株に対するワクチン開発の努力をすること。

  •  ブルリ潰瘍。西アフリカ第1回会議

    (注:ブルリ潰瘍=抗酸菌のMycobacterium ulcerans感染症。高温多湿の土壌などに常在。皮膚感染症。皮膚病変が進むと筋肉から骨に及ぶ深い潰瘍を形成。機能障害発生。抗結核剤有効。風土病的土着性著明。通称熱帯潰瘍として第二次大戦中軍医諸先輩に知られていた)。08年10月21〜23日。WHO、カーターセンター、ベニン政府が共同でベニン首都・コトヌーで開催。ブルリ潰瘍が高度に土着している西アフリカのベニン、象牙海岸、ガーナ、トーゴの4カ国代表による報告、検討。ナイジェリアがオブザーバー出席。

    (1)ベニン:NGOの支援を受け、政府施策としてハンセン病対策と合同で97〜07年実施。03年までは外科的治療、04年から抗生剤導入。ブルリ潰瘍センターで治療。

    (2)象牙海岸:西アフリカ最大の発生国。年間新規患者発生数は2,000名をこえている。07年には2,191例が22保健地域から報告。その73.4%が潰瘍形成。抗生剤による治療がNGOの支援で実施中。

    (3)ガーナ:アシャンテイ州を中心に南部で発生。07年には22州から676新規例が報告。WHO作戦に従った対策実施中。05〜07年、最も多発しているアマンシェ地区における担当者訓練の実績が発表された(表あり)。

    (4)ナイジェリア:1970年代は毎年報告されていたがその後2006年まで報告ゼロ。06年の調査で患者発見、ベニンのセンターに依頼。09年全国調査と担当者教育発足。ハンセン病対策と共同して実施。

    (5)トーゴ:99年から国家計画開始。04年全国調査で約800名。その後も状況は好転していないがNGOの支援で5年計画立案開始・履行。

    (6)結語と提言:4カ国の状況がまとめられ(表あり)、WHO・NGOに対する提言がまとめられた(詳細略)。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年1月30日(84巻5号)
  •  ワクチン安全性に関する世界助言委員会(Global Advisory Committee on Vaccine Safety, GACVS)。専門家委員会。08年12月17〜18日、WHO本部。

    ロタウイルスワクチンと人パピローマウイルス(HPV)ワクチンの安全性を検討し助言。

    (1)ロタウイルスワクチン:米国を含むいくつかの国で認可されている経口生ワクチンのロタテック、ロタリックスについて認可後の腸重積合併頻度の報告が検討された結果、ロタウイルスワクチンと腸重積発病は無関係という結果が得られた。米国CDCの最近2年間のワクチン副反応報告システムによれば1,400万名を超えるロタテック接種者の腸重積発症者は267名でワクチン接種による増加は認められず、ロタリックスについてもラテンアメリカ主体の接種調査で3,200万名接種後30日以内の腸重積発症者は106名、一般バックグラウンド集団と差は認められなかった。オーストラリアにおける06年10月の先住民、07年7月の全国接種試験においても腸重積は無関係であった。ロタワクチンとして最初に認可されたロタシールドが腸重積合併問題で中止されて以来、ロタワクチンと腸重積の関連が安全性から問題になっているが今回GACVSはロタテック、ロタリックス共に腸重積との関係は否定的である。ただし今後の追跡調査が重要、と提言している。

    (2)HPVワクチン安全性:07年6月のGACVSで認可前の接種試験報告から安全性、有効性共に良好であることが認められ、認可後いくつかの国で接種が進められているがその後、副反応報告・報道があり、この内容について検討された。内容は接種後の @失神。A過敏性・アレルギー、B脱髄疾患、である。注意深い調査の結果、いずれも一般人口当たりの発症数と差がないことが認められた。例えばオーストラリアからの報告で接種後30分以内にアナフィラキシーをおこしたのは26万4千接種で7例、いずれも重症後遺症なし、他の学校単位の調査でも差はなかった。また、脱髄疾患発生は一般人口における発生数と差は認められなかった。

    (3)ワクチン安全警報:以下報告あり(報告だけ)。インドで麻疹ワクチン接種後死亡例が3集団事例。スリランカでDTP・B肝・Hib5混ワクチン接種後死亡例1集団事例、ラオスでDTP・B肝・OPV接種後死亡単発例、ウクライナで死亡1例を含むMR接種後の副作用集団事例報告。

    (4)GACVSのサブグループとして4小委員会が活動中:@免疫不全とワクチン。Aワクチン副反応の世界的監視。Bワクチン組成の安全性。Cインフルエンザワクチン安全性。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年1月23日(84巻4号)
  •  黄熱。ギニア。08年12月31日、ギニア保健省報告。

    黄熱確定例2例。2例とも40歳男性。発病08年11月上旬。発熱と黄疸。ダカール・パスツール研で確定。保健省は09年1月26日、発生地域に緊急ワクチン集団接種実施。

  •  下痢と腸管ワクチン助言委員会(Diarrhoeal and Enteric Vaccines Advisory Committee,DEVAC)会議。08年10月7〜9日。WHO本部。

    (1)コレラワクチン:@東アフリカ:・ザンジバル計画検討。弱毒経口生ワクチンCrucell-SBLワクチン集団接種を09年1月開始予定。集団免疫効果も期待。インドの研究所で開発された迅速診断応用。Aベトナムで改良された生ワクチンをインドで製造・接種試験予定。BDEVACはバングラデシュ、インド、パキスタンにおけるコレラの公衆衛生優先性発表、バングラデシュにおける09年の新型コレラワクチン接種試験の財政的支援を世界ワクチン予防接種支援連盟(GAVI)に申し入れた。

    (2)ロタウイルス:DEVACはロタワクチンに関する最新のWHO公式見解文書やSAGE(戦略助言専門家集団)勧告などを検討、以下のポイントを支持する(注:現在、経口生ワクチンのロタリックス、ロタテックが米国を含む先進国で認可、接種が開始されている。安全性に関しては次号参照)。@05年WHO勧告に従いアジア・アフリカ地域の乳幼児死亡率が高く衛生状態不良、母親のHIV感染が多い途上国における臨床試験を09年までに完了または完了予定。Aロタワクチンは同時接種したポリオ生ワクチンを干渉しない。ポリオワクチンがロタワクチン接種後の抗体価に影響するという報告があり同時接種後のロタワクチン有効性調査必要(ラテンアメリカの調査では相互干渉なし)。BロタリックスはHIV感染乳児にも安全で免疫獲得良好。Cロタリックスはラテンアメリカ同様、南アフリカ・マラウイでも安全で有効。DGAIVなどの財政支援必要。米国の調査からロタテックと腸重積は無関係であり、ロタテック接種により重症ロタウイルス感染症による入院が劇的に減少することが認められている。委員会はSAGEへの09年4月のアフリカにおけるロタリックス試験報告に注目。

    (3)腸管感染細菌ワクチン:@ETEC(毒素原性大腸菌):途上国の小児下痢と先進国からの旅行者下痢症の主要原因菌。ワクチン開発の問題点は(@)簡単で信頼できる検査法開発。(A)地域別の最新の疾病負担が不明確。(B)ETEC抗原に対する腸管免疫、防御抗体の測定法開発。(C)有効なワクチン未開発。開発と治験。A赤痢:弱毒生ワクチン、サブユニットワクチンを含む有望な候補ワクチンが開発され、ゾンネ菌に対する結合型ワクチンの有効性がイスラエルの小児で認められ、今後赤痢の疾病負担調査と途上国における接種試験が重要である。B腸チフス:DEVACは疾病負担の大きい国におけるワクチン接種導入が重要であることを強調(注:現在開発されている経口弱毒生ワクチン、Vi多糖体ワクチンについての言及なし)。

    (4)世界腸管多センター研究(Global enteric multi-centre study):下痢症研究のためアフリカで5ヶ所、アジアで3ヵ所の研究所がビル&メリンダ・ゲ−ツ基金などの支援で共同研究開始。

    (5)腸管病原体のWHOポートフォリオ:WHOは優先すべき腸管病原体に上記に追加してH.ピロリ菌、カリシウイルス(ノロウイルス、サポウイルス)、腸管寄生虫、腸チフス以外のサルモネラ菌を焦点として会議開催。候補ワクチンが全てにおいて開発中で中にはかなり進展しているものもある。

    (6)粘膜局所免疫:流血中の免疫記憶B細胞検査がロタウイルス防御の指標として期待されている。免疫記憶B細胞検査法の開発・確立が進捗中。

    (7)今後の活動:09年には腸管感染症の診断学、試薬開発、ワクチンの最適配布作戦、腸管免疫学と腸管ワクチンの問題点に関する多くの会議が赤痢志賀菌ワクチンの問題を含め開催予定でDEVACも参画予定。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年1月16日(84巻3号)
  •  ポリオ根絶に関する助言委員会(Advisory Committee on Polio Eradication, ACPE)08年11月18〜19日第3回会議。WHO本部。

    (1)主要所見と結語:現在ポリオ野生株(WPV)が土着・流行している4カ国(ナイジェリア、インド、パキスタン、アフガニスタン)に関してのまとめ。a)インド:根絶計画履行状況良好、根絶の可能性あり。b)アフガニスタン:治安不良地域へのアクセスが問題。c)パキスタン:根絶計画進捗良好。経口単価生ワク(mOPV)と3価生ワク(tOPV)の適切なバランスが問題。d)ナイジェリア:北部州都カノ市のワクチン接種率30%未満、などワクチン接種率が低く野生株1、3型と2型ワクチン株の流行が続いており北部を中心としてコントロールが出来ていない。委員会の提言として@ナイジェリアのワクチン接種向上:接種ゼロ小児を10%未満にすること、Aパキスタンにおいては08年末までに全国小児にOPV普及計画立案・履行実施、09年4月末にACPEへ報告する。BACPEは09年4月までにポリオ根絶進捗状況を評価してWHO事務総長に報告すること。CACPEは土着各国における09年4月までの努力を注目、特にナイジェリア北部の全小児接種作戦とインドの1型、3型の2価OPVと不活化ポリオワクチン(IPV)組み合わせによる全小児接種計画、パキスタンの血清疫学調査とアフガニスタン南部のNGOによる活動に注目。

    (2)最新の状況と主な進展:11月12日時点で08年の野生株ポリオ患者報告数は16カ国、14,773例でその93%が土着4カ国、51%がナイジェリア、34%がインドとなっている。07年の同期の報告数は11ヵ国から707例。08年の増加はナイジェリアとパキスタンの1型WPV流行によるものである。他に97例が08年における輸入・国内再流行例としてアンゴラ、ベニン、ブルキナファソなど12ヵ国(ネパール以外は全てアフリカ諸国)から報告され、うち5カ国では国内伝播が1年以上継続した(国名略)。結果としては07年初頭に設定されたポリオ根絶里程標(mile stone)で完全に達成されたのは1項目だけで他の項目は達成できていない。しかしWPV1が土着、患者発生が過去において最大であった北インド・ウラルプラデシュ州西部地区で伝播中断が再確認されたとか土着4カ国全てで政府・州当局の根絶計画参画進捗、ポリオフリーの諸国における輸入例に対する対応迅速化など進展が認められる。提言として@ACPEは07年2月設定の里程標は有効で達成努力の継続を期待、さらに新しい里程標が09〜13年の作戦計画に組み込まれる予定。A事務総長の土着国における根絶努力評価。B最近の世界的な経済状況を考慮すること。C輸入例からのWPV伝播を12カ月以内に中断することを09〜13年の里程標のキーとする。D実験室診断検査方式の改良・迅速化(リアルタイムPCRなど)。

    (3)WPV土着国における伝播中断:提言として@伝播中断までSIA(補足予防接種活動)を6〜10倍強化。AWPV1とWPV3流行中断のためmOPV1とmOPV3接種、2型ワクチン株流行中断のためtOPV接種。Bそれぞれの国のポリオ根絶委員会の助言で採択、SIA強化。C輸入例発生後感度の良いサーベイランスを12カ月以上継続。以下、北インド、アフガニスタン、ナイジェリア、パキスタンの最近の詳細な状況と各国に対する具体的提言あり、略。

    (4)根絶手段の適正化:mOPVとtOPVの組み合わせとか1型+3型の2価OPVそれぞれについて提言。上記の反復になるので略。

    (5)WPVの国際伝播に対する提言:@WHOの刊行物(International Travel and Health)を最新状況に合わせて修正すること。Aポリオ土着国に隣接する諸国は旅行者の入国前・入国時のチェックをすること。BWHO事務総長は流行地からの旅行者に対するワクチン接種が伝播阻止に有効とする世界保健会議の決議の意義を考慮すること。C全てのポリオフリーの国は輸入例があったら定期接種の接種率を最高に維持すること。D全てのポリオ再流行国はACPEの提言を忠実に履行すること。E輸入WPV伝播が12ヵ月をこえた国はACPEのメンバーを加えた専門家による調査、助言を仰ぐこと。Fナイジェリアとインドの常在地域に隣接した国は毎年SIAを適切な方法で継続すること。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る


2009年1月9日(84巻1/2号)
  •  予防接種戦略専門家助言グループ会議の勧告。08年11月。

    予防接種に関する戦略専門家グループ(Strategic Advisory Group of Experts, SAGE on immunization)のWHO事務総長にあてたワクチン研究から予防接種普及進捗までに及ぶ課題についての報告(注:16頁にわたる膨大な報告。抄訳)。小児期の予防接種からワクチンで予防可能な疾患全てを対象とし、08年11月4〜6日、スイス・ジュネーブで開催。

    (1)WHO予防接種・ワクチン・生物製剤部局長の報告:前回のSAGE勧告以降の進捗。

    @肺炎球菌ワクチン:結合型7価ワクチン(PCV7)。33カ国が08年ないしそれ以降に導入または導入を検討中。PCV10とPCV13が2010年を目標に開発中。

    Aワクチン接種率について精密な検討が進捗している。

    BA型髄膜炎菌髄膜炎排除に関するヤウンダ宣言の各国健康大臣による採択。A型髄膜炎菌単価ワクチン認可を目指して開発中。

    C予防接種の最適スケジュールの検討。

    D08年4月、世界健康会議による世界予防接種ビジョンと戦略ゴール再検討。

    EWHOの優先課題として、各国レベルの国立予防接種技術助言委員会(National immunization technical advisory committee、NITAGs)設立、強化があげられているが最近の報告で60%の国がこの委員会をもっているが、公式な照会先を示しているのはその72%だけで、必要な報告を回答しているのは39%だけである。NITAGs設立・強化のガイダンス報告が準備中ないし報告されていて政策決定の評価に有用となっている。

    (2)WHO地域事務所からの報告:3地域(アメリカ、欧州、西太平洋地域)事務所から報告があった。

    (2−1)アメリカ地域事務所:3焦点。(@)根絶状態の維持、特にポリオ。(A)麻疹・風疹排除完了と流行期インフルエンザワクチン接種率と黄熱接種率の向上、小児予防接種計画を家族予防接種計画に入れ替えること。(B)新しいチャレンジ:新ワクチン導入。特にロタウイルス、肺炎球菌、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン。

    (2−2)欧州地域事務所:5問題点。(@)予防接種副作用と反予防接種運動:麻疹・風疹ワクチン接種後の副作用に関する過剰な報道や誤った報道の結果接種率に影響が及んでいる国があり、医療関係者、一般住民へのキャンペーン進行中。(A)新しいワクチン導入と低普及ワクチンの推進。東欧と西欧で差があり、旧ソ連諸国の遅れが目立つ。Hibワクチンは09年には殆どの国で接種実施中ないし導入予定。(B)ポリオフリーの状態維持と麻疹・風疹排除。ポリオ生ワク接種率は95%をこえているが急性弛緩性麻痺報告数維持とポリオ輸入例監視が重要。麻疹・風疹の排除については政治的意識と公的支援の欠如が問題。西欧で流行が発生、緊急問題となっている。(C)予防接種関連部門の改善の必要性。(D)欧州予防接種技術助言委員による最近の勧告。08年10月の会議で上記問題点などが討論され2008〜2013年の欧州地域作戦計画が採択された。

    (2−3)西太平洋地域:焦点は日本脳炎(JE)対策。この地域でJEのリスクがあるのは11カ国。この中にはワクチン接種普及で対策が進んでいる国、ワクチン接種がプログラムに入っておらずJEが流行している国、土着していると思われるがデータのない国がある。定期接種にJEワクチンが組み込まれる前には発生最多の時期で人口10万当り5〜21名の疑い例があり年間2万〜4万名が罹患、死亡3千〜6千名、後遺症1万〜2万名と推定されている。ワクチン接種が主な対策であり、先進3カ国(オーストラリア、日本、韓国)では定期接種実施、有効性を発揮している。中国では非流行3省を除く全国で定期接種され患者数は急速に減少した。マレーシアとベトナムでも接種されているが普及が望まれており、カンボジアでは疾患負担は明らかであるが接種は実施されていない。ブルネイ、ラオス、パプアニューギニア、フィリピンでは疾病負担不明。疾病負担を明確にすることが接種計画立案、実施に重要。課題として新しい認可前ワクチンの開発と財政的支援。SAGEは疾病としての重要性から予防接種を支援する方針で、疾病負担が明確になることを期待。中国で生産、接種されているSA-14-14-2ワクチンの認可獲得に必要なステップに取り掛かることを中国当局、生産者にすすめている(注:接種見合わせ中の日本の現況については言及なし)。

    (3)世界ワクチン予防接種支援同盟(GAVI Alliance)からの報告:GAVI構成メンバーについて変更が申請、認められた(詳細略)。ワクチン・予防接種普及のための財政的支援助言専門家集団であるGAVIとしては@財政支援優先順位:HPV、日脳、腸チフス、風疹のどれにするか、A従来の財政支援は低収入、最貧国が優先的であった。中程度貧困国支援をどうするかが重要課題である。

    (4)他の予防接種関連助言委員会からの報告:SAGEは下記の各委員会からの報告を受けた。@WHOの生物学的標準化専門家委員会(ECBS):黄熱ワクチン力価、インフルエンザH5N1ベトナム株の抗体標準化、各種ウイルス分子生物学的検査基準の報告。Aテクノロジーと兵站学助言委員会(TLAC):WHOとさらに広い機関に対する予防接種に関する助言。08年9月、第1回会議。ワクチン保管。コールドチェーンと僻地の問題(特に凍結出来ないワクチン輸送)。多国間輸送の問題。開封、一度使用したバイアルの残りのワクチンを使用できるか(multi-dose vial policy、MDVP)の問題。Bワクチンの安全性に関する世界助言委員会(GACVS):本週報08年32号287〜292頁参照と記載。コメントなし。

    (5)H5N1インフルエンザワクチン:第1回H5N1SAGE作業グループ会議報告

    1.H5N1流行第3相(現在)におけるH5N1認可ワクチン接種を勧める者。

    a.H5N1感染ハイリスク群:@.高病原性ウイルス検査室取り扱い者。A.鶏舎の鶏の取り扱い者。B.H5N1患者サーベイランス従事者。

    b.H5N1感染低リスクであるが不可欠な人材(”Essential personnel”)。

    c.低リスクの一般住民。

    2.パンデミックH5N1対策として認可H5N1ワクチン接種が勧められるのは

    a.”Essential personnel”。

    b.一般住民。

    3.第3相において備蓄されているH5N1ワクチンの期限切れが近いときの問題。

    4.SAGEは国際的H5N1ワクチン備蓄量の変更を提言すべきか。

    以上について09年4月、SAGE会議開催予定。

    (6)ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン:07年4月SAGEはHPVワクチンの世界的導入を勧告、07年11月に同年9月の会議結果を報告、接種普及を勧告。08年9月にはHPV関連疾患の世界的疾病負担、HPV感染予防手段としてのHPVワクチンの有効性、免疫原性、安全性、政策上の利点、経費効果などの報告を受けている。世界的な疾患負担として子宮頸癌患者が毎年50万名をこえ、死亡例が26万名をこえ、検診と早期治療の行きわたっていない途上国に集中している。ウイルス学的には血清型16型と18型が子宮頸癌の70%と関連、6型と11型が実数不明であるが途上国の性感染症として多発していて肛門陰部の疣の原因となっている。HPVワクチンはいくつかの高所得先進国と少数の途上国で予防接種計画に導入されている。現在16型と18型ウイルスの2価非感染性蛋白ワクチン(セルバリックス)と6、11、16、18型ウイルスの非感染性蛋白ワクチン(ガルダシル、シルガード)が入手可能で、SAGEの推奨する接種方式として@接種対象は女性。A接種年齢は9ないし10歳から13歳で初回接種、追加接種は地域の実情に応じて考慮する。B地域における接種教育キャンペーンが重要で学校単位の接種を考える。C子宮癌集団検診を国策として続行すること。D導入後の長期的定期的サーベイランスが重要。

    (7)麻疹。SAGEは2010年ゴールに向けての麻疹と麻疹死亡減少努力の進捗に注目。インドにおけるWHO勧告履行が急務。アフリカ地域で達成している履行状況の維持が重要。2回目接種を普及し、免疫度を93%〜95%以上に維持することが麻疹排除に必要。現行04年WHO公式見解を改定予定。

    (8)ロタウイルスワクチン:SAGEは乳幼児死亡の多いアジア・アフリカの途上国での普及の重要性を認めていて、現在入手可能な認可前ワクチンのロタリックスとロタテックに関して、3相治験接種で安全性確認、重症ロタ感染症の予防効果が85%をこえていることが明らかな地域から定期接種への導入を勧告。経費が問題でGAVI支援がポイントとなっている。

    (9)ポリオ根絶:現在ポリオ土着4カ国(ナイジェリア、インド、パキスタン、アフガニスタン)で野生株1型と3型が流行。ナイジェリアでは2型ワクチン株の伝播も2年を超えて発生している。輸入例に関してはアンゴラ、チャド、コンゴ共和国、スーダンの4カ国で12カ月をこえる伝播がみられた以外の伝播は中断されている。SAGEはインド・ウタルプラデシュ州の1型野生株伝播の中断が確認されたことに注目、ポリオ根絶の可能性を示すものとして重視している。SAGEはポリオ根絶に関する助言委員会(Advisory Committee on Polio Eradication、ACPE)を支援、(@)最も高リスクの西部ウタルプラデシュで6ヵ月間隔の単価ポリオ生ワク(mOPV)2回+ポリオ不活化ワクチン(IPV)接種キャンペーン。(A)1型、3型2価生ワクチンと高力価mOPV1接種。SAGEは北部ナイジェリアのポリオ流行、周辺国への波及に深い関心を寄せ、北部州都カノを中心とした履行計画立案中。ポリオ根絶後のIPV接種に関する国際ワーキンググループによる途上国におけるポリオ根絶後の選択肢は@生後6ヶ月までに3~4回接種。A1歳児、4〜6ヵ月間隔で2回。B1歳児に1回。C実施しない、である。SAGEはACPEの[世界におけるポリオ根絶が確認されたら出来るだけ早くOPV接種を中止する]という勧告を採択。

    (10)B肝ワクチン導入後:SAGEにB肝ワクチンワーキンググループの最新報告あり。同ワーキンググループは出生24時間以内に新生児にB肝ワクチンを接種すれば周産期感染によるB肝ウイルス感染症関連の死亡を約21%減少できることから24時間以内の重要性を強調し、普及を提言してきた。B肝ウイルス免疫グロブリンの同時投与の有効性も認められているが供給面、経済性などからワクチン普及勧告路線は変更されていない。新生児接種とその後の定期接種にB肝ワクチンを導入した場合の有効性の長期追跡調査が重要で、ワーキンググループの最近の結論では各種の接種方式があるが20年以上予防効果は保たれていた。この面での報告が09年4月、発表の予定。

(文責 磯村)
このページのトップに戻る

衛生研究所のトップに戻る