自閉症児の お口の健康 と 歯科治療上の問題 愛知県心身障害者コロニー中央病院 歯科 日本障害者歯科学会 指導医 石黒光 |
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多くの自閉症の幼児期には、身体に触れられることを嫌ったり、未知な事への不安から、採血やレントゲン撮影などの医療行為を頑固に拒否することがあります。そのなかのひとつに、日常的な歯磨き介助を嫌がったり、歯科健診に強く抵抗するケースがあります。歯磨きなどは、この時期の療育の種々の問題の中では小さなことに思えますが、そのまま放置してしまうと、後々大きな問題となってくることがあります。その例が「むし歯」であり「歯科治療」です。 コロニー中央病院の歯科では、開設以来約30年以上障害児者の歯科診療に当たっていますが、治療に最も苦慮するのが一部の自閉症の人たちです。幼児期から30年以上受診している方も含め、現在は幼児期から50歳代まで、年間約500人近くの自閉症及びその近縁疾患の方々が受診しています。これまでの経験をもとに歯科医療の立場から、その成育段階ごとに分けてその問題点と対応について考えてみましょう。
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![]() 自閉症の子の治療が一番難しいんです。 むし歯をつくらないよう気をつけて下さい。 |
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| ■幼児期から就学前 に注意したいこと■ | ||
・定期的歯磨きの習慣をつける大切な時期 この時期は、自分では上手に磨けないので、歯を磨いてあげることになりますが、嫌がることもあります。自閉的なお子さんに限らず、お風呂で髪を洗うのを嫌がる子に、嫌がるからといって洗わないお母さんはいません。ほとんどは毎日の繰り返しで徐々にやれるようになります。 多分、お母さんが水やシャンプーが眼に入らない様に工夫することで、次第に子どもも慣れてきます。歯磨きもそれと同じはずですが、少し嫌がるとやめてしまうお母さんがいます。髪の汚れは目立ちますが、口の中も見えにくいだけで、毎日食べれば歯は汚れます。嫌がっても少しずつ続けて、歯磨きを習慣にして下さい。この時期に習慣づけしておかないと、なかなか習慣は身に付きません。なかにはお母さんが忘れていても、同じ時刻になると歯ブラシを持ってくるようになる子もいます。この様にパターン化した日課になるようにして下さい。 |
![]() 朝晩2回の歯磨きを習慣付けてください |
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幼稚園や通園施設では年1回程度、歯科健診があります。治療が必要であればもちろんですが、むし歯がなくても最低半年に1回は、歯科医院でも健診や歯磨き指導を受け、“歯科医院の環境”に慣れておきましょう。 初めは嫌がっても、繰り返し通院することで適応することが多いです。一度行って嫌がるからといって、連れて行かなければいつまでたっても慣れません。理解ある歯医者さんを探して、気長に通ってください。 この時期むし歯以外に、転んで歯をケガしたりする機会が多く、急な受診でも普段から通っている歯医者さんであれば、本人も不安が少なく、先生も子どもを理解していれば、処置していただけるでしょう。小児歯科専門の歯医者さんなら慣れています。 |
![]() 歯医者さんに定期的に通って慣れておきましょう |
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・ブクブクうがい ができるようにしましょう 「ブクブクうがい」が大きくなっても意外とできない場合が多いです。就学までには、できるようにしましょう。視覚優先感覚を利用して、失敗してもいいように、まずはお風呂でお母さんのマネを繰り返しさせてみましょう。その際、下を向いて水を口に含ませ、吐き出す練習から気長にはじめて下さい。 「ブクブクうがい」は、まずは口をしっかり閉じる必要があります。また、水を口に含んでいる間は鼻から息をしなければなりません。つまり呼吸の調整が必要になります。これらは、口腔衛生ばかりでなく食べたり発語する口腔の機能や呼吸の調整に大いに役立ちます。ぜひこの時期に習得したいことです。 |
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・偏食を減らしバラエティーに富む食事にしましょう この時期の食生活は母親のコントロール下にあり、食事や間食の内容に注意できるはずです。しかし、極端な偏食の子が多いことも事実です。 特定の甘味菓子に固執したり、乳酸菌やコーラなどの炭酸飲料、スポーツドリンクなど砂糖が多く含まれる飲料水にこだわって常飲したがる子の場合は、むし歯が多発する可能性が高く、早期に他の飲料水に変えるよう誘導する配慮が必要です。この時期の飲食物の固執が、年長になっても続く例が多いので、何とか止めさせたいものです。 また、十分咬まずに急いで食べてしまう子もいますが、できるだけゆったりとした雰囲気で食事を摂るよう心がけて下さい。偏食が強くなければ、柔らかい物ばかりでなく、歯ごたえのある物を含めた、バラエティーに富んだ食事にして下さい。 ゼリーやプリンなどばかり食べていたり、食事中にお茶や牛乳で流し込むようにしないよう、食べ物と一緒に出さないか少量にするなど配慮して下さい。 |
![]() 食べながら水やお茶で流し込む様な食べ方はやめさせましょう |
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| ■ 就学期に注意したいこと ■ |
・乳歯から永久歯に生えかわる時期です。 とくに6歳臼歯がむし歯ならないよう注意しましょう。定期健診を継続しましょう。 学校では最低でも年1回歯科健診があり、その結果が通知されます。処置が必要とされたら早急に受診して下さい。健診で問題がない場合でも、半年毎ぐらいに歯科医院で健診を受けて下さい。やはり、その環境に慣れておくためです。 |
・少しずつ歯みがきの自立に向け練習する時期です。 でも、必ずお母さんが磨けない所は手伝って下さい。 高学年では自分で磨ける様に誘導し、自立の意欲を尊重した指導をして下さい。 歯科医院で歯みがきの指導を定期的に受けて下さい。学校で昼食後の歯みがきを日課にし、校医や歯科衛生士による指導機会を作りましょう。 |
・偏食が強い場合は、できるだけ食べられる食品を増やす時期です。 ゆっくり食べるようにしょましょう。 十分咬まずに早食いになりがちです。できるだけ、ゆったりとした雰囲気で食事を摂るよう心がけて下さい。食事も柔い物ばかりでなく、歯ごたえのある物を含めたバラエティーに富む食事にして下さい。 |
| ■ 思春期に注意したいこと ■ |
・卒業後、学校健診がなくなっても定期的な歯科健診を怠らないようにしましょう。 ・てんかん発作で薬を服用(アレビアチン)している場合は、歯肉の腫れに注意しましょう。 むし歯とともに歯肉炎の症状がではじめる時期です。施設やグループホームに移っても、定期的な歯科健診は必ず受けて下さい。とくにアレビアチンを服用している場合は、副作用で歯肉が腫れてくることがあります。 |
・歯磨きの自立期ですが、自己流のパターン化した磨き方になりがちなので、歯科医院で正しい方法の指導を繰り返し受けましょう。 磨けない、磨かない部分を歯科医院でチェックしてもらい、その部分を時々磨くよう指示したり、一部介助してあげるか仕上げ磨きをしてあげます。 |
| ■ 成人期以降に注意したいこと ■ |
・半年に1回は定期的な歯科健診を受けましょう。 とくに歯周病の進行に注意して下さい。 ・自傷による指咬みや頻回に歯軋りするケースでは、歯が動揺したり、顕著に咬耗したりすることがあり、早めの対応が必要です。 ・反芻する癖のある場合は、頻回に歯科医に通う必要があります。 むし歯や歯周病の初期症状を、保護者や介護者に的確に訴えることが難しいので、常に食事の仕方や日常の行動に注意し、異変の早期発見につとめて下さい。 |
・自分でうまく磨けない、介助を嫌がるなど場合は、定期的に歯科医院に通って歯科衛生士さんに磨いてもらう様にする。(専門的な口腔清掃) 歯磨きがパターン化して、一定の場所だけしか磨かないことが多いので、どこが磨けないか、その際の手の動きの癖などを歯科衛生士さんに見てもらい、できるだけ直してあげましょう。 |
・食べ過ぎ、動かない、甘味食品に偏るなどによって、肥満したり、糖尿病、高コレステロールなど成人病になりやすいので注意しましょう。 毎年、定期的に血液検査などで全身状況に注意しましょう。血糖値やコレステロ−ル値のチェックなど。 |
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自閉症の歯科治療の困難性と対応法 |
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| どこに困難性があるか | @他人から身体を触られることへの抵抗感 A治療の意味の理解、未知への不安感、医療行為への恐怖 Bコミニュケーションが困難なため症状の把握が遅れがちになる C歯科医で待つことの困難性 D予防指導の受け入れの困難性 E歯科スタッフ側の知識・理解不足 |
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■ 困難性への対応 ■ |
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| @歯磨きを嫌がる、口を 触られることへの抵抗感 |
・感覚異常により極度に抵抗を示す場合がありますが、幼児では日常から寝かせた姿勢で、口腔内を触れさせる経験を、家庭でトレーニングしておく必要があります。 ・口唇や頬には、そっと触れるのではなく、しっかり接触面積を広くして触れた方が嫌がりません。 |
| A治療の意味の理解、 未知への不安感、医療 行為への恐怖 |
・知的障害を伴う自閉症者で、治療の意味を種々の手法で説明しても理解できにくい場合は、恐怖心が強く、治療導入時に抵抗することが多いようです。 3-4回通院しても慣れないようなら、いったんは強制的に診療台に座らせ、歯磨きだけの行為を繰り返します。次第に抵抗が少なくなってきます。ただ、慣れる回数は、個人差が大きいようです。 ・ある程度のコミニュケーション能力がある場合は、治療行為を視覚的媒体でわかりやすく説明するか、診療器具に関しては可能な限り実物を示し、どんなことをするのか見せておくようにする。ただし、尖った物に異常に恐怖心を持つ場合は、配慮が必要です。 (TEACCH法を応用して効果がある場合もありますので、歯科医にご相談され、絵カードなどを作っていくのもよいでしょう) ・家庭で、スプーンを口に入れて、歯の健診の練習をしておくとよいでしょう。 |
| Bコミニュケーションが 困難なため症状の把握 が遅れがちになる |
・歯科疾患は早期に発見できれば、治療も簡単にすみます。従って日常的に、歯磨き時に口腔内をよく見る習慣をつけおくと、歯の変化や歯肉の色や腫れなどの変化に早めに気づきやすくなります。 ・また、食べ方や食欲、就眠状況、機嫌などの変化から、口腔の症状であるか他の原因かを把握します。 ・とくに口内炎の不快症状と歯痛と、間違えやすいので注意して下さい。 |
| C歯科医院で待つことの困難性 |
・歯医者さんの待合室で長く待つことで、不安感を助長することがあるので、できるだけ待つ時間を短くしてもらう様、歯科医院に頼んでみる。 ・何もしないで待つのではなく、好みの本や物を持っていくなど待ち時間を過ごす工夫をしておきます。 ・日常的に機嫌のよい時間帯に受診できるように工夫して下さい。 |
| D予防指導の受け入れ の困難性 |
・集中して、一定時間歯磨きを持続できない場合が多いので、数をかぞえながら少しずつ磨く時間を長めにしていきます。 ・一度ついた歯磨きパターンを変えることは、かなり難しいが、根気よく繰り返しの指導で変えることが可能な場合があります。 ・不可能な場合は、親の介助磨きをパターン化していきます。 |
| E歯科スタッフ側の知識や理解不足 | ・残念ながら全ての歯科医療従事者が自閉症を正しく理解して対応できる状況にはありません。また、診療に要する時間や設備、スタッフ数などのよっても受け入れが難しい医院もあります。 ・そのため、地域の歯科医師会では、障害者の方のための歯科センターを設立して、ある程度は診療可能になっています。一部の病院や大学病院でも行われています。 愛知県下の主な医療機関を下記に示します ・歯科医師や歯科衛生士には、現在教育段階で「障害者歯科」学の講義が実習を含め行われ、基礎的知識を学んでいます。 ・また、日本障害者歯科学会では、専門的知識や技術を有する経験ある歯科医を認定医とする制度を、昨年発足させています。 全国で約360名、県下では、16名が認定医になっています。 ・以上のような状況で、徐々に理解ある歯科スタッフが増加しています。 |
■ 自閉症者が受診できる愛知県下の主な専門的医療機関 (開業医を除く) ■
| 医療機関名 | 所在地・電話 | 診療日時 | 備考 |
| 愛知県歯科医療センター | 名古屋市中区丸の内3-5-19 052-962-9102 |
木・土曜日 14:00〜16:00 |
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| 名古屋北歯科医療センター | 名古屋市北区清水14-17-1 052-915-8844 |
火・木・土曜日 10:00〜16:00 |
障害者手帳所持者、名古屋市在住者 |
| 名古屋南歯科医療センター | 名古屋市南区笠寺町字松兼 58-1 052-824-8844 |
水・金曜日・他 10:00〜16:00 |
障害者手帳所持者、名古屋市在住者 |
| 名古屋市児童福祉センター | 名古屋市昭和区川名山町6-4 052-832-6111 | 木曜日 9:30〜12:00 |
就学前 名古屋市在住者 |
| 一宮市口腔衛生センター | 一宮市音羽町1-5-17 0586-72-5548 |
木曜日 13:00〜17:00 |
予約は一宮市保健センター0586-72-1121 |
| 半田歯科医療センター | 半田市港町1-62 0569-23-2636 |
木曜日 9:00〜13:00 |
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| 豊川歯科医療センター | 豊川市諏訪町3-242-3 0533-84-7757 |
第1.2.4木曜日 9:00〜12:00 |
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| 豊田市こども発達センター のぞみ診療所 |
豊田市西山町2-19 0565-32-8985 |
火曜 13:00〜17:15 木曜 9:00〜12:00 |
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| 愛知県青い鳥医療福祉センター 歯科 | 名古屋市西区中小田井5-89 052-501-4079 |
月曜日 9:00〜16:00 |
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| 愛知学院大学歯学部附属病院 障害者歯科 | 名古屋市千種区末盛通り2-11 052-751-7181 |
月〜金曜日 9:00〜16:00 |
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| 愛知県身障害者コロニー 中央病院 歯科 |
春日井市神屋町713-8 0568-88-0811 |
月〜金曜日 9:00〜16:00 |
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isgr@aichi-colony.jp