居住施策に関するアンケート調査

氏   名 堀田 典裕
所属・役職 名古屋大学大学院工学研究科・助教
専門分野 建築・環境デザイン

愛知県の住まい・まちづくりを取り巻く状況について、それぞれの専門の分野から、特に注目している現状と今後重要となってくる課題についてのお考えをお聞かせください。

1)まちづくりについて:ヨーロッパ先進都市の事例を挙げるまでもなく、郊外電車・地下鉄・路面電車などの鉄道駅を中心とするコンパクト・シティの考え方は、今後の都市像を考える上で重要だと思われます。我が国でも、高度に鉄道網が発達した関東圏や関西圏では、重要な都市モデルとなるでしょう。愛知県でも、こうした鉄道を中心とした高密度なまちづくりが当てはまる場所は存在しますが、高密度なまちづくりの前提となる人口の集中が、愛知県にどれだけあるでしょうか。地方都市の都心部では、駐車場ばかりが目に付き、生活する上で最低限必要な店舗だけが営業する商店街は、珍しい風景でなくなりつつあります。そうしたまちでは、最早、どこが都心でどこが郊外かさえわからないような風景が広がっているのではないでしょうか。

2)住まいづくりについて:愛知県の持ち家率は高いですが、少子高齢化による人口減少に伴う空家増加を生む危険を孕んでいます。あるいはまた、愛知県の住宅面積は広いですが、圧倒的な数値を与えてくれるものではありません。結局、適度な広さの住戸が離散的に建ち並ぶことによって、上述した高密度なまちづくりからは遠のくことになると思われます。高密度なまちづくりを考える場合、集合住宅は必須ですが、多くの公営住宅は、設備が老朽化しているだけでなく、戦災復興期に作成された最低限の規模や規格が基になっているために先進諸国に比較すれば、狭小だと言わざるを得ません。愛知県のみならず地方都市の公共団体が、縮退社会における今後の集合住宅のあり方を提示する責務は大きいと思われます。
キーワード 鉄道駅、駐車場、商店街、集合住宅、少子高齢化、縮退社会

上記の課題解決のために推進すべきと考える住まい・まちづくりに関する取組みについてのお考えをお聞かせください。

1)まちの密度を考え直すこと:都市と郊外の区別がつかなくなってしまった地方都市において、人口を集約し高密度なまちづくりを行うことは、少子高齢化社会を考える上で重要なことです。一方で、緑地のネットワークを再考することで得られる低密度のまちづくりを行うことは、平常時の美しい風景と、災害時の避難空地を考える上で重要だと考えます。

2)周辺環境に応答すること:地形の形状・水系・植生からなる自然要素と、交通・土地利用からなる人工要素を丁寧に読み取り、土木・都市・造園・建築・家具に固有なスケールを横断的に思考することで周辺環境に応答し、各市町村の特徴を生かした具体的なまちづくりを考えることが必要であると考えます。

3)公営集合住宅を再整備すること:既存の公営集合住宅のリノベーションを行うとともに、これまでにない所得層と年齢層に向けた新しい公営集合住宅のあり方を、まちの「地」を形成するための持続的なデザインとして提案し、高密度のまちづくりを行う必要があると考えます。

4)緑地のネットワークを再整備すること:都市部では、鉄道駅等の交通結節点における駐車場や駐輪場の空地と公園の整備を連動して考え、郊外では、農地や山林の持続的発展に向けた整備を行うことで、都市の輪郭を整えるとともに低密度のまちづくりを行う必要があると考えます。
キーワード 高密度のまちづくり、低密度のまちづくり、周辺環境、公営集合住宅、緑地のネットワーク、公園、空地、駐車場、駐輪場、農地、山林