居住施策に関するアンケート調査

氏   名 北川 啓介
所属・役職 名古屋工業大学大学院工学研究科つくり領域・准教授
専門分野 建築意匠設計、建築設計計画、まちづくり

愛知県の住まい・まちづくりを取り巻く状況について、それぞれの専門の分野から、特に注目している現状と今後重要となってくる課題についてのお考えをお聞かせください。

愛知県内の各地域は、古くは各所に点在する古墳の時代、また、熱田神宮創建の時代から、江戸時代の尾張藩と三河藩の時代、また、ものづくりの一大拠点となりえた明治から大正、昭和にかけての、それぞれの時代背景を反映した有数のまちが残っています。愛知県は、さらに、こうしたそれぞれのまちづくりを牽引するNPO法人の活動が全国の中でも非常に盛んであることも、毎年の統計にあらわれています。いわば、小学校区や中学校区のスケールの、住民がお互いに目が行きとどくまちづくりに非常に積極的であり、こうした日常生活の延長上でまちを考えていく地域性は、過去から現在までの歴史や文化の文脈を大切にする地域性でもあり、未来に向けて新しい企画を強く好む他の大都市とは少々異なる価値観が愛知県に継承されています。一方で、オリンピックや万博など、県や都市が一致団結してのスケールの大きな国際的なイベントを愛知県内に招致してきた経緯もあります。私はそれら、長い歴史を大切にした地域に密着したスケールのまちづくりと、県や市町村が牽引する大きなスケールのまちづくりの両方が、うまくコラボレーションしていくことが今後、重要になっていくと考えます。
キーワード 歴史、過去、現在、未来、学区のスケール、県市町村のスケール、継承

上記の課題解決のために推進すべきと考える住まい・まちづくりに関する取組みについてのお考えをお聞かせください。

2005年の愛知万博の際の一市町村一国フレンドシップ事業は、近年に実践された良いアイディアと思っています。国際的な大きなスケールでのまちづくりを誘致することで異邦の文化を取り入れる機会になる有利な点と一方の一過性となる不利な点、学区のスケールでまちづくりを継承することで日常の豊かさに通ずる有利な点と新しい未来像を築きにくい不利な点、その双方の有利な点と不利な点を互いに補いながら、過去と未来を繋いでいったことは、高く評価して良いと思います。
私自身、愛知万博の複数の一市町村一国フレンドシップ事業に関わった経緯がきっかけとなって、現在も、名古屋市内の小学校区と連携したプロジェクト、また、海外の大学院との大学院レベルでの研究交流や、EUや国連と共同しての発展途上国でのまちづくりの国際プロジェクトへと、教育、研究、社会活動を展開することができています。
日常のローカルなまちづくりと、もう少し大きなグローバルなまちづくりの双方が両立していく愛知県となっていくことを望んでいますし、そのためであればできることから尽力したいと思っています。
キーワード 一市町村一国フレンドシップ、未来像