居住施策に関するアンケート調査

氏   名 新田 米子
所属・役職 岐阜聖徳学園大学短期大学部・教授
専門分野 住居学

愛知県の住まい・まちづくりを取り巻く状況について、それぞれの専門の分野から、特に注目している現状と今後重要となってくる課題についてのお考えをお聞かせください。

 これまで、愛知県の住まい・まちづくりを研究対象とするとことがあまりなかったため、地方都市居住に共通する課題という視点でのコメントとなる。
 今後、高齢者世帯の増加への対応として、親世帯と子世帯の住み方(居住距離)が重要になると考えられる。親子の隣居や近居の住み方が今後は注目され、両世帯がこのような住み方を選択可能なような住宅政策が必要になると考える。
 近年北陸、東北の一部の地域を除き、親子の別居が増加しつつあるが、別居の場合でも隣居・近居を選択する世帯が増えつつあり、このような動向が見逃せない。国・地方自治体の財政事情が逼迫する中で、高齢者の生活を支援する公的サービスの充実は、今後はあまり期待できず、家族や地域の人々の重要性がますます高まることが予想されるからである。しかし、高齢者の生活支援はすべて家族に任せればよいという考えでは、早晩そのような支援体制は破綻をきたすことは自明の理であり、家族、地域ネットワーク、公的支援が総体的に機能するしくみづくりが必要となろう。
キーワード 高齢者居住、親子の住み方、地域ネットワーク

上記の課題解決のために推進すべきと考える住まい・まちづくりに関する取組みについてのお考えをお聞かせください。

 子世帯が親世帯の居住地近隣に居住又は移住しやすくするための方策の一つとして、郊外住宅地の空き家・空き地の活用が考えられる。
 全国的に空き家戸数の増加がみられ、愛知県においても同様な傾向が「住宅・土地統計調査」から把握できる。郊外住宅の中でも持ち家・戸建てに住む高齢世帯は、居住面積にゆとりがあるが、高齢化対応の遅れている住宅に住むことが多い。そこで高齢世帯は、高齢者専用住宅など高齢化対応が整備された、より快適で安心な住宅に住み替え、一方家族人数の多い子世帯が、中古の戸建て住宅に移住する、あるいは空き地に戸建て住宅を建設する、といったことが実現しやすくなる居住システムの確立が必要である。
 空き家・空き地の活用を考えるにあたっては、まずは、地域住民・自治会と自治体との協同による、空き家・空き地の台帳の整備・管理空き家・空き地情報の発信方法の工夫、空き家へ移住する若年世帯への住居費、移転費等の優遇策の検討、子育て環境の充実などの取り組みが重要となろう。これらの実現のためには、例えば、若年世帯の移住に際する優遇策等をすでに実施している先進自治体における、その成果と課題などについて調査・研究を進めることが必要である。ほかの推進すべき事項についても、同様な方法で進めることで、より効果が期待できると考えられる。
キーワード 空き家、空き地、若年世帯の移住、若年世帯優遇策、子育て環境