あいちの環境
里山保全活動マニュアル

 1.はじめに


  都市近郊や集落周辺の身近な自然環境である里山は、古くから薪や炭の生産など、人との関わりの中でいろいろな形で利用されてきましたが、近年の社会情勢の変化により、人と自然とのふれあいの場として、あるいは、多様な生態系を育むすぐれた地域として、適正な保全・利用を進めることが重要であるとの気運が高まってきました。
  しかし、二次林や雑木林を中心とした里山は、手を付けずにそのまま放置すれば自然の遷移により植生などが変化し、多様な生態系が失われるおそれも生じてきます。人手をかけた多様な姿を持つ里山であったからこそ様々な花が咲き、枯れ葉が腐食し、土壌中に微生物が生じ、そこから食物連鎖による多様な生態系が形成されてきたといえます。
  また、里山の持つ環境保全機能、アメニティ機能など、社会的に共有する環境価値は非常に高いことから、人々が再び里山に関心を持ち、下刈りや除伐などの適切な保全管理を行い、里山の自然を活かしつつ適度の手入れをしていくことで、身近な自然とのふれあいの場、自然環境の体験学習の場などとして賢明な利用をしていくことが望まれております。
  愛知県においては、こうした里山の歴史的経過や近年の里山の保全に対する重要性を踏まえて、平成8年度に本県の里山の状況調査を実施するとともに、平成9年度からは知多郡美浜町内の山林を、平成10年度からは宝飯郡御津町内の山林をモデル事業地として、各種の里山保全事業を実施しております。
  このマニュアルは、里山保全活動について、これまでの本県の事業展開などを踏まえながら取りまとめたものであり、里山保全活動を始めようとしている方や現在、既に実施している方にもご活用いただければ幸いです。
  最後に、ご多用中にかかわらず、本書の編集にご協力いただいた方々にこの場をお借りして厚くお礼申し上げます。

平成11年11月 

愛知県環境部

●里山とは

「霜落ちて、大根ひく頃は一林の黄葉錦してまた楓林を羨まず。其葉落ち尽して、寒林の千萬枝簇々として寒空を刺すもよし。……春来りて、淡褐、淡緑、淡紅、淡紫、淡黄などやわらかなる色の限りを尽せる新芽をつくる時は、何ぞ、独り桜花に狂せむや。青葉の頃林中に入りて見よ。葉々日を帯びて、緑玉、碧玉、頭上に蓋を綴れば、吾面も青く、もし仮睡せば夢また緑ならむ。初茸の時候には、林を縁とる萩薄穂に出で、女郎花苅萱林中に乱れて、自然は此処に七草の園を作れり。月あるも可、月なきもまた可、風露の夜此等の林のほとりを過ぎよ。松虫、鈴虫、轡虫、きりぎりす、虫という虫の音雨の如く流るゝを聞かむ。おのづから虫寵となれるも妙なり。」

  明治の自然主義文学者である徳富健次郎(蘆花)は、著作『自然と人生』のなかで、雑木林についてこのように描いています。彼の繊細な精神に訴え、美しい日本語表現の世界を引き出した豊かな生命の流れを、雑木林はもっていたのです。私たちの親しい生活領域、多くの地域に恵まれてた里山、そこはまさしく雑木林の織りなす感性の世界だったのです。

戻る  マニュアル トップページへ  あいちの環境へ  進む