あいちの環境
里山保全活動マニュアル

2-3人との多様な関わり
 

  生活と里山(雑木林)とのかかわりが絶たれてから40年近くが過ぎ、人々の自然に対する認識とか森林観といったものは、かなり変化してきているように思われます。最近、自然を守るために森や林には人が手をつけないほうがよいという意見もありますが、この考え方は雑木林を守ることとまったく相反しています。森を遠くから眺めるのはよいのですが、なかに入って行くのはいけないというのだから、いわば景観としてだけの森林であって、もはや生活の一部としては見なされていないことになります。
  自然のままがよいという人たちには、里山(雑木林)はある意味ではきゃしゃなものだから、「人が手を入れることによって雑木林として維持していくことができる」という話はなかなか納得してもらえません。放置されたままだと全体的には木が大きくなっていきますが、どれかが老化した段階でその木を伐り、空間ができても、その老木はもはや萌芽して若い世代を生み出す力はありません。萌芽更新させるには、20〜30年の樹齢の木を伐採してやり、多くの株を立たせて、その中から成長力の強いものを数本残し、育てていく方法がとられます。いつも成長過程にある異なった樹齢の木を確保し、森を健全に育てるために、人が手を入れることは有効な方法となるのです。
  また、手入れされずに上層が閉鎖され、光が入らない林床では、野生植物の種子は芽を出すことができません。また、芽を出しても十分成長することができず、ついには裸地化してしまうことさえあるのです。植物の種類の豊富さを確保するためには、林床の適当な光環境を整えてやる必要があるのです。それが雑木林の手入れであり、木を伐ることに意義があるのです。

 しかし、人の手によって林内の光環境を調整し、多様な植生を形成するには、かなりの時間がかかります。どうにか効果が出てきたと思えるようになるまで、少なくとも三年はかかるでしょう。森に元からあったものを全部再生させようとしても、「まかぬ種は生えない」のが道理で、すでに完全に失われてしまった植物が生えるわけではありません。
  そこにはもともとどういう植物が生えていたのか、それらがどのように成長し、また種類の交替や種数の増減があったのかを分析し、多様な生態系を復元するには、数十年、否百年を越える年月が必要とされるでしょう。
  里山の荒廃が決定的に進まないうちに、適正な人為的管理を持続することが、その地域独特の里山生態系を保全するために重要となるのです。今ならまだ間に合います。

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