あいちの環境
里山保全活動マニュアル

2-4 変わりゆく里山

  わが国の多くの都市は、海と山のはざまに立地しています。広大無辺の海につながる海岸線と森閑と広がる森につながる里山地帯(「里山線」といえましょう)に囲まれ、私たちは生活をしています。
  私たちの生活環境を形成する上で、身近で重要な自然環境が海岸線と里山線です。しかし、過去、都市の発達が海岸線を人工海岸に変えて自然を侵すと同時に、里山線をも開発によって失ってきました。
  世界の国々のなかでも、卓越する長い海岸線をもつのが、わが日本列島であります。しかし今、その海岸線のどれだけが自然海岸の状態をとどめているのでしょうか。自然海岸の喪失は、清らかな海の水の、陸地からの後退をともなっています。私たちは海の碧を、足元から失ってしまったのです。
  そして里山に目を転じてみましょう。都市の膨張は、里山の緑線を後退させていきました。里山は、ゴルフ場開発など、都市のもつべき本質的な機能充実とは無関係な開発によって、かつての豊かで身近な緑の場としての意義を、喪失していったのであります。また、松くい虫による被害がさらに追い打ちをかけ、人の入らなくなった松林は枯れるにまかせられ、人々の生活意識の中からも無用化されていきました。
  言いかえれば都市は、里山の緑、里山線にも背を向け、環境保全よりも経済効率を求める道をひた走ったのです。そしていわゆるバブル経済のはじけた後、私たちの前には、海の碧と里山の緑という、かけがえのない財産とそこに関わる日常の知恵とを失ってしまったような気がします。この事実は、単に場所としての自然海岸や里山の林が失われてきたことのみを示すのではなく、そこにかかわってきた人々の営みや心そのものが、失なわれたことをも示しているのです。
  消失した環境は、技術的な対応や法制度の整備によって取り戻せるかもしれません。しかし、一度失われた人々の営みや心は、いかに取り戻せましょうか。多くの地域で私たちは、この重い問いに直面し、考えなければならない時期を迎えています。
  わが国において、人と森の関係はおそらく数千年の歴史をつみかさねて保たれてきたでしょう。僅か半世紀にも満たない間にその多くを失ってしまったのが私たちの世紀末とすれば。やがて21世紀、私たちは人と森との関係を取り戻す「新しい千年」の出発点に立たねばならないと考えます。

 
戻る  マニュアル トップページへ  あいちの環境  進む