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第12回愛知まちなみ建築賞

[2005年2月1日]

総評

            名古屋大学大学院教授   清水裕之  

 愛知まちなみ建築賞のユニークさは、建築単体の賞でもまちなみの賞でもなく、まちなみの中に優れた建築がどのように生きづいているか、優れた建築が周辺のまちなみにどのような影響を与え、また受けているかという関係性を重視している点にある。いくら優れて、美しい建築であっても、まちなみとの連携に欠けていたり、地域に受け入れられていない場合には評価されにくい。反対にまちなみにはしっくりした建築であっても、そのオリジナリティや建築デザインの提案性がなければ評価は低くなる。建築の持つデザイン力という意味では残念ながら今回の作品は全体的に影が薄かったが、周辺環境との調和を目指す取り組みという面では確実にレベルの高まりが見られた。
 藤森の家は、低層住宅地における屋外の開放的な扱いが周辺のまちなみにさわやかな景観を作り出している。尾張旭市営愛宕住宅は土地の高低差を生かしてバリアフリーの低層集合住宅を生み出している。二つともこれ見よがしのところは微塵も無いが巧みなまちなみへの提案となっている。名古屋大学IB電子情報館、地下鉄名古屋大学駅は、都市に対する景観づくりにあまり積極的ではなかった旧国立大学が、地域を意識したマスタープランを作り、地下鉄の開設を契機に基礎自治体との協働を図ることによって、都市デザインに対する大きな進歩を遂げた点を評価したい。同じく野依記念物質科学研究館・学術交流館は、公募型プロポーザル方式により選定された設計者により、単体としての建物の秀逸さばかりではなく、建物と建物の間の空間を見違えるようにデザインした点を評価したい。
 医療法人豊田会刈谷総合病院診療棟は、都市の中の病院建築として屋上や周辺に緑を取り込み、安らぎのあるまちなみづくりに寄与している点を評価した。愛知淑徳大学星が丘キャンパス1号館は、星が丘という名古屋におけるゲート性をもつ地域に、あえて居室としては不利な南北配置を採用しつつ特色ある景観を作り出すことに成功している。豊田自動織機大府801工場は駅前に整った緑ゆたかな景観を創出することで地域のアメニティを大きく引き上げている。企業のこうした優れた景観への貢献の取り組みを高く評価したい。
 選定された7作品の他にも最後まで候補として議論に加わった作品もあったが、まちなみに対する提案にやや中途半端が残ることなどが指摘され、最終的に審査員全員の合意を得ることがでずに選にもれた。これから応募される方々には、応募作品のまちなみに対する考え方やデザイン提案をわかりやすく表現していただくことを期待したい。

愛知淑徳大学星が丘キャンパス1号館

愛知淑徳大学星が丘キャンパス1号館

写真提供 株式会社エスエス名古屋

概要

所在地:名古屋市千種区桜が丘
建築主:学校法人 愛知淑徳学園
設計者:株式会社日本設計名古屋支社
施工者:株式会社竹中工務店名古屋支店

主要用途:大学
構造:鉄骨造+鉄骨鉄筋コンクリート造
階数:地上6階地下2階 
敷地面積:51,523.25㎡
建築面積:3,039.47㎡
延床面積:14,199.59㎡

講評
       尾関 利勝

 建築計画の経験則から傾斜地では等高線沿いに配置し、学校建築では教室の採光条件から東西棟とすることが多いが、当該建築は、これに反して等高線に直角の南北棟として配置されている。理由は、キャンパス高密化の中で選択された敷地条件に対するデザインと推察されるが、その結果、当該建物に優れた景観上の特徴を与えることになったと思われる。
 当該建物の建つ星ヶ丘は、名古屋の都市景観軸に位置づけられる広小路の延長上にあり、都心からは覚王山に次ぐ二つ目の稜線に位置する標高の高い地区である。南北棟とした結果、周辺からファサードが際だち、星ヶ丘の新しいランドマークになっている。また、相対的に東西の厚みが薄く、遠景から平和公園への視界の影響を最小限にとどめている。
 南北棟の教室は採光条件が厳しいため、建物ファサードにアルミルーバーとカーテンウォールで工夫を凝らし、単調になりがちな学校建築の表情を東西差異化で変化を持たせ、屋上ルーバー庇で天空との際を引き締めることにより、景観に緊張感を加えている。本賞にふさわしい建物として評価された。欲を言えば、基準階に至る階段や境界付近足下の景観形成に若干工夫の余地が残ると感じた。

尾張旭市営愛宕住宅

尾張旭市営愛宕住宅

写真提供 株式会社エスエス名古屋

概要

所在地:尾張旭市新居町寺田
建築主:尾張旭市
設計者:株式会社東海設計
施工者:徳倉建設株式会社

主要用途:共同住宅
構造:鉄筋コンクリート造ボイドスラブ壁式構造
階数:地上2階
敷地面積:945.58㎡
建築面積:542.46㎡
延床面積:813.38㎡

講評
       鷲野 義明

 名古屋市のベットタウンとして急速に発展した尾張旭市の城山公園続きの丘陵地で、山腹を開発し敷地周辺には道路を設け、近くの裏山には退養寺があり、南は開けて陽当りが良い。付近は昔ながらの道路で、車の往来には充分ではないが、自然が多く残されている環境です。
 建物は北側の新設道からすれば平家建で、南の道路からは2階建です。1階は斜面を掘削した言わば地下室であるが、採光通風等は1階廻りに配した通路で処理されている。
 2階は1階の屋上を利用した広いルーフバルコニーがあり快適であるが、1階の南は道路との間隔が狭く開放感を欠くが、2階FLを40cm程高くすることでGLが上がり1階南面の庭廻が改良されたと思われる全10戸の小規模集合住宅です。
 また西側隣地には道路で区画された専用の10台の駐車場と23台分の自転車置場が設けられている。使用勝手からすれば一体の敷地と考える事のが自然で、1戸当りの敷地占有面積は123㎡と戸建分譲敷地にも匹敵するが、申請では駐車場は別敷地として扱われている。既存の戸建愛宕住宅と比べて1階と2階の住環境、通風、日当り等の格差、占有敷地面積の他総事業費等の問題はあったと思われるが、公共事業ならではの計画で、周辺環境を考慮した景観を呈した一つの提案です。

刈谷総合病院 診療棟

刈谷総合病院診療棟

写真提供 株式会社エスエス名古屋

概要

所在地:刈谷市住吉町五丁目
建築主:医療法人 豊田会
設計者:株式会社竹中工務店名古屋支店
施工者:株式会社竹中工務店名古屋支店

主要用途:病院
構造:鉄筋コンクリート造
階数:地上4階地下2階塔屋1階
敷地面積:24,973.84㎡
建築面積:3,516.95㎡
延床面積:14,606.05㎡

講評
       岡田 憲久

 まちなみにとって緑の果たす役割は、これまでにまして大きくなっている。敷地にはまだ一部自然の土手を残す川が隣接し、南側には農地が残る。この建築に、川の南、大駐車場からアプローチすると、まるで公園の中に立つ施設のようである。東側駐車場部分にボリュームのある緑地がつくられ、道路を挟んだエントランス前の狭い敷地に、改築前のものが残されたのであろうか、8mを超える株立ちのケヤキがファサード庇フレームに接するように立つ。北側隣地境界にも狭い敷地に的確な植栽の配慮がなされている。建築は低層に押さえられ、緑はファサードのカーテンウォール、さらにはピロティー奥のガラス面に増幅されて、林の中入ってゆくような錯覚さえ覚える。病院という施設がこのように緑にあふれているということは、通院者、入院者、来訪者に大きな癒しとなるであろう。
 ただ一つ残念なのは、前面道路が狭い上、比較的交通量が多い。駐車場からの動線の関係で、来訪者は信号のない道を横断せねばならない。このことがせっかくのゆったりした環境の設えをせせこましく感じさせてしまう。今後の市の整備とも合わせて改善されてゆくことを望みたい。

豊田自動織機 大府801工場

豊田自動車大府801工場

写真提供 有限会社そあスタジオ

概要

所在地:大府市江端町
建築主:株式会社豊田自動織機
設計者:鹿島建設株式会社名古屋支店
施工者:鹿島・三井住友・トヨタT&S共同企業体

主要用途:工場
構造:鉄骨造
階数:地上2階
敷地面積:148,019.27㎡
建築面積:18,201.95㎡
延床面積:21,533.43㎡

講評
       水尾 衣里

 JR大府駅前に位置するこの工場は今回の再編にあたり、敷地全体にわたりあらゆる面で周辺の景観や環境に深く配慮されている。「効率」優先という考え方でなく、地域を代表する企業建築のあり方、またその責任を適確に設計者に伝えたクライアントの態度は高く評価されるべきであるし、それをこの形として実現した力は素晴らしい。
 駅前に相応しい景観創造のため、大きくセットバックしたファサードの綺麗な反射ガラスは周囲の様子を写しこみながらその表情を変化させる。その周囲の緑地のマウンドは、穏やかなリズムを刻み、全体をやわらかく包みながら巧みに建築をみせている。
 地域を舞台とすれば、最適な衣装と化粧を纏い、己の演じる役の意味を理解し、さらに周囲にも気を遣いながら熟慮された演出を完璧に演じきるベテランの役者の登場というような存在感がある。
 地域景観の形成、魅力と潤いのある空間創造に寄与している建築である。

名古屋大学IB電子情報館・地下鉄名古屋大学駅

名古屋大学IB電子情報館・地下鉄名古屋大学駅

写真提供 車田写真事務所

概要

所在地:名古屋市千種区不老町
建築主:名古屋大学 名古屋市交通局
設計者:名古屋大学施設計画推進室
       (名古屋大学IB電子情報館) 名古屋大学施設管理部 株式会社石本建築事務所名古屋支所 株式会社教育施設研究所大阪事業所
       (地下鉄名古屋大学駅) 名古屋市交通局技術本部建設部建築課 株式会社東海設計  
施工者: (名古屋大学IB電子情報館) 戸田・浅沼・中村特定建設工事共同企業体  戸田・矢作・石田特定建設工事共同企業体
       (地下鉄名古屋大学駅) 西松建設株式会社中部支店  

主要用途:大学
構造:鉄骨造+鉄骨鉄筋コンクリート造
階数:地上10階地下1階
敷地面積:698,080.00㎡
建築面積:4,899.38㎡
延床面積:24,388.021㎡

主要用途:駅・地下鉄出入口上屋・自転車置き場
構造:鉄骨造+鉄骨鉄筋コンクリート造
階数:地上1階地下1階
敷地面積:360.08㎡
建築面積:181.16㎡
延床面積:7,938.60㎡

講評
       都築 敏

 本山界隈を歩いてみた。学生時代に通い慣れた道である。今は地下鉄名城線も全線開通し、本山駅から歩いて通う学生も少なくなった。
 当時の名大生の風評は、ダサイ・暗い、そして私について言えば貧乏であった。オシャレな四谷通りをそ知らぬ顔で抜け、古ぼけた灰色コンクリート造りのどれも似たようなマッチ箱校舎の一つにトボトボと通っていたのであった。そこに未来型ガラス張りの地下鉄名古屋大学駅出入口と、その隣に相応するかのようにガラス張りのピロティ上屋を持つIT関係の背の高い学舎が現れた。
 まばゆい!これらの設計にあたってはその配置からデザインに至るまで、関係者による10年以上の歳月に渉る協議と努力が重ねられ、将来を担うかっこいい人材を輩出する勉学の都の新たな玄関口に似つかわしい、知的で調和のとれた近未来的な景観を実現させた。私は感嘆の声をあげる。素晴らしい!しかし、これらの施設に出入りする学生の多くは昔と変わらず、真面目そうで地味でかっこ悪くダサイのであった。私は少しホッとし少し安心するのだった。 

名古屋大学野依記念物質科学研究館・学術交流館

名古屋大学野依記念学術交流館

撮影 阿野 太一

概要

所在地:名古屋市千種区不老町
建築主:名古屋大学
設計者:名古屋大学施設管理部 株式会社飯田善彦建築工房            
施工者:(野依記念物質科学研究館) 錢高・伊藤工特定建設工事共同企業体   (野依記念学術交流館) 小原建設株式会社

主要用途:大学・研究施設
構造:鉄骨鉄筋コンクリート造
階数:地上7階地下1階
敷地面積:698,080.00㎡
建築面積:1,319.28㎡
延床面積:7,117.00㎡

主要用途:大学・会議・宿泊施設
構造:鉄骨造
階数:地上4階地下1階
敷地面積:698,080.00㎡
建築面積:1,281.76㎡
延床面積:3,485.00㎡

講評
       五十嵐 太郎

 ノーベル化学賞を受賞した野依良治教授の名前を冠する先端的な研究施設と国際的な交流施設である。現代的なセンスにあふれ、名古屋大学のキャンパスに新しい表情を与えることに成功した。道路を挟む2つの施設は、それぞれにはっきりとした形態的な特徴をもちながら、ともにガラスを多用し、デザイン的な連続性も演出されている。
 物質科学研究館は、アルファベットの文字がプリントされたガラスのファサードから、ギャラリー、ラウンジ、会議室などの各ヴォリュームを空中に突きだす印象的な外観をもつ。設備の配管などは、内側の吹き抜けに隠されている。ファサードは微妙に湾曲し、その線の軌跡は、学術交流館の楕円のカーブに変容する。つまり、斜向かいにある2つの建物が、なめらかな曲線を共有し、対の関係であることが巧みに表現されている。学術交流館は、1階に開放的なカフェ、2階に白い塊として浮かぶホール、そして3階に研究者用の宿泊施設という興味深いプログラムから構成され、造形にも生かされている。楕円という形状のせいか、緑に包まれた客船のような雰囲気をもつ。

藤森の家

藤森の家

写真提供 有限会社そあスタジオ 牧野裕

概要

所在地:名古屋市名東区藤森二丁目
建築主:和田全弘
設計者:設計工房 蒼生舎
施工者:株式会社菊原

主要用途:専用住宅
構造:木造在来工法
階数:地上2階
敷地面積:514.00㎡
建築面積:204.75㎡
延床面積:243.53㎡

講評
       日色 真帆  

 「藤森の家」この住宅は、緑が多く敷地割りの広い閑静な住宅地に建っている。この地域には、特有の伝統的モチーフや特別なデザイン制限がない。つまり、普通の閑静な住宅地で、まちなみという視点からは、実はなかなかむずかしい場所である。個々の建築が建て替わり、街が成長するにつれ、いつの間にか、乱雑な風景となりかねないからである。
 この住宅は、高い塀と壁で内が知れないお屋敷でもなく、新奇さを主張するのでもない。街ゆく人々に佇まいがうかがえる建物で、まちなみに品格があるとしたら、それを導く役割をしている。 敷地をゆったりと使って南側に庭を配し、鉄平石を散らして貼った左官仕上げの擁壁上に米松の塀を巡らしている。平屋にも見える建物は、単純な架構形式でチャコールグレーの金属屋根が掛けられ、主な外壁が木の小巾板、そして木製建具である。このような渋い選択をすっきりとまとめられるかが、品の分かれ目なのだろう。この建物には施主と建築家との丁寧なコミュニケーションから、それが導き出された様子もうかがえるのである。

第12回愛知まちなみ建築賞概要と選考経過

選考基準

良好なまちづくりを進めていくためには、建築物が地域環境の形成に積極的に関わり、一定の社会的役割を果たしていくことが重要であるという認識の下、募集条件に適合しているもののうち、良好なまちなみ景観の形成や潤いあるまちづくりに寄与する等、良好な地域環境の形成に貢献していると認められる建築物又はまちなみで、次の基準のいずれかに適合し、かつ社会的貢献度の高いものを選考する。
 1、地域における新しい建築文化の創造に寄与しているもの。 (以下例示)
  ●新しい地域景観の形成を先導し、モデルとなるもの。
  ●デザインに優れ、地域環境の形成又は新しい地域環境の創造に寄与しているもの。
  ●周囲への配慮がなされ、地域の魅力を高めているもの。
 2、地域のまちなみに調和し、魅力的な景観の形成に寄与しているもの。 (以下例示)
  ●地域の風土を生かし、新しい地域文化を創造しているもの。
  ●まちなみに調和し、地域の特色ある景観を創造しているもの。
  ●建築協定等の住民の主体的な活動や総合的な計画等により、まちなみ景観が形成されているもの。
 3、魅力と潤いのある空間の創造に寄与しているもの。 (以下例示)
  ●オープンスペースの緑化、せせらぎ等の、地域に魅力と潤いを与える空間を創出しているもの。
  ●通抜け空間や開放ギャラリー等の、地域コミュニティの形成に寄与しているもの。
  ●地区計画等の詳細な整備計画や住民活動等により、良好な地域整備が図られているもの。
 4、その他、本賞の趣旨に適合し、地域に貢献しているもの。

選考委員

 (50音順/敬称略/肩書は当時/●印は選考委員長)
 
   五十嵐太郎(中部大学助教授)  
   梅田俊比古(愛知建築士会会長)  
   岡田憲久(名古屋造形芸術大学教授)  
   尾関利勝(日本建築家協会東海支部愛知地域会会長)  
   壁谷又嗣(愛知県建設部理事)  
 ●清水裕之(名古屋大学大学院教授)
   都築 敏(特定非営利活動法人ビジュアルコンテンツプロダクトネットワーク理事長)  
   日色真帆(愛知淑徳大学教授)  
   水尾衣里(名城大学助教授)  
   山内彩子(東風意匠計画代表)  
   鷲野義明(愛知県建築士事務所協会会長)

(敬称略 五十音順 ◎選考委員長)

主催・後援・協賛

主催
 愛知県

後援
 愛知県市長会  愛知県町村会  愛知県商工会議所連合会 愛知県都市計画協会

協賛
 (社)愛知建築士会  (社)愛知県建築士事務所協会  (社)日本建築家協会東海支部  (社)愛知県建設業協会  愛知県建築技術研究会  (財)愛知県建築住宅センター  (財)東海建築文化センター  中部デザイン協会

お問い合わせ

建設部 公園緑地課
景観グループ
電話: 052-954-6612
内線:2669、2678