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愛知県がんセンター 〜先進のがん対策〜
リポーター:じゅん


 愛知県のがんによる死亡者数は全体の3割を占め、死亡原因の第1位となっており、県民の生活・健康にとって重大な課題となっています。
研究所と病院を併せ持つ愛知がんセンターで篠田雅幸中央病院長と田島和雄研究所長のお二人に、愛知県がんセンターにおける取り組みについてお話を伺いました。
 
Q1
じゅん
   本県のがんの状況はどのようになっていますか?
 
A1
田島所長
   愛知県のがんの罹患率(発生率)は、登録精度の差もあって全国と直接比較はできませんが、都市型のがんとして、肺がん、大腸がんが若干高いものの、ほぼ全国平均です。部位により差は出ますが、2009年のデータでは、死亡率は全国平均より若干低いことが示されています。
   
Q2
じゅん
   どのような人が、がんを発症しにくいのでしょうか?
 
A2
田島所長
   体質による個人差はありますので、ここでは一般的な話になりますが、がん発生に関係する原因は大きく分けると以下4つになります。

● ウイルスやバクテリアによる慢性症
● 喫煙・多量飲酒
● 運動不足
● 偏った食生活

パンフレット「がん予防への案内」
↑クリック
 研究所編集のパンフレット
「がん予防への案内」
 これらの問題をうまくコントロールしている人はがんになりにくいといえるでしょう。
 ピロリ菌は胃癌、肝炎ウイルスは肝がん、ヒトパピローマウイルスは子宮頸がんの原因になりますが、このような感染症は治療薬やワクチンでも防ぐことができます。
 喫煙に関してですが、喫煙人口は減ってきており、それに伴い肺がんの発生も減ってきています。愛知県がんセンターには禁煙外来があり、ニコチンをブロックする薬の処方やカウンセリング等で、たばこを止めたくても止められない人もたばこを離脱することに成功しやすくなりました。
 飲酒は喫煙人口が減少したような、いい結果はなかなか出ていません。私自身は「No Monday(飲まんでー)」と決めて、月曜日は大好きなお酒を飲まないようにしています。
 運動やバランスのとれた食生活も大切です。
 がんは早くみつかれば8割がコントロールできます。 詳しくは「がん予防への案内」に記載があります。
 
Q3
じゅん
   中央病院における取組の中で特徴的なものは何ですか?
 
A3
篠田院長
   世界標準の最先端の医療を提供しています。他の病院ではできない難しい手術も行っています。
 治験や臨床研究などの研究を積極的に取り組んでおり、がん治療開発の中核的な役割を担っています。
 一般的にはあまり知られていませんが、教育にも力を注いでいます。若い医師をレジデントとして受け入れて専門教育をしています。彼らが地域に広がることで、がん医療の均霑(きんてん)化に貢献しています。レベルの高いがん医療を地域に普及させていくために、愛知県がんセンターも自ら日々進歩するように努力をしています。
     
Q4
じゅん
   研究所における取組の中で特徴的なものは何ですか?
     
A4
田島所長
   研究所では、がんを克服するための基礎的・臨床応用的研究をしています。何故がんになるのか、何故がん細胞はこれほど増殖して転移するのかといったメカニズムを解明する研究をしています。それがわからないと次のステップである予防・診断・治療に応用できないからです。例えば、転移するメカニズムがわかれば転移を予防する薬の開発ができるわけです。
 また、病院の研究を研究所がサポートすることもできるので、普通の病院(研究所が併設されていない病院)ではできないような臨床研究も進めております。基礎的な研究が、臨床応用研究につながり、その成果が県民や国民へ還元されます。
     
Q5
じゅん
   がん発症後の患者さんの生存率が年々伸びています。がんセンターさんのどのような取り組みが、生存率向上に貢献しているのでしょうか?
     
A5
篠田院長
   がん治療の三本柱である手術(外科治療)、放射線治療、抗がん剤治療が相まって、生存率は向上してきました。また、治療の組み合わせ方も洗練されてきて、より高い効果が発揮できるようになりました。集学的治療の進歩といえます。がん研究には時間がかかります。近頃、分子標的治療薬のような画期的な薬、がん細胞だけを狙い撃つ薬の開発も進められ、患者さんの手元に届けられるようになりましたが、これも研究を積み重ねた成果です。
     
Q6
じゅん
   生存率の上昇とは対照的に、患者数は平成10年頃から緩やかに増加しているようです。人口の年齢別割合で高齢者が増えたことが、直接の要因ですか?
     
A6
田島所長
   下の表の45〜49歳のがん罹患率(青)と85歳以上のそれ(赤)を比較してください。
○年齢階級別罹患率(人口10万対):部位別・性別 (上皮内がんを含む)  抜粋
 性 別 部         位  45〜49歳  85歳以上
男性  全部位  156.3  3624.6
 食道  6.9  49.2
 大腸(結腸・直腸)  33.6  448.0
   結腸(再掲)  18.9  336.0
   直腸(再掲)  14.7 112.0
 肺  16.1  762.1
 皮膚  1.4  73.7
 乳房  0.0  0.0
 膀胱  6.4  221.2
女性  全部位  316.1  1698.1
 食道  1.5  22.8
 大腸(結腸・直腸)  27.1  293.7
   結腸(再掲)  14.0  217.2
   直腸(再掲)  13.1  76.5
 肺  10.7  207.9
 皮膚  2.4  64.8
 乳房  143.8  96.2
 子宮  47.9  43.4
 子宮頸部  32.9  14.5
 膀胱  1.5  53.8
 男女計  全部位  234.2  2227.2

 この数字からもわかるように80代人口のがんの罹患率は40代の約10倍です。高齢ががんの原因であるのは明らかです。
 今後は高齢の、肺や心臓等の機能的に制限があるがん患者さんとどう向き合うか、手術や抗がん剤、放射線治療すればいいのか、それともQOL(Quality of Life)を保って緩和ケアに徹するのがいいのか問われるでしょう。その中でも、放射線治療は比較的体に優しいですから、その発展が高齢者の治療にも恩恵をもたらすだろうと考えられています。
 私たちが研修医のころは、がんは「不治の病」でした。現在、がんは治るようになりました。変な言い方かもしれませんが、がんと共存して生きていく、そして克服していこうというように、がんに対する考え方が変わってきています。
     
Q7
じゅん
   放射線治療や抗がん剤はがん細胞をやっつける働きとともに健康な細胞も傷つけてしまうと聞いたことがあります。そのことについて、一概には言えないと思いますが、実態を教えていただけますか?
     
A7
篠田院長
   放射線をあてたところに年月を経て二次発癌することもあります。しかし、技術の発展もあり、現在ではそのリスクも少なくなっています。
 最近は先を見据えてがん治療を組み立てていくという発想も出てきましたが、がん治療は今を克服することが最重要課題です。我々は「Trade-off(こちらが得か、あちらが得か)」と言っていますが、がん治療もまさにそれです。がん細胞をやっつけようとすれば、周囲の正常細胞にも何らかの影響があります。しかし、がん細胞をやっつけるほうが得だからやるのです。
インタビューの様子
インタビューの様子
治療の開発は、現在も進んでいます。放射線治療では、以前はがんを外さないよう放射線をかける範囲を広くとっていましたが、現在ではがんの形状に合わせて放射線をかける、すなわちがんだけをピンポイントで狙うという技術もあります。陽子線治療も期待はできますが、適応や経済的な問題が残っています。これから10年の間に、がん治療は予測できない進化を遂げるでしょう。
     
Q8
じゅん
   患者さん以外でもがんの医療相談はできますか?
     
A8
篠田院長
   がんに関する医療相談であれば、相談支援室があります。
 がんそのものに関する相談は、まずは当センター国立がんセンターのホームページなどをご覧になればいろいろと情報が入手できると思います。
     
じゅん    医療技術の進化がお話の中心になりましたが、「どんなに医学が進んでも、医療は人と人の間で行われるものに変わりはありません。患者さんと医療者のより良いコミュニケーションのもとで、患者さんに優しい医療が提供できるように努めています。」とお話しいただいた篠田先生。優しく、強いそのお言葉に、がんにはなりたくないけど、愛知県がんセンターには入院してみたいような、そんな矛盾した気持ちにさせられました。
また、田島先生からは、今やがんは「治らない病気」ではなく、「治る病気」になっており、がんと共存しながら克服していこうという時代になっていることをお聞きして、がんに対して希望を持つことができました。
先生方や医療に従事している方々の毎日の努力のおかげで、私たち県民は大きな恩恵を受けているのだと、改めて実感できるお話でした。
最後になりますが、篠田雅幸先生、田島和雄先生、お忙しいところ取材のお時間を作ってくださり、ありがとうございました。
   
がんセンター外観


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