いじめ解消事例


事例1 学級のみんなから仲間はずれにされていた小6女子のケース

≪いじめの状況≫
 小学校6年生、女子S子は、無口でおとなしい性格であった。いじめが発覚したのは特別な事件が契機となったわけではないが、学年当初から、しゃべらないからといって、みんなから避けられており、学年全体にそういう雰囲気ができ上がっていた。同じクラスの男女児童だけでなく同じ学年の児童から、時々休み時間に叩かれたり、掃除の時間に、その子の机を運ぶのを嫌がられたり、悪口を言われたりした。体育の球技(バスケットボール)で、同じチームになったとき、「いやだ」と大声で言う子もいた。
 本人からの訴えがあったわけではないが、担任は、これはいじめであると判断した。


1 指導経過の概略

○ 1学期当初、男子二人が、しゃべらないからといってS子を叩いていたのを、他の先生が見つけて注意してくれた。担任にも連絡があったので、二人を指導した。

○ 2学期に、子どもの掃除の様子を見ていた。いつもはなかなかはかどらない机運びの仕事を、その日は競争するように楽しそうにやっていた。頑張ってやっているなと思っていたが、そのうちにS子の机を誰が運ぶかというゲームだということに気がついた。他の子の机を早く運んでしまって、最後の順番になった子がS子の机を運ぶということらしい。

○ すぐに、その4人の子(男1人、女3人)を呼び止めて指導した。S子自身になにかしたというわけでもなく、一見すると楽しんで、張り切って机を運んでいるように見える出来事だが、その裏側に、こんな冷たい気持ちが隠れていたことに、とてもショックを受けた。

○ 2学期の終わりに、体育でバスケットの授業をすることになった。能力のことも考えて担任がグループを分けてみんなに発表したところ、S子の入ったグループのリーダー格のH子が、とても大きい声で「やだ−」と言いだした。それにつられて、そのグループの男子も「やだ−」と大きな声をあげた。

○ 直にみんなの前で、その2人を注意したが、H子は「他にもみんな言った。私だけがなぜ注意されるの」と言いだした。

○ たしかに学級全体にそういうムードが出来上がっている。一度全体に話をするよい機会だと考えて、教室に帰って、みんなにいじめについて話をした。

○ その後、子どもたちにも考えを書かせて、みんなでそれを読み合った。

○ ほとんどの子が、これからは気を付けていくとか、自分も仲間はずれになるのは嫌だから悪かった、と書いてきた。

2 指導の効果に関する考察と反省

○ 全体に話をして、考えを書かせたあとは、S子が授業中、なかなか言えなかったり、やれなかったりすることがあっても、「早くしろ」と言いだす子もいなくなり、みんなそれなりに気をつかうようになった。S子自身も「わたしも、今からでも話せるようにしたい」と書いてきた。

○ しかし、その後も、すぐやれることをやらないままでいることが多かった。

○ 友達関係の急激な改善は見られず、今までにすっかり出来上がってしまっている人間関係を変えていくことの難しさを痛感した。

○ また、しゃべらないS子に少しでもしゃべって欲しいとか、みんなと同じようにして欲しいと考えて、やるまで待っていることが、周りの子にとって、よけいにS子への不満を持たせることにつながった面もあったのではないかという反省も残っている。

3 指導のポイント

○ 問題の解決のためには、保護者との連携が重要なポイントになります。この事例の記述には、児童の家庭環境についてはあまり述べられていないが、家庭の様子は、いじめ・不登校対策委員会での重要な検討資料となります。プライバシーの保護に配慮しつつ記録しておくことが必要です。
 いじめにかかわった児童の家庭に対しては、学校でのいじめの現状を正確に伝え、家庭における子どもへの温かい支援について理解してもらうことが大切です。

○ いじめの指導に担任ががんばって対応したという例ですが、いじめの解決には、学校全体で臨むことが重要です。いじめ・不登校対策委員会等で話題にして、学校・学年体制での取組が必要です。

○ S子には、友達や先生にかかわりを持たざるをえない生活場面を意図的に設定し、人との対応に自信を持たせ
て行動力を育てるための支援が必要です。例えば「先生のお手伝い係」として役割を持たせることも一つの方法です。
○ いじめる子、いじめられる子への一時的な指導だけでは問題の抜本的な解決にはなりません。この子を取り巻く学級集団への指導を忘れてはなりません。





事例2 同級生から暴行を受けていた中2男子のケース

≪いじめの状況≫
 中学校2年生、男子H男は、自分の思っていることが、なかなか言えない、おとなしい性格であった。同じ学級の男子3人(A男→乱暴であり、かっとなりやすい。力の弱い者に高圧的である。B男:かっとなりやすい。C男:A男、B男の言いなりの面がある。)は、教室の片隅でH男を取り囲み、押さえつけ、A男が持ってきたナイフを摩擦で熱くし、ナイフを首筋、手の甲などに押しつけ、火傷(みずぶくれ)を負わせた。その他にも、部活動の時間に、何度となくこづいたりした。
 授業中に教科担当が、H男の手の甲の火傷を見て不審に思い、H男を個別に呼び、聞き出し、状況がわかった。


1 指導経過の概略

○ その日のうちに本人から、再度詳しく事情を聞いた。

○ 同日、A男、B男、C男についても、個別に3人の教師が事実確認をした。

○ 次に、A男、B男、C男、H男の保護者に連絡をした。H男の保護者は、今までのいじめを知っており、H男に対して厳しい態度であった。

○ その後、いじめ・不登校対策会議で協議し、指導方針を定め、いじめた生徒とその両親、いじめられた生徒の両親、教師で個別に話し合いを持った。
 <話し合いの内容>
   ・事実確認、・いじめた生徒、その保護者より反省・謝罪 
   ・教師の話、・いじめられた生徒の保護者の話
  その場において、この事件がいじめというよりも、傷害事件であることを確認した。
  (医師の診断書を取ることを確認) 

○ いじめられた生徒の父親が、厳しい態度でいじめた生徒とその保護者に対して、今後、いじめがあった場合、直ちに被害届を提出することを宣言した。(学校も同意)

○ この事件は、級友の見ていないところで起きていたが、判明した時点で、複数の教師が学級、部活の他の生徒にも注意を喚起し、「みんなで、絶対にいじめをなくそう」と呼びかけた。

2 指導の効果に関する考察と反省

 いじめた生徒にとって、自分の父親の真剣な謝罪の言葉が、「自分はたいへんなことをしていた」という反省を促すのに効果的であった。
 「いじめ」の解決に、保護者の行動が大きな影響力を持っていることを確認した。その後、トラブルは発生していない。

3 指導のポイント

○ いじめのサインに教師が敏感であったからこそ、授業中にいじめられた生徒の異常に気づいて、いじめが発見できたと言えます。発見後も、いじめられた生徒、いじめた生徒、保護者に対しての効果的で早い対応により解決できた事例です。

○ いじめた生徒に対して、いじめは人権にかかわる重大な問題であることを心情的に理解させることは非常に難しいが、いじめた生徒の父親の傷害事件としての厳しい受け止めと真剣な謝罪、そして、いじめられた生徒の父親の「いじめは断固として許さない」という厳しい姿勢が、いじめた生徒の心からの反省を呼び起こしたように思われます。このような場を設定したいじめ・不登校対策委員会の対応の成果とも言えます。

○ このような傷害事件を伴ういじめは、抜本的な解決には時間がかかることがほとんどです。表面的には事件が解決できたようでも、問題が尾を引いていることもあります。いじめられた生徒の心のケア一には特に配慮が必要です。養護教諭、保健主事、スクールカウンセラー、保護者等との連携のもとに、中学校を卒業するまで継続して見守っていく必要があります。

○ 周囲を取り巻く生徒の指導への配慮もなされていてよいと思います。今後さらに、いじめを断固として許さないという雰囲気を、生徒自らの力で高めていく支援を期待したいものです。


事例3 インターネットの掲示板での誹謗・中傷された中1女子のケース

≪いじめの状況≫
 中学校1年生、女子3人(A子・B子・C子)が、自宅でインターネットの掲示板を使って、同級生のT子の悪口を書き込んだ。それに呼応して、同級生、女子2人(D子・E子)も同様に書き込みを加えた。それらの内容は、「T子はウザイ(うっとうしい)」「T子の顔はキモイ(気持ちが悪い)」
「T子はさっさと消えろ」「T子はいい子ぶっている」「みんなでシカト(無視)しよう」などであった。
 これらのことは、地域の方から、学校へ、「お宅の学校の生徒さんが、インターネットの掲示板の中で、友だちの実名を出しながら、誹謗・中傷しています。こういういじめが原因で、心が病気になったり、学校に行けなくなったりするかもしれませんよ。ご存知ですか」という電話連絡があった。
連絡を受け学校のインターネットで、その状況を確認し、いじめが判明した。


1 指導経過の概略

○ 緊急の校内いじめ・不登校対策委員会を開催し、対応方針を協議した。

○ 1年生の学年集会を開催し、いじめの状況を生徒に話した後、用紙に無記名で記入させたところ関係生徒が申し出た。

○ 担任から関係生徒に事情を聞くと正直に話した。関係生徒に担任、生徒指導主事、学年主任から指導した。

○ その日の夕方、担任が家庭訪問をし、保護者へも事情を話し、家庭でも指導し、今後も見守ってもらうよう理解してもらった。

○ インターネットの掲示板への書き込みについては、掲示板の管理者に連絡し、削除してもらった。

○ T子及びその保護者に、学校から経緯と今後の指導などについて、説明し理解を得た。

○ このことについては、1年生の問題にとどめることなく、全校の問題とするため、生徒指導主事を中心にプリントを作成し、それをもとに帰りの会で全校生徒に対して指導した。

<主な指導内容>

○ いじめは、学校の内外を問わず、絶対許されないことである。

○ パソコン、インターネットは確かに便利なものだが、使い方によっては人を傷つけたり、いじめにつながったりする。場合によっては、犯罪にもなる。次の点について、自分自身のパソコン、インターネットの使い方を考えてみてほしい。

○ 顔が見えないことをいいことに、面と向かっては言えないような言葉をメールで送っていないか?

○ 見知らぬ人とつながっていくことの危険性を理解しているか?

○ 人の悪口を言い合って喜ぶような行動をしていないか?

○ さらに、全学年、上記の内容を学年通信に掲載し、保護者にも理解と協力をお願いした。

2 指導の効果に関する考察と反省

○ 緊急の学年集会を開催し、生徒にいじめの状況を説明し、ことの重大性、過ちを犯した場合の解決方法など、心情に訴えることができたことが、生徒の申し出につながったと考えられる。

○ 改めて、地域との連携、地域の教育力の大切さを確認することになった。

○ インターネットや携帯電話などの情報社会における、いじめ等の問題行動に対応していく必要性も確認することになった。さらに、全校生徒や保護者に、家庭でのインターンネットや携帯電話などの使い方について、注意を促すことにつながった。

3 指導のポイント

○ いじめの事実が判明する上で、何と言っても地域の方からの連絡があったことが大きいと言えます。日ごろから、学校評議員会、地区の青少年健全育成会議、PTA役員会等で、「生徒のことで、気付くことがあれば連絡してほしい」とお願いしていることが大きな要因であり、地域と学校が一体となって生徒を育てていくという地域の教育力の成果です。

○ いじめ等の問題行動が発覚した際、早期対応が最も大切です。今回電話連絡を受けたあと、状況を確認し、いじめ・不登校対策委員会を開催し、学年集会の開催、本人たちへの指導、家庭訪問での状況説明等、適切に早期対応したことがよかったと言えます。

○ 今回のことを学校全体のことと捉え、全校生徒、全保護者へ注意を促したことは今後起こりうるケースの防止にもつながる指導であると言えます。

○ 最近、「パソコンで簡単にできるプロフィール作成サイトを通して、自分の友だちの名前や学校名などをインターネット上に載せ、仲間内で、見知らぬ人と掲示板に書き込みをしあって遊ぶ」等の行為が特に増加していることに鑑み、日ごろからパソコン、インターネット、携帯電話等の使用について、職員で共通理解を図り、継続して指導していくことが大切です。また、保護者や地域の方に理解と協力をお願いしていくことも大切です。

○ 今回の関係生徒については、今後も保護者と連絡を取りながら、学年全体で見守っていくことが大切です。



事例4 いじめをきっかけに便秘、腹痛を訴え、欠席するようになった中2女子のケース
          (児童相談所が関わった事例)

 中学2年生の娘が(A子)いじめにあっていて、不登校になりそうだと母親から児童相談センターに相談があった。A子の家族構成は、父:銀行員で、本児が中学1年のときから単身赴任、月2回週末帰宅。母:保母、本児が中学1年の3学期のときに再就職した。
 A子は、小6のとき現住所へ転居、転校。母の印象としても、小さいころからおとなしく、運動も友だちづきあいも下手な方だった。それでも、中1までは、数は少ないが仲のよい友だちもでき、学校生活に悩むような様子もなく、元気に登校できていた。
 ところが中2になってクラスも担任も変わり、新しい学級集団になかなかなじめないまま孤立気味であった。5月の連休明けに、便秘、腹痛、食欲不振を訴え、病院で受診した。内科所見では異常はなかったが、この日から学校を休み始めた。母が学校のことを聞いてみるが、なにか言いたくないことがありそうだった。
 しばらく様子を見るつもりでいたところ、3日目に「みんなが私のことを無視し、食事をしているときも背中を向けられてしまう。部活の子が、“学校へ来るな、うっとうしい”と大声で言う」と打ち明け、いじめにあっているらしいことがわかった。その次の日から学校へは行っているが、食欲はなく、朝の腹痛は続いている。このままだと、本当に不登校になってしまうのではないかと心配して、来所した。
 A子は、母に促されて来所したためほとんど話さないが、来所目的は了解できている。学校の様子について話が及ぶと、「授業中はなんともない。休み時間がつらい」とポツリと言う。「お母さんを心配させたくなかった」とも話した。


1 援助方法

(1)A子の精神的な安定に最も寄与する母親への継続的な面接を通じて、良好な母子関係をつくる(A子本人は来所意欲が乏しい)。

(2)母子の了解のもとに、学校の生徒指導主事に、「保護者の相談にのってほしい。ただし、今のところ、拡大して生徒集団へ直接働きかけることは控えていただきたい」と依頼する。

2 母親面接における相談員からの主な助言内容

○ A子は、母親に話を聞いてもらえた翌日にとにかく学校へ行けた。その日からよい方向に向かいつつある。きちんと子どもの話を聞ける母親と、母親思いのA子のことだから、うまくかみ合えば本児も安定するだろう。

○ 買い物、料理など、母子で楽しむ機会を工夫しよう。

○ どんな小さなことでもA子のよい点があれば、すぐ褒めよう。

○ 学校とよく連絡をとり、問題を家庭内だけで抱え込まないようにしよう。

○ 本児のことばかりを話題の中心にせず、父親の話なども取り入れよう。

○ 父親の帰宅している間は、両親だけの時間も大切にしてほしい。

3 結果  

○ 面接経過の中で、母親から、「週末にA子と一緒に作った夕食を、父が“うまい”と言ってくれて本人も気をよくしていた」「このごろ朝の腹痛はなくなったようです」と、少しずつではあったが、変化している様子が話された。

○ 面接4回目(最初の相談から2か月後)に、「家での表情が前よりよくなっている。先生からも、学校でも以前より明るくなっていると聞いている。いじめられることはなくなったようだし、いつでも先生と連絡がとれるようになったので安心です。不登校になる心配は今のところなくなりました」と母は語り、話し合いの結果、児童相談所における継続面接はその回をもって終了とした。

○ 学校に対しては、生徒指導主事に一連の経過及び結果に加えて、これまでの先生とのかかわりで母親が学校を信頼していることを伝え、その後も必要に応じて家族からの相談に応じていただきたい旨を依頼し、了解を得た。


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