10月〜11月にかけてキクが日本各地で開花し、花盛りとなります。
これらの花を利用して、交配によって新品種を作り出す方法について紹介します。
写真 キク
キク科植物は、小花が花床の上に集まって頭状花になっており、中心に管状花、周辺に舌状花があります。管状花には雄しべと雌しべがあり、舌状花には、雌しべしかありません(写真1、2)。
なお種子は、管状花の方が結実しやすくなっていますので、そちらを使う方がよいでしょう。
管状花における受粉の仕組みを写真3に示しました。まず小花の先端が開き、花柱が伸長してくると花粉が押し出されてきます(写真3の1〜3)。このとき花柱には多くの花粉が付きますが、まだ成熟していないので受精しません。花柱の先端がT字状に開いて成熟するのは、花粉が押し出されてから2〜3日後です。そのころには花粉の受精能力がなくなっており、一般的に自家受粉できないため、他の花の花粉により受粉する仕組みとなっています(写真3の4、5)。
○ 袋かけ
交配に先立って、子房親には必ず袋掛けをします。ミツバチなどが多く飛来してくる場所では花粉が混ざる心配があるので、花粉親にも掛ける方がよいでしょう。舌状花の少ない品種は、それを取り除いて袋を掛け、多い品種は舌状花をハサミで切って管状花を露出させてから袋を掛けます。袋にはパラフィン紙を使うのがよいでしょう。
○ 受粉
受粉に用いる花粉は、放出されたばかりの新鮮なものを使います。花粉の寿命は常温で1〜2日ですので、その日のものはその日の内に使うようにします。花柱は花粉に比べて寿命が長く、中央部の管状花の花柱が開いてから受粉すれば十分です。筆や綿棒に花粉を付け、花柱にこすり付けて受粉させます。時刻は午前10時ごろ〜午後3時ごろまでがよく、なるべく晴天の日を選びます。受粉が終了したらまた袋を掛けます。そこに交配日や交配親を書いておくと、後で混乱がなくて便利です。
袋掛けの期間は、受精していない花柱が受精能力を失う時期までとします。受精能力がある時に外すと、虫などによって交配した花柱以外のものが受粉する心配があるからです。具体的には、最後の花柱が開いてから2週間程度待てば十分です。袋を外した後は、交配親や交配日を札などに書き直して、株にぶら下げておきます。
受粉後の種子の発育は、気温の影響を大きく受けます。秋に交配した場合、自然の温度で種子が完熟するのは、約2か月後となります。しかし夜温を約10度に保てば、1か月程度に短縮できます。なお完熟すれば、種子が黒褐色に変化します。
3月〜5月下旬の間に採種した種子を播きます。は種方法は、一般的なは種方法と同じで、水はけの良い清潔な用土に播きます。苗が大きくなったら、鉢かポットに移植し、秋の開花まで管理します。開花したら、良いものだけを残し増殖します。
以上のように、交配して新品種を作り出すのは難しい作業ではないので、挑戦してみましょう。
農林水産部農業経営課普及・営農グループ
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