愛知県海部農林水産事務所

海抜ゼロメートル地帯の防災

ゼロメートル地帯の防災

昭和51年9月の集中豪雨による冠水の様子(津島市、佐織町地内)
昭和51年9月の集中豪雨による
冠水の様子(津島市、愛西市地内)

うちの町内を流れている川。
「ところで、川って海まで流れているの・・・?」
「どうやって流れているの・・・?」
「いつ、だれが、どこで、どうやって・・・?」

知らないままでも生活に変わりありませんが、少しだけのぞいてみませんか。
もしかすると、「えっ!、なにっ?」なんて事があるかもしれません。

4つのキーワード

1 海より低い土地

ゼロメートル地帯の図及び海岸線の推移

海部地域は、弥生時代以前には伊勢湾の海の底であった土地がほとんどであったと考えられています。その後、千数百年の間に木曽川の水によって運ばれてできたじめじめした土地が少しずつ人々が住める陸地に変わって、江戸幕府が開かれたころの海岸線はJR関西線が走っているあたりにあったといわれています。現在の海岸線はそのずっと南の方にありますが、この間に広がる地域は江戸時代から明治の初めにかけて活発に行われた海水を干して新しい土地にする海面干拓によって生まれた土地です。

このようなことから、海部地域の地形は平らでもともと地面が低かったことと、昭和30年代中ごろから地下水の汲み上げにより、地面が急に沈んで、ほぼ全部の地域で地面の高さが海の水面より低い状態、いわゆるゼロメートル地帯になってしまい、一部には海の水面より3メートル低い土地もあります。

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2 排水機(ポンプ)は海部地域の生命線

ポンプの働き(模式図)

海部地域の全体面積約2万ヘクタールの約6割の地域が日光川へ排水(いらない水を出すこと)され、約2割の地域が木曽川へ、残りは新川、筏川、鍋田川などの川や直接伊勢湾へ排水されますが、ゼロメートル地帯を流れるこれらの川は土地や建物よりも上にある天井川で、また土地と同じように川の水面の傾きも大変緩やかなことから満潮の時にかなり上流まで川の水面が上がります。そのため、このような所では、降った雨が自然に川へはいり、海へ流れ出ることはありません。もし雨が降ると、水がたまるので、たまった水を人工的に取り除かなければ、海部地域はわずかな時間でもとの海に戻ってしまうことでしょう。

そこで海部地域の人々は、古くからポンプやいらない水を出す排水路の整備に全力をつくしました。貴い命を守ることは、もちろんのことですが、先祖から引き継いだ農地や住宅などすべての財産を守るためです。
現在、海部地域には、大小合わせ約130か所のポンプが農業用施設として設置され、いつも動いています。ポンプは降った雨の水が集まる低地に設置され、屋根より高い川へ水をくみ出していますが、河口(川が海に流れつくところ)には高潮(海の水面が高いこと)で海水が川へ逆流するのを防ぐとともに川の水面を低くさせ、たまった水の排水をし易くするため、大変大きなポンプも設置されています。

海部地域は、古くから農業が盛んでしたが、農地は低地にあるため農家は排水に困っていました。このため、これらのポンプや排水路の大部分が農地や建物などを災害から守る事業で建設され、農家の団体である土地改良区などが管理を行っているのが大きな特徴です。近年では、農地や住宅地・市街地が入り混じっているため、地域全体の排水を受け持っています。

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3 排水機(ポンプ)の効果

図面上でマウスをクリックすると、図面が拡大されます。

排水機の効果の図面

海部地域は昭和34年の伊勢湾台風を始め、数多くの台風などによる災害をたびたび経験しましたが、昭和51年9月の集中豪雨(頭写真)を最後に大きな災害にあっていません。このため、人々が災害に備える気持ちがだんだんなくなってくるとともに、若い人達などではポンプへの関心が少なくなっています。しかし、この間、水害の危険が無かったのでしょうか。

ここでは平成2年9月17日の雨の降り始めから19日の雨の降り終わりまでに3日間で降った265ミリメートルの雨の量(平成12年東海豪雨の339ミリメートルの約8割に相当します。)で調べてみましょう。海部地域に設置されている約130か所のポンプがくみ出す全部の水の量は毎秒約460立方メートルありますが、これは、1秒間で小学校のプールを約1.5杯分くみ出す量と同じです。左図はもし、そのポンプを止めたら、どうなるかを想像した時に、水がたまる区域のようすを示しています。海部地域のおよそ7割にあたる1万3千ヘクタールの区域に水がたまり、このうち約半分の7千ヘクタールでは、稲が冠水する(稲が水をかぶること)30センチメートル以上の水の深さとなり、約400ヘクタールでは床下浸水が起きる80センチメートル以上の水の深さになることがわかります。

この結果から、いつもあまり意識されないポンプが災害を前もって防ぐうえでいかに役立っているかよくわかります。近ごろ、全国的に異常気象による局地的な集中豪雨が多く起こる中で、海部地域でも油断はできません。そのような時に、ポンプがあれば大いに活躍してくれることでしょう。

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4 排水機(ポンプ)をつくり、守る

日光川河口排水機場(国内最大のポンプ)

ポンプは羽根車(扇風機の羽根のような物)を回転させて水を押し出すため、ゴミや土砂などが混じることによって長い間に羽根車がすり減って、水をくみ出す量が減っていきます。ポンプはいつも水に触れるためにポンプ本体や電気の部品が悪くなってきます。このようなことは、他の地域と比べて使う時間が大変長い海部地域のポンプでは特によく見られます。また、都市化が進むことによってアスファルト道路やコンクリートの建物などが増え、同じ雨の量でも地下にしみ込む量が減って、前より多い水が短い時間に集中して流れ出したりするようになります。このため、古くなったポンプは、いざというときに備えるため、計画的に新しくつくり直しています。

ポンプの管理にあたっては、いつも安定して水をくみ出すことができるように、よく慣れた運転手が必要であり、突然の大雨にもすぐに対応できるよう細かい注意をして、機械の整備や点検をする必要があります。海部地域のほとんどのポンプは、農家の団体である土地改良区などによって管理されています。そのため、土地改良区などが一生懸命にポンプの管理をすることで、住宅地・市街地を含む地域全体の命や財産が守られていることをけっして忘れることはできません。

海部地域の未来に向けて、かけがいのないポンプを地域の皆さんが協力して、計画的に整備し、万全の備えで管理していくことがなにより大切です。

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