あいちの先進企業紹介VOL.5
バックナンバーVOL.1(樹研工業)           バックナンバーVOL.2(西島)
バックナンバーVOL.3(エイアールブイ)      バックナンバーVOL.4(東海メディカルプロダクツ)


 国内企業の中国など海外への進出等、わが国におけるものづくりの弱体化が心配されていますが、逆風下においても独自の創意工夫により、堅調に業績を伸ばしている企業も少なくありません。当コラムにおいて、そのような愛知県の魅力的な企業をご紹介していきます。個々の企業を通して、ものづくりのメッカ、愛知県の今後を考える上での一助として頂ければ幸いです。第5回目は株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングです。
  

株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング

 株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングは再生医療を行うための、培養皮膚、培養軟骨、培養骨の研究・製造・供給を行うことを目的とした日本で初めての会社です。再生医療は従来型の医療とは全く異なる21世紀の医療であり、その先駆者として非常に注目を集めています。

取締役の大須賀さん(右)に、お話を伺いました。
Q.創業のきっかけを教えてください。
A.親会社であるニデックの新規事業の一環として、設立されました。ニデックは眼科医療の分野における様々な製品を供給する企業です。21世紀初頭に1,000億円企業を目指したビジネス展開を考え、90年早々より様々な新規事業を模索・検討していました。
  95年に、アメリカのピッツバーグからTissue Engineeringによる産業振興を主導するピッツバーグ・ティッシュ・エンジニアリング・イニシアティブという団体の理事を招いての講演がヒントで、Tissue Engineeringと言う新しいコンセプトに注目していました。その後、97年に愛知県の科学技術交流財団主催の研究会で、培養皮膚の研究をされていた名古屋大学医学部の上田実教授に会い、先生の技術を事業化するのなら技術移転するとのお話で、当社の小澤社長に会ってお話していただいたところ、社長がその場で事業化を決断し、今の潟Wャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J−TEC)が立ち上がることになりました。
 設立時に、厚生省の外郭団体である医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構から、5年間で約9億8千万円の融資を受けることが決まり、また、その研究会のメンバーであった蟹NAXや、ニデックと眼科の医薬品開発で提携した富山化学工業鰍熄o資だけでなく事業に参加していただけることが決まりました。
 初めての再生医療のベンチャー会社ということで、新聞等もたくさん取り上げてくれました。また、それを見て入社を希望する人が全国から来てくださり、バイオの土台が無いところでも優秀な人材を集めることができました。
   
  無菌室の入り口   研究室風景

Q.日本の再生医療産業の現状と今後について教えてください。
A.日本でも当社以外に、10社ほど再生医療の事業化を進めている企業があります。
 推定されるTissue Engineering関連の市場は、新エネルギー・産業技術総合開発機構の資料によりますと、ワールド・ワイドで約48兆円、日本国内が約5兆円、Tissue Engineering製品のみに限ってもワールド・ワイドで約10兆円と言われています。また、日本経済新聞と三菱総合研究所の共同調査では、日本の市場は2020年に8,550億円、ワールド・ワイドで32,600億円と推定されています。
  2004年度中に自家培養表皮、2006年度中に自家培養軟骨の製造承認が、厚生労働省から下り次第、当社が日本で初めて、再生医療の製品の実用化をすることとなります。

Q.海外の再生医療と比べていかがでしょう。
A.97年頃、すでにアメリカではTissue Engineeringのベンチャー企業が30〜40社ほど立ち上がっており、培養皮膚は実用化され(販売され)、軟骨に関しても実用化直前の状況にありました。現在では70社ほどが再生医療の事業化を進めています。
 日本は、産業化では遅れていますが、学術レベル(技術的)は海外と比べても、遜色はない状態です。特に、培養軟骨の臨床研究では、広島大学医学部整形外科(越智光夫教授)が世界中から注目をあびており、当社も培養軟骨に関して広島大学越智教授より、技術移転を受けています。
 日本においては、リスクを取って事業化に踏み切る経営者が少ないことや、再生医療を産業化するためのガイドラインや各種産業化の為のシステムやインフラの差が、産業化が欧米に比べ遅れることとなった要因ではと思います。

Q.先端産業における産学連携の重要性がよく言われますが、愛知県における産学連携の取り組みは全国的に見ていかがでしょうか。
A.科学技術交流財団の研究会がきっかけで名古屋大学上田教授と知り合えたこと、事業化には同財団の技術コーディネーターの小坂岑雄氏の大きな助力があったこと、また、中部経済産業局には補助金申請などでいろいろ相談にのっていただいたことなど、連携やバックアップ体制は良かったと思ってます。大学に関しても、名古屋大、名古屋工業大学、豊橋技術科学大学など、工学部、医学部、他、産学連携の条件は整っており、全国的に見ても進んでいる方だと思います。
 行政も大学も、敷居の高いイメージはあったのですが、きちんと、また、親切に相談に応じてくださり、情報収集や、人脈を形成するうえで、非常に助かりました。

Q.愛知県で企業活動を行なって良かった事があれば教えてください。
A.今後、先端技術を導入していくうえで、医学と工学の連携が非常に重要になってくると思われます。その点、当地域は材料、機械、電気工学等の集積、技術力がトップレベルですので、医工連携の進展が楽しみです。
  愛知県には医療産業の研究開発の集積地はありませんが、当社は、皮膚は名古屋大学、軟骨は広島大学、角膜はヨーロッパの機関と、共同研究を進めており、コンセプトが合えばどの研究機関とも手を組みたいと考えています。集積地から離れた所で事業化をしていてもマイナスと思ったことはありません。また、バイオベンチャーが少ないからこそ、支援が受けられるということも言えるかも知れません。
  神戸市などからの誘いや、国内のみならず、シンガポールなど海外からも誘致を受けていますが、親会社二デックも蒲郡にあり、日本の真ん中に位置し、交通の利便性が良いこと、地元自治体等の支援などを考え、愛知県で事業を展開していこうと考えています。

Q.行政への御要望はありますか。
A.今後は韓国、台湾、中国にも事業を展開しようと考えていますので、中部国際空港には期待しています。豊橋と浜松は非常に深い結びつきがあるため、浜松も巻き込んで、三河湾岸からのアクセスを進めるようにしていただくと、三河・遠州地域にとって、更に中部国際空港の価値が大きくなっていくのではないでしょうか。
  あと、再生医療は生きた細胞・組織を扱いますから、時間的問題が発生しますので、輸出入の際、通関検査等が事前又は極めて短時間で済むようなシステムができればいいと思います。

あとがき 

  火傷、軟骨損傷、皮膚の疾患に苦しむ方にとって、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング製品の医療現場への登場が、切望されてることでしょう。大須賀さんは事業化するまでが大変だけど、確実にニーズはあるという意味で、他の新商品の開発とは一線を画すとおっしゃてましたが、体の悪いところを治したいという、消費者ニーズの最上位をカバーするわけで、医療の面からはもちろん、産業振興の面でも、事業化の成功が期待されます。21世紀の最先端の医療である再生医療が、特に先進医療が集積しているわけでもない蒲郡市から生まれるというのも、何かを行ううえでの企業のやる気が、いかに重要かを示しているように感じました。
 

  名称 株式会社 ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング
  代表者名 代表取締役社長 小澤秀雄
  本社所在地 〒443-0022 愛知県蒲郡市三谷北通6丁目209番地の1
  電話 0533−66−2020、FAX0533−66−2019
  ホームページ http://www.jpte.co.jp/