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「知の拠点あいち重点研究プロジェクト(II期)」焼かずに成形できるセラミックス3Dプリンターを開発しました!~セラミックス部品の製造にかかるエネルギーを大幅に削減できます~

 愛知県では、大学等の研究シーズを活用して県内主要産業が有する課題を解決し、新技術の開発・実用化や新産業の創出を目指す産学行政連携の研究開発プロジェクト「知の拠点あいち重点研究プロジェクト※1(II期)」を実施しています。
 この度、「モノづくりを支える先進材料・加工技術開発プロジェクト※2」の研究テーマである「焼かずに作るセラミックスのシンクロトロンによる解析と産業応用※3」において、名古屋工業大学の藤正督(ふじまさよし)教授と、株式会社ルナクラフト(江南市)の合同研究グループは、藤教授の無焼成セラミックス※4技術を用い、「焼かずに成形できるセラミックス3Dプリンター」を開発しました。
 本開発品では、これまでセラミックス製品を製造する際に必要だった焼成工程が不要となるため、省エネルギー化・製造コストの削減につながります。また、従来のセラミックス3Dプリンターに対して構造がシンプルになり、製作費用が抑えられ、販売価格を低く設定できるため、導入コストの低減につながります。将来的には、様々なセラミックス部品の製造に活用され、増え続けるセラミックス需要への貢献が期待できます。
 今後、株式会社ルナクラフトが本開発品の製造・販売を行う予定であり、平成30年度に試行販売を開始し、利用者ニーズの調査を行うとともに装置の改善を進め、平成31年度以降に本格的な販売を開始する見込みです。

試作品

セラミックス3Dプリンター試作機

 

1  開発の背景

 セラミックスは原料の混合や成形及び焼成など複数の工程を経て製造されますが、各工程で消費されるエネルギーの割合は図1に示すように、焼成工程が全体の約60%を占めています。この焼成工程を省略できれば省エネルギー化・製造コストの削減につながるため、焼成工程を省略できるセラミックス製造技術の開発が期待されています。
 名古屋工業大学の藤教授らは図2で示す焼成工程が不要となる新たな技術を開発し、実用化できるレベルにまで到達しました。そして、この技術に着目した株式会社ルナクラフトが藤教授と合同研究チームを結成し、無焼成セラミックス3Dプリンターの開発に取り組み、この度、シンプルな構造の本装置が実現しました。


製造工程別消費エネルギー割合

図1  製造工程別エネルギー消費割合
(提供:名古屋工業大学)

無焼成セラミックスの製造工程フロー

図2  無焼成セラミックスの製造工程フロー
(提供:名古屋工業大学)

 

2  開発の概要

(1) 既存品の課題

 既存のセラミックス3Dプリンターでは、セラミックス粉末を配合した光硬化樹脂に光を当てて硬化させた層を積み重ねていく光造形方式や、セラミックス粉末と樹脂性結合剤の混合粉末をレーザーにより一旦溶解して順に層を積み重ねていく粉末積層造形方式が実用化されています。これらの方式では材料を硬化及び溶解するための装置が別途必要であり、また、価格も数千万円と高価なため、普及に向けて低価格化が望まれています。

(2) 本開発品の特徴 

 本開発品は、材料押出堆積法※5により、流動性を持つセラミックス原料をノズルから吐出して積層造形します。吐出したセラミックス原料は化学反応により自然に硬化するため、硬化及び溶解するための装置が不要になります。本研究開発では、セラミックス原料の添加バランスの調整などの研究を重ねることによって、吐出後の硬化時間を制御できるようになり、セラミックス原料での材料押出堆積法の適用が可能となりました。
 材料押出堆積法は、樹脂を成型する一般的な3Dプリンターで採用されている方式で、光造形方式や粉末積層造形方式に比べ、シンプルな構造となっています。このため、本開発品においても製作費用が低く抑えられ、販売価格を低く設定することができます。

 

3 期待される成果と今後の展開

 現在、セラミックスは工業製品や医療機器を始めとした様々な分野で活用されており、その需要は加速度的に増加しています。本開発品は、従来品と比べ非常に安価で導入でき、また、製造時間及び製造コストを削減することができるため、セラミックス関連産業へ広く普及し、増え続けるセラミックス需要に対応する一助になることが期待されます。
 また、本開発品は焼成工程が不要となったことで、エネルギー消費量及び二酸化炭素排出量を大幅に削減することができるため、製造工場のクリーン化にも貢献します。
 平成30年度は、あいち産業科学技術総合センターにて無焼成セラミックスの固化メカニズム及び固化構造の解明のため、試作したセラミックスサンプルを各種分析装置を用いて評価・分析します。また、株式会社ルナクラフトが本装置の製造・販売を行う予定であり、平成30年度に試行販売を開始し、平成31年度以降の本格的な販売開始を目指します。

 

4  社会・県内産業・県民への貢献

 

社会への貢献

省エネ社会に貢献できる装置です。

県内産業への貢献

今まで多額のコストが掛かっていたセラミックスの試作について、コスト低減が見込めます。更に焼成設備が不要なため、焼成の際に出る有害物質の削減も見込めます。

 

5  問合せ先

○プロジェクト全体に関すること

・あいち産業科学技術総合センター 企画連携部
(1)担当:藤波、吉富
(2)所在地:豊田市八草町秋合1267番1
(3)電話:0561-76-8306
(4)FAX:0561−76−8309

・公益財団法人科学技術交流財団
(1)担当:石川、長谷川、安藤
(2)所在地:豊田市八草町秋合1267番1
(3)電話:0561-76-8380
(4)FAX:0561−21−1653
 

○本開発内容に関すること

(無焼成セラミックス技術関連)
・名古屋工業大学
(1)担当:先進セラミックスセンター 教授 藤 正督(ふじ まさよし)
(2)所在地:岐阜県多治見市本町3丁目101-1
(3)電話:0572-24-8110

(3Dプリンター製品関連)
・株式会社ルナクラフト
(1)担当:3Dプリンター事業部 佐伯 一馬(さえき かずま)
(2)所在地:江南市上奈良町新明125
(3)電話:0587-53-4445

 

【用語説明】

※1 知の拠点あいち重点研究プロジェクト

 高付加価値のモノづくりを支援する研究開発拠点「知の拠点あいち」を中核に実施している産学行政の共同研究開発プロジェクト。平成28年度からは「重点研究プロジェクト(II期)」を実施している。

 

「重点研究プロジェクト(II期)」の概要

 

目的

大学等の研究シーズを活用して県内主要産業が有する課題を解決し、新技術の開発・実用化や新産業の創出を促進する。プロジェクト終了時には、県内企業において、成果の実用化や製品化、社会での活用を見込むことができる研究開発を実施する。

実施期間

平成28年度から平成30年度まで

参画機関

17大学11公的研究機関等99企業(うち中小企業73社)

(平成30年5月現在)

プロジェクト名

・次世代ロボット社会形成技術開発プロジェクト

・近未来水素エネルギー社会形成技術開発プロジェクト

・モノづくりを支える先進材料・加工技術開発プロジェクト※2

 

 ※2 モノづくりを支える先進材料・加工技術開発プロジェクト

 

概要

知の拠点あいちシンクロトロン光センターを活用して、新材料開発や地場産業の新展開を支援するとともに、モノづくりを支える先進材料・加工に資する技術開発を推進します。

研究テーマ

(1) 焼かずに作るセラミックスのシンクロトロンによる解析と産業応用

(2) 窯業競争力向上のためセラミックス焼成収縮・変形の解明

(3) シンクロトロン光の清酒製造プロセスへの活用

(4) シンクロトロン次世代ナノ・マイクロ加工技術の開発

(5) デバイス実装用高熱伝導部材およびデバイス材料研削砥石の開発

(6) 航空機製造工程の革新によるコスト低減と機体の軽量化・高性能化

(7) 自動車軽量化のため熱可塑性炭素繊維強化樹脂の加工技術開発

(8) セルロースナノファイバーを活用した高機能複合材料開発と実用化

(9) 革新的金型製造技術の開発とその産業応用

参画機関

9大学2公的研究機関等42企業(うち中小企業31社)

 (平成30年5月現在)

 

 

※3 研究テーマ名:焼かずに作るセラミックスのシンクロトロンによる解析と産業応用

 

研究リーダー

名古屋工業大学 教授 藤 正督(ふじ まさよし) 氏

事業化リーダー

北川工業株式会社 先行開発部 部長代行 近藤 康雄(こんどう やすお) 氏

内容

 

セラミックスの製造エネルギーの約60%は焼成関連で消費されています。焼かずに作る無焼成技術を開発することができれば、これらの消費エネルギーを事実上ゼロにすることができます。また、二酸化炭素排出量の削減にもつながります。

参加機関

〔企業〕

株式会社アドヴィックス、北川工業株式会社、株式会社ルナクラフト

〔大学〕

名古屋工業大学

〔公的研究機関〕

公益財団法人科学技術交流財団、あいち産業科学技術総合センター

 

※4 無焼成セラミックス

  一般的に、セラミックス製品は焼成して固める工程を経て造られますが、焼成工程を経ることなく化学処理により固めることができるセラミックスのことです。この無焼成セラミックスの固化技術は名古屋工業大学が開発した技術であり、特許を取得しています。

 

※5 材料押出堆積法

  造形方式の一つで、吐出ノズルから流動性の材料を押出し、層を積み上げてモデルを造形する方式です。高い耐久性や耐熱性を得やすいので、試作品や治具、簡易型の造形などに適しています。