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【変更(開催)】「知の拠点あいち重点研究プロジェクトIII期」 中小事業者向け「水素蓄電」システムを開発しました ~知の拠点あいち実証研究エリアで公開実験を行います~
【変更内容】 新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑み延期していた公開実験を、3月25日(金曜日)に実施します。
愛知県と公益財団法人科学技術交流財団では、産学行政連携の研究開発プロジェクト「知の拠点あいち重点研究プロジェクトIII期※1」を2019年度から実施しています。
この度、「先進的AI・IoT・ビッグデータ活用技術開発プロジェクト※2」の「中小工場を再エネ化する水素蓄電・ネットワーク対応AIエンジン※3」において、東京大学の杉山正和(すぎやま まさかず)教授、株式会社エノア(豊田市)らの研究グループが、気象と電力需要の予測に基づいて、太陽光による発電と水素による蓄電装置からなる電力網を介して電力を融通する中小事業者向けの「水素蓄電」システムを開発し、知の拠点あいちの実証研究エリアに設置し、3月25日(金曜日)に、知の拠点あいちの実証研究エリアにおいて報道機関向けに公開実験を行いますのでお知らせします。
このシステムは、太陽光パネル、水電解装置、水素貯蔵設備、燃料電池とそれらの制御機構を備え、必要に応じてシステムから工場へ電力を供給することで「100%再生可能エネルギー」を実現しようとするものです。
公開実験の当日は、メガソーラーのモデルから工場モデルへの送電デモにおいて、水の電気分解による水素貯蔵の仕組み、燃料電池による発電システムを解説し、AIエンジンによるエネルギーマネジメントの動作状況をモニタから観察します。
今後も通年での実証実験を行いながら、株式会社エノアと豊田通商株式会社(名古屋市中村区)が中小事業者に向けてシステムの販売を目指します。
1 開発の背景
低炭素社会の実現のために、中小事業者における生産活動においても炭酸ガスの排出削減が求められています。そのために、再生可能エネルギーの活用と、水素蓄電技術は有望視されていますが、大規模な装置での実証例がほとんどであり、中小事業者における実現性、コスト削減効果については実証されておらず、中小の事業者が必要とする低コストかつ小回りの利くシステムは市場投入されていません。社会的課題に対応する現実的な取組や将来的なニーズに対応するためには、これらの開発が求められています。
そこで本プロジェクトでは、中小事業者向けのシステムを開発しました。再生可能エネルギーの発電容量、蓄電池の容量、水素蓄電の容量を最適化して、再生可能エネルギーの電力コストを最小化するとともに、再生可能エネルギー発電サイトと中小事業者をネットワーク化した電力網のAIによる最適制御により、「100%再生可能エネルギー」を実現することを目指しました。
2 実証試験機及び開発システムの概要
(1) 太陽光発電・水素蓄電・供給制御システム
図に知の拠点あいちの実証研究エリアに設置した実証試験機の全容を示します。
図 実証試験機の全容
(需要端)
矢印のフローに従い、太陽光パネルによる電力を「水電解」により「水素」としてエネルギーを貯蔵します。そのエネルギーは、需要に応じ「燃料電池」による発電で、工場の電力需要を想定した「模擬負荷」に送られます。また、燃料電池からはリチウムイオン電池への予備的な蓄電も行います。
(供給端)
太陽光パネルからの電力は主に需要端へ供給されますが、一方で、発電量に応じ「水電解」により「水素」としてエネルギーを貯蔵し、需要に応じ「燃料電池」で発電し需要端へ供給されます。
右側の供給端(一定量の水素蓄電設備を備えているメガソーラーモデル)から、左側の需要端(工場のモデル)に電力を供給する仕組みとなっています。
左側のシステムは、株式会社エノアが主に中小工場への普及を目指すシステムで、水の電気分解による水素蓄電、太陽光発電と燃料電池による発電機構を備え、キロワット級の再生可能エネルギーのストック・フローを、市販の電源装置をベースに低コストで実装しました。水電解、水素貯蔵、燃料電池による大容量蓄電のシステムについては、近年いくつかの実証が進められていますが、複数のシステムを連携させ再生可能エネルギーの供給率向上を図る取組は本システムの他に例がありません。
(2) 供給端と需要端の協調運転を可能にするAIエンジンのアルゴリズム
気象予測に基づく発電量予測とビッグデータ解析に基づく電力消費予測から、AIを活用した電力フローの最適化を図るとともに、運転計画策定と各デバイスの容量最適化を可能にする計算手法は、東京理科大学が開発しました。複数の水素蓄電システムを協調運転させるパワーフローの最適化計算手法の構築は世界初の試みです。
(3) 水電解セルの劣化機構解析
あいち産業科学技術総合センターは、水を電気分解する「水電解セル」へ電圧を加える条件と、水電解セルの劣化要因の関係性を明確にし、長寿命運用を可能にする運転パターンの開発に寄与しました。
3 公開実験(報道機関向け)
(1) 実施日時
2022年3月25日(金曜日) 午後1時から午後3時まで
※一般の方は見学できません。
(2) 場所
知の拠点あいち実証研究エリア (豊田市八草町秋合1267-1 電話:0561-76-8889)
※当日は、知の拠点あいち内のあいち産業科学技術総合センター1階 講習会室へお越しください。
(3) 対象
報道機関
(4) スケジュール
午後1時 報道関係者受付(あいち産業科学技術総合センター1階 講習会室)
午後1時15分 開発及び実験の概要説明
東京大学 先端科学技術センター 教授 杉山 正和 氏
午後1時45分 実証研究エリアへ移動・実験設備の概要説明
株式会社エノア 代表取締役 青野 文昭 (あおの ふみあき) 氏
※水素貯蔵の仕組み、燃料電池による発電システムを解説し、AIエンジンによるエネルギーマネジメントの動作状況を御覧いただきます。
午後2時30分 講習会室へ移動・質疑応答
午後3時 終了
(5) その他
取材の事前申し込みは不要です。また、新型コロナウイルス感染防止対策として、公開実験を見学される方は以下の各項目にご留意ください。
・37.5度以上の発熱がある方、又は体調が優れない方は、御来場いただいても見学をお断りさせていただく場合があります。(受付で検温を行います。)
・手洗い、消毒、マスク等による咳エチケットの徹底をお願いします。
・大声での会話など感染リスクの高い行為を行わないようお願いします。
4 期待される成果と今後の展開
太陽光発電などの再生可能エネルギーの活用を妨げる要因である出力変動の緩和策として、二次電池(短期)、水素蓄電(中長期)系統からの供給を、最適なバランスで組み合わせることで、再生可能エネルギーの利用率の向上と経済性が両立できます。
今後、中小事業者等への普及に向け、基本サイズのユニットを標準化して低コスト化を図り、株式会社エノアと豊田通商株式会社がシステムの販売を目指します。
5 社会・県内産業・県民への貢献
社会への貢献 | 社会全体として経済の発展とCO2削減の両立を可能とする。 |
県内産業への貢献 | 企業活動におけるCO2排出ゼロを目指すことができる。また、炭素税の導入や取引や投資判断にCO2排出量が重視される等の中小事業者の経営リスクが伴う中で、今回開発した「水素蓄電」システムにより、容易に対策することができる。 |
県民への貢献 | クリーンなエネルギーが提供できる。 |
6 問合せ先
【重点研究プロジェクト全体に関すること】
・あいち産業科学技術総合センター 企画連携部
担当:福田、半谷、門川
所在地:豊田市八草町秋合1267番1
電話:0561-76-8306
・公益財団法人科学技術交流財団 知の拠点重点研究プロジェクト統括部
担当:佐野、安藤、田草川
所在地:豊田市八草町秋合1267番1
電話:0561-76-8370
【本開発内容に関すること】
(開発技術に関すること)
・東京大学 先端科学技術研究センター
担当:教授 杉山 正和
所在地:東京都目黒区駒場4丁目6番1号
電話:03-5452-5720
(実験設備に関すること)
・株式会社エノア
担当:代表取締役 青野 文昭
所在地:豊田市平戸橋町波岩69番地5
電話:0565-41-6939
用語説明
※1 知の拠点あいち重点研究プロジェクト
付加価値の高いモノづくりを支援する研究開発拠点「知の拠点あいち」を中核に大学等の研究シーズを活用したオープンイノベーションにより、県内主要産業が有する課題を解決し、新技術の開発・実用化や新たなサービスの提供を目指す産学行政の共同研究開発プロジェクト。2011年度から2015年度まで「重点研究プロジェクトI期」、2016年度から2018年度まで「重点研究プロジェクトII期」を実施し、2019年度からは「重点研究プロジェクトIII期」を実施。
「重点研究プロジェクトIII期」の概要
実施期間 |
2019年度から2021年度まで |
参画機関 |
19大学 12研究開発機関等 106社(うち中小企業68社) (2022年1月時点) |
プロジェクト名 |
・近未来自動車技術開発プロジェクト(プロジェクトV) ・先進的AI・IoT・ビッグデータ活用技術開発プロジェクト(プロジェクトI) ・革新的モノづくり技術開発プロジェクト(プロジェクトM) |
※2 先進的AI・IoT・ビッグデータ活用技術開発プロジェクト(プロジェクトI)
概 要 |
モノづくり現場の設計・生産・検査から、農業・健康長寿までの幅広い分野において、AI・IoT・ビッグデータの活用を推進するとともに、ロボット高度化やエネルギー最適配分のための水素蓄電の技術開発に取り組む。 |
研究テーマ |
(1) 大規模材料データ及びCAEによる自動車向け設計生産技術 (2) 2次電池の材料開発/寿命評価用データベース構築とAI/IoT応用 (3) 5G/AIを活用したロボットプラットフォームとロボットサービスの研究開発 (4) 分野適応技術による自然言語処理技術のビジネス展開 (5) 中小工場を再エネ化する水素蓄電・ネットワーク対応AIエンジン (6) 直流スマートファクトリー実現に向けた変換装置の開発 (7) 農業ビッグデータ活用によるロボティックグリーンハウスの実現 (8) 幸福長寿な暮らしをかなえる自然に活動的となる住まいの研究開発 (9) AIを用いた粉体原料の物性に関する予測システムの構築 |
参画機関 |
11大学 10研究開発機関等 37社(うち中小企業23社)(2022年1月時点) |
※3 中小工場を再エネ化する水素蓄電・ネットワーク対応AIエンジン
概 要 |
再エネの活用を妨げる要因は出力変動だが、その緩和策として、二次電池(短期)、水素蓄電(中長期)系統からの供給を最適なバランスで組み合わせ、再エネ利用率の向上と経済性を両立させる。そのための気象予測に基づく発電量予測、ビッグデータ解析に基づく電力消費予測、AIによる電力マネジメント技術を、実システムとして実証研究エリアで検証する。 |
研究リーダー |
東京大学 教授 杉山 正和 氏 |
事業化リーダー |
株式会社エノア 代表取締役 青野 文昭 氏 |
参加機関 (五十音順) |
〔企業〕 株式会社エノア、豊田通商株式会社、株式会社ニシムラ 〔大学〕 東京大学、東京理科大学 〔公的研究機関〕 あいち産業科学技術総合センター、公益財団法人科学技術交流財団 |