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第17回愛知まちなみ建築賞

総評

 今回で第17回目を迎える「愛知まちなみ建築賞」は、その回を重ねるごとに大きく育ってきている。県内各都市、地域から応募いただいた作品は113点で、部門別では住宅34点、共同住宅12点、学校13点、店舗13点、事務所・工場11点、医療・福祉施設15点、複合施設5点、住宅開発1点、その他(民間)2点、公共施設7点のいずれも質の高い作品であった。第一次選考ではこの中から23点を絞り込み、11月25日の第二次選考で建築設計の詳細や内外観の写真、またランドスケープ・植栽の図面など詳細資料と現地で撮影した映像資料を基に最終選考を行った。最終選考の対象23作品はいずれも優れた作品が多く、審査過程では委員による活発な議論が交わされ、全体の合議によって受賞作を最終決定した。とりわけ今回、住宅・共同住宅に次いで学校建築や医療・福祉施設に優れた作品が多かったことは、まちなみや建築が子供たちや高齢者にとってもより一層身近で、地域に根ざした市民共有の財産になってきていることがうかがえる。

 「e-生活情報センター『デザインの間』」は環境を可視化する意欲的なテーマをかかげ、東山の豊かな緑を建築という媒介(メディア)空間を通して都市の表情へと導く、まさに地域との対話による秀作である。住宅は個々の設計条件が大きく影響するのだが、「M-HOUSE」は間口が狭小な細長い敷地特性を見事に活かし、建物全体をチューブ状の空間とするプランニングに工夫が見られた。「岩倉小規模多機能ホーム・ちあき」、「みなと医療生活協同組合 宝神生協診療所」はいずれも福祉サービスや診療、地域交流機能を併せもつ施設で、前者は歴史まちなみ再生への文脈的方法による建築提案であるのに対し、後者は工場やトラックターミナルが混在する郊外のロードサイド景観に、人間スケールの新しいまちなみを造りだしている。「florist_gallery N」は店舗併用住宅、また「醸庵」は店舗兼事務所であるが、前者は周辺の都市施設や微地形に対し建物を開いて屋内外の視覚的連続性を創出しているのに対して、後者は伝統様式と材料・構法を用いて、建築に携わった職人技をも継承する試みとして歴史的まちなみの創造に貢献している。「岡崎市図書館交流プラザ Libra(りぶら)」は図書館を核とした生涯学習施設であるが、同時に中心市街地活性化の拠点として都心部での新たな知的活動と賑わいを生み出す歩行者回遊空間を建築プログラムと一体化させて造りだしたアーバンデザインとしても工夫が見られる。

 受賞作品の詳しい評価はそれぞれの選評に譲るが、それぞれに地域性と場所性を反映した表情豊かな作品が多かったと思う。今回、大賞については選考委員全員の合意に至らず受賞作こそなかったが、次代の環境を可視化する新しいテーマや仮設的性格を持つ小規模建築が地域のまちなみ形成を先導する新しい潮流が見られたことは大きな収穫であった。これから応募される方々には地域や場所との対話による試行錯誤の中から、まちなみの新しい価値を先導する意欲的な試みをしていただくことを期待したい。

有賀 隆

第17回愛知まちなみ建築賞 受賞作品

  • e-生活情報センター「デザインの間」 (名古屋市千種区星が丘元町)
  • 岩倉小規模多機能ホーム・ちあき (岩倉市中本町)
  • M-HOUSE (名古屋市千種区赤坂町)
  • 岡崎市図書館交流プラザ Libra(りぶら) (岡崎市康生通西)
  • 醸庵 (岡崎市中町)
  • florist_gallery N (名古屋市千種区鏡池通)
  • みなと医療生活協同組合 宝神生協診療所 (名古屋市港区宝神三丁目)

(五十音順)

e-生活情報センター「デザインの間」

モード学園スパイラルタワーズ

photo by 車田 保

概要

所在地:名古屋市千種区星が丘元町
建築主:中電不動産株式会社
設計者:株式会社竹中工務店名古屋一級建築士事務所
施工者:株式会社竹中工務店名古屋支店

主要用途:ショールーム 
構造:鉄骨造 
階数:地上1階 
敷地面積:3,087.93 
建築面積:930.76 
延床面積:817.18

講評

 星が丘の駅前に、軽快で華やかな風景をつくり出すことに成功している。

 まちかどのアクティビティを活気づけるのに透明なガラスファサードは有効だが、この建築の成功を支えているのはむしろ屋根である。吊構造による極めて薄い屋根面が外周部でガラスにより縁が切られることで、あたかも宙に浮いているような効果をあげている。通りからは視線が天井面に沿って抜けていくため軽快さが獲得され、ガラス壁面の丁寧なディテールとの相乗効果により透明度が強調されている。都市部での低層建築は、上から眺められることにも留意して計画される必要があるが、ここでは屋上緑化が周辺に柔らかな表情を与えている。

 このようなまちかどの建築をつくり出した設計者、施工者の力量は賞賛に値するが、発注者の見識も同時に評価されるべきである。この施設は、おそらく仮設的なもとのとして企画されているのではないかと推察される。多くの場合、仮設的建築は一段低く見られる傾向があるが、それは大きな間違いである。仮設的建築が悪いのではなく、仮設的建築をいい加減に作るのが悪いのだ。仮設的な構えでありながら、きちんと街に対する責任を果たす建築を求めた発注者の見識を高く評価したい。このような発注者が増えていくことを期待してやまない。

伊藤 恭行

岩倉小規模多機能ホーム・ちあき

岩倉小規模多機能ホーム・ちあき

概要

所在地:岩倉市中本町
建築主:社会福祉法人 尾張健友福祉会
設計者:株式会社 中央設計名古屋
施工者:澤崎建設株式会社 一宮支店

主要用途:老人福祉施設等(小規模多機能施設及びデイサービス他) 
構造:木造 
階数:地上2階 
敷地面積:719.49 
建築面積:322.14 
延床面積:418.71

講評

 本建物は、岩倉市の中心部、南北に縦貫する近世由来のまちなみの残る岩倉街道沿いの鉤型の折れ点、いわばヴューポイントに位置し、視覚的、機能的に建物のありようがまちなみに与える影響の大きな立地であった。

 計画に際しては、2面が街道に面するコーナー部分の躯体を残し、虫籠窓、格子を復活させて、近世の町屋のイメージを復元。鉤型正面は妻入りのエントランスとして、正面性が目にとまる構成とされた。壁面線が道路からの串刺し駐車場によって後退する部分が気になったが、空間的な引きにより、鉤型の立地ゆえに広場らしく仕上がった印象だ。

 高齢者施設として、安全で快適であることに重点を置いたプランニングだが、古材の質感を介して、高齢者もなつかしさを感じられる建物となったようだ。

 まちなみは、外観と共に、人の活気のたちあらわれ方が重要だと思う。本建築は、小規模多機能棟(改築部分)とデイサービス棟(新築部分)、既存土蔵を改修したギャラリー、集会室の開放など地域の人が積極的に利用できるプログラムにより、まちに開くことで、高齢者施設の「まちなみ」との関係と、「まち」における高齢者施設のありようを積極的に提案、示唆する作品となった。

山内 彩子

M-HOUSE

M-HOUSE

photo by 山岸 剛

概要

所在地:名古屋市千種区赤坂町
建築主:松原 勇治
設計者:D.I.G Architects 吉村昭範+吉村真基
施工者:株式会社 水野工務店

主要用途:専用住宅 
構造:鉄骨造 
階数:地上2階 
敷地面積:127.82 
建築面積:76.67 
延床面積:103.08

講評

 吉村昭範+吉村真基のユニット、D.I.G Architectsは、フォルマリズム的な形態操作を得意とし、住宅を中心に東海圏で活動を行う。細長い敷地にたつM-HOUSEは、両隣の住宅との関係から、上層と下層をずらすヴォリュームの構成を決定し、効果的な場と余白をつくる。また閉鎖的な塀や排他的な柵によって道路から家を切断しない。むしろ、積極的に前面の道路を引き込み、背後の緑道とも関係を構築する。まさに道のように、細長い家が2つの道路をつなぐ。驚くべきことに、この住宅は、間口5m、奥行25mの敷地を、さらに分割し、道、あるいは廊下のような内部空間が立体的におりかえす。一階は、鋭角的なY字路をつくり、片方は町家の通り庭のように反対側の緑道まで土間がのび、もう一方は和室の客間に続く。二階は基本的な生活空間をおさめるが、やはり三分割された短冊型となり、平行移動するようなアクティヴィティだ。小さいからこそ、街並みという環境が住宅と深い応答関係をもっている。

五十嵐 太郎

岡崎市図書館交流プラザ Libra(りぶら)

岡崎市図書館交流プラザ Libra(りぶら)

photo by エスエス名古屋

概要

所在地:岡崎市康生通西
建築主:岡崎市
設計者:佐藤総合計画+千里建築設計事務所
施工者:鴻池・小原・酒部特定建設工事共同企業体

主要用途:図書館・生涯学習施設 
構造:RC造 一部S・SRC造 
階数:地上3階 
敷地面積:18,999.33 
建築面積:13,325.84 
延床面積:23,980.14

講評

 徳川家康ゆかりの岡崎城外堀が在った場所に建つ。南は岡崎城を擁する岡崎公園、西は乙川へと流れ込む伊賀川、東と北側には古くから栄える繁華街 康生通りや、高層マンションなどの住宅街が広がる。「岡崎市図書館交流プラザLibra(りぶら)」は、図書館をコアとし市民活動支援・文化創造・交流など膨大なボリュームの諸機能を、矩形低層に納めた生涯学習施設である。「土地の記憶」をキーワードに、東西をゆったり流れる外堀の記憶「お堀通り」と、家康の菩提寺、大樹寺と岡崎城を直線的に結ぶ景観軸「お城通り」という二つのメイン通路で、規模の大きい矩形を互いの機能と気配が繋がり合う形で切り分けている。外壁の天然スレートの黒とアルミパネルの白のコントラストが、「城」と「蔵」をイメージさせ、城址公園施設の一部であるかのような印象を受ける。周辺道路からは充分な引きを確保し、緑化した周回散策路として整備、なかでも西側の伊賀川河畔の親水修景は秀逸で、中心市街地活性化とともに魅力的な景観を作り出している。

小田 義彦

醸庵

醸庵

photo by 秀英 Hideki-Oda

概要

所在地:岡崎市中町
建築主:丸石醸造株式会社
設計者:株式会社 大山建築設計事務所
施工者:小原建設 株式会社

主要用途:事務所兼用酒直売所 
構造:木造在来乾式工法 
階数:地上2階 
敷地面積:2,594.11 
建築面積:102.22 
延床面積:145.12

講評

 岡崎市に在し江戸時代から300年以上続く造り酒屋丸石醸造の販売店舗および事務棟である。三河産の檜を通し柱とした切妻造り・漆喰壁、内装は大壁仕上げ。

 岡崎市は、徳川家康公が産湯を浸かった岡崎城を中心とした城下町であり、東海道五十三次の宿場町でもあった。江戸時代には、武家屋敷、商家、民家および旅籠が、城と街道を中心として整然と並んでいたものと推察される。しかし、市街地を東西に貫き街を南北に分断する国道一号線と、旧市街地の多くを焼失させた第二次世界大戦による戦災はこの街を大きく変えた。岡崎城下の旧東海道であり、防御のために複雑に曲がりくねった「二十七曲(まがり)」は、その痕跡を残すのみとなっている。

 この建物を見て感じとったのは、岡崎の長い歴史と文化を継承し背負おうとするプライドであった。必ずしもこの地特有の建築様式とは言えない。しかし、素材、意匠の全てをあえて岡崎産および三河産ないし岡崎市民の手によるものとすることで、岡崎という歴史的な地に敢然と根ざし、溶け込み、新たな礎石となって街と歴史に貢献しようとする強い意地を感じた。

 惜しむらくは、旧東海道である伝馬通りから一本奥まった場所にある点だろう。より多くの人の目に触れかつ立ち寄ってもらいたい建物である。

都築 敏

florist_gallery N

florist_gallery N

photo by ナカサ&パートナーズ 矢野紀行

概要

所在地:名古屋市千種区鏡池通
建築主:二宮 拓也
設計者:suppose design office
施工者:株式会社 岡本建設

主要用途:店舗併用住宅 
構造:RC造 
階数:地上3階 
敷地面積:84.09 
建築面積:44.41 
延床面積:103.60

講評

 名古屋市東部、北側は小学校、南側は都市高速の走る大通りに面した敷地に、フラワーショップとギャラリーと住宅という3つの空間が融け合っている建築である。純白の外観を特徴付けている屏風のように折り曲げた壁は、構造強度を確保するとともに、ともすれば単なる箱になってしまいそうな建築にアクセントと美しさを与えている。

 ショップとギャラリー空間となる1階は階高を高く確保し、南北面の全てを開口とすることで、まちに開かれた場を形成しており、上階は通りには閉じているものの、小学校に対しては全面に開口部を設け、桜を始めとする小学校のグラウンドの植栽を借景として活用するとともに、子どもたちと挨拶を交わせるような親近感を出している。

 登下校の子どもたちがちょっと立ち寄ってしまうほど周囲に対して開かれたこの建物は、地域の魅力を高め、まちと建築と人をつなぐ、多くの人に大変親しまれる作品であると考える。

勢力 常史

みなと医療生活協同組合 宝神生協診療所

みなと医療生活協同組合宝神生協診療所

photo by エスエス名古屋

概要

所在地:名古屋市港区宝神三丁目
建築主:みなと医療生活協同組合
設計者:株式会社竹中工務店名古屋支店 設計部
施工者:株式会社竹中工務店名古屋支店

主要用途:診療所・デイケア 
構造:鉄骨造 
階数:地上1階 
敷地面積:1,030.00 
建築面積:424.88
延床面積:391.56

講評

 この建物、施設が完成した場所は、様々な用途の建物が混在し、名古屋市内とはいえ、これからますます街並みが変化、変貌していくエリアであると思われる。

 その様な状況のなか、まず第一に気が惹かれるのは、この施設に近寄るとき、それが徒歩であれ、自動車であれ、見える角度による変化で外部と内部を同時に感じられ、スケールの程よさに心安らぐことである。次にこの建物の特徴である三つのゾーンで構成し、前後にずらす手法で奥行と開放感を演出している。また壁と屋根とが一体に構成されているが、その厚さを極めて薄く納めることで、軽快感を感じさせている。

 この施設全体のデザイン性の高さが評価され、これからこの地域・街並みの目指すべき指標を示し、地域環境の形成、創造に寄与し得るものと期待される。

岡田 利一

第17回愛知まちなみ建築賞概要と選考経過

選考基準

  1. 地域における新しい建築文化の創造に寄与しているもの。
  2. 地域のまちなみに調和し、魅力的な景観の形成に寄与しているもの。
  3. 魅力と潤いのある空間の創造に寄与しているもの。
  4. その他、本賞の趣旨に適合し、地域に貢献しているもの。

選考経過

  • 推薦・応募対象:愛知県内の平成16年4月1日から平成21年8月21日までに建築又は改修された建築物やまちなみ
  • 推薦・応募期間:平成21年7月1日から8月21日
  • 推薦・応募件数:118通113作品
  • 第1回選考委員会:平成21年9月8日
  • 第2回選考委員会:平成21年11月25日
  • 表彰式:平成22年2月10日(水)

選考委員

  • ◎有賀 隆 (早稲田大学理工学術院教授)
  • 五十嵐 太郎 (東北大学教授)
  • 市川 三千男 ((社)愛知建築士会会長)
  • 伊藤 恭行 (名古屋市立大学准教授)
  • 岡田 憲久 (名古屋造形大学教授)
  • 岡田 利一 ((社)愛知県建築士事務所協会会長)
  • 小田 義彦 ((社)日本建築家協会東海支部愛知地域会会長)
  • 勢力 常史 (愛知県建設部建築担当局長)
  • 都築 敏 (特定非営利活動法人ビジュアルコンテンツプロダクトネットワーク理事長)
  • 伏見 清香 (広島国際学院大学教授)
  • 山内 彩子 ((有)東風意匠計画代表)

(敬称略 五十音順 ◎選考委員長)

主催・後援・協賛

主催
 愛知県

後援
 愛知県市長会、愛知県町村会、愛知県商工会議所連合会、愛知県都市計画協会、中部経済同友会

協賛
 (社)愛知建築士会、(社)愛知県建築士事務所協会、(社)日本建築家協会東海支部愛知地域会、(社)愛知県建設業協会、愛知県建築技術研究会、(財)愛知県建築住宅センター、(財)東海建築文化センター、中部デザイン協会

第17回愛知まちなみ建築賞

問合せ

愛知県 建設部 公園緑地課
企画・景観グループ
電話:052-954-6526
内線:2674、2675
E-mail: koen@pref.aichi.lg.jp