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第19回「愛知まちなみ建築賞」の受賞作品について

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総評

有賀隆委員長

 東日本大地震が引き起こした巨大災害と原子力発電所事故による進行中の災害は東北地方の被災地のみならず、私たち日本人に自然と都市、社会と建築について、これまでの関わり方とこれからの在り方を再考させることとなった。今年の「愛知まちなみ建築賞」はこうした大震災からの復旧・復興が続く中で、第19回目となる2011年度の作品募集と賞の選考をスタートさせたわけである。県内各地域から総数116点の作品応募をいただき、このうち約4割強を名古屋市内から、また尾張、西三河、東三河の各地域からは昨年の約3〜7割にあたる応募作品をいただいた。さて分野別に見ると、住宅52点、集合住宅11点、学校等の教育施設9点、店舗7点、事務所・工場4点、医療・福祉施設14点、複合施設3点、その他(民間)4点、公共施設12点である。第1次選考ではこの中から22点の候補作品に絞ったが、その後の詳細資料ならびに現地確認の過程で、このうち1作品が愛知県「人にやさしい街づくりの推進に関する条例」に適合していない建築物であることが判明したため選考対象から除外した。11月9日の第2次選考では作品毎の詳細資料・図面ならびに現地撮影した映像資料を用いて選考委員全員による評議を行なった。対象21作品はいずれも優れたもので、委員による活発な議論が交わされ全体合議によって受賞作を最終決定した。

 「しっぽうちょう調剤薬局」は、畑に囲まれた敷地に建ち、小さいけれども風景のインフラストラクチャーとなる建築の可能性を示している。都市近郊田園地域の景観づくりに対する建築のあり方を示した意欲作である。「中舛竹田荘」は、町並み保存を建築物の修復・修景の範囲にとどめず、現代に生き続ける歴史的、文化的な価値を賦活する場所として、古民家再生と高齢者向け優良賃貸住宅の新築とを一体化させた優れたまちづくりプロジェクトである。「総合病院 南生協病院」は、313床・26診療科を有する総合病院である。健康な地域づくりの拠点という住民会議で提案されたコンセプトを反映させた敷地内外を結ぶ動線計画や街並み形成、エントランスホール内の多用途複合など先導的な試みが高く評価される。「豊田市自然観察の森 ネイチャーセンター」は、都市近郊の里山をフィールドにした環境学習、自然観察の中核施設であり、観察路への出発点となる「道の建築」を2つのチューブで形づくっている。谷戸と呼応させた配棟は地形に囲まれた広場空間をつくり出し、かつて人が手入れして守ってきた身近な里山との関わりを視覚的にも表現している。住宅は個々の設計条件が大きく影響するのだが、「Sunlight of Calm」は周辺に戸建て住宅や民間マンション、団地など様々なアーキタイプが混在する市街地にあって、素材の最小単位(コンクリートブロック)から街並みのボリュームへと連続するスケール要素を集合化させることにより、新たな都市住宅景観の可能性を拓いた秀作である。「名古屋市科学館 理工館・天文館」「飛島村立小中一貫教育校 飛島学園」は、周辺環境こそ異なるが、いずれも子供たちを育む科学文化、学習教育の新しい拠点とともに都市の風景をつくる創造的なプロジェクトである。地球環境や宇宙天体をテーマとした科学や、ロケット製作を支える先進工業地帯という地域性をテーマとして、それらを建築という媒介(メディア)空間を通し可視化し、学びの場を都市の表情へと導いた秀作である。

 受賞作品の詳しい評価はそれぞれの選評に譲るが、建築を通して都市の文化的景観や地域の自然風景のあり方を提示する、まちなみのインフラストラクチャーともいえる意欲作が多かった様に思う。今回、大賞については選考委員全員の合意に至らず受賞作はなかった。新しい建築文化の創造と地域のまちなみを先導する意欲的な挑戦をさらに期待したい。

受賞作品 講評

● Sunlight of Calm  (さんらいと おぶ かーむ)

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    (写真提供:D.I.G Architects)
所在地:名古屋市名東区代万町1丁目
用途 :長屋
建築主:石川真也
設計者:D.I.G Architects 吉村昭範+吉村真基
施工者:株式会社アーキッシュギャラリー
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【講評】北川啓介委員

 フラットとメゾネット、三層メゾネットによる6戸の異なる空間構成が組み合わさって一体となった第一種住居地域に建つ長屋型の賃貸集合住宅である。東西の住宅が隣地境界線に近接し採光方向に制約が生じる中、窓や中庭や階段からの採光、外装の一面をなす特注の白いコンクリートブロックからの反射光など、敷地条件を良質に解釈するからこその、素材感あふれる光と陰影に富んだ住空間を実現している。それ故、この現代の長屋では、一時的な風雨の状況や雲のかげり、ゆっくりした一日の太陽の動き、そして四季折々の空気感まで、長きも短きも豊かな時間がうつろう。また、外断熱としても機能するひとつひとつのコンクリートブロックは、その集まりが一枚の壁、ひとつの住戸、一体となった建築、そして街へ、素材からまちなみへいたる周辺環境の大小どの事象にも融和し、大きくも小さくも豊かな空間がうつろう。彫塑的な建築だからこその、逆に、どこか地元の自然素材を多用した風土的な伝統建築の佇まいやそこでの住まいにも通ずる、長短の時間と大小の空間を極度にまで活かした、森の中にいるかのようにすら感じさせてくれる時間と空間が、まちなみへも大きく寄与している点が高く評価された。

● しっぽうちょう調剤薬局
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    (写真 :アクエリアス 山下茂春 (2010))
所在地:あま市七宝町桂深田
用途 :調剤薬局
建築主:有限会社ミッテル
設計者:五藤久佳デザインオフィス有限会社
施工者:株式会社田中建設
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【講評】伊藤恭行委員

 現代的でありながら懐かしさを感じさせる不思議なたたずまいを持った建築である。現代的なたたずまいは、細長い敷地の中に作られた明快なプラン、白を基調にまとめられたシンプルな内部空間によって獲得されている。懐かしさの感覚は、切妻型の外観と茶色のアスファルトシング葺の外装によって呼び起されるように思われる。しかし、この懐かしさは直喩的に伝統的な日本建築をトレースすることによって得られているわけではないところが面白い。日本的伝統よりもむしろ国籍不明な納屋のようなものに感じられる。この感覚は、軒のディテールを消した純粋な形態としての切妻、柔らかなむくりをもった屋根の稜線、屋根と壁を同一素材で仕上げていることなどによって呼び起されるものだろう。特に、シングル葺の外装が極めて重要な役割を果たしている。例えば、この建築の屋根と壁が銀色のガルバリウム鋼板で葺かれていたら、極めて強度の高い現代建築の記号性を帯びることになったに違いない。ここで選択された茶色のシングル葺の外装が、そのような記号性を逃れて、現代的でありながら懐かしさを感じさせる建築の姿を獲得することに貢献しており、この小さな建築は郊外の風景の中に柔らかな点景として定着している。

● 総合病院 南生協病院
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    (写真 :エスエス名古屋 (2010))
所在地:名古屋市緑区大高町
用途 :病院、助産所、飲食店、物品販売業を営む店舗
建築主:南医療生活協同組合
設計者:株式会社日建設計
施工者:株式会社竹中工務店 名古屋支店
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【講評】生田京子委員

 南生協病院は南大高駅前に立地し、駅と住宅地をつなぐ場所に位置する。高層棟には、救急・外来・病棟などの病院としての主機能をしっかりと確保されつつ、低層棟にはベーカリー・料理教室・フィットネスセンター・旅行カウンター・保育所・レストラン・・・と、健康な人も訪れる、街としての機能が表情豊かに組み込まれている。言うまでもなく、それらの「街としての機能」を地域の人が平常に利用し、かつ入院・通院している人達に「元気になったら、旅行にチャレンジしようかな・・・料理教室に来てみようかな・・・。」などという動機づけのきっかけを与えることであろう。昨今は、地方病院の閉鎖・再編が続く時代である。その中で、地域の人が健康な時から関わりを持ち、その病院の運営に自然と共感をもって維持に携わって行く仕組みづくりが重要な時代と言える。この病院は、その意味から積極的な事例として全国的にも高く評価されよう。設計者は上のようなプログラムを、開放的かつシンプルな空間構成で実現している。駅前からは大庇で迎え、中に入ると、待合と喫茶店の椅子が隔てなく連続するなど、様々な店と病院機能が自然に溶け込んでいる。

● 飛島村立小中一貫教育校 飛島学園
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    (写真  :林広明 [ロココプロデュース] (2010))
所在地:海部郡飛島村大字松之郷3丁目
用途 :小学校・中学校
建築主:飛島村
設計者:株式会社石本建築事務所 名古屋支所
施工者:村本建設・渡辺工務店・飛島木材特定建設工事共同企業体
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【講評】佐藤東亜男委員

 飛島村は、昔ながらの田園風景が広がる農村地帯と名古屋港に面した先進的な臨海工業地帯とが共存している。この飛島学園は、既存の小学校と中学校を統合し、一貫した義務教育を行う事を目的に建設された村で唯一の学校である。当敷地は村のほぼ中央に位置し、南のブロックには飛島村役場・公民館・村民体育館、東のブロックには図書館・プール・児童館などの複合施設がある。それらの中央に学園の広いグラウンドを配し、囲む様に校舎がある。校舎はグラウンドとの間にあるプロムナードに沿って東西に広がり、変化をもたした外観は、子どもたちが9年間を過ごすまちなみを形成している。建物内はメディアセンターを中心とした構成で新しい取組みがなされている。また、北側の道路からの景観も工夫され、田園風景のなかに様々な形の教室のならびが子どもたちの躍動を感じさせる。全体をアースカラーで仕上げた外壁も、南、東のブロックにある施設と調和し、村の中核をなす地区を魅力あるものにしている。

● 豊田市自然観察の森 ネイチャーセンター
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    (写真 :上田宏/上田宏建築写真事務所 (2010))
所在地:豊田市東山町4丁目
用途 :環境学習施設
建築主:豊田市
設計者:株式会社遠藤克彦建築研究所
施工者:熊谷・斎藤建設共同企業体
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【講評】谷村茂委員

 豊田市外環状道路沿いにぽっかりと開けたエントランス部は道路沿いの森が深い為、うっかりしていると通り過ぎてしまう恐れがある。しかし、駐車場から奥を見上げると、少し色づいてきた木立の中に茶色の外壁と特徴ある斜めの開口部を持つネイチャーセンターが、地面から浮遊するように目に飛び込んできた。平面的にはX形をした2つの柔らかな曲線を持つチューブが折り重なる特異な形をした建物だが、迎え入れるエントランスゾーンと森の自然散策路へ誘導するデッキゾーンとの融合は見事な解法だと納得させられた。1階部分の壁はガラスで透明感を持たせて森を透かし、2階では斜めの形状のガラスから垣間見える森を見ながら中央部の出口からデッキへと導かれる。散策路を巡ると、里山とはいえ、高い木立が林立する深い森のゾーン、湿地帯を巡るゾーンがあったりと様々な変化があり、センター棟へ戻ってくるとほっとするほどの自然を満喫できる。設計者とこの森で活動する市民や自然の研究者が10回以上の検討会を重ねてきた成果は森全体の施設やサイン計画の随所に現れ、訪問者をやさしい色と形で和ませてくれる。何度も訪れたくなる施設である。

● 中舛竹田荘 (なかますたけだそう)
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    (写真  :OPUSスタイル株式会社  (2010))
所在地:名古屋市緑区有松
用途 :老人デイサービスセンター、高齢者優良賃貸住宅
建築主:竹田敏彦
設計者:株式会社加藤設計
施工者:OPUSスタイル株式会社
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【講評】都築敏委員

 中舛竹田荘は、旧東海道沿いの有松町並み保存地区に建つ、有松絞りの開祖竹田庄九郎ゆかりの歴史的建造物である。この建物の老朽化に伴い、取り壊して共同住宅を建築する計画が立てられた。取壊す直前の平成19年7月、この計画に待ったをかけたのが、有松まちづくりの会と名古屋市であった。これを受けて、有松の旧街道の町並みに調和する外観を求め基本計画と設計は大幅に変更され、高齢者用賃貸住宅とデイサービスのための建物として、全てが完成したのが平成22年10月であった。この間、平成22年3月、中舛竹田荘の再生保存を目的として「有松まちなみ保存ファンド募金」が設定され、集められた浄財660万円が建築費の一部に充てられている。私ごとであるが、この建物の前に立ったとき、西三河部にある農家の陽あたりのいい縁側にすわり、木綿布に付けられた印を糸で黙々と括る、今は亡き私の祖母の姿をふと思い出した。400年の歴史を有する有松絞りの一工程を、彼女は担っていたのである。人々の営為やその歴史は、建物や町並みに残るのかもしれない。歴史的建造物や町並みの保存は、我々の営為や歴史の保存でもあるのだろう。中舛竹田荘とその周辺地域は、これからも守っていきたい、我々の歴史を残す建物と町並みである。

● 名古屋市科学館 理工館・天文館
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    (写真  :エスエス名古屋 (2011))
所在地:名古屋市中区栄2丁目
用途 :科学館
建築主:名古屋市
設計者:株式会社日建設計、名古屋市住宅都市局営繕部住宅・教育施設課   
施工者:竹中・TSUCHIYA・ヒメノ特別共同企業体
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【講評】伏見清香委員

 世界最大級のプラネタリウムと展示装置をもつ科学館として、学習施設であると同時にエンターテイメント性を兼ね備えた施設を目標に改築が行われた。懐かしいプラネタリウムの記憶を形として残した球体は、街のランドマークになっている。その表面上部は太陽や雲を、下部は周辺のまちなみや樹木の影まで柔らかに反映させ、時刻や天候の違いによって表情を変えている。また、球体の下は通路として長者町通りと白川公園をつなぎ、公園と周辺地域の連続性を新たに確保している。さらに、通路の両側をガラスの壁面とすることで、通路を広く感じさせ、光や風が通り抜ける開放的な雰囲気をつくりだしている。加えて、そこにエントランスやミュージアムショップを設けることによって、人の流れだけでなくピロティの賑わいを演出している。ガラスの壁面は、空の青さや雲の動きを反映させながら、館内の活気や人の動きも屋外に伝えている。また、壁面緑化や風力発電は環境への配慮を視覚化し、潤いとアクセントを与えている。これらにより、 地域における新しい建築文化の創造と、魅力と潤いのある空間の創造に寄与しているとして評価できる作品である。

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事務局:愛知県建設部公園緑地課
電話 :052-954-6612(ダイヤルイン)