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第21回愛知まちなみ建築賞の総評及び作品講評

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総評

伊藤恭行委員長

 

文化や芸術作品を顕彰する制度は長く継続していくことに意義がある。20年に渡って選ばれてきた受賞作品群は、それらが建てられた時代の記録として重要であると共に、そこで示された評価の視点が蓄積されていくことも同様に大切なのである。作品と批評は時代を映す合わせ鏡でもあるからだ。この賞は今回で21回目であり10年後の30回を目指して継続していくことで、賞として価値が益々高まっていくのではないかと期待される。

県内各地から91作品の応募をいただいた。この中から愛知県の「人にやさしい街づくりの推進に関する条例」に適合しないもの3点を除外して、88作品を審査の対象とすることとした。例年、数点の作品がこの条例に適合しないとして選考から外さざるを得ないことが続いている。応募者には十分な注意をお願いしたい。応募作品数については、平成22年が149作品、23年が120作品、24年が106作品となっており、やや減少傾向にある。地域ごとでは、名古屋市34点、尾張地域28点、西三河地域14点、東三河地域12点となっている。1次選考では、この中から20点を2次選考対象作品とした。11月5日に行われた2次選考では、作品ごとの詳細資料・図面ならびに現地撮影した映像資料を用いて選考委員による評議を行い、7作品を選定した。

この賞が一般的な建築賞と異なるのは、「まちなみ」という言葉を冠していることだ。それ故、評価の視点はより限定的なものになる。もちろん建築賞であるから、コンセプトの明晰さ、新しい技術への挑戦、美的完成度などは評価の対象となるのだが、それ以上に周辺との関係のとり方が重視されることになる。ここでは、他の建築賞で高い評価を得た作品であっても受賞作とならないことが度々ある。逆に、一般的な建築賞では評価されないような地道な努力にスポットを当てることは、この賞の大きな役割ともなっている。例えば今回受賞が決まった「豊川稲荷表参道商店街景観整備事業」は、まさに「まちなみ建築賞」に相応しい試みであるように思われる。

街にとって、人の姿があることはとても重要だ。大賞となった「尾張一宮駅前ビル」は、大きなスケールでありながら人のいる風景を主役に据えた建築となっている。シビックテラスと名付けられた地上3階にある半屋外空間が素晴らしい。このテラスは市民が集う場であり、街を眺める場であり、同時に街から眺められる場となっている。どの視点に立っても人と建築が共存しており、新しい公共空間の姿として高く評価したい。

今後も、単なるオブジェとしての建築の美しさを追求するだけではなく、人のいる風景としての街と建築を創り出すような挑戦を期待したい。

受賞作品 講評

1.【大賞】  尾張一宮駅前ビル

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    (写真提供:山下設計)
所在地:一宮市栄3丁目
用途 :図書館・子育て支援・集会場・開放テラス他
建築主:一宮市
設計者:株式会社山下設計
施工者:名工・中野・昭和土建特定建設工事共同企業体
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【講評】森真弓委員

尾張一宮駅前ビルは、線路が高架となっているJR尾張一宮駅に隣接して建つ、公共複合施設である。図書館や子育て支援センターなど、公共の市民サービス機能を持ち合わせている。外装に一宮の伝統的産業である織物をイメージしたパターンを施し、3~5階部分中央が大きく開口しているのが特徴である。

この開放された部分に配置された立体広場「シビックテラス」は、隣接する駅のプラットホームと同じレベルに設定され、駅側からの眺望も確保しており、東西の街の風景を繋いでいる。「シビックテラス」は市のサービスへアクセスするための空間でありつつ、イベントスペースとしても利用され、市民の日常的交流の場として、人々の自然な交流と活気を促している。ゆったりとしたテラスから生まれた賑わいが、まちなみの中に溢れて広がっていくようにも見える。

人の動きが建物と一体となって見えてくる、このような事例は他にはあまりなく、街にある建築の姿として、積極的に“活きた風景”を創出している点が高く評価された。

2. 工場から家
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    (写真 :滝田フォトアトリエ 滝田良彦(2012))
所在地:名古屋市千種区今池3丁目
用途 :専用住宅
建築主:中島匡貴
設計者:有限会社裕建築計画
施工者:株式会社ヨシコウ
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【講評】松井宏夫委員

「工場(こうば)から家」は、2代続いたが廃業により使われなくなった鉄工所の建物を、既存のフレームと外壁を残しながら住宅にリノベーション(大規模な改修工事+建物用途の変更)したものである。この建物は、千種区今池から南に行ったところにあり、長年住んでいる住民が多く下町の風情が残っている地域にある。

住民にとって馴染みのある、街の風景の一部にもなっている建物を残そうとする建築主の姿勢と、既存の構造材を利用しながら大胆に住宅に転用した設計者の手腕が評価された。特に、敷地いっぱいに建てられた工場の南の一部を減築し、住宅の庭とアプローチに利用した外部空間の創出は、街にゆとりをもたらし、近隣の人々とのコミュニケーションが増えることが期待される。

スクラップアンドビルドの手法とは異なり、既存ストックを活用したリノベーションやコンバージョン(用途変更)による建築は、人々の記憶を継承しながらまちなみ景観に緩やかな変化を与えていくだろう。今後のモデルとしても優れた作品である。

3. 壺中の天居
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    (写真 :mitsuo(2013))
所在地:岩倉市西市町
用途 :庫裏(住宅)
建築主:弘照山地蔵寺
設計者:鈴木光雄建築工房
施工者:株式会社土本建設
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【講評】武藤隆委員

この建物は、まだ田園風景が残る住宅地に建つ寺院の庫裏(住宅)である。入母屋の屋根を載せた本堂を含む境内を取り囲む塀からは、やや外れて道路に面した角地に建つことから、寺院との一体感とまちなみといった二つの異なった配慮が求められる条件に対して、異なったボリューム感や素材を駆使することで、その双方に対しての空間構成がなされており、審査では高い評価を集めた。

本堂とは比較的近くに建ち並ぶメインの住宅部分は、丁寧に作られた二層分のコンクリート打ち放しのボックスだが、防犯上の理由が功を奏し周辺に対して開口部を設けないことで、生活感を外部ににじみ出させることなく、寺院との端正なたたずまいの調和に成功している。また、本堂と住宅部分のボックスとの二つの大きなボリュームを結ぶ渡り廊下は、低く連なる塀との中間的なスケールの板張りとし、水平線を強調する長さを与えることで、異なったスケール感を中和し、道路に面していながらも周辺に圧迫感を与えることをなくすとともに、前面に広がる田園と一体となる景観の創出にも寄与している。

4. The Garden 覚王山
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    (写真提供:D.I.G Architects)
所在地:名古屋市千種区山添町
用途 :専用住宅
建築主:石川真也
設計者:D.I.G Architects
施工者:株式会社アーキッシュギャラリー
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【講評】北川啓介委員

戸建住宅が集まる名古屋市千種区の住宅街の角地に建つ三棟の住宅である。その敷地界隈には、形態も大きさも構造も材料も時代も異なる戸建住宅が道路に沿って立ち並んでいる。こうした環境の中でほぼ同じ規模の住宅三棟を建てる機会を得た設計者は、全体に行き渡ったシャープな形態、人体寸法にフィットする各所の幅や高さ、外壁や開口部の形式など、まちなみに強く関わるデザイン要素を可能な限り最低限とする一方で、その統一性の中に絶妙な差異を設けている。

一般的に、戸建住宅が並ぶ街区では、各棟の個性が表出していくため、統一されたまちなみを形成することはなかなか容易ではない。それに対して、大規模な開発でもない戸建住宅の設計において、一棟のデザインを突出させるのでもなく、逆に、秩序の中に、人々の視線を一箇所にまとめない、まちなみのゆらぎをも生みだしている。古くからの街道などに残るまちなみのDNAをも形象している点も高く評価した。

5. 設楽町立田峯小学校
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    (写真提供:田峯小学校)
所在地:北設楽郡設楽町田峯
用途 :小学校
建築主:設楽町
設計者:株式会社黒川建築事務所
施工者:株式会社太平建設
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【講評】鈴木利明委員

東三河の平野部・街はずれに暮らし、「奥三河」の野山巡りを至上の楽しみに育った私にとって、何とも懐かしくも頼もしい山里の地域コミュニティーの中心「小学校のある光景」の再生・再現であった。

「まちなみ」は狭義の建築物の織り成す物的景観を超えて、山並み等の自然地形や地域社会の表徴的佇いとの調和・新機軸創出と捉えるなら、まさにこの賞に推挙されるべき「いい仕事」だと思う。今や全国的にも貴重となった平屋建て木造校舎の有りようを、末永く地域社会の次代に継承する好建築物として、改修後の姿で国の登録有形文化財に選ばれたという続報も入ってきた。

記憶と景観を墨守しつつ現代技術に則り耐震・耐久化する保存改修の具体的施術にも評価したい。「変わらぬ姿」で残すための耐震要素の内在化、一見秘かな屋根の軽量化・基礎の強化、既設資材の再利用や思い出空間の再編など、随所の心遣いが嬉しく響く。

この改修なった小学校が、愛すべきローカル社会の物心の求心・発信拠点として、末永く生き続けることを願ってやまない。

6. 豊川稲荷表参道商店街景観整備事業
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    (写真 :車田保(2011)、松島研究室(2013))
所在地:豊川市門前町
用途 :店舗兼住宅、店舗
建築主:豊川稲荷表参道発展会
設計者:豊橋技術科学大学 建築・都市システム学系 松島史朗研究室
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【講評】村山顕人委員

豊川稲荷表参道にはかつて幅員を6mから12mに拡幅する都市計画道路計画が存在していた。様々な検討の結果、2007年にはこの計画が廃止され既存のまちなみが継承されることになった。豊橋技術科学大学松島研究室は、2006年・2007年に社会実験として2店舗の改修を提案・実施・評価した上で、表参道として望ましいデザイン方針を景観ガイドラインとして豊川市に提言し、それを受けた市は2008年にファサード改修の補助を行う景観整備事業を開始した。これまでに11店舗の改修が完了している。

本事業で評価されるのは、建築主・大学研究室・景観協議会・店主ら・市による体制の下でガイドラインに基づくデザイン審査が行われていること、そのデザイン審査は積み重ねてきた歴史を踏まえた現代の文脈の中で行われていること、大学研究室が事前相談・事前調査・提案書作成等の重要な部分を担っていること、継続的な取り組みによって複数の建築物で構成されるまちなみの質が向上していることである。

関係主体によって丁寧な提案・審査が行われることにより、厳しい規制により形成されるまちなみとは違ういきいきとしたまちなみが創出されているように思う。

7. 八事山興正寺参拝者駐車場 / 八事交番
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    (写真 :有限会社カ・ドーロ(2011))
所在地:名古屋市昭和区八事本町
用途 :立体駐車場、交番
建築主:八事山興正寺
設計者:株式会社三菱地所設計一級建築士事務所   
施工者:株式会社大林組名古屋支店
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【講評】生田京子委員

本計画は、駐車場・交番の建物のすぐれたデザインもさることながら、同時に整備された、興正寺参道および公園の一体計画が評価に値するだろう。参道周辺を、明るく地域に開かれた統一感ある公共空間とするために、寺に隣接する児童公園や交番を巻き込み、数年にわたり協議を重ね、あわせてビオトープ、駐車場などを一体のものとして空間を整備した。それにより、多くの地域の子ども達が安心して訪れ、児童公園で遊んだり、カブトムシやザリガニを採ったり、というような空間が地域に提供された。

駐車場・交番の建物は、新築ながらも、通りの歴史の重みを踏まえたデザインとなっており、存在感がありつつもうまくそれを消している。伽藍の瓦屋根と類似させて、市松模様のブラックコンクリートを使用しているが、模様のスケールは歩行者から見たスケールと車から見たスケール両方が考慮されている。また、鉄骨、木、コンクリートという素材が、素材の色を活かした形で使われており、その使い分けも巧みである。

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事務局:愛知県建設部公園緑地課
電話 :052-954-6612(ダイヤルイン)