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第22回愛知まちなみ建築賞の受賞作品について

第22回愛知まちなみ建築賞 受賞作品(7作品)

受賞作品

総評

伊藤恭行委員長

 愛知まちなみ建築賞への応募作品が減っている。応募作品数については平成23年度が116作品、24年度が98作品、25年度が91作品で、今年度は74作品となっており、大きく数を減らしている。最盛期には159作品の応募があったことを考えると残念な傾向ではある。とは言え、応募数と作品のクオリティには必ずしも相関があるわけではない。事務局から応募数の報告をうけた当初はやや心配もしていたが、内容的には一定以上のクオリティは保たれており十分に審査に耐えうる作品が多かったように思う。応募作品が減少している原因の一つに、近年、東海地区において様々な建築賞が創設されてきたことがあげられる。愛知建築士会の「建築コンクール」やJIAの「東海住宅建築賞」など比較的規模の小さな建築を対象とした賞が相次いで創設されたため、応募者側が作品の性格によって応募する賞を選択するようになってきたのではなかろうか。このような傾向は健全なことであって、それぞれの賞のもつ特徴を明確にし、顕彰制度としての役割を果たしていくことが重要であると考える。その意味で「まちなみ」という視点から建築を評価する本賞の存在は今後も重要であるし、主催者である愛知県や審査委員は高い見識を持って運営・審査にあたるべきだという思いを強くした。

 県内各地から74作品の応募をいただいた。この中から愛知県の「人にやさしい街づくりの推進に関する条例」に適合しないもの11点を除外して、63作品を審査の対象とすることとした。例年、数点の作品がこの条例に適合しないとして選考から外さざるを得ないことが続いている。次年度以降は条例に該当する用途・規模の作品は適合証を取得済みであることが応募条件となるので、このようなケースは少なくなるものと思うが、竣工引き渡し後に想定とは異なる用途での使用がなされる場合もありうる。このような点も含めて、次年度以降の応募者には十分な注意をお願いしたい。地域ごとでは、名古屋市が31点、尾張地域12点、西三河地域13点、東三河地域7点となっている。1次選考では、この中から17点を2次選考対象作品とした。10月27日に行われた2次選考では、作品ごとの詳細資料・図面ならびに現地撮影した映像資料を用いて選考委員による討議を行い、7作品を選定した。

 受賞した作品については各委員の選評をお読みいただきたい。個人的には、「名古屋東京海上日動ビルディング」が強く印象に残っている。大規模な建築は周辺に与える影響が大きい。本計画の足元まわりのランドスケープは快適な人の居場所を創り出しており、都市におけるパブリックスペースを提供することに大きく貢献している。全く利用されない公開空地を持つオフィスビルなどが少なくない中で、この試みは高く評価されてよい。無いものねだりをすれば、建築本体の低層部との空間的・機能的関連があれば更に充実した都市空間となっていたであろう。とは言うものの、このような真摯な取り組みの事例が示されることで、都心部に良質なパブリックスペースが増えていくことを期待したい。

受賞作品 講評

■愛知県歯科医師会館

愛知県歯科医師会館

【スタジオ・ムライ(2013)】
 
 主要用途  事務所・博物館
 所在地   名古屋市中区丸の内
 建築主   一般社団法人愛知県歯科医師会
 設計者   株式会社山下設計中部支社
 施工者   株式会社フジタ名古屋支店
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【講評】武藤隆委員

 この建物は名古屋のメインストリートである久屋大通に面して建つ歯科医師会館である。敷地北側には江戸期の会所地でもあった歴史ある寺院、南側には小さな木造民家、東側には緑量の多い都市的スケールの久屋大通が位置し、異なったスケールや佇まいに対して景観上の配慮が求められる敷地条件である。道路面だけでなく隣地面も含めて周辺との関係を丁寧に読み解き、熟慮してつくられた溶融亜鉛メッキによる彫りの深い格子状のファサードは、大きなボリュームをヒューマンスケールに落としつつ、緑陰とも一体となることで、この界隈においてひときわ歴史や環境と共生して見える風景を生み出しており、審査では高い評価を集めた。

 狭小道路に面する南側にはホールを持つ低層棟を、久屋大通に面する東側には会議室中心の高層棟を配することで、それぞれの街区に合わせたボリュームとなる配置計画となっており、都心のL型敷地への景観的な回答ともなっている。

 この界隈は名古屋市の都市景観形成地区に指定されているが、道路に面したファサードだけに注力する建物が多い中で、隣地境界面までも含めて力を注がれていることは高く評価でき、この界隈の風景の在り方にも一石を投じる建築である。

■愛知県立芸術大学音楽学部校舎
愛知県立芸術大学音楽学部校舎

【Kouji Okamoto [Techni Staff](2014)】
 
 主要用途  学校(大学)
 所在地   長久手市岩作三ケ峯
 建築主   愛知県
 設計者   株式会社日建設計
 施工者   清水・名工・松原特定建設工事共同企業体
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【講評】森真弓委員

 愛知県立芸術大学音楽学部校舎は、2011年に制定されたキャンパスマスタープランに基づき、施設整備を行っている中での、最初の新築建築物である。約50年前に吉村順三氏によって設計された、地形と調和した配置計画が生み出す景観を維持しつつ、既存の建築群との調和を図ることが求められた。

 本建築物は、谷に向かう下り斜面を活かし、山の形に沿うように展開されている。大学正門から坂を登り切ると、管理棟越し正面に現れてくるが、ヴォリューム感が抑えられていて圧迫感を感じさせない。外装も、素材そのものの質感を活かしており、環境との調和が図られている。入り口に近づくと、森の中にせり出すような建物全体が見えてくるが、天井までガラスを使用した吹き抜けのロビーが、森への視界を確保している。棟の隙間やガラス越しに緑への視界が開けることで、自然との繋がりを意識させる。ここには、豊かな自然と対話しながら音楽に向き合うことができる、創造的環境が提供されている。

■有松に生きる家 棚橋家
有松に生きる家 棚橋家

【アーキフォト KATO 加藤敏明(2013)】
 
 主要用途  住宅
 所在地   名古屋市緑区有松
 建築主   棚橋 恭子
 設計者   モモアーキテクツ 三井富雄
 施工者   株式会社 魚津社寺工務店
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【講評】朝岡市郎委員

 この建物は、名古屋市の有松町並み保存地区に建つ国登録有形文化財で、明治初期に建てられ現在の所有者は二代目である。初代は絞りの店であり、その後に無医村であった有松に医院として所有者が移ったが現在は住宅となっている。所有者のこの建物に対する思いは評価できるものであり、今回の改修の発端は所有者が屋根の葺き替えについて名古屋市に相談したことから始まり、耐震改修を含め建物全体の改修を進めるにあたり、名市大の溝口教授、なごや歴まちびとの会、名古屋市歴史まちづくり推進室などで構成された小委員会が立ち上げられ、3年間にわたる改修が成し遂げられた。改修にあたっては建築当時の時代考証、この建物の歴史などについても充分に調査し出来る限り原形に修復し、やむなく替える部分については、原形に戻せるよう配慮がされている。

 外観は旧東海道の面影を残し、内部は初期の医院に蘇らせている。瓦も替えるのではなく充分な調査のうえ、不足する瓦については二度焼きをし、従来の瓦に同化するよう配慮がされている。又、銅製の雨樋も模型による検証、そのほか、鬼瓦、有松の風習である鍾馗様、燕の飾瓦などが細部に検証されている。玄関戸などは昭和初期にアルミサッシに取り替えられたが漆喰壁、格子と雰囲気を感じることができる。

 文化財であり、典型的な有松のスタイルである建物を多くの人々が細部にわたる検証により過去から後世に受け継がれる作品であるとともに有松の町並み保存に多いに貢献していることが高く評価された。

■志賀の光路
志賀の光路

 
 主要用途  専用住宅
 所在地   豊田市志賀町
 建築主   大塚隆盛
 設計者   佐々木 勝敏
 施工者   株式会社井上工務店
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【講評】村山顕人委員

 将来的には世帯数減少により空き家や空き地が増加する郊外住宅地をいかに秩序よく低密度化・緑化し、高い生活の質を享受できる緑豊かな次世代の郊外住宅地へと再生するかは日本の都市の共通課題である。たとえ空き地を住民が共同管理する有効な仕組みができたとしても、塀や生垣で囲まれて閉鎖的な敷地に住宅を建てる従来の設計手法では、空き地も孤立してしまい、管理が行き届かなければ雑草が繁茂するような状況となる。住宅地の中に空き地が多数発生することを前提とした住宅設計手法が求められている。

 本作品は、そのような住宅設計手法の1つの有効なモデルとして、評者を惹きつけた。この手法が一般的になれば、建物と街路の間の緑地が連続し、また、空き地が発生してもそれを緑地として適切に管理する動機が高まり、緑豊かな住宅地を形成することができる。建物や塀が張り出し、駐車場が目立つ現在の街並みも一変する。このような手法では、住宅のプライバシーの問題が気になるが、設計者は、客室・主寝室・トイレ・階段の配置とラウンジの窓の取り方により、その問題を見事にクリアしている。これからの日本の郊外住宅地の前向きな再生を促す先導的な作品である。

■都市にひらいていく家
都市にひらいていく家

【栗原 健太郎(2013)】
 
 主要用途  専用住宅
 所在地   名古屋市瑞穂区十六町
 建築主   山下秀樹
 設計者   栗原健太郎+岩月美穂 
         studio velocity一級建築士事務所
 施工者   創SHINKO株式会社シンコー建創
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【講評】水野豊秋委員

 「都市にひらいていく家」は、道路に面したガラス張りで透明な二階建てと、プライベートなスペースとなる三階建ての二棟からなり、細長い敷地いっぱいに離されて生まれた中庭に植えられた大きな木々を縫うように三本のスロープがあり、二棟の各階をつないでいる。

 住まいを道に開こうと考えたとき、如何にして緩やかなバリアーを形成するかがポイントになると思う。パブリックなスペースはガラスの箱で思いっきりオープンとし、奥のプライベートなスペースは、道路からの距離の確保と、1mほどの段差とあいまって、両隣とも共有する森の木々が外からの視線をやさしく遮り、オープンで開いていながら眺望や光も風も確保されている。また四方透明なガラスの箱とピロティを通して奥に広がる木々の風景が、通りを歩く人たちに意識され、近隣の人々とのコミュニケーションが増えることが期待される。地域に魅力と潤いと共に変化を与える空間が創出されており、まさに都市に開かれた住宅となり、地域環境の創造に寄与している。

■名古屋東京海上日動ビルディング
名古屋東京海上日動ビルディング

【株式会社 川澄・小林研二写真事務所(2013)】
 
 主要用途  オフィス、店舗、多目的室、ギャラリー
 所在地   名古屋市中区丸の内
 建築主   東京海上日動火災保険株式会社
 設計者   株式会社三菱地所設計一級建築士事務所 
 施工者   名古屋東京海上日動ビルディング
         建替工事共同企業体
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【講評】生田京子委員

 この建物は名古屋の中心市街地にある高層ビルで、オフィスと商業施設の機能をもつ。ファサードは、高層部(オフィス部分)と低層部(商業施設、オフィスエントランス)に分割してデザインされている。その切り離しにより低層部を細かく分節したブロックとすることが可能になり、多様なブロックを組み合わせて表情豊かな形態が実現している。低層部の小スケールなデザインに加えて、公開空地も緑の樹木が気持ちの良い広場として周到にデザインされている。それにより歩く人に配慮された親しみやすい空間が創出されていることが評価された。オフィスビル計画において、ともすれば巨大なオフィス空間のスケールからの連続として足元をデザインし、それが人のスケールに馴染まない無機質な歩行者空間を生む原因となりがちである。本計画はそれに対して配慮されており、まちなみと違和感なく、スマートに人のための場を提供しているように思われる。

■穂の国とよはし芸術劇場
穂の国とよはし芸術劇場


 主要用途  劇場 
 所在地   豊橋市西小田原町
 建築主   豊橋市
 設計者   香山壽夫建築研究所・大成建設
         設計共同企業体
 施工者   大成・豊田建設工事共同企業体
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【講評】廣瀬高保委員

 豊橋市は東三河地域の中心にあり38万人弱の人口を擁している。かつて穂の国とよばれ三遠南信地域の中核都市として発展してきた。葦毛湿原を始めとする豊かな自然にも恵まれており、大正14年に開通した路面電車は低床式車両(ほっとラム)を導入し、市電のある風景がまちの景観として定着している。豊橋市は中核都市に見合った公共施設の建設を進めており、最近ではこども未来館「ここにこ」(平成21年度第41回中部建築賞入選)、保健・医療・福祉複合施設「ほいっぷ」(平成22年オープン)など、新しい時代を見据えた施設作りに力をいれている。今回も豊橋のまちなみの規模に合った施設作りを目指しており、線路脇の幅の狭い敷地といった不利な立地条件を活かし、建物の特徴として取り込むことに成功している。豊橋駅から線路沿いに伸びるペデストリアンデッキで人を導く外部動線が、そのまま施設内のロビー空間(交流スクエア)を経て各部屋・ホール等をつなぐ内部動線に吸収される様が明快で解りやすい。屋上にはホールを覆うオーロラ状の外壁があり、ライトアップされた夜景は十分に新しい豊橋のシンボルと成り得る。

問合せ

愛知県 建設部 公園緑地課 景観グループ
電話:052-954-6612(ダイヤルイン)
内線:2669、2678
E-mail: koen@pref.aichi.lg.jp