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第24回愛知まちなみ建築賞の受賞作品について

第24回愛知まちなみ建築賞 受賞作品(7作品)

第24回受賞作品

総評

伊藤恭行委員長

 今年は愛知まちなみ建築賞への応募は109作品であり、昨年の49作品からほぼ倍増している。応募数と作品のクオリティとの間に強い相関があるわけではないが、建築賞の認知度としては応募数が大いに越したことはない。また、意欲的な応募作品が多く、大変喜ばしいことだと感じた。昨年の総評でも指摘したことだが、「まちなみ」という評価軸は、建築がパブリックな空間と如何に関わることができるのかを問うことに他ならない。個々の建築のクオリティを評価することが多くの建築賞の目的であるのに対し、そのような視点だけでは評価できない建築の存在意義を位置づけて行くことが本賞の役割であると考える。建築の多様性を評価し、社会に対して広く発信する努力を今後も続けて行くべきであろう。

 県内各地から109作品の応募をいただいた。この中から募集条件を満たさない10点を除外して、99作品を審査の対象とすることとした。地域ごとでは、名古屋市が26点、尾張地域46点、西三河地域25点、東三河地域2点となっている。1次選考では、この中から20点を2次選考対象作品とした。11月2日に行われた2次選考では、作品ごとの詳細資料・図面ならびに現地撮影した映像資料を用いて選考委員による討議を行い、7作品を選定した。

 今回の審査で特に印象に残ったのは、住宅における様々な試みである。通常、住宅建築を「まちなみ」として評価する場合、単体としての建築が如何に周辺の状況に対応しながら風景を創っているかを見ることになる。これは一つの重要な視点だが、今回は更に隣地との境界のあり方にまで踏み込んだ提案が見られたのは大きな収穫であった。受賞した「法連町の家」は、垣根や塀などで画される隣地との境界を取り払い、共有の領域として緩やかにつながることを目指したものである。「ソトマで育てる、ソトマでつながる」は隣接する3軒の住宅を群として設計したもので、境界は積極的に共有領域としてデザインされている。このような試みは、当然のことながら近隣との関係に依存するので一般的に展開可能な方法だとは言えないが、現代の住宅地におけるコミュニティを成立させる可能性として注目していくべきだと思う。住宅作品ではその他にも周辺道路との境界の組み立て方に取り組んだものが多く見られたのが印象に残った。

 大賞となった「MIZKAN MUSEUM」は、規模は異なるものの同様に群として設計されたもので、既存建築物を活かしながら現代的な場の創造に成功している。地域の文化や景観を次世代に引き継いで行くために建築の果たす役割は大きい。しかし、残念ながら機能的な意味での役割を終えた建物は建て替えによって更新されてしまうことが少なくない中で、単に経済的な視点からの判断ではなく、半田市における地域の景観を守り引き継いで行こうとする発注者の見識を高く評価したい。また、設計者もその意を汲んで、誠実に未来に継承されていく場を創り出しており、大賞にふさわしい作品となっている。

受賞作品 講評

◆【大賞】 MIZKAN MUSEUM
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【株式会社 エスエス 名古屋支店(2015)】
 
 主要用途  企業博物館、工場
 所在地   半田市中村町
 建築主   株式会社 Mizkan Holdings
 設計者   株式会社NTTファシリティーズ
 施工者   株式会社 竹中工務店
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【講評】久保田英之委員 

 この作品は、半田市内にある企業ミュージアムを備えた再整備プロジェクトになる。この地域での代表的な風景はと聞かれれば、MIZKAN(ミツカン)本社地区の景観を挙げる人も多いのではないか。運河沿いに建物が建ち並び、旧来から伝わってきた瓦屋根、黒壁、煙突といった建物の遺伝子が新しい素材として伝承され、未来へメッセージを伝えている。

 この再整備では、1年を通して花や実が楽しめる様に植物が植えられ、広場では市民が集いイベントも行える様になっている。市民に愛され地域に根差した企業が、新しい機能を充足しながら継承していくモデルケースとなり、地域文化の育成・発信にも繋がっている。通常、商業施設や産業施設では、経済効率の中で建築が作られていく事が多い中で、設計者、施工者の技術もさる事ながら事業主体者の街づくりへの強い思いに拍手を送るべき作品だと感じ、大賞を送る事とした。

愛知県立愛知総合工科高等学校
愛知県立愛知総合工科高等学校

【朝岡修司 [アイチ空撮サービス](2016)】
 
 主要用途  高等学校
 所在地   名古屋市千種区星が丘山手
 建築主   愛知県
 設計者   株式会社 久米設計
 施工者   戸田・名工特定建設工事共同企業体
       鈴中工業株式会社
       株式会社中京スポーツ施設
       岩間造園株式会社
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【講評】村山顕人委員 

 2つの工業高校を統合して新設された愛知総合工科高等学校は、県の産業を支える「ものづくりの学校」として、東山通の東山公園駅と星ヶ丘駅の間の北側の敷地に登場した。この敷地には、北の平和公園と南の東山公園の自然豊かな環境をつなぐと同時に、東山通の都市的な街並みをつくることが求められるが、本作品はそれらを巧みに両立している。

 敷地は、東山通から東山公園にかけて約12mの高低差がある地形を活かし、3段階のレベルに設定されている。特に、東山通沿いは、従前の擁壁がなくなり植栽が施され、通りから建物南側屋外の「コミュニケーションプラザ」や建物を南北に貫く「テクノモール」におけるものづくり活動を垣間見ることができるようになり、歩行者環境の魅力が大きく向上した。管理上必要なフェンスや門も敷地境界からセットバックされ、かつ、適切な素材が使用されている。低層化に努めた建物のボリュームや壁面緑化、シンプルなファサードは、通りの今後の街並み形成の規範を示し、また、通り沿いに大きく確保された開口は、夕方から夜にかけての通りの景観向上と安全確保に貢献する。

 通りに開いた「ものづくりの学校」の周囲への好影響が楽しみである

◆JPタワー名古屋
JPタワー名古屋

【株式会社川澄・小林研二写真事務所(2016)】
 
 主要用途  事務所、郵便局、店舗
       カンファレンス、駐車場
 所在地   名古屋市中村区名駅一丁目
 建築主   日本郵便株式会社
       名工建設株式会社   
 設計者   株式会社 日本設計
 施工者   株式会社 竹中工務店
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【講評】森真弓委員 

 JPタワー名古屋は、旧名古屋中央郵便局の跡地に建設された高層ビルである。本建築物はオフィス棟と駐車場棟から構成され、オフィス棟3階までの低層部に商業施設が入る。

 外観は、低層部の壁面ラインをセットバックさせることによって、歩道側の圧迫感を軽減させ、ガラス張りのファサードが内部の賑わいを街に表している。線路側の駐車場棟西側壁面には、壁面緑化が施されており、周辺環境に対して季節の彩りを与えている。また、本ビル2階はJRセントラルタワーズの2階デッキから続く貫通道路の北端として、通り抜け可能な空間となっている。その人の流れを受け止めるアトリウムは、吹き抜けを囲むように各所にベンチが設けられ、さながら公園のようでもある。オフィス、ショップ、バスターミナルなどの複数機能をつなぎながら、ゆったりと落ち着きのある、上品で心地よい空間を提供している。名古屋駅前地区一体の群造形を意識し、隣接既存の高層ビル群との調和を図りながら、品格ある潤い豊かなまちなみを創出している。

◆ソトマで育てる、ソトマでつながる
ソトマで育てる、ソトマでつながる

【吉田誠/日経アーキテクチュア(2016)】

 主要用途  専用住宅
 所在地   日進市赤池町
 建築主   榊原(A棟)
       佐野(B棟)
       藤田(C棟)
 設計者   名古屋大学脇坂圭一研究室/ヒュッゲ・デザイン・ラボ
       笹野空間設計
 施工者   株式会社 丸長ホーム(A棟)
       株式会社 成正建装(B・C棟)
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【講評】尾﨑智央委員 

 日進市赤池周辺では里山を開いて多くの住宅地開発が進められている。その中の一つ、周囲を雑木林に囲まれた20区画の住宅分譲地の中央、幹線道路から延びる進入道路の突き当たりにこの敷地は存在する。大学研究室対抗のコンペ方式で提案募集がされたのは、この住宅地のシンボル的な住宅群になることを意識したからではないか。今では地区内の住宅もほとんど建設が終わった。中にはもっと個性的なデザインの住宅もある。その中でこの住宅群もすっかり周囲に溶け込んでいる。

 設計から施工段階にかけて、3棟の施主と設計者により、6回にわたるワークショップ(WS)が開催された。その結果として、ソトマと称する共用庭にベンチと砂場が設けられた。また、植栽WSでは施主と設計者が協働して作業を行った。最近建設される住宅はフェンスなどのない開放的なつくりが多くなっている。この地区内の他の住宅もそうだ。ソトマで3世帯が交流する様子が周囲へ波及し、各住宅の開放的な外部空間が住民同士の交流・会話の場として利用されることにより、豊かな地域コミュニティが育っていくことを期待したい。

◆大名古屋ビルヂング
大名古屋ビルヂング

【株式会社川澄・小林研二写真事務所(2016)】
 
 主要用途  事務所、店舗
 所在地   名古屋市中村区名駅三丁目
 建築主   三菱地所株式会社 
 設計者   株式会社三菱地所設計 
 施工者   清水建設株式会社 名古屋支店
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【講評】北川啓介委員 

 昭和40年竣工の旧大名古屋ビルヂングの建て替えが話題となった頃、次々と高層化される名古屋駅前への期待が高まる一方で、名古屋の玄関口からおりたった際のあの愛着に溢れた建築物が喪失する寂しさの声が、多くの思い出が残る愛知の人々のみならず、他府県から来訪したことのある人々の間でも強かった。旧ビルの解体から新ビルの施工の間も、駅前の広場に立ってしばらく思いを巡らす人も多かったほどである。

 こうした中、新しい大名古屋ビルヂングは、一階の歩道側の建築部位に旧ビルの有していた歩行者スケールでの配置のリズムを踏襲し、低層階の外装を日々刻々と変化する周辺環境が映り込むよう配して旧ビルの大きさを柔らかく印象づけている。また、低層階の屋上を都心の賑わいの中で人々が寛げる旧ビルのような屋上広場として開放し、高層階には縦方向の存在感を和らげるために木漏れ日のような効果のある縦のフィンを散りばめて、かつての旧ビルへの人々の心象風景を絶妙に想起させる工夫が多分に施されている。既存の都心の大規模な開発において、過去への人々の想いを次世代に繋げていく優れた実践モデルであり、今後のまちなみ形成の指針としても高く評価したい。

◆法連町の家
法連町の家

【佐々木勝敏/佐々木勝敏建築設計事務所(2015)】
 
 主要用途  専用住宅
 所在地   安城市法連町
 建築主   S氏
 設計者   佐々木勝敏建築設計事務所 
 施工者   株式会社 丸長ホーム
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【講評】朝岡市郎委員

  三河地方に多くある古くからの農家住宅と新しい住宅が混在したこの地域は、名鉄電車の駅に近く、2~30年前より宅地化がなされた閑静な住宅街で比較的余裕のある敷地が多い。そのような地域に法連町の家はある。周辺には、奥に庭をつくり塀のある住宅が多くあるが、この作品の廻りだけがそれぞれの敷地境界を閉鎖的にしないで、庭や畑が隣地と一体となった空間として活かされ、良好な景観を形成している。

 この作品は敷地境界に塀やフェンスを設けず、通り沿いの広いスペースを通りから住まいまで緩やかに高くすることで遠近感を演出している。また、玄関へのアプローチに大きい飛び石、植栽と砂利、駐車場と建物の間は砕石敷にするなど、外構部分に自然素材を用いることで通る人々に安らぎを与える空間を見事に創造している。

 建物の通りに面した書斎の大きな窓は、内から外がよく見えるようであるが、道路より高い位置にあり、通りから離れていることで、外からは家の中の人の気配を感じる程度である。深い庇の落ち着いた佇まいは暮らしやすく、良好な景観に寄与する素晴らしい作品である。

◆杜のひかりこども園
杜のひかりこども園

【坂下智広(2014)】
 
 主要用途  認定こども園
 所在地   豊田市大清水町
 建築主   社会福祉法人 正紀会 
 設計者   D.I.G Architects 
       久田屋建築研究所 
 施工者   太啓建設伊藤建設特定建設共同体
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【講評】廣瀬高保委員 

 西日に照らされた褐色の平瓦の外壁がアプローチ道路沿いに現れた時、縦方向に強調する外観が保育施設としては一見スケールオーバーではないかと感じられたが、南側からの眺めは周囲の雑木林に覆われ見え隠れする建物が、ナラの高木と調和しており心地よい。

この建物のデザインの最大の特徴は、屋根を葺いた平瓦が外壁まで繋がって貼られているところにある。保育室をはじめ主だった部屋の勾配屋根や外壁には平瓦が貼られているが、バッファーゾーンと呼ばれる部屋を結ぶ路地的な空間の上部は平屋根となっており、建物に視覚的なリズムを生み出している。また2層吹き抜けの玄関ホールや南側の林に開かれた遊戯室の開口部など、内部空間の演出がこの建物の質をより高いものにしている。特に遊戯室の窓はサッシを開放することで園児が木々の緑と一体となる空間を体感できるため、この施設は保育室の並んだ一般的なこども園ではなく、内部空間においてもまた外部の森との繋がりにおいても連続感を得ることを大切にして設計されていることがよくわかる作品である。

問合せ

愛知県 建設部 公園緑地課 景観グループ
電話:052-954-6612(ダイヤルイン)
内線:2669、2678
E-mail: koen@pref.aichi.lg.jp