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第49回教育研究論文最優秀賞及び優秀賞受賞者について
最優秀賞及び優秀賞受賞者を紹介しています。
論文については、平成28年2月発行予定の「<教育愛知>愛知県教育研究論文集」に掲載します。
最優秀賞
個人研究の部
友達に温かな気持ちでかかわろうとする心を育む道徳教育
-3年 体験の関連付けと授業の工夫,親子道徳による道徳的実践力の高まりを目指して-
岡崎市立根石小学校 大本 満子
【短評】
体験活動と道徳の授業を関連付け,振り返り活動を充実することによって,児童の道徳的実践力を高めることを目指した小学校3年生の道徳における研究である。過去3年間の継続研究を踏まえ,「友達ファイル」(体験活動後の振り返りノート)を新たな手だてとして加えたり,「ぴかぴかノート」(道徳の授業後の振り返りノート)に保護者との話し合い後の感想を記述する欄を設けたりし,児童の考えが十分に深まるようさらに工夫を重ねている点が評価できる。児童の行動の観察,記述の分析も丁寧に行っており,児童の話し合いが,表面的な感想の交換からねらいに沿った気付きの交流に深化していく様子や,保護者との関わりによって抽出児童の考えや行動に変化の現れるさまがよく分かる。社会からの要請に応える今日的な研究であり,汎用性が高く,他の学校の取組の参考になるものである。
共同研究の部
自分の考えにこだわりをもち,かかわり合いながら,考えを深めていく子どもの育成
-5年理科「ふりこの動き」の実践を通して-
刈谷市立小垣江小学校 5年 代表 田中 智子
【短評】
実験の結果から自分の考えを構築する楽しさを,児童に実感させたいと願った小学校5年生の理科における共同研究である。アニメ「アルプスの少女ハイジ」のオープニング映像に登場する大きなブランコの動きに着目させ,児童の疑問や好奇心を高めた上で,ブランコの模型作り,校庭のブランコを使った実験,ブランコの設計図の作成,ふりこの実験器を使った実験と段階的に学習活動を積み重ね,探究的な学習への深化を図っている点が評価できる。児童が日常の遊びを通して自ら課題を発見し,解決する単元構成となっており,吊り紐の長さや重さ,往復の時間などに関心を持った児童が,実験と話し合いを重ね,実験のプロセスについて筋道立てて考えるようになっていく様子がよく分かる。さまざまな場面に言語活動を取り入れた今日的な研究であり,他の学校の取組の参考になるものである。
優秀賞
個人研究の部
・「色・形・作者の思い」からイメージを広げ,自分の思いを豊かに表現することができる児童の育成
-鑑賞活動と表現活動の一体化を図った実践を通して-
稲沢市立稲沢東小学校 大野 裕
【短評】
鑑賞活動と表現活動を効果的に関連付け,自分の思いを豊かに表現する児童の育成を目指した,小学校3年生の図画工作科における研究である。学習指導要領に掲げられている「色・形・イメージ」というポイントを児童に分かりやすく伝え,鑑賞活動が他者の作品のよさの発見にとどまらず,自らの表現につながる活動となるよう構造化している点が評価できる。表現活動において,児童の意識や実態を的確に捉え,つまずきを一つ一つサポートする手だてを用意し,丁寧な支援を行っている点もよい。教室から出て実際に木の肌や木の実に触れたり,主人公と同じちゃんちゃんこを着て物語の世界を追体験したりする活動により,児童の興味・関心を高め,創造性を育んでいる点についても,よく工夫された研究と言える。
・物語の構成や表現に目を向けて読み味わい,自分の読書生活を広げることができる子どもの育成
-5年生国語科「物語おもしろガイド」作りの実践を通して-
岡崎市立宮崎小学校 勝本 ゆき子
【短評】
物語の構成や表現の工夫に着目した作品紹介を作り,読み合う活動を通して,児童がより豊かに作品を読み,読書の幅を広げることを目指した,小学校5年生の国語科における研究である。ストーリーだけを追いかけて読む,特定の分野の本にしか関心を持たないといった児童の読書の傾向を捉え,より豊かに読書を楽しめるよう,読解の授業では表現や構成の面白さに気付かせる支援を行い,教室に多くの本を展示して関心を持たせる環境整備をしている点が評価できる。また,「物語おもしろガイド」を作成し読み合う学習を行い,作品の新たな価値を発見する探究的な読書活動や,なじみのない分野の作品を読む幅広い読書活動につなげようとしている点もよい。児童が作品の新たな魅力に気付き,読書の幅を広げていく様子がよく分かる研究である。
・すすんで課題に取り組み,自分の考えをわかりやすく伝えられる子の育成
-いこうよ!どうぶつのもり 第1学年算数科「おおきさくらべ」の実践を通して-
豊橋市立多米小学校 竹田 雅亮
【短評】
自作の絵本を用いて授業を展開することにより,算数に興味をもって主体的に取り組む児童を育成しようと図った,小学校1年生の算数科における実践である。「おおきさくらべ」の単元において,児童が学習に興味を持ち,動物の大きさを比較しながら楽しんで課題に取り組めるように,「いこうよ!どうぶつのもり」という絵本を手づくりし,単元の学習に生かしている点が独創的である。また,自分の考えをまとめて説明するための「おたすけプリント」や,具体物を用いた発表に使うステンレスシートなどの教材開発にも取り組み,長さや体積の直接比較,間接比較の考え方について,児童が互いに説明し合ったり,発表したりする力が育つよう支援している点も評価できる。抽出児が,言葉や数字を用いて,筋道立てて説明できるようになっていく様子がよく分かる研究である。
・科学と生活のつながりを意識し,友達と考えを深め合う生徒の育成
-2年 『身近な動物を比較した「生物の進化」』の実践を通して-
刈谷市立雁が音中学校 都築 卓朗
【短評】
身近な生き物を教材として取り上げ,仮説検証実験やグループ討議などの協働学習を通じて,科学的な思考力の育成を図った中学校2年生の理科における研究である。生物の進化を考える教材として二種類のダンゴムシを取り上げ,顕微鏡を使った観察や生徒自らが立てた仮説による検証実験を行わせ,進化に対する関心や判断力を高める実践は,大変独創的である。またグループによる討議の際に,「My進化論シート」という自作のワークシートを用いたり,ワンダースペースやマーケティングディスカッションなどの意見交換の形態を取り入れたりし,考察が深まるように工夫している点も評価できる。これらの学習活動を通じて,生徒が科学を身近に感じ,級友と考えを深め合う意義に気付いたことが,レポートや発表の様子から伝わる研究である。
・運動に対する内発的動機づけの高まりを実感し,主体的に運動にかかわろうとする生徒の育成
-1年ゴール型球技「仲間を信じてRUN PASS TRY!(タグラグビー)」の実践を通して-
西尾市立吉良中学校 市石 和将
【短評】
ゴール型ゲームのうち基礎技能が易しいタグラグビーを取り上げ,「運動有能感」を感じさせることにより,主体的に運動に関わる生徒を育成しようと図った中学校1年生の体育科における研究である。皆でパスをつないでトライを目指すという種目の特性を生かして,生徒が仲間と関わり合いながら自らの課題を解決したり,チームの作戦を追究したりできる単元の構成に工夫がある。指導者が生徒の様子をよく観察し,実態に基づいたタスクゲームをタイミングよく取り入れたり,授業日記や話し合いの記録から必要な支援を考え,実施している点も評価できる。タブレット機器を用いたゲーム分析や専門家の招請などの工夫もあり,球技の苦手な抽出生徒も含めて多くの生徒が楽しんでゲームに取り組み,運動有能感の高まりを実感したことがよく分かる研究である。
共同研究の部
該当論文なし
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愛知県 教育委員会事務局 総務課
総務・広報グループ
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