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愛知県における生涯学習情報ネットワークの在り方について

ページID:0007974 掲載日:2023年4月1日更新 印刷ページ表示

愛知県における生涯学習情報ネットワークの在り方について

はじめに

 愛知県生涯学習審議会は、平成9年10月17日に知事と教育委員会から「愛知県における生涯学習情報ネットワークの在り方について」の審議依頼を受けた。そこで、同日付けで学習者及び学識経験者を始め、市町村、大学等高等教育機関、民間の生涯学習関連機関の関係者からなる情報ネットワーク専門部会を設けて集中的、効率的な審議に努めるとともに、本会議での審議を重ね、その結果をここに報告として取りまとめた。
 審議に当たっては、生涯学習情報ネットワークを構成する主要な要素を、生涯学習推進センター(仮称)において構築する予定の生涯学習情報提供システムの機能、機器及びネットワーク体制と考えた。また、愛知県では生涯学習推進センター(仮称)と幼児教育を推進するための中核施設となる幼児教育センター(仮称)を一体的に整備する方針を打ち出している。 
 これらのことを念頭におきながら、本報告では、特に生涯学習推進センター(仮称)においてどのようなシステムを構築するか、そしてそのために生涯学習関連機関とどのような連携・協力が必要であるかに焦点を当て提言を行った。

第1章 生涯学習情報の提供

 生涯学習の推進には、県や市町村などの行政を始め、幼稚園から大学までの学校、企業、そして生涯学習関係団体やカルチャーセンター等の民間の生涯学習関連機関(以下「民間の機関」という。)など、様々な機関がかかわっている。始めにこれらの生涯学習関連機関(以下「関連機関」という。)における学習情報提供の現状を概観するとともに、関連機関とのネットワーク化の必要性などについて考察する。

1 生涯学習情報提供の現状

 愛知県では、学習講座の案内、生涯学習関連施設の利用方法、生涯学習関係団体への参加方法などの情報を、県の機関を中心に市町村や大学等高等教育機関などからも収集して生涯学習情報誌に掲載し、県民に提供している。また、個々の機関においても、講座案内や施設利用案内などの情報提供を行っている。このような情報提供は印刷物によるものが多いが、コンピュータを活用したものとしては愛知芸術文化センターにおける愛知芸術文化情報システムや愛知県女性総合センターにおけるウィルあいち情報システム、愛知県教育センターにおける教育情報通信ネットワークなどがあり、パソコン通信やインターネットなどによって県民や学校などに情報を提供している。
 また、愛知県が市町村、大学等高等教育機関、生涯学習関係団体及びカル・チャーセンターを対象に行った「愛知県生涯学習情報提供システムに関する調査(平成10年4月)」(以下「学習情報システム調査」という。)の結果によれば、それぞれの機関において学習機会を始め、施設、団体・グループ、指導者、教材などの情報が様々な媒体・方法を活用して提供されている。よく活用されているのは、広報誌、生涯学習情報誌、新聞であり、このほかにテレビ・ラジオ、インターネット、パソコン通信などの活用もみられる。
 さらに民間の情報誌も発行されており、掲載されている内容は資格取得や趣味・けいこごとが中心となっている。また、機関としてはカルチャーセンターなどの民間の機関が多いとともに、地域的には都市部の情報が多くなっている。

2 生涯学習情報ネットワーク

(1)ネットワーク化の必要性
   これまで概観したように生涯学習情報の提供は、学習講座の実施機関や施設の設置者等が様々な媒体・方法を活用して個別に行っていることが多い状況である。一方、生涯学習がもともと広範な学習を対象としていることに加え、県民のニーズも多様化、高度化しているため、それぞれの機関が有している情報を個々に提供するだけでは十分に対応しきれない状況にある。そこで、愛知県の機関だけでなく、市町村、学校、企業、民間など様々な機関と情報を共有し、県民に総合的、効果的に提供できるようにするために関連機関とのネットワーク化が必要である。
   さらに、本県には、地理的特性として都市部もあれば山間部や離島などもあるが、これらの地域の間には学習機会、施設、学習情報などの種類、数などに差異があり、学習環境に格差が生じている。このような地域間格差を是正し、山間部等においても身近なところで容易に情報を得ることができるようにするためにも関連機関とのネットワーク化が必要になっている。
(2)生涯学習情報ネットワークの考え方
   本報告では、生涯学習推進センター(仮称)(以下「仮称」略)において構築予定の生涯学習情報提供システム(以下「学習情報システム」という。)の活用を中心にして、県内の関連機関が学習情報の収集・提供について様々な形で行う連携・協力の仕組みを生涯学習情報ネットワークと考えることとする。
   ネットワーク化に当たっては、生涯学習は県民が主体となり自由に行うものであるので、県民の自主的・自発的な学習活動を支援していくために、県民と関連機関との間に立って、どのように、また、多様な情報のうちどこまでの情報を県として収集・提供していくかという視点が重要である。
(3)生涯学習情報ネットワークへの期待
   生涯学習情報ネットワークが形成されることにより、県民にとっては、多様な情報の中から選択することができるようになること、このネットワークを通して仲間づくりや交流ができるようになることなどから、県民の学習活動が一層活発化することが期待できる。
   また、関連機関にとっては、各機関が有している学習機会、施設、教材などをこのネットワークを通して広く県民に知らせることができるようになることから、それらの学習資源が有効に活用されることが期待できる。さらに市町村においては、住民への学習相談や広報誌等の発行に際して、このネットワークから多様な情報を入手できるようになることから、きめ細かな施策の展開が期待できる。

第2章 学習情報システムの在り方

 生涯学習情報ネットワークの中核となる学習情報システムは、何よりも利用する側の県民の視点に立って、県民がいつでも、どこでも、だれでも使えるように整備していくことが重要である。
 その在り方について、基本的な考え方を始め、収集・提供する情報の種類と範囲、データベースの構築、学習情報システムの機能上不可欠なインターネットの活用などについて、このシステムの特色という点も考慮しながら考察する。

1 学習情報システムの基本的な考え方

(1) 機能の考え方
  ア 使いやすいシステム
    学習情報システムは、県民の視点に立ってだれでも使いやすいものにする必要がある。社会が高度情報化時代を迎えている中で、一般の県民のコンピュータ等に関する知識や意識はその動きに必ずしも即応しているとは言えない。この点に配慮して、とりわけコンピュータを使い慣れない人にとっても使いやすいシステムにする必要がある。
  イ 検索しやすいシステム
    学習情報システムにおける情報提供は、学習情報システムのデータベースの情報を提供する場合と、他の関連機関から発信される情報を提供する場合が考えられるが、いずれの情報についても、多様なニーズを持つ県民が、短時間に自分の欲しい情報を入手できるように、検索しやすいシステムにする必要がある。
  ウ 双方向的なシステム
    県民が学習情報システムに入力されているデータを引き出すだけでなく、県民自身も情報を発信することができる双方向的なシステムにする必要がある。具体的には、県民が学習に関する情報交換や意見交換を行い、交流ができる電子掲示板の機能、いつでも、どこからでも相談できる電子メールの機能、講座や施設の申し込みができる予約システムの機能等の整備が考えられる。     
  エ システム機能の高度化
    インターネットの急激な普及など情報通信を取り巻く環境は大きく変化を続けており、生涯学習推進センターが開所する予定の平成15年度の状況を見通すことは難しい。こうした中で学習情報システムの整備計画に当たっては、最新技術の導入、整備した後も新しい技術を受け入れることができる柔軟な仕組みの導入などを行い、システム機能の高度化に努める必要がある。そして、そのためには、本格稼働の前に試行を行っていくことが必要である。
(2) 県民情報提供システム(仮称)への接続
    愛知県では、様々な県政情報をインターネットなどにより一元的に提供するために、平成11年度に県民情報提供システム(仮称)(以下「仮称」略)が運用を開始する予定である。また、愛知芸術文化情報システムなど県の機関が有する独自のシステムも、このシステムに接続する予定となっている。
    そこで、学習情報システムも、県民にとってより分かりやすい愛知県全体のシステムからアクセスすることができること、県民情報提供システムのネットワーク基盤を活用することができることなどの理由から、県民情報提供システムに接続することを前提として計画を進めていくことが望ましい。

2 収集・提供する情報の種類と範囲

(1)案内情報と内容情報
   学習情報は、案内情報と内容情報に大別することができる。学習情報を必要としている県民の中には、意欲はあるもののどのように学んでよいのか分からない人もいれば、目的や内容を明確に持っている人もいる。一般的に前者は、学習の手掛かりとなる情報として、どのような学習講座がいつ、どこで開催されるかなどが簡潔に紹介されている案内情報を必要とし、後者は、学びたい内容そのものである内容情報を必要としていると考えられる。このような県民のニーズに対応するために、学習情報システムにおいて収集・提供する情報は次のように考えられる。 
 ア 案内情報
   生涯学習は自らの意思で学ぶものであるから、県民が自分にあった方法を選択して学べるように、学習情報システムにおいても、まず、案内情報を提供する必要がある。そして、この案内情報を系統的に整理し提供していくための区分等は、文部省の学習情報提供システムの整備に関する調査研究協力者会議の報告「生涯学習のための学習情報提供・相談体制の在り方」を参考にすると区分は次のように、区分ごとの例示及び項目は別表のように考えられる。
 ○ 学習機会
 ○ 施設
 ○ 団体・グループ
 ○ 指導者
 ○ 教材
 ○ 各種資格
 ○ その他
   また、この案内情報については、生涯学習推進センターと一体的な整備を図る幼児教育センター(仮称)(以下「仮称」略)の主要な機能に対応した情報を充実する必要がある。具体的には、幼稚園教員等を対象とする幼児教育振興にかかわる情報及び幼児を持つ保護者を対象とする地域や家庭における子育て支援のための情報が考えられる。このような幼児教育に関する情報の充実を学習情報システムの特色として位置づけることが望まれる。
 イ 内容情報
   学習の内容そのものである内容情報は、これまで主として書籍、テレビ、ビデオなどで提供されてきたが、マルチメディアの発展や通信技術の高度化によって、学習情報システムにおいても内容情報を提供することが可能になると考えられる。また、県民に魅力のあるシステムとするという観点から、内容情報を学習情報システムの特色として提供できるよう検討していくことが必要である。
   提供する情報の内容については、生涯学習推進センターや幼児教育センター等で実施した生涯学習及び幼児教育に関する調査研究結果やモデル講座の要旨等、他の機関では手に入れにくい生涯学習及び幼児教育に関する資料等が考えられる。 
   さらに、内容情報を充実するためには、市町村における特色ある学習資料として、史跡、伝統芸能、自然等に関する資料や大学等高等教育機関の講義内容などの情報を整備することが考えられる。そのために、関連機関がどのような情報をどのような方法で提供できるか協議・検討し、協力を要請していくことが重要である。
(2)対象とする機関
   第1期の本審議会の答申「21世紀を展望した愛知県の生涯学習振興の基本方策について」では、学習情報システムにおける情報の整備を第1段階で公共の情報、第2段階で民間の情報へと段階的に整備することを提言しており、この趣旨を踏まえ、公共の情報から順次対象としていく必要がある。そして県民の利便性を考えれば、なるべく多様な情報を提供することが重要であるので、民間も含めた様々な機関の情報を対象とする必要がある。この場合、営利性の高い情報については基準を設けるとか、信頼できる内容とするなどの配慮が必要である。

3 データベースの構築

(1)データベース構築の必要性と規模
   多様な情報を系統的に整理し提供するとともに、広域的な情報を一元的に管理し提供するためには、体系化したデータベースの構築が必要である。しかし、一般的にデータベースは、近年のインターネットの普及とあいまって様々なデータベースへのアクセスが容易になったことや、費用、効率などの点から、大量のデータを一か所に集める形から、必要なところでそれぞれ構築する形に移行してきている。
   先の学習情報システム調査の結果によると、生涯学習の情報提供システムが、回答のあった311 機関のうち11機関で整備ずみであるとともに、平成15年度までに25機関が整備予定、100 機関が整備を検討中となっている。
   そこで、学習情報システムにおいてどのような規模のデータベースを構築していくかについては、先のような調査などによって引き続き関連機関におけるシステムの整備状況や計画を把握するとともに、県として収集・蓄積する必要がある情報の量などについて検討を行うことが重要である。
(2)最新情報の収集・提供
  ア 関連機関からのデータの直接入力
    学習情報システムにおいて最新情報を正確かつ迅速に県民に提供できるようにするためには、関連機関の協力を得て、情報の発生源であるそれぞれの機関が学習情報システムのデータベースに直接入力する方法で情報を収集することが望ましい。
    これによって、情報の発生源である市町村、大学等高等教育機関、生涯学習関係団体、カルチャーセンター等にとっても情報を迅速に提供できるようになるとともに、県民への情報発信が容易になる。そして、この方法は学習情報システムの管理・運営における費用と負担の観点からも望ましい方法である。
    なお、直接入力の方法を実施する場合には、各機関が入力しやすいような様式にすること、入力されている情報を常に把握できる体制を整備しておくことなどの配慮が必要である。
  イ 関連機関のデータの直接受け入れ
    市町村、大学等高等教育機関などで独自の生涯学習情報提供システムを有する機関からは、そのシステムのデータを直接学習情報システムのデータベースへ受け入れることなども考えられる。

4 インターネットの活用

(1)インターネット活用の必要性
   インターネットの活用は、学習情報システムの様々な機能を実現するために不可欠であるとともに、この活用による情報提供は、文部省において計画している全国的なネットワーク形成のために、都道府県において持つべき機能として期待されているところでもある。
   県民にとっては、インターネットを活用することにより、生涯学習推進センター及び幼児教育センターなど学習情報システムの専用端末がある施設まで出かけることなく、自宅のコンピュータからでも学習情報システムにアクセスできるようになる。そのため、特に障害者や仕事を持っている人など地理的、時間的な制約を受けている人にとって便利なものとなる。
(2)関連機関から発信される情報への接続案内
   県民の学習ニーズの多様化、高度化に伴って、広域的な情報が求められている。また、県の内外において関連機関における学習情報のデータベース化が進みつつある。そこで、インターネットを活用してこのような機関と互いに情報を活用できるよう協力を求め、各機関から発信される情報への接続案内ができるようにすることが重要である。これによって、県民が学習情報システムを通して県内の機関はもとより、他の都道府県、文部省のまなびねっとシステム、さらには世界の学習情報へとネットワークを広げることが可能である。
   また、県内の機関に対しては、学習情報システムと連携が取りやすいようにその整備計画を必要に応じて示していくなどして、データベース化を働きかけていくことが重要である。
(3)関連機関から発信される情報の横断的な検索
   インターネットの活用によって、学習情報システムにおいて、生涯学習推進センター以外の複数の機関から発信される情報を横断的に検索できる機能を持つことが考えられる。例えば、県民が陶芸に関する学習機会の情報を求めている場合、まずは生涯学習推進センターのデータベースにある情報を検索し、提供することになるが、さらにこの横断的な検索の機能によって、市町村や大学等高等教育機関など他の機関から発信されている陶芸に関する情報についても検索し、提供しようとするものである。
   そのためには、関連機関が情報を発信する段階で、あらかじめ生涯学習推進センターで用意した見出しを付けるなどの協力が必要と考えられる。今後の通信技術の進展を見据えながら、横断的に検索する機能を学習情報システムの特色として位置づけ、その実現を目指していくことが望まれる。

5 学習情報システム構築に当たって配慮する事項

(1) 情報の発信主体としての責任
  ア プライバシーの保護
    学習情報システムにおける個人情報の内容や収集・提供方法については、本人の申告と同意を前提とし、県民の学習情報システムへの期待や利便性等も考慮して検討する必要があるが、プライバシーの保護への配慮が特に重要である。愛知県には個人情報保護条例が定められているので、この規定に基づいて個人情報を取り扱い、プライバシーに十分に配慮する必要がある。
    また、情報交換や意見交換の場を設けると、個人の名誉を傷つけるような情報が書き込まれるといった問題が生じる恐れもあるので、この点への配慮も必要である。
  イ 知的財産の保護
    学習情報システムに文字情報、音声、映像など他人の著作物を利用する場合には、そのような情報を掲載すること及び県民の求めに応じて情報を発信することについて著作者の許諾を得ておくことが必要である。また、愛知県に著作権のない情報を利用する場合には、愛知県が作成者であるかのような誤解を招かないようにするなど、知的財産の保護への配慮が必要である。
  ウ 安全性の確保
    学習情報システムには外部から侵入され、情報を改ざんされたり、破壊されたりするといった危険性がある。こうした危険を防ぐために、データベースの構築等に当たって協力を得る機関に対して利用者番号やパスワードを示し、その番号等の管理を徹底するなど、学習情報システムの安全性を保つための配慮が必要である。
(2) 学習情報システムの構築等に要する費用と負担
    学習情報システムの構築とその後の円滑な管理・運用のためには、様々な点で費用がかかることを考慮しておく必要がある。そして、その負担の在り方については、地域間格差の是正など県に期待される役割を踏まえるとともに、提供する情報の内容、提供に要する費用などを考慮し、検討していくことが必要である。

第3章 情報機器と人材育成

 県民が学習情報システムをいつでも、どこでも、だれでも使えるようにするための重要な条件となる専用端末の設置やその操作性など情報機器の在り方と、学習情報システムを運用する職員などの人材育成について考察する。

1 学習情報システムにおける情報機器

(1)専用端末の設置と操作性
   学習情報システムが稼働するころには、コンピュータがかなり多くの家庭にあるような状況も想定できるが、自宅にコンピュータを持たない人も身近なところから情報にアクセスしやすいように、学習情報システムの専用端末を県の生涯学習関連施設や市町村の公民館等に設置するなどの配慮が必要である。
   また、その操作性については、コンピュータを使い慣れない人や障害者などにも扱いやすいように、タッチパネルなどだれでも受け入れられるよう配慮していくことが重要である。
(2)情報機器の整備
   学習情報システムの構築に当たって、情報通信技術の発展が日進月歩の状況である中で、最新メディアの活用や最新技術の導入をしやすくするためには、情報機器は買い取りではなくレンタルやリースで整備することや、契約をハードだけでなくソフトの内容にも重点を置いて行うことが重要である。
   また、情報機器やソフト開発の企業に対して、使いやすい機器やソフトの開発を要請していくことも必要である。

2 人材育成

(1)職員の適正配置と資質向上
   学習情報システムが円滑に機能するよう、このシステムの管理・運用を行う生涯学習推進センターにおける職員の適正配置が必要である。
   また、生涯学習推進センターや生涯学習関連施設において、職員が学習情報システムを活用して県民からの電話、ファクシミリ、インターネットなどによる問い合わせや窓口における学習相談などに的確に対応できるよう、これらの施設における職員の資質向上を図ることが重要である。
(2)県民への普及
   整備した学習情報システムがコンピュータを使い慣れない人などにも広く用されるように、県民に学習情報システムの存在とその内容について積極的に広報し、学習情報システムへの関心と理解を深めてもらうことが重要である。
   また、コンピュータの使い方に関する学習機会を充実する必要がある。その場合には、生涯学習関連施設はもとより、小学校、中学校、高等学校など住民に身近な施設である学校において、そのコンピュータを活用して、地域住民を対象にしたコンピュータ教室を開設することなどが必要である。

第4章 ネットワーク体制

 生涯学習情報ネットワークに必要なものはインターネットにつないだ一台のコンピュータである。専用の端末がなくてもコンピュータがあれば、どの関連機関からでも情報の受発信が容易になる。さらにコンピュータがない場合でも、電話やファクシミリ等の通信手段を活用して生涯学習情報ネットワークに参加することが可能であるので、なるべく多くの機関とのネットワーク化を図ることが重要である。
 ここでは、学習情報システムを活用した情報提供の在り方と学習情報システムが提供する情報の内容などを充実するために特に連携が求められる市町村等とのネットワーク体制について考察する。

1 学習情報システムを活用した情報提供

(1)多面的な情報提供
   学習情報システムの構築により、県民が自宅からインターネット経由で情報を得るなどコンピュータを媒体とした情報の授受が増加することが予想される。この場合には、個々のニーズにあった情報を提供しやすい、即時性がある、マルチメディアの導入などにより質の高い内容を提供できるという利点がある反面、県民が情報を得るためには、そのための機器や知識・技術の修得が必要である。
   一方、これまで使われてきた印刷物による情報提供には、繰り返し読むことができる、持ち運びが容易であるなどの利点があり、幅広い年齢層の県民にとって親しみやすいものとなっている。その反面、紙面や部数が限られている中で情報を提供しなければならないといった制約がある。
   そこで、生涯学習推進センター及び関連機関においては、学習情報システムを活用して、このような媒体の特徴を踏まえた多面的な情報提供を地域や県民のニーズに合わせて行っていくことが重要である。
(2)印刷物による情報提供
   印刷物においても、これまでのような総合的な情報資料だけでなく、個々のニーズにあった情報資料の必要性が高まるようになると考えられる。そのため、市町村等において、学習情報システムから地域のニーズに対応した情報を取り出して編集し、住民に配布していくこと、また、公民館などにおいて県民の個々のニーズに対応した情報を取り出して編集し、提供していくことなどが必要である。

2 関連機関とのネットワーク体制

(1)市町村
   学習情報システム調査によると、市町村では、学習機会、施設、団体・グループ、指導者、教材など全般的に多様な情報を有しているとともに、それらを学習情報システムに提供することについて積極的な姿勢が伺える。また、市町村は住民の最も身近な自治体であり、公民館など住民の学習活動の拠点となる社会教育施設等を有しているので、これらの施設において、積極的に学習情報システムを活用して住民への情報提供や学習相談が行われることが望まれる。こうしたことから、市町村は、様々な関連機関の中でも緊密なネットワーク化が期待される機関である。
   また、市町村の中でも名古屋市との連携は、市内に豊富な学習資源が存在し、情報が豊富にあるという点から、また、学習情報システムの構築等に要する費用の点からも重要であり、今後の整備計画に向けて情報交換を密接に行うなどの配慮が必要である。さらに、学習情報システム調査によれば、都市部ばかりでなく、町村部の住民にとっても活用しやすいシステムを望むという意見があげられている。学習環境の地域間格差を是正するために、このような意向に配慮したネットワーク化が特に重要であり、そのための方策として、生涯学習推進センターと公民館等を結んで遠隔講座を開設することが考えられる。
(2)大学等高等教育機関
   学習情報システム調査によると、大学・短期大学等では、学習機会、施設、指導者、教材、学習プログラムなどの情報を有している比率が高く、専門学校においては、教材、各種資格・試験の情報を有している比率が高くなっている。
   大学等高等教育機関が有するこのような情報は、県民のリカレント教育への関心の高まりに対応できる専門性の高い情報である。これらの情報が学内だけにとどまらず、広く県民にも提供され、リカレント教育の貴重な学習資源として有効に活用されるよう、大学等高等教育機関におけるデータベース化の促進と生涯学習情報ネットワークへの参加を働きかけていくことが重要である。
(3)民間の機関
   生涯学習関係団体、カルチャーセンター、各種学校など民間の機関では、文化、スポーツ、職業能力の向上に関するものなど多彩な学習機会を提供している。先の学習情報システム調査によると、カルチャーセンターでは、特に講座や教室などの学習機会の情報を有している比率が高く、また、このような情報を県の学習情報システムに提供することについて積極的な傾向がみられる。
   民間の機関の多彩な情報が加わることによって、県民により幅広い情報が提供できることから、意見交換の場を持つなどして、民間の機関の自主性を尊重しつつ、ネットワーク化を図ることが重要である。

3 愛知県の機関とのネットワーク体制

 愛知県の機関とは、県民情報提供システムを通して、愛知芸術文化センターなど独自のシステムを持つ機関だけでなく、持たない機関とも連携ができることになる。学習情報システムにおいて、県の機関における生涯学習情報が一元的に提供できるようにするためには、他のシステムや関係部局の生涯学習情報と、相互に、簡単にアクセスできるような体制づくりが重要である。

おわりに

 今期の審議テーマである「愛知県における生涯学習情報ネットワークの在り方について」の報告では、情報通信技術の現状や進展を抜きにして語ることはできない。一方、目まぐるしく変化している情報通信環境の数年先を予測することは極めて困難なことである。
 重要なことは、どのような環境においても愛知県が目指す生涯学習情報ネットワークに、関連機関から積極的な参加・協力が得られるように、熱意をもって働きかけることである。関連機関の参加・協力をどれだけ得られるかがこのネットワークの成否を左右するとも言える。また、学習情報システムにおいては、まず基本的なこと、可能なことから着手し、段階的に充実していく方法をとることが必要である。こうしたことによって、学習情報システムが広く県民に活用されるようになるとともに、生涯学習情報ネットワークが県民一人一人の学習活動を支援していくことができると確信している。
 学習情報システムのネットワーク基盤については、本報告では県民情報提供システムの基盤を活用していくことを提言している。愛知県には情報通信基盤となる新総合通信ネットワーク(平成14年度運用開始予定)の計画もあるため、この基盤を活用することや、さらに、衛星通信、ケーブルテレビ等の通信回線を活用することも検討していくことが必要である。このようにして、機能の高度化を図ったり、県民がアクセスしやすくしたりして、県民にとって一層魅力のあるシステムが実現することを期待するものである。