窯場今昔100選  仲野泰裕

(10) 三川内焼

一般には、現在の長崎県佐世保市三川内(みかわち)地区において焼かれた陶磁器全般を指しているが、平戸藩三皿山(三川内山・江永山・木原山)を指すことと、三川内山で焼かれた、白磁・染付磁器を指す場合とがある。

当初、領内の針尾(はりお)三ツ岳において発見された白磁鉱を利用していたが、天草で良質の陶石が発見され、これを使用することにより純白の磁肌を得ることができ、繊細な彫りや菊細工などの捻りものに優品が多く知られるようになった。 また松の樹下に無心に遊ぶ唐子を描いた文様が、三川内を代表する意匠となっている。

また江戸時代後期には、卵殻手と呼ばれる透けるような薄手のコーヒーセットなどがヨーロッパへ輸出されている。また現在では、組合の統合などにより、陶器生産を主体とする江永・木原地区も含めて三川内焼と呼ぶようになっている。

写真のような、三川内の細工技術を生かした傘の意匠は比較的多く知られるが、この作品では、傘を立ててやや開いた内側に花が活けられる状態に作られており、柄の部分で吊り下げる掛け花入れである。太く力強い骨の造形と口縁部を引き締める染付の帯が、繊細な中にも重厚さを漂わせた作品である。



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