知立市牛田町自主防災会(うしだちょうじしゅぼうさいかい)
知立市牛田町自主防災会は、防災の実働部隊である「防災隊」が活動の鍵となっています。行政が実施する防災政策を先駆的にモデル地区となって実施するなど、積極的な活動をしています。
そんな牛田町の防災隊隊長の斉藤さん、副隊長の坂田さん、そして牛田町自主防災会会長の松本さんにお話を伺いました。
(写真:左から 松本さん、斉藤さん、坂田さん)
―牛田町自主防災会の体制について教えてください。
区長を筆頭に町内の各世帯で構成されていますが、他の自主防災組織と異なる特徴的な要素がひとつあります。それは区長の下に「防災隊」という消防団OBで結成されている組織があって、防災に関する活動を実施していることです。
―防災隊を設置したきっかけは何だったのですか?
自主防災会が活動的でないケースの理由として考えられるのは、役員(=町内会の役員)が順番の交代制で、2年ほどで代わってしまうことです。そうすると防災について、いろいろ知っていく前に役目が終わってしまうわけです。
そこで、自主防災会を活性化するためには、恒久的な組織が必要ではないかと考え、地元の消防団OBにより、平成18年3月に防災隊を結成しました。防災隊は、牛田町の自主防災の実働部隊ということになります。
―防災隊発足以降、自主防災に関する取組が積極的になったということですが、これまでに取組まれてきたことについてお話いただけますか。
平成18年度は、行政と連携して、地域の防災ネットワークを構築する取組を実施しました。具体的には、老人クラブ、民生委員、中学校、消防団、社会福祉協議会、企業などの地元の各団体といっしょになって、要援護者支援・誘導訓練を取り入れた防災訓練を企画し、450人(町内人口約3,800人)もの町民が参加した訓練を実施しました。
企画段階から、地元の各団体と会議やワーキンググループを繰り返し開催した結果、連携することができました。
なかでも中学生60人の参加が大きかった。中学生には、老人の誘導訓練やアルファ米の炊き出し訓練などに参加してもらったり、担架や非常トイレの組立てなどを体験してもらいました。平日の日中は大人は町外へ出て行ってしまっているので、そういう時に中学生は地域防災の大きな力となります。
また、中学生の参加は地域の戦力としての期待だけでなく、若いうちにこういった経験をしてもらうことで、大人になってからこの経験が生きてくるのが大きいです。
(写真:避難誘導訓練の様子)
―その他の参加者についてはどうでしたか?
老人クラブの協力により、お年寄りの方に避難誘導訓練に参加してもらうことができました。参加そのものが大きな意義でした。お年寄りがいることで、避難経路の問題点、例えば狭くて歩きにくいとか、そういった現実に即した事が見えてきて、次のステップの対策に進めるわけです。
(写真:訓練には多くのお年寄りの方も参加されました。)
―この取組の中で作られたつながりはその後も活かされているのですか?
いろいろな場面で活用されています。
例えば、平成19年度に整備した「災害時要援護者支援台帳」は、この時ネットワークが築かれた民生委員さんと連携をしています。
(※)災害時要援護者とは、安全な場所への避難などの災害時の一連の行動をとるのに支援を要する人々をいい、一般的に高齢者、障がい者、外国人、乳幼児、妊婦等があげられます。災害時要援護者支援台帳は、本人に関する情報と、災害時に地域の方で支援する人の情報等が記された台帳です。
―災害時要援護者支援台帳は、個人情報の保護という考え方との関係もあって、作成するのが難しい事例も見られるようですが、牛田町ではどのような手続きで整備されたのですか?
町内の各組長さんを通して、全家庭に災害時要援護者支援に関するアンケートをすると同時に、制度に賛同し、台帳に登録することを承諾された方について台帳に掲載することにしました。
民生委員さんとは次の2点において連携しました。
まず、この台帳作りの検討会議に出席してもらい、いっしょに考えたことが1点。
それから、整備した台帳を自主防災会で所有するだけでなく、管轄する地域の民生委員さんにも、情報を提供していることです。
民生委員さんは、当初から地域の情報を持っているわけですが、それにこの台帳の情報を加えて、ケアできることになります。
―平成19年度は他にも地域の防災マップも作成されたそうですね。
これは、消火栓、防火水槽、防災倉庫、避難場所などを防災隊の隊員が歩いて拾い出して、地図に落とし込んだもので、町内全戸に配布しています。
(写真:牛田町防災マップ 消火栓や防災倉庫等の情報が落とし込まれている。)
―防災隊の皆さんだけで、これだけ調べられたんですか。
消火器の使用期限や防災機器の動作確認などを一つ一つしながら調べていったのですが、そのあたりの作業が大変でしたね。
―住民の皆さんを巻き込んで、みんなで町歩きをして、こういった防災マップを作るといった事例もあるようですよ。
その他に、どのような取組をされましたか?
今年(平成20年度)の6月に、行政の建築担当部局といっしょになって「耐震改修ローラー作戦」というのをやりました。これは、耐震基準を満たしていない恐れのある家屋、つまり昭和56年以前に建築された木造住宅を個別に訪問し、市の無料耐震診断を受けることを勧めるというもの。207件のお宅をまわって64件の方が無料耐震診断の申込をされました。
―それは高い確率ですね。東海・東南海地震などの大地震を想定すると、住宅の耐震化は非常に重要だと思うのですが、なかなか進まないのが現状です。今回この試みが成功したのはなぜだと思いますか?
やはり、個人宅に行くわけですから、行政の職員がいきなり単独で行くのではなく、地域で顔の見える関係にある町内会役員と防災隊がいっしょになって訪問したというのが大きいと思います。普段からの繋がりがあったからこそ、というわけですね。
―地域のつながりが防災でも大切なんだということがよく分かりました。では、最後に自主防災会が地域防災の要として機能するために、何が重要なのかを教えていただけますか。
われわれ自主防災会や防災隊は、防災のことだけをやっているわけではありません。例えば、町民祭りやその他の地域のイベントがあれば警備をしたり、積極的に手伝ったりしています。その結果、地域の繋がりができて、防災の活動も円滑にできるようになっているのです。
あとはまとめ役、牛田町で言えば防災隊の隊長がその役割を担いましたが、こういった人が地域にいることが大事です。
(平成20年8月6日 知立市牛田町公民館)