大府市横根自主防災会は、平成23年度防災貢献団体として表彰を受けました。
−横根自主防災会が結成された経緯を教えてください。
昭和57年度に大府市地域総ぐるみ防災訓練の担当地区が、横根自治区に指定されたことに伴い、昭和57年4月1日に自治区に横根自主防災会が発足しました。そして、地域参加型の防災訓練を行う中で、「自分たちのまちは、自分たちで守る」の精神を育み、いざ有事の際に、自主防災会による共助の機能を果たすべき取り組みが始まりました。
−活動されている地域にはどのような特徴がありますか。
横根自治区は大府市の東南部に位置し、東部には尾張と三河の境に当たる二級河川「境川」が流れています。面積は2.43平方km、世帯は約2,250世帯、人口は約6,600人となっており、その内、自治区加入世帯は1,739世帯、加入世帯人口は約5,400人、自治区加入率は約80%となっています。
旧来は農村地帯でしたが、現在はトヨタ系の企業が立地する刈谷市に隣接することから、境川沿いに下請け企業等が立地し、会社員が増加、専業農家は僅かとなりました。会社員の住宅地が丘陵地に開発されたため、新旧住民の割合は半々となりました。
文化的には、市内で最古の歴史(800年)がある藤井神社の祭礼に奉納する市の有形・無形文化財である山車(3台)、子供三番叟(こどもさんばんそう)があります。
平成12年の東海豪雨の際に、境川の支流が決壊し、床上浸水など甚大な被害を受けたことから、防災に対する意識は比較的高い地域といえます。
−横根自主防災会にはどのような組織がありますか。
横根自主防災会は、会長を自治区長、副会長を自治区長代理が務め、相談役として市議会議員2人が就いています。また、実働部隊として、区防災部会員9人、横根消友会員(消防団を側面から支援する消防団OB等)25人が被災者の救出、搬送、避難誘導等を行い、炊き出し担当として女性の会(日赤奉仕団)が被災者の食材確保、食事の炊き出しを行います。民生活動担当として民生児童委員が地域の要援護者等との連絡を密にし、必要な場合は要援護者の救出避難誘導を行います。
その他、区議員10人と組長31人とともに平成22年度に発足した、5世帯から7世帯で組織する「防災・防犯・助け合いの隣組」のリーダー293人が各地区、各組の状況を把握し、防災部会員、消友会員と協力して、被災者の安否確認を行うとともに、市指定避難所に誘導し、区内の救援活動を行う体制となっています。
−横根自主防災会の主な活動内容を教えてください。
●「隣組」による防災訓練
横根自治会は4地区あり、毎年その一地区において「隣組」による防災訓練を実施しています。大府市は地域総ぐるみ防災訓練として、市内の10自治区において輪番で防災訓練を実施していますが、その訓練においては、10年に一度しか訓練ができず、繰り返し行う必要のある防災訓練としては余りにも期間が開きすぎていると考えています。したがって、市の防災訓練を補完するために自主防災会独自の訓練を4年に一度、各地区で実施し、有事に備えています。
訓練は、応急救護訓練としてAEDの取り扱い、心肺蘇生法を実施します。その他、ハイゼックス(包装食)による炊き出し訓練や水消火器による初期消火訓練、簡易トイレ組み立て訓練、発電機取り扱い訓練、参加記念品を配布することで行う物資配給訓練等きめ細かい訓練を行い、有事に活かすことができるよう取り組み成果を挙げています。
●隣組の日の集い
防災訓練は毎年1地区で実施しますが、その他の3地区については、11月17日(ごろ合わせで「いい隣」と読む)の「隣組の日」に近い土・日曜日に「隣組の日の集い」を開催しています。「隣組」は何か事がないと忘れられた存在となるという危機感があり、一年に一度は「隣組」の皆さんが顔を合わせる機会を設け、皆さんで同じことをすることにより、「絆」「連帯意識」を醸成することに努めています。
この集いは、防災訓練を兼ねており、「隣組」リーダーが、それぞれの集合場所で参加者を確認把握した後、震火災広場まで誘導し、組長に参加者の報告、そして組長は本部へ報告します。その後、ラジオ体操を行い、水消火器により初期消火訓練を実施します。最後に「防災・防犯・助け合いの隣組」の歌を斉唱し、物資配給訓練を兼ねた参加記念品を配布し、「助け合い」「支え合い」の精神を育んでいます。(参考:参加隣組数193組、参加世帯907世帯、参加者1,103人)
●「防災・防犯・助け合いの隣組」の編成表の配布
隣のことをよく知っている、またよい関係にあることが早期の安否確認、救出につながったとの阪神・淡路大震災等の教訓から、隣組を組織化しました。
まず、隣組の状況を調査把握した上で、組ごとの編成表を作成し、全世帯に配布をしました。それらの情報を共有する中で、隣組の役割(「この隣組は、防災対策のほか、犯罪の抑止、一人暮らしの見守り等の役割を担っている」など)を果たしています。
この編成表(平成23年度は293の隣組)には、区長、区議員、組長、担当民生児童委員の連絡先や区事務所、災害対策本部横根支部となる公民館、東海警察署大府幹部交番、市役所福祉課、市社会福祉協議会といった施設の連絡先を明記するとともに、各隣組の構成員、電話番号、世帯人数(大人、子供(中学生以下)の数)、その内一人で避難所に行くことができない要援護者の人数、搬送手段としての乳母車やリヤカー、車イスのある家、井戸水のある家を記載しています。編成表は毎年更新した上で、各隣組の構成員に配布をし、常に新しい情報を共有しています。
●啓発用「隣組のぼり旗・小旗」の設置
「防災・防犯・助け合いの隣組」の啓発用のぼり旗(区役員・組長44人分)と小旗(隣組リーダー293人分)をそれぞれ玄関先に設置し、地域の「絆」「連帯意識」の醸成と、防災、防犯、一人暮らしの見守り活動への意識向上を図っている。
●「防災講演会」の開催
いつ起きてもおかしくない東海・東南海・南海地震等に備えるため、「まちぐるみで地域防災」と題して、市内在住の豊橋技術科学大学名誉教授、加藤史郎氏を講師に迎え「防災講演会」を開催しました。
加藤氏は建築構造学を専門とされており、断層の位置、耐震改修の必要性とその補助制度、そして身近でできる家具の転倒防止と滑り止め、ガラスの飛散防止等、具体的なお話をいただき、防災に対する認識をさらに深めることができました。
●「防災マップ」の作成
地域住民が防災に関する情報を共有するために、「防災マップ」を作成しました。作成にあたっては、事前に全世帯へ調査を行い、要援護者の存在、乳母車やリヤカー、車イスなど搬送手段の有無、飲料水確保のための井戸水の有無といった情報を提供していただきました。また、タウンウォッチを行い、ブロック塀や防火用水、消火器、消火栓等の位置を把握し、それを紙のマップ上に落とし、最初は手作りで作成し、各組長に配布しました。
2年目には、パソコンにより情報の電子化を図りましたが、その情報管理については検討中であり、将来的には全世帯に電子防災マップを配布し、情報を共有していきたいと思っております。
−自主防災活動をするにあたり、課題や問題点はありますか。
現在、自治区加入率が約80%となっており、今のところ未加入世帯は有事の際に組織的に活動が起こせない状況にあるため、自治区加入率の向上と未加入世帯への対応をいかにするかが課題となっています。
−今後、どのような活動を行っていく予定ですか。
毎年、4地区の内1地区では、有事に備え繰り返し防災訓練を行い、その他3地区については、「絆」「連帯意識」を更に醸成するために「隣組の日の集い」を継続開催し、生活の中で区民が常に防災意識をもってもらうよう取り組んでいきます。
今後は特に、一人暮らしの高齢者や高齢世帯に対して、家具転倒防止金具等設置の促進を図り、また防災マップ(津波や水害に備えた標高表示を含む)の全世帯配布を行うことで防災情報の共有を進め、防災対策に万全を期して取り組んでいく予定です。