下地自主防災会(SEA)は、平成27年度防災貢献団体として表彰を受けました。


−下地自主防災会(SEA)が結成された経緯を教えてください。


 平成20年に下地校区が、豊橋市市民協働モデル校区に指定され、下地校区住みよい暮らしづくり委員会に安心安全部会ができました。
 その部会のなかで、様々な角度から防災について検証をした結果、私たちの住む下地校区は、大規模な災害に対する防災対策と自主防災活動が、とても重要な地区であることがよく判りました。
 しかし当時はそのことに気づいている者がほとんど居らず、住民の防災意識は高く有りませんでした。したがって当然のように、有効な防災の組織も整備されていませんでした。
 そこで平成23年4月に、安心安全部会のメンバーや消防団のOBなどの防災意識の高いメンバーが中心となり、下地自主防災会(SEA)が結成されました。


−活動されている地域にはどのような特徴がありますか。

 下地校区は、一級河川である豊川の河口近くに位置し、標高の低い地域です。
 豊橋市の西の玄関口として、古くから交通の要所であり、旧東海道をはじめ現在の国道一号線、県道豊川線などのとても交通量の多い幹線が、地域の中心で交わっています。
 また隣接する2校区と共に四方を豊川と豊川放水路に囲まれ、古くから水害の脅威に苛まれていた地区でした。しかも近年の調査により液状化の可能性がとても高い地域であることが判っています。
 そしてこの河川に囲まれた範囲には市の消防施設などが無く、万一の大規模災害時に橋などの通行が困難にでもなれば、早急な公の救助が期待できにくいと思われます。


−下地自主防災会(SEA)にはどのような組織がありますか。
 下地校区は14の町内に分かれています。
 組織を立ち上げるにあたり、校区全体を一つの組織にするには範囲も組織も大きすぎてしまい、かといって各町内に分けてしまっては、防災組織として力不足という問題が発生しました。
 そこで校区にある14町内を、地域の中心を通る幹線道路を境として、大きくA〜Eまでの5つのエリアに分けました。そしてそれぞれのエリアごとに独立した防災組織を編成することにしました。
 各エリアにはエリアリーダー1名とそこに所属する各町内に1名の町内リーダーと各町内5〜7名程度の活動員(情報班・消化班・救出救護班・避難誘導班・給食給水班)にて、構成されています。
 任期は原則として複数年で、平成27年度は校区全体で構成員87名(とよはし防災リーダー講習取得者11名)で組織しています。

−下地自主防災会(SEA)の主な活動内容を教えてください。

(1)防災マップの作成・配布
 下地校区5つのエリアごとに防災マップを作成しました。作成したマップには、避難所、緊急一時集合広場、防災倉庫、消火栓・街頭消火器、危険個所、災害時協力事業所等の位置と、行政などが発行している防災インフォメーションを掲載しました。
 そして下地校区の特徴として、特に交通の便の良いこともあり、様々な業種の事業所が地域内に多く営業しています。同じ地域内に住む住民とこれらの各事業所が災害時に、協力することが大事だと考えました。
 そこで防災マップを作るにあたり、事前に各事業所宛にアンケートを送らせていただき、災害時の協力の可否、協力いただける内容の種類、防災マップに掲載の可否を答えていただきました。
 ほとんどの事業所が協力を快諾していただき、マップには校区全体で100軒余りの事業所を掲載させていただきました。
 平成25年に完成した防災マップは、校区住民の各全戸と各事業所に配布されました。


(2)防災倉庫・防災資材・水防施設の管理運営
 各町内の防災倉庫、防災資材をリスト化しファイルに入れて管理することにしました。これにより、活動員はもちろん、一般の住民の方々も確認しやすくしています。
 また地区内には、水害対策の為に設置された地域を流れる豊川等の河川沿いに水防倉庫、大型排水ポンプ、用水路樋門等があり、その管理を消防団とともに任されています。台風や集中豪雨などの大雨による道路、家屋の冠水時やその恐れのある際には操作を行っています。
 また自主防災会設立後に各町内防災倉庫に追加配備した防災資材に、ステンレス製薪ストーブ、大型金棒、スコップ、簡易トイレ、トイレ用テント、折り畳みリアカー、拡声器、ヘルメットなどがあります。


(3)校区防災訓練はじめ各種訓練、講習の企画参加
 年に一度、校区全体の防災訓練を企画運営しています。
 毎年メインとなるテーマを変えて内容を検討し、毎回約600人以上の方に参加していただいています。
 基本は、『自分の命は自分で守る』。「自助・共助・公助」の自助と共助の意識を、特にしっかり持っていただくことを目指しています。
 また、平成26年に豊橋市防災モデル校区に選定されたことで、平成26・27年度は下地小学校と共同開催の形をとりました。
 事前に6年生の児童に、防災学習の指導並びに校区防災ウォッチングを行いました。そして防災訓練当日は、校区住民の前で児童の皆さんに研究発表をしてもらいました。
 その他、応急手当講習会などは随時開催してます。豊橋市主催の総合防災訓練、水防訓練、防災講習会、自主防災推進大会などに参加させていただいています。
 また、毎年メンバーによる防災施設の見学会も行っています。過去に訪れたところでは、「神戸市人と防災未来センター」、「福良港津波防災ステーション」、「静岡県地震防災センター」、「浜岡原子力発電所」、「名古屋大学減災館」などがあります。





      防災訓練の様子


−活動をするにあたり、課題や問題点はありますか。

 災害は、いつどのような形で私たちのまわりでおきるのか、実際に正確に予測することはおそらく不可能なことだと考えます。この予想できないことに向けて備えをする。まさにそれが平常時の防災活動なのですが、これをいかにモチベーションを落とさずに持続し備え続けることができるのか。これに尽きると思います。
 どれだけやれば大丈夫なのか、どこまで備えれば十分であるのか。はっきりした答えはないと思います。
 そして組織の運営の維持の問題です。下地自主防災会は、現在87名で構成しています。おそらく1校区としては、大きな組織の方だと思いますが、果たして住民6,000人に対して充分と言えるかどうかもわかりません。また、これだけの組織となると、運営をする役員もなかなか大変です。


−今後、どのような活動を行っていく予定ですか。

 現在取り組もうとしている活動課題に「台風タイムライン」があります。気象観測技術等の発展により、ある程度予測可能な災害として台風がありますが、リアルタイムでの台風の状況と進路予想により、校区のある地方にどのような被害の予想があるのか、それに対して校区としてどのような対策をとることができるのか。時間軸を使ったタイムライン対策プランを、できる範囲で作成してみたいと思っています。
 また将来に向けての意味もあり、中学生、高校生と一緒の防災訓練の可能性を考えてみたいと思っています。
 今回の小学校6年生と一緒に行った防災活動で、子供たちはかなり強く防災への関心を持っていることが判りました。
 これが中学生、高校生となれば、防災の意識や知識をしっかりと身に着けてもらえれば、災害時にはおそらく一般の大人と同等なくらい頼りになるのではと考えます。
 そして将来は、ただいま募集が困窮している消防団活動や自主防災の担い手に、少しでも繋がればという期待もあります。ただそれに向けては、もっと大きな枠組みでの支援取り組みが必要だと思います。

  



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