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泌尿器科部

泌尿器科部紹介

 泌尿器科は、前立腺がん、膀胱がん、腎がん、精巣がん、腎盂尿管がんなど尿路性器悪性腫瘍の診断と治療を行う科です。患者さんの利益を第一に考え、がんの診断、治療、予後、合併症などについて十分な説明を行い、情報を提供し、十分相談し納得していただいた上で、治療方針を決定しています。また根治性が高く、かつ合併症の少ない治療法を目指しております。

泌尿器科医師、泌尿器科専攻予定の医師の方へ

 愛知がんセンター中央病院 泌尿器科では、泌尿器系腫瘍の手術、治療に興味があるスタッフ候補、レジデント(ジュニア、シニア)を広く募集しております。御興味がある方は、当院へ御連絡いただき、見学に来ていただくことを心よりお待ちしています。(担当:曽我)

スタッフ紹介

曽我 倫久人
曽我 倫久人
(そが のりひと)
部長

患者さんへのことば

 患者さんの状態に合わせた治療法を十分な相談の上決定していきたいと思います。特に、尿路系がんに対する低侵襲手術(腹腔鏡手術、ダヴィンチ、ミニマム創手術)を専門としておりますので、手術に伴う負担を軽減する低侵襲と、根治を目指す拡大手術の両面を有した最善の治療を提供できるよう努力してまいります。

資格

【学会専門医・役員等】
日本泌尿器科学会専門医および指導医
日本がん治療認定医機構暫定教育医、がん治療認定医
日本泌尿器内視鏡学会泌尿器腹腔鏡技術認定医
内視鏡外科学会泌尿器腹腔鏡技術認定医
日本ミニマム創泌尿器内視鏡外科学会施設基準医
日本ミニマム創泌尿器内視鏡外科学会ガイドライン作成委員(腎摘除部門委員長)
ロボット(da Vinci Xi)手術認定医
ロボット(da Vinci Xi)手術プロクター(指導医)
【所属学会】
日本泌尿器科学会
日本泌尿器内視鏡学会(代議員)
日本ミニマム創泌尿器内視鏡外科学会(評議員)
日本癌治療学会
日本癌学会
日本老年泌尿器科学会
米国泌尿器科学会

小倉 友二
小倉 友二
(おぐら ゆうじ)
医長

患者さんへのことば

 前立腺癌の治療法は手術・放射線治療(密封小線源治療、放射線外照射)・ホルモン治療・監視療法など多岐に渡ります。十分ご理解していただき、治療選択していただき、安全で質の高い治療を提供できるように努めています。

資格

【学会専門医・役員等】
日本泌尿器科学会専門医および指導医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本泌尿器内視鏡学会泌尿器腹腔鏡技術認定医
日本ミニマム創泌尿器内視鏡外科学会施設基準医
ロボット(da Vinci Xi)手術認定医 
ロボット(da Vinci Xi)手術プロクター(指導医)
【所属学会】
日本泌尿器科学会
日本癌治療学会
日本癌学会
日本泌尿器内視鏡学会
日本ミニマム創泌尿器内視鏡外科学会

関戸 翔
関戸 翔
(せきと しょう)
医長

患者さんへのことば

 準備中

資格

【学会専門医・役員等】
準備中
【所属学会】
準備中

診療内容

当院での特徴的な治療法

 1. 手術療法に関して

 泌尿器科領域の手術において、低侵襲化が進んでいます。特に当院では、ロボット手術、腹腔鏡下手術、及びミニマム創手術(保険術式名:腹腔鏡下小切開手術)に取り組んでいます。

【現在の適応疾患、適応術式】

ロボット手術:前立腺がん(前立腺全摘除)、将来的に腎がん(腎部分切除)
腹腔鏡手術:腎癌(腎全摘除)、副腎腫瘍(副腎全摘除、副腎部分切除)
ミニマム創:前立腺がん(前立腺全摘除)、腎がん(腎全摘除、腎部分切除)、 副腎腫瘍(副腎全摘除、副腎部分切除)、腎盂尿管がん(腎尿管全摘除)

一つの手技に固執せず、柔軟に個々の症例に適切な低侵襲手術を提供しています。

前立腺癌治療指針

ロボット手術に関して

 現在本邦ではロボットを使用した手術が、低侵襲手術として急速に普及しています。
 当院においても、2015年7月に、名古屋市内で初めて最新式ロボット(ダヴィンチXi)を導入し、ロボット手術希望の方が急増しています(下表2018年度集計)。

2015 2016 2017 2018 2019 合計
前立腺全摘除術 24 49 47 66 54 240
 ミニマム創 16 0 0
0 0 16
 ロボット手術 8 49 47 66 54 224
  後腹膜 5 6 12 23
  拡大リンパ節
  郭清
18 15 14 47
2015 2016 2017 2018 2019 合計
腎部分切除術 11 7 10 9 10 47
 ミニマム創 11 7 7
1 1 27
 ロボット手術 3 8 9 20

ロボット手術

  適応は、現在のところ前立腺がんの方で、将来的には腎部分切除へ適応拡大していきます。
  下記が、前立腺全摘除における従来の開腹術と、ロボット手術の比較です。

ロボット手術 従来の開腹術
1)経路 経腹的、後腹膜 後腹膜
2)気腹 あり なし
3)拡大視野 10-30 鮮明3D 2-5
4)鉗子の可動性 制限なし 制限あり
5)尿道吻合 連続 結節
6)創部 1-2cm 6-8cm

1)経路に関しては、従来の開腹術は、青の矢印の様に、お腹の中の臓器を見ることなく、後腹膜(腹膜の外)で手術を行いましたが、従来のロボット手術は赤の矢印の様に、まず、腹膜の中に入ってから、後腹膜(腹膜の外)に入り、前立腺を処置する方法のみでした。
 現在は、ロボット手術でも後腹膜のみで対応することが可能になりました。そのため、腹部内臓器の癒着が強いことが考えられる(腸管の手術の複数回施行、腹膜炎、腸閉塞の頻発など)方、緑内障にて頭低位(頭を下げて手術をする)が取れない方にも、適応になりました。

 また、局所進行がん(局所浸潤、細胞レベルでリンパ節転移が予想される症例)に対して、局所拡大切除、拡大リンパ節郭清も対応可能です。

ロボット手術

2)またロボット手術は、腹腔鏡下手術の一つであるので、二酸化炭素を体内に送り込みながら(気腹)手術を行います。体内の圧力を高く保つことにより、静脈性の出血を減らすことが知られています。(ロボット手術は出血が少ない)
3)ロボット手術では拡大した、3Dの視野のもと手術を行うことが可能です。それにより、血管の視認が容易になることより止血を確実に行え、性機能の温存のために神経を残す手術がより確実にできる可能性があります(ロボット手術は出血が少なく、性機能温存に有利な可能性)
4)5)鉗子の先端を360度自由に動かすことが可能であり、膀胱と尿道の吻合を連続して行うことができます(術後の尿失禁を減らすことが可能)
6)ロボット手術においては、創部を傷口が小さくて済ませることが可能です。それにより、術後の痛みを少なくでき、また回復を早くできる可能性があります。

ロボット手術

 以上の様に、ロボット手術の利点としては、
・出血量が少ない 
・創部の傷口が小さく、術後の痛みを少なくでき、また回復が早い 
・蓄尿機能や性機能をより温存できる可能性がある 
などがあげられます。

 前立腺癌と診断され、ロボット手術をご検討されている方は、是非ご連絡ください。

ロボット補助腎部分切除に関して

 近年腎腫瘤に対する治療概念が大きく変化し、腎腫瘤(腎腫瘍)は可能な限り、部分切除術を行い、正常腎を温存する方法が標準になっています。それは、腎部分切除術を行った症例において、腎全摘時と比較して癌の再発、がん死亡に差が無いことが報告されているからです。また、腎部分切除では腎機能が温存され、心血管イベント(動脈硬化に伴う心筋梗塞、脳血管症)が減ることにより、腎全摘除術と比較して、全生存はむしろ延長すると報告されています。当院においても、腎部分切除に積極的に取り組んでいます。
 手術手技は、ロボット補助下腎部分切除、もしくは小切開(ミニマム創)手術で行っています。
 腎部分切除は、腎腫瘤への切り込みを避け、悪い部位のみを確実に切除する手術ですので、出血の無い良い視野の確保は重要であり、その視点より手術方法を選択しています。

ロボット補助腎部分切除に関して
ロボット補助腎部分切除での切除時の様子

ロボット補助腎部分切除に関して
ロボット補助腎部分切除での切除後、縫合後の様子

腹腔鏡手術

 腹腔鏡手術とは、従来の大きく腹部を切開する手術とは違い、5mmから12mm程度のポートと呼ばれる筒を腹壁からお腹の中に通し、そこからカメラを挿入し、モニターを見ながら長い鉗子を使って臓器を摘出する方法です。切開創が小さく、腸管が空気に触れる時間が少ないため、体に対して低侵襲であり、早期の回復が期待できます。手術は原則、腹腔鏡技術認定医である医師の立ち合いのもと行います。
 対象の疾患として、腎がん(全摘除)、副腎腫瘍があります。

腹腔鏡手術

ミニマム創手術(保険術式名:腹腔鏡下小切開手術)

 ミニマム創手術(保険術式名:腹腔鏡下小切開手術)とは、治療効果は従来の開放手術と同等で、手術切開創が小さい手術です。当院においては、低侵襲手術として、内視鏡下小切開(別名:ミニマム創)手術を開始しています。ミニマム創とは、小切開のなかで対象臓器がようやく取り出せる最小の創のことです。ミニマム創手術は、最小の傷から、内視鏡と視野を展開するための器具を挿入し、術野を展開操作することにより行います(ガスを用いない、基本的に手で創内操作を行わない)。

ミニマム創手術

ミニマム創手術の利点としては、以下の2点の利点が考えられます。
1)低侵襲であること。
 従来行われていた開放切開手術と比較して、最小の傷(ミニマム創)にて行うことより、より低侵襲な手術が可能となり、最終的に患者への身体的負担が軽減できます。翌日には、飲水、摂食、歩行が可能であり、また手術に伴う疼痛の軽減もでき、短期入院での手術を可能にします。
2)安全性が向上できること。
 気腹して行う腹腔鏡手術と同等もしくは同等以上の低侵襲を保ちながら、直視(立体視)モニター(2次元拡大視野)の両方の補助下で手術が可能であり、より安全性が確保出来ます。
 対象の疾患として、腎がん(全摘除、部分切除)腎盂尿管がん(腎尿管全摘除)、副腎腫瘍、前立腺がんがあります。
 手術後の創部外観ですが、前立腺がんに対し行う根治的前立腺全摘除術において従来は臍から下の10-12cmの傷にて行われていますが、ミニマム創手術においては5-8cmにて行っており、術後の疼痛の軽減が期待できます。
 また、腎がんに対する根治的腎摘除術においては、従来12肋骨の先端から、腹直筋外縁までの15-20cmの傷で行われていますが、ミニマム創手術においては、6-8cmにて行っています。

ミニマム創手術

 傷の部位も正面からは見えにくい背側の傷になる事も利点と考えています。開腹手術より低侵襲であると報告されている腹腔鏡手術と、侵襲度は同程度である事を我々は報告しています。もし、ミニマム創での手術をご希望の患者さんがいらっしゃいましたらお気軽にご相談下さい。より詳細な説明をさせていただきます。(担当:曽我)
 詳細につきましては下記home pageでもご覧いただけます。

2. ヨウ素(I-125)シード線源を用いた小線源治療に関して

 放射線治療の1つであり、チタン製カプセルにヨウ素(I-125)を密封した小さな放射線源(シード線源)を前立腺の中に挿入して照射を行います。直腸から挿入した超音波プローブで前立腺を観察しながら、肛門と陰嚢の間の皮膚から針を刺し、この針の中を通じてシード線源を前立腺に挿入します。挿入した線源は再度取り出すことはありませんが、放射線量は徐々に減少して、1年後にはほとんどなくなります。尿、便などに放射能はありません。一定期間は周囲への配慮は必要ですが、周囲の人への影響はほとんどありません。日本では2003年から開始され、当院では2006年から行っています。

前立腺癌に対する、ヨウ素(I-125)シード線源を用いた小線源放射線治療(内照射)に関して

 本治療はすべての前立腺癌の方に適応できるわけではありません。転移や浸潤がなく、がんが前立腺内に限局している場合に限られます。また、がんの悪性度が高い場合はお勧めできません。一般的には低リスク群(PSA値が10ng/ml未満、かつグリソンスコアが6以下、かつ臨床病期がT2b以下)が適応です。当院では中間リスク群(PSA値が10ng/ml以上、グリソンスコアが6以上、臨床病期がT2c以上のうち、いずれか1つを含む)の一部にも施行、症例によっては放射線外照射と併用し、高い治療効果を目指した治療を行っています。その他、過去に前立腺の前立腺肥大症の手術を行った方、経直腸的超音波画像による前立腺の観察が困難な場合、排尿障害が強い方、前立腺が非常に大きい場合などには、本治療ができないことがあります。それぞれの状態で判断することとなります。

前立腺癌に対する、ヨウ素(I-125)シード線源を用いた小線源放射線治療(内照射)に関して

 この治療の最大の特徴は、体への負担が少なく、入院・治療期間が短いことです。通常は3泊4日の入院です。性機能も維持されやすく、5年後も7割程度維持されると報告されています。ただし、射精はされなくなる可能性があります。尿失禁も治療直後に生じることはまずありません。また、適切な位置への線源挿入により、安定した照射が可能であると思われます。
 しかしながら、全く合併症が生じないわけではありません。排尿障害が治療後1年程度続きます。場合によっては自分で排尿できなくなることがあります。また、放射線治療の特徴である治療終了後何年も経過してから生じる晩期合併症があります。放射線が周囲臓器にもあたることによる直腸・膀胱・尿道への障害であり、下血、血尿、排尿障害、排尿痛、潰瘍形成が生じる可能性があります。しかしながら重篤な合併症の可能性は低いと報告されており、短期でありますが、当院での合併症も幸い重篤なものは認めていません。
 治療成績は、日本での長期成績は出ていません。アメリカの治療成績では、症例選択によって前立腺全摘除術と同等である可能性が示されています。短期でありますが、当院での成績も良好な結果を得られています。
 ヨウ素(I-125)シード線源を用いた小線源治療は、前立腺がん治療の大きな柱となりうる治療です。
 本治療をご希望・ご興味のある方は、担当医にお尋ねください。

3. 前立腺癌に対する外照射放射線治療 (トモセラピーを使用したIMRT)に関して

 当院では、前立腺癌に対して、放射線治療部のもとIMRT(強度変調放射線治療)を行っています。
 IMRTは、従来の放射線治療より前立腺の周囲の膀胱や直腸のダメージを最小化するため、副作用を増やすことなく十分な放射線を前立腺がんにあてることが可能になります。当院のIMRTは、限局型もしくは、局所浸潤性前立腺癌 (stage B, C, cT1-T3N0M0) を対象にしています。2010年3月時点で290名の患者さんへの治療を行い、現在も年間60-65例のペースで治療を行っています。
 高riskと分類された患者さんにおいても、長期にPSA再発が無いことが確認されています。(詳細は当院放射線治療部の項目をご覧ください)

前立腺癌に対する外照射放射線治療 (トモセラピーを使用したIMRT)に関して

各尿路がんに関して(概論)

 前立腺がんでは、前立腺特異抗原(PSA)という腫瘍マーカーにより、血液検査でがんの早期発見が可能となっています。当院では、生検方法を独自に開発し、他院より高い陽性率を示しています(下記に詳細)。また、腹側(前側)の直腸から遠い前立腺がんは、直腸経由では診断が困難であり、経会陰式に前立腺全体の細胞を採取する方法(経会陰的前立腺多数箇所生検)にて、診断を確実に行っています(同様、下記参照)。治療として、手術を中心にした根治的治療の頻度が増加しており、当院では、ロボット手術により低侵襲化を進めています(上記に詳細)。 また、放射線治療部との協力で、根治的な放射線治療として、小線源治療強度変調放射線治療(IMRT)もおこなっております(上記に詳細)。当院では、前立腺がんに対して、保険診療でのすべての治療を提供できる環境を整備しています。前立腺がんの治療選択の手順は、下記に詳細を記載していますので、ご参照ください。前立腺がんに対するホルモン治療に関しても、当院で独自の工夫をしています(下記に詳細)。
 腎がんにおいては、近年CTおよびエコー検査による検診で見つかる4cm以下の早期がんが増えています。しかし、腎腫瘤の中には、高率に良性腫瘍が(7-20%)含まれていることが確認されているため、当院では積極的に術前に腎腫瘤生検を行っています(下記に詳細)。適応を考慮したうえで、腎機能の温存を目的として部分切除術も行なっております(上記に詳細)。腎部分切除時に、腫瘍部位と正常部位の識別を明確にするため、ICGによる蛍光法を先駆けて行っています(下記に詳細)。部分切除、全摘除に関して低侵襲化を進めています。
 膀胱がんでは、早期がんでは経尿道的に内視鏡的切除を行ないますが、進行がんの場合は回腸を利用した尿路変更法をおこなっております。 
 精巣がんは主に30歳前後の若い患者さんの病気です。抗がん剤治療と手術治療によりほとんどのがんは治癒しますが、難治性腫瘍に対しては、薬物療法部に化学療法を依頼しております。また、これらの治療をする前に、精液を保存して将来起こりうる化学療法や手術治療に伴う不妊にも対応できるよう準備しております。

当院の特徴的な検査
当院独自の前立腺生検方法:初回経直腸的前立腺生検

 PSA(前立腺特異抗原)が高値、もしくは直腸診察にて、前立腺癌が疑われた場合、初回を経直腸的に生検することが一般的です。
 少なくとも左右の3カ所、計6ヶ所生検することが推奨されており、現在では、それに追加して、4ヶ所以上追加した10ヶ所以上生検することが行われています。
 しかし、6カ所生検にどの部位を追加するのかは、決まった方法がありません。
 海外の報告では、下記の図の紫色の矢印の様に、外側の組織を追加して採取することが推奨されていますが、この方法が日本人でも適切かどうかの検証は不十分と考えています。
 当院では独自に、赤色の矢印の内側の追加生検法を考案し、検証をすすめてきました。

当院の特徴的な検査、治療

 2か所を追加した、8カ所生検、4カ所を追加した10ヶ所生検ともに、有意な癌の検出率改善を示し、特にグレーゾーンといわれているPSA(4.01-10)の方においても、43.2%(一般的には20-30%)と非常に高い陽性率を確認しました。
 また、中程度高値PSA(10.01-20)の方でも71.8%の陽性率を示しています。
 前立腺生検は、苦痛を伴う前検査でありますので、できるかぎり少ない回数、少ない生検本数、効率的に癌が確認できるように、当院では独自の生検方法を実践しています。
 PSA高値にて悩まれている方がみえましたら、ぜひご相談ください。

当院の特徴的な検査、治療

当院の特徴的な検査、治療

テンプレートを使用した前立腺多数箇所生検

 初回の前立腺生検は、経直腸的に行われています。しかし、尿道より腹側(腹壁側)は、直腸から一番遠い場所にあるため、十分な組織採取が困難です。
 当院では、初回経直腸的前立腺生検では癌が同定できず、なお癌の存在が否定できない患者さんに対して、テンプレート(格子)を使用した、前立腺多数箇所生検を行っています。
 この方法の利点として、経直腸的な穿刺においては採取が困難な、尿道腹側、尿道背面の前立腺組織が確実に採取できること、テンプレート(格子)を使用することにより、どの部位を採取したかの確認が出来き、且つ均等に前立腺を網羅する様に多数箇所生検できることです。

前立腺がん:前立腺生検(多数箇所生検)

 下記に、テンプレートを使用した多数箇所生検により、同定できた癌の局在をお示しします。尿道より腹側、尿道周囲など、経直腸的には穿刺困難な部位に癌が集中していることがわかります。

テンプレートを使用した前立腺多数箇所生検

 経直腸的に生検が施行され、なお癌の存在が否定できない方がみえましたらご相談ください。
 また、一度に沢山の組織を採取して、癌の有無の確定をされたい患者さんに対しても有効であると考えています。

前立腺癌治療指針

 前立腺癌と診断された後は、治療法の選択になります。
 一般的には、治療法を決定する前に、risk(危険度)分類を行う必要があります。
 これは、T分類 (MRI画像などから判断する前立腺内での広がりの評価)、PSA(前立腺特異抗原:0-10、10.01-20、20.1-の3分類:高値ほど悪い)、Gleason score(病理学的分類:GS6, GS7, GS8-10の3分類:高値ほど悪い)を組み合わせて行います。

前立腺癌治療指針

Gleason scoreは、細胞の構築でがんの悪性度を分類します。3-5はがんと判断されます。

数値の足し算で表記されます。たとえば、4+3=7はほとんどの細胞が4で、一部3が存在する状態です。

Gleason scoreの注意点は、評価する病理医により差があり、その一致率は59.8%に過ぎないことです。そのため、当院にて治療を受けられ場合、他院で施行した生検組織(プレパラート)を持参していただき、当院で改めてGleason scoreを分類します。

前立腺癌治療指針

 主に使用されてる分類は、下記に示す、AUA,EAU, NCCNの分類があります。

前立腺癌治療指針

Risk分類が行われたとは、risk別の治療選択の提示がされます。

注意点: Gleason scoreの相違により、16.7%の方のrisk分類が変わりますので、当院に受診後、Gleason scoreを再評価して、改めて、risk分類する必要があります。

前立腺癌治療指針

以下に当院の治療法の選択肢を示します。Low riskであれば、経過観察から手術まで、多岐に渡る選択肢が示されます。

前立腺癌治療指針

 様々な選択肢がある前立腺癌の治療法の中から、適切な治療法を選択することは容易ではありません。治療選択を行う一つの方法として、治療法を段階的に並べて、検討するアルゴリズム方法を考えています。
 まず、治療介入を希望するかどうかが議論されます。治療介入を希望しないのでれば、経過観察になります。治療介入を希望した時点で、年齢が重要な因子です。
 当院では75以下を手術適応年齢としていますが、それは、一般的に前立腺癌の期待余命は10年であり(10年間生存できる可能性が高い)、76歳の平均余命が10年未満であるので、前立腺癌で死亡するよりも他疾患で亡くなる可能性が高いと考えているからです。
 手術を選択する上で、ポイントとなるのは、手術に伴う出血、手術後の尿の漏れ、性機能不全(ED)です。現在は、自己血を貯血するのみで、他人の輸血を受けずにほとんどの手術が遂行可能です。また、手術後の尿の漏れは、1年一部の患者さんを除いてPADが必要になります。また、性機能不全(ED)は、神経温存で手術法を工夫することにより対応が可能です。手術の低侵襲化も積極的に進めています。
 しかし、年齢や、手術が許容できない場合、放射線治療、ホルモン治療が適応になります。
 放射線治療は、組織内に放射線元素を留置する内照射(短期間で治療が終了:詳細下記参照)、対外から放射線をあてる外照射(IMRT強度変調放射線治療:2か月ほどかけ治療)があります。
 また、男性ホルモンを下げることにより前立腺癌の進行を抑えるホルモン治療も可能です。
 上記内容を段階的に相談しながら、適切な治療法を一緒に検討したいと思います。

前立腺癌治療指針

その他の当院における特徴的な検査、治療

腎腫瘤生検(臨床試験:倫理委員会承認すみ)

 本邦において、腎腫瘤に関して、ほとんどの症例が、放射線画像のみで診断され、癌が否定できない場合、腎腫瘤生検を行って手術前に組織診断を行うことなく、手術(腎全摘除、腎部分切除)が施行されているのが実情です。しかし、当院の集計においても、手術療法が施行された症例の13.5%に、良性腫瘍が存在し、特に2cm以下では20%以上の良性腫瘍が存在します。また、60歳より若く、女性で3cmより小さい腫瘍においては、50%もの症例で良性腫瘍が存在します。この現状は、現時点での放射線診断の限界を示しており、手術前の評価が必要であることを示しています。一方、欧米諸国では良性腫瘍の頻度が、本邦より高く腫瘍の大きさに関わらず20%を超える報告が多く存在し、手術前に、腎腫瘤生検が積極的に行われています。しかし、腎腫瘤生検の安全性、有効性を示した本邦での報告は少なく、本邦では腎腫瘤生検が積極的に行われていません。現状を踏まえ、当院の倫理委員会の承認を得て、腎腫瘤生検を積極的に行っています。 その目的は、手術前に腎腫瘤が本当に手術の必要な癌であるかを確定するためです。 生検が特に勧められる症例は、60歳より若く、女性で3cmより小さい腫瘍においては(50%もの症例で良性腫瘍の可能性)、放射線診断で典型的な腎癌の所見を示さないものと考えています。腎腫瘤を指摘されて、治療を検討されている方がみえましたらご相談ください。

腎腫瘤生検

腎部分切除(ICG蛍光法)(臨床試験:倫理委員会承認すみ)

 腎部分切除では、腫瘍部位に切り込まず、腫瘍部位を完全に切除することが重要です。
 当院では、ICG(肝機能検査で使用される試薬)を使用した、ICG蛍光法を使用して腎部分切除術を行っています。ICGを静脈内に投与した後、特殊な蛍光発生装置を使用すると、正常部位は蛍光し、腫瘍部位は蛍光しない特性を利用しています。
 上記システムを利用することにより、手術中に、腫瘍部位と正常部位の識別が容易になり、腫瘍の切除がより安全に施行できると考えています。

腎部分切除(ICG蛍光法)

左側は、肉眼で見た切除組織(赤色が癌)です。右側は蛍光を発色させた所見です。正常状腎組織が明らかに白色に蛍光され、腫瘍組織との鑑別は明らかです。

腎部分切除(ICG蛍光法)

前立腺癌のホルモン治療に関して
AgonistからAntagonistへの交換(臨床試験:倫理委員会承認すみ)

 前立腺癌は、血液中の男性ホルモンの濃度を下げることにより、その発育が抑制されていることが知られています。最近まで、脳に刺激を与えて精巣からの男性ホルモンの産生を抑制するLH-RH agonist(リュウプロレイン、ゴセレリン)を注射することが主流でした。しかし、近年脳からの精巣への刺激を直接抑制して、男性ホルモンの産生を抑制するLH-RH antagonist(デガレリクス)を使用することが可能になりました。LH-RH antagonistを使用することにより、より血液中の男性ホルモンの濃度を下げることが可能になることが考えられます。
 当院では、LH-RH agonistにてPSAの上昇などにより、前立腺癌の増殖の抑制が不十分であると考えられる方に対して、LH-RH antagonistに変更し進行を抑制する取組を行っています。LH-RH agonistにて、前立腺癌の増殖の抑制が不十分であると考えられる方はご相談ください。

前立腺癌のホルモン治療に関して

外来診療

 他の病院で、すでに診断や治療を受けられた患者さんは、紹介状、写真、標本などの持参をお願いします。前医での検査結果や治療経過などは、当院の診療にたいへん役立ちます。
 また、セカンドオピニオン外来を行っております。がんの種類や進行度によって施設による治療方針が異なる場合もありますので、当科における診断・治療に関する考え方、治療方針について説明させていただきます。また、セカンドオピニオン外来は予約制です。 セカンドオピニオンのページをご参照ください。
※ 診療日・診療時間は診療案内をご覧下さい。

診療実績

2019年までの手術件数

腎がんに対する手術
2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 合計
腎摘除術 12 16 16 23 18 26 20 20 151
 根治的腎全摘除術 10 11 12 12 11 16 11 10 93
  開腹 4 0 3 2 3 7 2 1 22
  ミニマム創 2 0 2 1 1 0 0 0 6
  腹腔鏡 4 11 7 9 7 9 9 9 65
 腎部分切除術 2 5 4 11 7 10 9 10 58
  ミニマム創 2 5 4 11 7 7 1 1 38
  ロボット手術 3 8 9 20
腎尿管がん、副腎に対する手術
2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 合計
腎尿管摘除術 3 5 3 6 8 9 2 9 45
 開腹(後腹膜) 3 4 3
6 4 0 1 3 24
 ミニマム創 0 1 0 0 4 8 1 6 20
 腹腔鏡 1 0 0 1
副腎摘除術 0 1 2 2 3 2 1 1 12
 腹腔鏡 0 1 2 2 3 2 1 1 12
前立腺がんに対する治療
2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 合計
前立腺全摘除術 36 28 20 24 49 47 66 54 324
 開腹 14 0 0
0 0 0 0 0 14
 ミニマム創 22 28 20 16 0 0 0 0 86
 ロボット手術 8 49 47 66 54 224
  後腹膜 5 6 12 23
  拡大リンパ節郭清 18 15 14 47
内照射 20 20 13 10 15 11 11 0 100
 IMART 50 83 53 60 46 30 41 40 403
 salvage RT
(転移+)
8 8
膀胱がんに対する治療
2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 合計
膀胱全摘除術 2 10 5 5 3 1 6 3 35
 回腸導管 2 7 2
1 1 1 2 1 17
 尿管皮膚瘻 0 3 3 4 2 0 4 2 18
内視鏡下切除 35 42 47 48 47 53 71 75 418
 セカンド切除 5 4 8 1 9 5 32
精巣がんに対する治療
2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 合計
高位精巣摘除 3 2 4 1 2 2 2 3 19
後腹膜リンパ節郭清 2 0 1 1 1 0 1 1 7

治療方法と治療成績

前立腺がん

治療方法
 前立腺がんの根治療法として、手術と放射線治療があります。放射線治療も、外照射法と組織内照射法があり、前者としては最新治療法である強度変調放射線治療が、後者では小線源治療があります。当院では、これらの治療を全て行うことができます。転移のある前立腺がんは、内分泌治療や化学療法による治療となります。

治療成績

@ 根治的前立腺全摘術

5年非再発率
ステージB(T2a, T2b) : 84.4%
ステージC(T3a, T3b, T4) : 42.2%
リンパ節転移が陽性の場合は42.9%
全体の5年生存率は98.7%

A 三次元原体放射線治療

5年非再発率
ステージB(T1c, T2a, T2b) : 76.6%
ステージC(T3a, T3b, T4) : 75.1%

膀胱がん

治療方法
 膀胱がんの基本的手術としては、早期がんである表在性膀胱がんに対しては、経尿道的膀胱腫瘍切除術が、浸潤性膀胱がんに対しては根治的膀胱全摘術が行なわれています。表在性膀胱がんとは、癌が粘膜内に留まるものです。浸潤性膀胱がんとは、癌が粘膜を越え筋層に達したり、膀胱壁外に及ぶものです。転移のある膀胱がんは、化学療法や放射線治療による治療となります。

治療成績

@根治的膀胱全摘術

5年生存率
pT1は97.0%
pT2は66.4%
pT3は47.6%
pT4は25.4%
リンパ節転移が陽性の場合は42.4%

A経尿道的膀胱腫瘍切除術

5年生存率 96.6%
5年非再発率 56.6%

腎がん

治療方法
 腎がんは、基本的には抗がん剤による化学療法や放射線療法は効果がありません。転移がなければ、根治的腎摘除術を行ないます。また、転移があっても腎摘除術を行なって、インターフェロンや分子標的薬で治療する場合もあります。

治療成績

根治的腎摘除術
5年生存率
pT1aは91.7%
pT1bは94.4%
pT2 は88.2%
pT3a は72.3%
pT3b は66.7%

腎盂尿管がん

治療方法
 腎盂尿管がんの治療は、転移がなければ腎尿管摘出術を行ないます。一側の尿路を摘除します。その際には、膀胱も部分切除術します。転移のある腎盂尿管がんは、化学療法や放射線治療による治療となります。

治療成績

腎尿管摘出術
5年生存率
pTa-pT1は100%
pT2は80%
pT3は64%
リンパ節転移が陰性の場合は81.4%
リンパ節転移が陽性の場合は25%

研究・学会活動

【最近5年間の業績】
2012年度 学会発表10件 論文7(英文4編、和文3編)
2013年度 学会発表8件 論文7(英文5編、和文2編)
2014年度 学会発表12件 論文4(英文3編、和文1編)
2015年度 学会発表13件 論文4(英文2編、和文2編)
2016年度 学会発表17件 論文5(英文3編、和文2編)
2017年度 学会発表13件 論文4(英文2編、和文2編)
2018年度 学会発表7件 論文9(英文7編、和文2編)
2019年度 学会発表6件 論文3(英文3編、和文0編)

【文部科学省科学研究費、競争的研究費】

2017年 公益財団法人愛知県がん研究振興会
第42回 がんその他の悪性新生物研究助成金 
去勢抵抗性前立腺がんに対する、新規抗アンドロゲン剤であるエンザルタミドの効果予測因子としての、測定法別血清中テストステロンの意義(主研究者:曽我倫久人)

2017年 公益財団法人愛知県がん研究振興会
第42回 がんその他の悪性新生物研究助成金 
上皮階層構造を有した新規培養系による前立腺がん検体の新評価 (主研究者:猪子誠人)

2017年度プロジェクト研究
組織構造を有した新規培養系による、前立腺がん検体の新評価 (主研究者:猪子誠人)

2016年 公益財団法人愛知県がん研究振興会
第41回 がんその他の悪性新生物研究助成金
前立腺がんにおける、抗アンドロゲン作用を有する新規薬剤の効果予測因子としての血清中テストステロンの意義(主研究者:曽我倫久人)

2015年 公益財団法人愛知県がん研究振興会
第40回 がんその他の悪性新生物研究助成金 
前立腺がんに対する抗アンドロゲン治療中の、クロマトグラフィー法による血清中テストステロンモニタリングの意義研究(主研究者:曽我倫久人)

2012-2015年度、文部科学省科研費、基盤研究(C)
前立腺癌における神経ペプチドMANSERINの機能解析(主研究者:曽我倫久人)

治験・臨床試験

臨床研究(当院倫理委員会承認済み)

治験

1. 標準治療に耐性の固形がんに対するオラパリブの効果(国際Phase III)
対象:固形がんに対して、標準治療耐性耐性の症例

2. 去勢抵抗性前立腺がんに対するオラパリブの効果(国際Phase III)
対象:去勢抵抗性前立腺がんに対して、エンザルタミドもしくはアビラテロンのどちらかを内服中もしくは内服予定の症例

3. 進行性腎細胞癌患者を対象とした、一次治療としてのエベロリムス又はペムブロリズマブ併用時のレンバチニブとスニチニブ単剤の有効性及び安全性を比較する多施設共同、オープンラベル、無作為化、第3相試験(国際Phase III)
対象:進行性腎細胞癌 無治療 転移症例

4. 選択的FGFR遺伝子異常を有する進行性尿路上皮がんの患者を対象にビンフルニン、ドセタキセルまたはペンブロリズマブと比較するErdafitinibの第V相試験
対象:尿路上皮がん、プラチナ系抗がん剤耐性

臨床試験

1. 前立腺癌における黄体形成ホルモン放出ホルモン作動薬投与中の再発に対する、黄体形成ホルモン放出ホルモン拮抗薬の効果(UMIN000009079)  

2. 腎腫瘤に対する、腎生検の安全性及び有効性の評価(UMIN000013833)

3. 泌尿器がんに対する外科切除時の、インドシアニングリーンを使用した近赤外蛍光法の安全性、有益性の検証(UMIN000013834)

4. 去勢抵抗性前立腺がんにおける、エンザルタミド及びアビラテロンの予後因子としての、血清中テストステロン値の意義

5. 上部尿路癌術後の膀胱内再発予防における術直後単回ピラルビシン膀胱内注入療法のランダム化比較第III相試験(JCOG1403 )

令和2年4月改訂

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